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初対面
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武道館では威勢のいい声が響いた。
出入り口付近で、陸斗は父さとしと待ち合わせしていた。
紬と康範も一緒に待ち続けていた。
「陸斗のお父さんに会うの久しぶりだよな。いつだか、車に乗せてもらった気がする。」
「そうだっけか? 随分前のことだから忘れてた。紬はまだ会ってなかったよね? 自己紹介しないといけないよね。」
こくんと頷いた。
緊張して手汗が止まらない。
防具の入った大きいバックの竹刀袋を抱えてやってきた。
すぐに練習できるようにと、袴と道着は着用済みだった。
「なんだ、なんだ。出入り口でみんな揃って…。」
「父さんが来るって言うから、ここで待ってんだんだよ。五十嵐先生は、先に稽古してるから。」
「お久しぶりです。康範です。今日、見学させてもらいます。」
さとしは出入り口の階段に荷物を置いた。
「あー。康範くん。久しぶりだね。元気にしてた? もしかして、剣道始めるの?」
「いや、見てる専門で、今のところは。」
「そっか。ん? 君は? もしかして、陸斗の彼女?」
陸斗は慌てて、紬の横に移動した。
「ああ! その人は、谷口 紬さんです。彼女って言えば彼女かな。」
「へぇ~、君が噂の。母さんに似てるって……え、ちょっと待って、谷口?」
「うん。谷口だよ。この子、ちょっと恥ずかしがりやで、話すの苦手だから、代わりに俺話すから。」
紬は申し訳なさそうにペコペコとお辞儀した。
「ふーん。そうなんだ。陸斗をよろしくね。浮気性なところあるかもしれないけど、お人好しなだけだから!良いところのようで悪いところだけどな。」
正しく図星だった。
紬も康範も何度も納得して頷いた。
「父さん、余計なこと言うなって!」
「悪い、悪い。」
「お、大越か?」
武道館の中から袴を着た五十嵐先生が声をかけた。
「お久しぶりです。五十嵐先生!何年振りですかね。今日は試合させてくださいね。」
ズンズンと中へ入っていくさとし。
五十嵐先生はさとしの肩をバシッと軽くたたく。
嬉しかったようだ。
「試合も良いけど、部員の指導も頼むよ。ちょっと、陸斗! お前も着替えて、やってみな!」
「えー。マジっすか?」
靴を脱いで中に入っていく。
軽くお辞儀した。
「全部、用意しておいたから。ほら、そっちに袴と道着、あと、竹刀とか…。着方はキャプテンの冴島に聞いて!」
「冴島です。大越くん。よろしく。確か、同じクラスだったよね。剣道部にぜひ入ってよ!まずは、体験からだねー。」
「あ、冴島って剣道部だったんだな。ごめん、悪いんだけど見学の2人いるんだけどさ、どこにいて貰えば良い?」
「お邪魔します。」
康範がそろりと中へ入る。
紬はぺこりとお辞儀して、康範の後ろをついていく。
「それなら、こちらに座ってもらっていいですよ。大越くんの彼女は特等席あるからね。目の前で見られるよー。」
冴島はご丁寧に案内してくれた。
みんながご周知の彼女だと言うことに顔が赤くなる。
少々恥ずかしかった。
奥の方では、女子剣道のメンバーがちらちらとコチラを見ていた。
恥ずかしいのが止められなかった。
周りにあまりに見られないように康範が盾になるように横にいてくれた。
「俺、ここにいればいいよね?」
何度も頷いた。心強かった。
「少しでも気許してくれてるのかな。」
独り言のように呟く康範。
遠くの方で、陸斗と父のさとし、五十嵐先生が話をしながら、胴と垂れをつけ、手ぬぐいを頭につけていた。
久しぶりにつけるさとしは、少し戸惑っていた。
初めて手ぬぐいをつける陸斗は混乱しながらもキャプテンの冴島に教わりながら、すぐにやり方を覚えて、防具をつけた。要領が良いらしい。キャプテンの教え方がうまいんだろう。
本当ならば、基礎練習から始めるのだが、今回は特別と言うことで親子対決しながら、実戦となった。
なかなか、見られないことだった。
そもそも、学校で陸斗の父と一緒にいるのは今回が初めてで、ギャラリーも噂を聞きつけて、増えてきた。
防具をつけてしまうと、どっちがどっちが分かりづらい。
かろうじて、分かるのは、身長が数センチ陸斗の方が大きかった。
初めて見る剣道の様子を紬と康範はマジマジと見た。
五十嵐先生と父のさとしは、さすがは経験者で様になっており、真剣そのものだった。
陸斗は初めて防具をつけて竹刀を振るため、右往左往していた。
「先生、早速やりますか?」
「おう。望むところよ。」
五十嵐とさとしは、向かい合い、一礼するとそれぞれ5歩進んで、かかんで、竹刀を持ちかえた。
立ち上がり、竹刀同士を、すり合わせる。
お互いに雄叫びをあげて威嚇し、ダンッと床を足で叩きつけた。
狙うは、面、胴、小手。
どちらが先に1本取れるかが
勝負だった。
先に手を出したのはさとしの方だった。
隙を見て、面を狙い、軽く当たるが、1本とはならず、次は五十嵐の方で、胴を打とうとしたが、うまく当たらず、掠った。
両者一歩も引かずに、しばし睨み合いが続く。
お互いにすり足で竹刀を向け合う。
鍔迫り合いをして、体制を崩したかと思うと、引き胴で、1本勝ちとなった。
勝利したのは、さとしの方だった。
一礼して、試合が終わる。
拍手喝采だった。
久しぶりということで1本勝負となった。
面を外す五十嵐は、汗をたくさんかいていた。そのまま、手ぬぐいで汗を拭いた。
まだ試合をする予定のさとしはそのままの格好でいた。
「大越も、ぬかりないな。しばらく試合してないんだろ?」
「本当、久しぶりでしたよ。体は覚えてるもんですね。先生もまだまだ若いじゃないですか。」
横で冴島の指導を受けていた陸斗が声をかける。
「父さん、やるね~。」
「だろ? 母さんと悠灯にも見せたかったなあ。」
「大丈夫、記録係いるから。」
陸斗は、康範の方を指差す。
スマホでばっちり撮影しててくれていた。こちらに手を振っている。
横では静かに紬も見学していた。
「それは良かった。後で動画送ってな。さてと、次は陸斗。お前もやってみよう!」
「いや、本当、俺、初心者だから。お手柔らかにお願いします。」
たった今、冴島キャプテンにやり方を教わったばかりでほぼぶっつけ本番。陸斗は緊張がほと走る。
「まあまあ、こてんぱんにやられてもいいんだぞ。お試しだから。陸斗は部員じゃないし。」
さとしは、試合の位置に立ち、準備をし、陸斗は真似をして、反対側の位置に立った。
「お願いします。」
一礼して、試合が、始まる。
冴島キャプテンと五十嵐先生が審判となっていた。
両者、竹刀を向かい合う。なかなか、どちらも、攻められず、ぐるぐると半回転する。
先に手を出したのは、恐れ多くも、陸斗の方だった。
負けず嫌いに火がついた。
まだまだ基礎の部分は不器用だったが、どうにか、面の端を攻めに行くが、かすめてしまう。
1本とはならなかった。
また向かい合い、竹刀を触れ合った。
次に攻めたのはさとしの方だった。
体当たりをしたかと思うと、動揺した陸斗に隙が出て、今度は前からの面を、打ちに行った。
見事に1本勝ちとなった。
向かい合い、一礼をして終了となった。
正座をして、陸斗はすぐに面をとった。
手ぬぐいを外すと、思った以上に汗をかいていた。
「父さん、容赦ないよね?!手加減してよ。」
反対側で面を外すさとし。手ぬぐいで汗を拭ってこちらを見る。
「いやいや、本気で行かないと…。ねえ、五十嵐先生。」
「そうだなあ。初心者にしては果敢に挑んでいたけどな。陸斗、お父さんに勝ちたいんだったら、入部するしかないな。」
「えー。マジっすか?」
「初めてやったにしては、スジはいいと思いますよ。お父さんの遺伝子かな。」
「ありがとうございます。でも、まだまだですよ。今まで1回もやらせたことないですし、興味も持たなかったので…。」
まさか剣道するとは思ってなかった父のさとしは内心とても嬉しかった。
陸斗は康範と紬のそばに駆け寄った。
「どうだった?」
「バッチリ動画に収めてたよ! 紬ちゃんもしっかり見てたよ。」
紬は良いねのポーズをして励ました。陸斗はどこか誇らしげだった。
鼻を指で擦ってみせた。
「良かった。ちょっと待ってな、更衣室で、今着替えてくるから。」
「あ、そっか。紬ちゃん、バスで帰るんだもんね。間に合うかな。」
時計を気にする康範。すると、そこへ陸斗の父のさとしが近づいてくる。
「今日、送っていくぞ。うちの車に乗りな? 紬ちゃんだっけ。ウチまで送ってくから、遠慮しないで。」
紬は申し訳なさそうに
ぺこりと頭を下げた。
康範は
「本当ですか? ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「今、着替えてくるから、帰る準備しててね。」
さとしと陸斗は更衣室の方に行き、着替えに行った。
外は薄暗くなっていた。
紬は陸斗の父の車に乗ると思うと、緊張が止まらなかった。
出入り口付近で、陸斗は父さとしと待ち合わせしていた。
紬と康範も一緒に待ち続けていた。
「陸斗のお父さんに会うの久しぶりだよな。いつだか、車に乗せてもらった気がする。」
「そうだっけか? 随分前のことだから忘れてた。紬はまだ会ってなかったよね? 自己紹介しないといけないよね。」
こくんと頷いた。
緊張して手汗が止まらない。
防具の入った大きいバックの竹刀袋を抱えてやってきた。
すぐに練習できるようにと、袴と道着は着用済みだった。
「なんだ、なんだ。出入り口でみんな揃って…。」
「父さんが来るって言うから、ここで待ってんだんだよ。五十嵐先生は、先に稽古してるから。」
「お久しぶりです。康範です。今日、見学させてもらいます。」
さとしは出入り口の階段に荷物を置いた。
「あー。康範くん。久しぶりだね。元気にしてた? もしかして、剣道始めるの?」
「いや、見てる専門で、今のところは。」
「そっか。ん? 君は? もしかして、陸斗の彼女?」
陸斗は慌てて、紬の横に移動した。
「ああ! その人は、谷口 紬さんです。彼女って言えば彼女かな。」
「へぇ~、君が噂の。母さんに似てるって……え、ちょっと待って、谷口?」
「うん。谷口だよ。この子、ちょっと恥ずかしがりやで、話すの苦手だから、代わりに俺話すから。」
紬は申し訳なさそうにペコペコとお辞儀した。
「ふーん。そうなんだ。陸斗をよろしくね。浮気性なところあるかもしれないけど、お人好しなだけだから!良いところのようで悪いところだけどな。」
正しく図星だった。
紬も康範も何度も納得して頷いた。
「父さん、余計なこと言うなって!」
「悪い、悪い。」
「お、大越か?」
武道館の中から袴を着た五十嵐先生が声をかけた。
「お久しぶりです。五十嵐先生!何年振りですかね。今日は試合させてくださいね。」
ズンズンと中へ入っていくさとし。
五十嵐先生はさとしの肩をバシッと軽くたたく。
嬉しかったようだ。
「試合も良いけど、部員の指導も頼むよ。ちょっと、陸斗! お前も着替えて、やってみな!」
「えー。マジっすか?」
靴を脱いで中に入っていく。
軽くお辞儀した。
「全部、用意しておいたから。ほら、そっちに袴と道着、あと、竹刀とか…。着方はキャプテンの冴島に聞いて!」
「冴島です。大越くん。よろしく。確か、同じクラスだったよね。剣道部にぜひ入ってよ!まずは、体験からだねー。」
「あ、冴島って剣道部だったんだな。ごめん、悪いんだけど見学の2人いるんだけどさ、どこにいて貰えば良い?」
「お邪魔します。」
康範がそろりと中へ入る。
紬はぺこりとお辞儀して、康範の後ろをついていく。
「それなら、こちらに座ってもらっていいですよ。大越くんの彼女は特等席あるからね。目の前で見られるよー。」
冴島はご丁寧に案内してくれた。
みんながご周知の彼女だと言うことに顔が赤くなる。
少々恥ずかしかった。
奥の方では、女子剣道のメンバーがちらちらとコチラを見ていた。
恥ずかしいのが止められなかった。
周りにあまりに見られないように康範が盾になるように横にいてくれた。
「俺、ここにいればいいよね?」
何度も頷いた。心強かった。
「少しでも気許してくれてるのかな。」
独り言のように呟く康範。
遠くの方で、陸斗と父のさとし、五十嵐先生が話をしながら、胴と垂れをつけ、手ぬぐいを頭につけていた。
久しぶりにつけるさとしは、少し戸惑っていた。
初めて手ぬぐいをつける陸斗は混乱しながらもキャプテンの冴島に教わりながら、すぐにやり方を覚えて、防具をつけた。要領が良いらしい。キャプテンの教え方がうまいんだろう。
本当ならば、基礎練習から始めるのだが、今回は特別と言うことで親子対決しながら、実戦となった。
なかなか、見られないことだった。
そもそも、学校で陸斗の父と一緒にいるのは今回が初めてで、ギャラリーも噂を聞きつけて、増えてきた。
防具をつけてしまうと、どっちがどっちが分かりづらい。
かろうじて、分かるのは、身長が数センチ陸斗の方が大きかった。
初めて見る剣道の様子を紬と康範はマジマジと見た。
五十嵐先生と父のさとしは、さすがは経験者で様になっており、真剣そのものだった。
陸斗は初めて防具をつけて竹刀を振るため、右往左往していた。
「先生、早速やりますか?」
「おう。望むところよ。」
五十嵐とさとしは、向かい合い、一礼するとそれぞれ5歩進んで、かかんで、竹刀を持ちかえた。
立ち上がり、竹刀同士を、すり合わせる。
お互いに雄叫びをあげて威嚇し、ダンッと床を足で叩きつけた。
狙うは、面、胴、小手。
どちらが先に1本取れるかが
勝負だった。
先に手を出したのはさとしの方だった。
隙を見て、面を狙い、軽く当たるが、1本とはならず、次は五十嵐の方で、胴を打とうとしたが、うまく当たらず、掠った。
両者一歩も引かずに、しばし睨み合いが続く。
お互いにすり足で竹刀を向け合う。
鍔迫り合いをして、体制を崩したかと思うと、引き胴で、1本勝ちとなった。
勝利したのは、さとしの方だった。
一礼して、試合が終わる。
拍手喝采だった。
久しぶりということで1本勝負となった。
面を外す五十嵐は、汗をたくさんかいていた。そのまま、手ぬぐいで汗を拭いた。
まだ試合をする予定のさとしはそのままの格好でいた。
「大越も、ぬかりないな。しばらく試合してないんだろ?」
「本当、久しぶりでしたよ。体は覚えてるもんですね。先生もまだまだ若いじゃないですか。」
横で冴島の指導を受けていた陸斗が声をかける。
「父さん、やるね~。」
「だろ? 母さんと悠灯にも見せたかったなあ。」
「大丈夫、記録係いるから。」
陸斗は、康範の方を指差す。
スマホでばっちり撮影しててくれていた。こちらに手を振っている。
横では静かに紬も見学していた。
「それは良かった。後で動画送ってな。さてと、次は陸斗。お前もやってみよう!」
「いや、本当、俺、初心者だから。お手柔らかにお願いします。」
たった今、冴島キャプテンにやり方を教わったばかりでほぼぶっつけ本番。陸斗は緊張がほと走る。
「まあまあ、こてんぱんにやられてもいいんだぞ。お試しだから。陸斗は部員じゃないし。」
さとしは、試合の位置に立ち、準備をし、陸斗は真似をして、反対側の位置に立った。
「お願いします。」
一礼して、試合が、始まる。
冴島キャプテンと五十嵐先生が審判となっていた。
両者、竹刀を向かい合う。なかなか、どちらも、攻められず、ぐるぐると半回転する。
先に手を出したのは、恐れ多くも、陸斗の方だった。
負けず嫌いに火がついた。
まだまだ基礎の部分は不器用だったが、どうにか、面の端を攻めに行くが、かすめてしまう。
1本とはならなかった。
また向かい合い、竹刀を触れ合った。
次に攻めたのはさとしの方だった。
体当たりをしたかと思うと、動揺した陸斗に隙が出て、今度は前からの面を、打ちに行った。
見事に1本勝ちとなった。
向かい合い、一礼をして終了となった。
正座をして、陸斗はすぐに面をとった。
手ぬぐいを外すと、思った以上に汗をかいていた。
「父さん、容赦ないよね?!手加減してよ。」
反対側で面を外すさとし。手ぬぐいで汗を拭ってこちらを見る。
「いやいや、本気で行かないと…。ねえ、五十嵐先生。」
「そうだなあ。初心者にしては果敢に挑んでいたけどな。陸斗、お父さんに勝ちたいんだったら、入部するしかないな。」
「えー。マジっすか?」
「初めてやったにしては、スジはいいと思いますよ。お父さんの遺伝子かな。」
「ありがとうございます。でも、まだまだですよ。今まで1回もやらせたことないですし、興味も持たなかったので…。」
まさか剣道するとは思ってなかった父のさとしは内心とても嬉しかった。
陸斗は康範と紬のそばに駆け寄った。
「どうだった?」
「バッチリ動画に収めてたよ! 紬ちゃんもしっかり見てたよ。」
紬は良いねのポーズをして励ました。陸斗はどこか誇らしげだった。
鼻を指で擦ってみせた。
「良かった。ちょっと待ってな、更衣室で、今着替えてくるから。」
「あ、そっか。紬ちゃん、バスで帰るんだもんね。間に合うかな。」
時計を気にする康範。すると、そこへ陸斗の父のさとしが近づいてくる。
「今日、送っていくぞ。うちの車に乗りな? 紬ちゃんだっけ。ウチまで送ってくから、遠慮しないで。」
紬は申し訳なさそうに
ぺこりと頭を下げた。
康範は
「本当ですか? ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「今、着替えてくるから、帰る準備しててね。」
さとしと陸斗は更衣室の方に行き、着替えに行った。
外は薄暗くなっていた。
紬は陸斗の父の車に乗ると思うと、緊張が止まらなかった。
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