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第12話
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真っ白い空間に飛ばされた。
俺は、あたりを見渡した。
本当に白い以外に何もない。
ここは異次元だろうか。
様子がおかしい。
視線が低い気がする。
自分の体を確認する。
手のひらは、ピンクの肉球。
手の甲は、ふさふさの白い毛。
足元は四つん這いになって歩いている。
あれ、これ、人間じゃない。
後ろを振り返ると、
白いものがどこまでも
付いてくる。
ずっとぐるぐると回って
追いかけたが
届かない。
あ。これ、自分の尻尾だ。
そして動くたびに音がする。
首輪の鈴だ。
白い猫になっている。
声を発しようもんなら、
にゃーしか言えない。
ゴロゴロとか、猫撫で声はできる。
いや、技を習得とかしてる場合じゃない。
俺は人間のはずだ。
本物の、俺の体はどこに行ったんだ。
走っても走っても
どこまでも続く
白い床、白い壁、白い天井。
行き止まりにならない。
際限ない。
鈴が鳴り続けてうるさい。
前足で首を引っ掻くが、首輪は取れない。
もう、頭の先まで洗ってやる。
ぺろぺろなめた。
これ、
明日雨降るって迷信じゃなかったかな。
ということは、
俺は、猫に転生したってことなのか。
ん、でも、いつ死んだのか。
死んだことさえも忘れている。
人間には戻れない。
そもそも、病院の屋上から落ちて、
結愛を助けたのも現実だったのだろうか。
あそこで実は死んでいたのか。
それとも、風邪薬の過剰摂取に見せかけて、
ラムネを食べたと思ったら、
本当の風邪薬だったりするのか。
でも、今の技術は進歩していて、
多少の薬の飲み過ぎでは
死にいたることはないって
どっかの専門家が言ってたような気がした。
むしろ、
しょうゆの飲み過ぎとか
塩の食べ過ぎの方が危ないらしいが。
そんなもの飲み過ぎることはないけども。
過去を返してもいつどこで亡くなったか
記憶が定かじゃない。
そう考えた俺は、
頭の中で過去の行動を想像する。
白い空間から、
神社の境内に突然、切り替わった。
結愛と行く予定だったお祭りが
行われていた。
少し離れたところで和太鼓を
打ち鳴らす音が聞こえる。
たくさんの出店が立ち並ぶ。
わたあめ、りんごあめ、やきそば、
たこやき、玉コン、お好み焼き、
チーズハットク、ベルギーワッフル
フランクフルト、射的、お面売り場
ピザ、しゅうまい、
ぐるぐるフライドポテトなど
ここぞとばかりに
子どもたちが喜びそうな
店があった。
テントで出店の他に
キッチンカーで売っている店もあった。
猫のまま、人混みの中をかき分けて、
ジリジリと地面を歩く。
鈴が時々鳴っていた。
浴衣を着たり、甚平を着ているお客さんの
真下を歩くと、見たことある2人組がいた。
結愛とその友達だった。
あれ、これって、俺が一緒に行くって
行けなかった日。
タイプスリップしているのか。
猫の姿のまま、
俺は、近づいた。
結愛が射的をしようとしている。
「何、あの、猫。
邪魔するのね。」
狙っているのは、
レインボー文字のパッケージで
ラムネがたっぷり入った箱だった。
俺は、それは取るんじゃないと
アピールしようと狙う商品の近くを
歩いたが、逆にそれが当ててみろという
合図になったようで、見事的中してしまう。
「結愛、頑張って。」
「うん。」
狙いを定めて、ようやく当たる。
当たった瞬間、同時に光った。
俺は、その光に包まれるように
その場から消えた。
邪魔してはいけなかったのかもしれない。
余計なことをして、神様に叱られたのか。
未来を変えてはいけない。
そんなふうに言われたような気がした。
今までやってきた行動すべてに
白い猫がいた。
それは祖母の猫でもなんでもなくて、
律そのもの。
人間の律と猫の律。
猫に憑依した律。
猫そのものの律と言ってもおかしくない。
元々の人間である律が同じ空間にいる。
ドッペルゲンガーのような感覚だ。
変なラムネ菓子を
薬のオーバードーズしてるかのように
見せかけたら、白い猫に転生したが、
もうひとりの自分が存在する。
訳がわからなくなった。
どっちが本当の自分なのか。
時系列によって、どちらの感覚にも
行き来できるようだ。
頭の中で意識を高めれば、
タイプスリップして、
過去の猫に行ける。
ただし、過去の未来の猫の行き来だけ。
人間の頭の中には戻れてない。
やはり、これは、
肉体は生きていないのかもしれない。
今は過去の自分。
俺は、どの世界のどの時間が
本当の時間なんだろうか。
そもそも、本物ってなんだろう。
頭の中がこんがらがってきた。
とりあえず、
神社の大きな建物の
床下があたたかそうだった。
そっと潜って、眠りについた。
夜が深くなっていたが、
まだ和太鼓が鳴り響いていた。
俺は、あたりを見渡した。
本当に白い以外に何もない。
ここは異次元だろうか。
様子がおかしい。
視線が低い気がする。
自分の体を確認する。
手のひらは、ピンクの肉球。
手の甲は、ふさふさの白い毛。
足元は四つん這いになって歩いている。
あれ、これ、人間じゃない。
後ろを振り返ると、
白いものがどこまでも
付いてくる。
ずっとぐるぐると回って
追いかけたが
届かない。
あ。これ、自分の尻尾だ。
そして動くたびに音がする。
首輪の鈴だ。
白い猫になっている。
声を発しようもんなら、
にゃーしか言えない。
ゴロゴロとか、猫撫で声はできる。
いや、技を習得とかしてる場合じゃない。
俺は人間のはずだ。
本物の、俺の体はどこに行ったんだ。
走っても走っても
どこまでも続く
白い床、白い壁、白い天井。
行き止まりにならない。
際限ない。
鈴が鳴り続けてうるさい。
前足で首を引っ掻くが、首輪は取れない。
もう、頭の先まで洗ってやる。
ぺろぺろなめた。
これ、
明日雨降るって迷信じゃなかったかな。
ということは、
俺は、猫に転生したってことなのか。
ん、でも、いつ死んだのか。
死んだことさえも忘れている。
人間には戻れない。
そもそも、病院の屋上から落ちて、
結愛を助けたのも現実だったのだろうか。
あそこで実は死んでいたのか。
それとも、風邪薬の過剰摂取に見せかけて、
ラムネを食べたと思ったら、
本当の風邪薬だったりするのか。
でも、今の技術は進歩していて、
多少の薬の飲み過ぎでは
死にいたることはないって
どっかの専門家が言ってたような気がした。
むしろ、
しょうゆの飲み過ぎとか
塩の食べ過ぎの方が危ないらしいが。
そんなもの飲み過ぎることはないけども。
過去を返してもいつどこで亡くなったか
記憶が定かじゃない。
そう考えた俺は、
頭の中で過去の行動を想像する。
白い空間から、
神社の境内に突然、切り替わった。
結愛と行く予定だったお祭りが
行われていた。
少し離れたところで和太鼓を
打ち鳴らす音が聞こえる。
たくさんの出店が立ち並ぶ。
わたあめ、りんごあめ、やきそば、
たこやき、玉コン、お好み焼き、
チーズハットク、ベルギーワッフル
フランクフルト、射的、お面売り場
ピザ、しゅうまい、
ぐるぐるフライドポテトなど
ここぞとばかりに
子どもたちが喜びそうな
店があった。
テントで出店の他に
キッチンカーで売っている店もあった。
猫のまま、人混みの中をかき分けて、
ジリジリと地面を歩く。
鈴が時々鳴っていた。
浴衣を着たり、甚平を着ているお客さんの
真下を歩くと、見たことある2人組がいた。
結愛とその友達だった。
あれ、これって、俺が一緒に行くって
行けなかった日。
タイプスリップしているのか。
猫の姿のまま、
俺は、近づいた。
結愛が射的をしようとしている。
「何、あの、猫。
邪魔するのね。」
狙っているのは、
レインボー文字のパッケージで
ラムネがたっぷり入った箱だった。
俺は、それは取るんじゃないと
アピールしようと狙う商品の近くを
歩いたが、逆にそれが当ててみろという
合図になったようで、見事的中してしまう。
「結愛、頑張って。」
「うん。」
狙いを定めて、ようやく当たる。
当たった瞬間、同時に光った。
俺は、その光に包まれるように
その場から消えた。
邪魔してはいけなかったのかもしれない。
余計なことをして、神様に叱られたのか。
未来を変えてはいけない。
そんなふうに言われたような気がした。
今までやってきた行動すべてに
白い猫がいた。
それは祖母の猫でもなんでもなくて、
律そのもの。
人間の律と猫の律。
猫に憑依した律。
猫そのものの律と言ってもおかしくない。
元々の人間である律が同じ空間にいる。
ドッペルゲンガーのような感覚だ。
変なラムネ菓子を
薬のオーバードーズしてるかのように
見せかけたら、白い猫に転生したが、
もうひとりの自分が存在する。
訳がわからなくなった。
どっちが本当の自分なのか。
時系列によって、どちらの感覚にも
行き来できるようだ。
頭の中で意識を高めれば、
タイプスリップして、
過去の猫に行ける。
ただし、過去の未来の猫の行き来だけ。
人間の頭の中には戻れてない。
やはり、これは、
肉体は生きていないのかもしれない。
今は過去の自分。
俺は、どの世界のどの時間が
本当の時間なんだろうか。
そもそも、本物ってなんだろう。
頭の中がこんがらがってきた。
とりあえず、
神社の大きな建物の
床下があたたかそうだった。
そっと潜って、眠りについた。
夜が深くなっていたが、
まだ和太鼓が鳴り響いていた。
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