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第61話
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桜はその日の夜、眠れなかった。
モヤモヤと雪の行動が気になって気になって
仕方なかった。確かに友達と一緒に帰ってしまったことは申し訳なく思ったが、瑞希と一緒に帰るとは思ってなかった。どうして、よりにもよって瑞希と一緒に帰るのか。
1日中気になって、
勉強にも手をつかなかった。
もちろん、一緒に帰るのもできなかった。
ずっとずっと頭の中は,
過去の瑞希と雪との関係が浮かび上がる。
双子は姿、形は似ていて、
行動や性格を比べられる。
それでも雪は桜を選んで、
一緒に付き合ってきた。
たった一瞬の迷いで、なぜか瑞希が出てくる。
確かに知っているし、
少しでも付き合ってるような関係でもあった。
どうしても許せない。
大人げない態度をとってしまう。
朝起きて、
テーブルを向かい合わせに朝食をとっていた。
「ねぇ、桜、しょうゆ取って。」
目玉焼きとサラダ、味噌汁とごはんが朝食だった。桜の近くにあったしょうゆをとってほしいと要望したが、無視された。
「なんで、取ってくれないのよ。」
ブツブツ文句をいいながら、
瑞希は桜の後ろを通り、
しょうゆを取りに行った。
桜は腹が立って、瑞希と話したくなかった。
「……朝から喧嘩?
もうよそでやってほしいな。」
母は不機嫌になる。
朝食がお通夜みたいに沈黙が続いた。
黙々と食べて、何も言わずに終わらせた。
食器を台所に運ぶ。
「ちょっと、避けてよ。」
「……。」
桜はだんまりを続けて、ささっと片付けて、
洗面所で歯磨きをしに行った。
瑞希は不機嫌な桜と一緒に過ごしたくなくて、
自分の部屋で髪を整えに行った。
(これだから双子なんて嫌なんだ。
顔が似てるってデメリットばかり…。)
鏡を見つめて、鏡にうつる自分の顔に触れる。
自己肯定感が下がっていたのかもしれない。
同じ顔でも自信を持って寄り添えるのは瑞希の方なのかもと考えてしまう桜だった。
春だから不安になることが多い。
新学期ということもあり、クラス替えで周りの人間関係も一層される。
緊張の糸が張り詰めているからかもしれない。
「いってきます。」
不安な気持ちを残して、玄関のドアを開けた。
「桜!!忘れ物。ほら、お弁当。」
「あ、ごめん。ありがとう。」
「今日は、桜の好きな唐揚げ入れてたよ。」
「わーい。ありがとう、お母さん。」
「うん。ごめん。冷凍モノだけどね。」
「ううん。大丈夫。それでも嬉しいから。」
「ポテトサラダだけは手作りだから。
それで許して。」
「あ、本当。わかった。
んじゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
いつも母は、双子で喧嘩してる時、
桜の方を優しく扱ってくれた。
姉であるということを安心して
任せられるからだろうか。
瑞希に対する風当たりは強かった。
「瑞希、ほら、ささっと行きなさい!!」
「えー、なんで桜ととの接し方違うの?
差別だよ。」
「何、言ってるの。
あんたの場合は大抵トラブルメーカーなんだから喧嘩の原因は基本瑞希でしょう。」
「え、バレてるの?!」
「ほら、図星だ。桜にすぐ謝りなさいよ!
行ってらっしゃい!」
「ぶぅ。そうやっていつも桜の味方するんだから。いいもんいいもん。」
瑞希はブツブツ文句を言いながら、母からお弁当を受け取って、学校に向かう。
いつも喧嘩の原因を作るのは瑞希の方が割合的に多い。今回の件も、元をたどれば瑞希が原因の一つかもしれない。
「ねえ、桜!!」
ひと足先に駅に向かって歩いていた桜を呼び止めるが、聞こえないふりをする。
瑞希は走って追いかける。
「ねぇってば。
怒ってるのって私のせいなの?」
「……原因のひとつかもしれない。」
「どーせ、雪のことでしょう。
てかさ、私が誘ったけど、乗り気だったのは雪の方だよ。桜が女友達と一緒に帰るから寂しそうかなと思って…。」
「そういうのが余計って言ってるの。
瑞希にはちゃんと彼氏いるんでしょう。
雪に関わるのやめてよ。」
やっとこそ、本音を言い始めた桜。瑞希は目をギラギラさせて、言い返す。
「彼氏?とっくの昔に別れてるって。
別に付き合うとかじゃなくて、
ただ一緒に帰っただけじゃん。心配するところそこじゃないでしょう。
どーせ、桜は雪に相手にされてないから
不安になってるだけじゃん。
私に八つ当たりしないでよね。」
鼻息を荒くして、瑞希は桜を通り越して、駅の改札口に向かった。まもなく、2人が乗る車両が到着するかどうかだった。桜は、本質をつかれたため、呆然とその場を立ち尽くす。
(私、自信がなかっただけなのかな…。)
言われないと気づかないことってあるんだなと
自分の気持ちに向き合えた気がしたが、
足が進まなかった。
乗ろうとしていた車両がアナウンスとともに出発してしまった。
桜はホームのベンチに座って、
次の車両を待つことにした。
軽快な音楽がホームに鳴り続ける。
瑞希は先の車両の座席に乗って
イヤホンを耳につけて1人の時間を
楽しんでいた。
車内は、たくさんの同校の生徒で
いっぱいになっていた。
モヤモヤと雪の行動が気になって気になって
仕方なかった。確かに友達と一緒に帰ってしまったことは申し訳なく思ったが、瑞希と一緒に帰るとは思ってなかった。どうして、よりにもよって瑞希と一緒に帰るのか。
1日中気になって、
勉強にも手をつかなかった。
もちろん、一緒に帰るのもできなかった。
ずっとずっと頭の中は,
過去の瑞希と雪との関係が浮かび上がる。
双子は姿、形は似ていて、
行動や性格を比べられる。
それでも雪は桜を選んで、
一緒に付き合ってきた。
たった一瞬の迷いで、なぜか瑞希が出てくる。
確かに知っているし、
少しでも付き合ってるような関係でもあった。
どうしても許せない。
大人げない態度をとってしまう。
朝起きて、
テーブルを向かい合わせに朝食をとっていた。
「ねぇ、桜、しょうゆ取って。」
目玉焼きとサラダ、味噌汁とごはんが朝食だった。桜の近くにあったしょうゆをとってほしいと要望したが、無視された。
「なんで、取ってくれないのよ。」
ブツブツ文句をいいながら、
瑞希は桜の後ろを通り、
しょうゆを取りに行った。
桜は腹が立って、瑞希と話したくなかった。
「……朝から喧嘩?
もうよそでやってほしいな。」
母は不機嫌になる。
朝食がお通夜みたいに沈黙が続いた。
黙々と食べて、何も言わずに終わらせた。
食器を台所に運ぶ。
「ちょっと、避けてよ。」
「……。」
桜はだんまりを続けて、ささっと片付けて、
洗面所で歯磨きをしに行った。
瑞希は不機嫌な桜と一緒に過ごしたくなくて、
自分の部屋で髪を整えに行った。
(これだから双子なんて嫌なんだ。
顔が似てるってデメリットばかり…。)
鏡を見つめて、鏡にうつる自分の顔に触れる。
自己肯定感が下がっていたのかもしれない。
同じ顔でも自信を持って寄り添えるのは瑞希の方なのかもと考えてしまう桜だった。
春だから不安になることが多い。
新学期ということもあり、クラス替えで周りの人間関係も一層される。
緊張の糸が張り詰めているからかもしれない。
「いってきます。」
不安な気持ちを残して、玄関のドアを開けた。
「桜!!忘れ物。ほら、お弁当。」
「あ、ごめん。ありがとう。」
「今日は、桜の好きな唐揚げ入れてたよ。」
「わーい。ありがとう、お母さん。」
「うん。ごめん。冷凍モノだけどね。」
「ううん。大丈夫。それでも嬉しいから。」
「ポテトサラダだけは手作りだから。
それで許して。」
「あ、本当。わかった。
んじゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
いつも母は、双子で喧嘩してる時、
桜の方を優しく扱ってくれた。
姉であるということを安心して
任せられるからだろうか。
瑞希に対する風当たりは強かった。
「瑞希、ほら、ささっと行きなさい!!」
「えー、なんで桜ととの接し方違うの?
差別だよ。」
「何、言ってるの。
あんたの場合は大抵トラブルメーカーなんだから喧嘩の原因は基本瑞希でしょう。」
「え、バレてるの?!」
「ほら、図星だ。桜にすぐ謝りなさいよ!
行ってらっしゃい!」
「ぶぅ。そうやっていつも桜の味方するんだから。いいもんいいもん。」
瑞希はブツブツ文句を言いながら、母からお弁当を受け取って、学校に向かう。
いつも喧嘩の原因を作るのは瑞希の方が割合的に多い。今回の件も、元をたどれば瑞希が原因の一つかもしれない。
「ねえ、桜!!」
ひと足先に駅に向かって歩いていた桜を呼び止めるが、聞こえないふりをする。
瑞希は走って追いかける。
「ねぇってば。
怒ってるのって私のせいなの?」
「……原因のひとつかもしれない。」
「どーせ、雪のことでしょう。
てかさ、私が誘ったけど、乗り気だったのは雪の方だよ。桜が女友達と一緒に帰るから寂しそうかなと思って…。」
「そういうのが余計って言ってるの。
瑞希にはちゃんと彼氏いるんでしょう。
雪に関わるのやめてよ。」
やっとこそ、本音を言い始めた桜。瑞希は目をギラギラさせて、言い返す。
「彼氏?とっくの昔に別れてるって。
別に付き合うとかじゃなくて、
ただ一緒に帰っただけじゃん。心配するところそこじゃないでしょう。
どーせ、桜は雪に相手にされてないから
不安になってるだけじゃん。
私に八つ当たりしないでよね。」
鼻息を荒くして、瑞希は桜を通り越して、駅の改札口に向かった。まもなく、2人が乗る車両が到着するかどうかだった。桜は、本質をつかれたため、呆然とその場を立ち尽くす。
(私、自信がなかっただけなのかな…。)
言われないと気づかないことってあるんだなと
自分の気持ちに向き合えた気がしたが、
足が進まなかった。
乗ろうとしていた車両がアナウンスとともに出発してしまった。
桜はホームのベンチに座って、
次の車両を待つことにした。
軽快な音楽がホームに鳴り続ける。
瑞希は先の車両の座席に乗って
イヤホンを耳につけて1人の時間を
楽しんでいた。
車内は、たくさんの同校の生徒で
いっぱいになっていた。
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