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第31話
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どんなに筋トレで鍛えていても
変わらない気持ちはあるんだ。
雪は、雄哉に脅されて、
中学の過去をフラッシュバックする。
壁ドンされても平気だったが。
壮絶ないじめにあった記憶が、
時々脳裏に見え隠れする。
そのときは平気でも思い出すと
嫌な気持ちになる。
いつの間にか、桜と交際していたのに、
無意識に避けるようになっていた。
雪は、桜を拒絶し始めた。
雄哉から受けたキックやパンチを、
思い出すだけで吐き気がする。
怖くなった。
こんな自分じゃ桜を守れない。
身を引いた方がいいんだと思うように
なった。
一緒にいても、心ここにあらずの
時間が多くなった。
「雪? 今日、一緒帰れる?」
桜は、昼休みにお弁当を食べる雪に声をかけたが、上の空でこちらを見ていない。
顔の前に手を振ってみた。
「おーい。」
「雪は、何をしたいんだろうな。」
亮輔が心配そうに近寄って声をかける。
桜も心なしか元気がない。
自分のせいかと責めてしまう。
「ごめんね、今日は誘うのやめておくね。」
寂しそうな顔をして、席に戻っていく。
隣の席に座っていた雄哉は嬉しそうに
桜に声をかけて談笑していた。
自分はあいつを喜ばせるために犠牲になっているのだろうか。
徳を積んでるな。
「雪、購買部いかないか?」
「今、そんな気分じゃない。」
「そっか、本当に最近、付き合い悪いなぁ。
気分転換してるか?」
「そういう気分にもなれない。
ごめん、亮輔。
1人にして。」
何だか、落ち込んでる。
誰か身内で死んだとか、飼ってたペットが
死んだとかじゃないのに、
全然心が満足していない。
本当は喉から手が出るくらいに
桜に後ろから抱きしめたいし、
一緒の時間、たくさん過ごしたい。
なんでその行動ができないんだろう。
腕の中にうずくまり、
持ってきたお弁当を広げることもなく、
眠りについた。
寝不足だったのかもしれない。
夢を見ている自分は居心地がいいものだ。
****
「雪、ごめんね。
私、菊地くんと付き合うことに
したから。」
「え、嘘だろ。
なんでよりによって、菊地なんだよ。
最大の敵だぞ。そいつ。」
「えー敵ってなに。
変なの。
だから、別れよう。
今までありがとうね。」
昇降口にあるラウンジで、
雄哉に着いて歩く桜がいた。
雪は、桜を追いかけた。
眩しく光る窓の向こうに行ってしまう。
「行かないで。
俺を置いて行くなよ。」
そう言っても向こうに行ってしまう2人。
***
「雪、雪!」
自分を呼ぶ声がする。
夢なのか。
顔をあげて、周りを見た。
「あ、ごめん。寝てたよ。」
桜に肩を揺さぶって起こされた。
「もう、お昼休み終わりだよ。
そろそろ起きて。」
夢だったのだろうか。
別れようって、結局は雄哉に負けたのか。
現実と夢の違いがわからない。
「うん。なぁ、桜。
俺に何か話していた?」
「放課後、一緒に帰れるか
私、聞いたけど、元気なさそうだから
やめようかなって話したよ?」
「それだけ?」
「うん。そう。どうしたの?
寝ぼけてる?
ご飯全然食べてないじゃない。
お腹空いちゃうよ?」
桜は近くの席に雪の顔をのぞいた。
心配してくれた。
「やっぱり、一緒に帰りたい。」
「あ、そう?
いいなら、いいけど。
ほら、あと5分しかないけど
ご飯食べな?」
桜は、雪のお弁当を丁寧に広げた。
箸ケースから箸を取り出して、
卵焼きをつまんで、雪の口に運ぶ。
「おいしい。」
「あのさ!!!
そういうの、よそでやってくれない?」
亮輔がクラスメイトの代わりに叫ぶ。
イチャイチャラブラブは
見せるなということだ。
「桜、ごめん。
自分で食べるから。」
「うん。」
何だか急に恥ずかしくなった2人。
顔を真っ赤にして、何も言えなくなった。
急いで、お弁当を口の中にかっこんだ。
まもなく、チャイムが鳴り響いた。
別れようという言葉が夢で良かったと
心の底から喜んだ。
涙が出そうになった。
変わらない気持ちはあるんだ。
雪は、雄哉に脅されて、
中学の過去をフラッシュバックする。
壁ドンされても平気だったが。
壮絶ないじめにあった記憶が、
時々脳裏に見え隠れする。
そのときは平気でも思い出すと
嫌な気持ちになる。
いつの間にか、桜と交際していたのに、
無意識に避けるようになっていた。
雪は、桜を拒絶し始めた。
雄哉から受けたキックやパンチを、
思い出すだけで吐き気がする。
怖くなった。
こんな自分じゃ桜を守れない。
身を引いた方がいいんだと思うように
なった。
一緒にいても、心ここにあらずの
時間が多くなった。
「雪? 今日、一緒帰れる?」
桜は、昼休みにお弁当を食べる雪に声をかけたが、上の空でこちらを見ていない。
顔の前に手を振ってみた。
「おーい。」
「雪は、何をしたいんだろうな。」
亮輔が心配そうに近寄って声をかける。
桜も心なしか元気がない。
自分のせいかと責めてしまう。
「ごめんね、今日は誘うのやめておくね。」
寂しそうな顔をして、席に戻っていく。
隣の席に座っていた雄哉は嬉しそうに
桜に声をかけて談笑していた。
自分はあいつを喜ばせるために犠牲になっているのだろうか。
徳を積んでるな。
「雪、購買部いかないか?」
「今、そんな気分じゃない。」
「そっか、本当に最近、付き合い悪いなぁ。
気分転換してるか?」
「そういう気分にもなれない。
ごめん、亮輔。
1人にして。」
何だか、落ち込んでる。
誰か身内で死んだとか、飼ってたペットが
死んだとかじゃないのに、
全然心が満足していない。
本当は喉から手が出るくらいに
桜に後ろから抱きしめたいし、
一緒の時間、たくさん過ごしたい。
なんでその行動ができないんだろう。
腕の中にうずくまり、
持ってきたお弁当を広げることもなく、
眠りについた。
寝不足だったのかもしれない。
夢を見ている自分は居心地がいいものだ。
****
「雪、ごめんね。
私、菊地くんと付き合うことに
したから。」
「え、嘘だろ。
なんでよりによって、菊地なんだよ。
最大の敵だぞ。そいつ。」
「えー敵ってなに。
変なの。
だから、別れよう。
今までありがとうね。」
昇降口にあるラウンジで、
雄哉に着いて歩く桜がいた。
雪は、桜を追いかけた。
眩しく光る窓の向こうに行ってしまう。
「行かないで。
俺を置いて行くなよ。」
そう言っても向こうに行ってしまう2人。
***
「雪、雪!」
自分を呼ぶ声がする。
夢なのか。
顔をあげて、周りを見た。
「あ、ごめん。寝てたよ。」
桜に肩を揺さぶって起こされた。
「もう、お昼休み終わりだよ。
そろそろ起きて。」
夢だったのだろうか。
別れようって、結局は雄哉に負けたのか。
現実と夢の違いがわからない。
「うん。なぁ、桜。
俺に何か話していた?」
「放課後、一緒に帰れるか
私、聞いたけど、元気なさそうだから
やめようかなって話したよ?」
「それだけ?」
「うん。そう。どうしたの?
寝ぼけてる?
ご飯全然食べてないじゃない。
お腹空いちゃうよ?」
桜は近くの席に雪の顔をのぞいた。
心配してくれた。
「やっぱり、一緒に帰りたい。」
「あ、そう?
いいなら、いいけど。
ほら、あと5分しかないけど
ご飯食べな?」
桜は、雪のお弁当を丁寧に広げた。
箸ケースから箸を取り出して、
卵焼きをつまんで、雪の口に運ぶ。
「おいしい。」
「あのさ!!!
そういうの、よそでやってくれない?」
亮輔がクラスメイトの代わりに叫ぶ。
イチャイチャラブラブは
見せるなということだ。
「桜、ごめん。
自分で食べるから。」
「うん。」
何だか急に恥ずかしくなった2人。
顔を真っ赤にして、何も言えなくなった。
急いで、お弁当を口の中にかっこんだ。
まもなく、チャイムが鳴り響いた。
別れようという言葉が夢で良かったと
心の底から喜んだ。
涙が出そうになった。
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