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第27話
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ものすごくオシャレに気を使った服で
桜は、全身鏡を確かめた。
これでよしとパタンとファンデのふたを
閉めた。
「行って来ます。」
スニーカーの靴紐をチェックして、
玄関から声をかけた。
母は大きく返事をした。
「行ってらっしゃい。」
瑞希は、知らないふりして、
テレビのリモコンをぽちぽちと
あれでもないこれでもないと
チャンネルを変えていた。
リビングの掃除をし始める母。
「瑞希は?
今日、どこにも行かないの?」
「え?」
「どこにも行かないなら、母さんと
一緒に買い物行かない?」
「どこの?」
「近所のスーパー。
今日は、冷凍エビが
半額セールの日なのよ。」
「行かなーい。
私だって、暇じゃないよぉ。」
「テレビずっと見てて?」
「これは、出かけるまでの時間潰しだよ。」
「パジャマで?」
「まだ行かないもん。」
「はいはい。
んじゃ、母さん、掃除したら、
買い物行ってくるね。
出かけるなら、
玄関の戸締り忘れないで。」
「はいはい、わかりました。」
不機嫌悪そうに瑞希は、ソファの上
両膝を抱っこして、
テレビにかじりついて見た。
別に見たくもないバラエティ番組。
頭に全然入ってこない。
東大卒の頭脳派タレントが
ご当地グルメの紹介。
それでも、何かつけてないと
落ち着かない。
瑞希は、スマホ画面をのぞいた。
誰からも来ないラインに
コンビニスイーツの情報だけが次々と
流れてきた。
***
「お待たせ。
ごめんね、時間かかっちゃった。」
駅前の改札口のそばで、
雪は、音楽を聴きながら待っていた。
声をかけたのにこちらに気づいてない。
顔の前で手を振って、合図した。
「あ、ごめん。気づかなった。
大丈夫だった?
午前中、部活だったんでしょう。」
「……サボっちゃった。
寝坊して…。」
舌を出して、笑った。
「…なんだ、サボってここ来ちゃう
勇気すごいね。バレない?」
「いいの。出かけたかったから。
リフレッシュ大事でしょう。」
雪は、耳につけていたイヤホンをバックに
閉まった。
左手を手のひらを上にして、
グーパーと動かした。
「お邪魔します!」
桜は、雪の左手に右手を添えた。
指をそれぞれ絡めて、手を繋いだ。
指先から伝わる温度に微かに感じる鼓動。
ドキドキが止まらない。
「ごめ…やばい。
行けないかも。」
「え、なんで?」
「心臓持たない。」
「それは病気じゃない。」
雪は、はにかんで、改札口方向に
桜を連れて行った。
桜は、恥ずかしくて、着ていた長袖の裾で
口元を隠した。
笑みが止まらない。
次から次へと乗客の数に
2人は、埋もれそうだった。
発車ベルが鳴る。
ギリギリの発車時間に、
帽子を深くかぶって
サングラスとマスクで
素性を隠した瑞希が、走って
雪と桜が乗る車両に静かに乗った。
混み合う車両の中、後ろの方に
雪と桜は出入り口に体を向かいあわせに
立ち、その反対側奥の奥に
ちょうど空いていた席に隠れて
座った瑞希がいた。
タタタンタタタンと電車が静かに進んだ。
遠くから帽子を目深にかぶりながら、
ワイヤレスイヤホンを共有して
笑っている桜と雪の2人を見て
かなり嫉妬した。
爪で自分の手の甲をぼりぼりとかいて、
爪を噛んだ。
今は、何もできない自分に悔しがった。
車窓からは高いビルがいくつも
立ち並んでいるのが見える。
自然の景色は、もう少し先だった。
桜は、全身鏡を確かめた。
これでよしとパタンとファンデのふたを
閉めた。
「行って来ます。」
スニーカーの靴紐をチェックして、
玄関から声をかけた。
母は大きく返事をした。
「行ってらっしゃい。」
瑞希は、知らないふりして、
テレビのリモコンをぽちぽちと
あれでもないこれでもないと
チャンネルを変えていた。
リビングの掃除をし始める母。
「瑞希は?
今日、どこにも行かないの?」
「え?」
「どこにも行かないなら、母さんと
一緒に買い物行かない?」
「どこの?」
「近所のスーパー。
今日は、冷凍エビが
半額セールの日なのよ。」
「行かなーい。
私だって、暇じゃないよぉ。」
「テレビずっと見てて?」
「これは、出かけるまでの時間潰しだよ。」
「パジャマで?」
「まだ行かないもん。」
「はいはい。
んじゃ、母さん、掃除したら、
買い物行ってくるね。
出かけるなら、
玄関の戸締り忘れないで。」
「はいはい、わかりました。」
不機嫌悪そうに瑞希は、ソファの上
両膝を抱っこして、
テレビにかじりついて見た。
別に見たくもないバラエティ番組。
頭に全然入ってこない。
東大卒の頭脳派タレントが
ご当地グルメの紹介。
それでも、何かつけてないと
落ち着かない。
瑞希は、スマホ画面をのぞいた。
誰からも来ないラインに
コンビニスイーツの情報だけが次々と
流れてきた。
***
「お待たせ。
ごめんね、時間かかっちゃった。」
駅前の改札口のそばで、
雪は、音楽を聴きながら待っていた。
声をかけたのにこちらに気づいてない。
顔の前で手を振って、合図した。
「あ、ごめん。気づかなった。
大丈夫だった?
午前中、部活だったんでしょう。」
「……サボっちゃった。
寝坊して…。」
舌を出して、笑った。
「…なんだ、サボってここ来ちゃう
勇気すごいね。バレない?」
「いいの。出かけたかったから。
リフレッシュ大事でしょう。」
雪は、耳につけていたイヤホンをバックに
閉まった。
左手を手のひらを上にして、
グーパーと動かした。
「お邪魔します!」
桜は、雪の左手に右手を添えた。
指をそれぞれ絡めて、手を繋いだ。
指先から伝わる温度に微かに感じる鼓動。
ドキドキが止まらない。
「ごめ…やばい。
行けないかも。」
「え、なんで?」
「心臓持たない。」
「それは病気じゃない。」
雪は、はにかんで、改札口方向に
桜を連れて行った。
桜は、恥ずかしくて、着ていた長袖の裾で
口元を隠した。
笑みが止まらない。
次から次へと乗客の数に
2人は、埋もれそうだった。
発車ベルが鳴る。
ギリギリの発車時間に、
帽子を深くかぶって
サングラスとマスクで
素性を隠した瑞希が、走って
雪と桜が乗る車両に静かに乗った。
混み合う車両の中、後ろの方に
雪と桜は出入り口に体を向かいあわせに
立ち、その反対側奥の奥に
ちょうど空いていた席に隠れて
座った瑞希がいた。
タタタンタタタンと電車が静かに進んだ。
遠くから帽子を目深にかぶりながら、
ワイヤレスイヤホンを共有して
笑っている桜と雪の2人を見て
かなり嫉妬した。
爪で自分の手の甲をぼりぼりとかいて、
爪を噛んだ。
今は、何もできない自分に悔しがった。
車窓からは高いビルがいくつも
立ち並んでいるのが見える。
自然の景色は、もう少し先だった。
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