16 / 73
第16話
しおりを挟む
「漆島くん、おはよう。」
雪は、昇降口で靴を交換して屈んでいた。
不意に後ろから声をかけられた。
誰だと思って、顔を見る。
一瞬、桜だと思って笑顔になったが、
様子がおかしい。
何かが違う。
笑顔が瞬時に崩れた。
「あ、おはよう。」
「え、今、誰だと思ったの?」
「……いや、別に。」
瑞希は茶化すように言った。
雪はバレてはいけないと焦った。
「わかりやすいねー。」
ニコニコと自分の上靴をロッカーから
取って、靴を交換した。
「瑞希ー、足早い。
なんで、早く行くの?!」
瑞希を追いかけてきた桜が
走って昇降口に入る。
廊下でじっと桜が靴箱に近づくのが
見えた。
雪の顔を一瞬見て、固まった桜。
「おはよう、伊藤くん。」
グルッと体を振り返って、
靴箱にいた亮輔に声をかけた。
突然のことでびっくりした亮輔は
慌てて挨拶する。」
「あ、綾瀬、おはよう。
靴箱、そこだろ?
後ろわざわざ、
振り返らなくてもいいだろ。」
「あー、だって、ご近所さんに
挨拶は大事でしょう。」
「そ、そうか?」
納得させようとする桜。
意識されてるのか、
避けられてる気がして、
変に緊張する雪は、
先に進もうとする。
「あ、おい、雪。
待てよ、置いてくなって。」
亮輔は手を伸ばして、
雪の近くに駆け寄った。
双子姉妹も合流していた。
少し混み合う昇降口は
じょじょに騒がしくなっていた。
「行くぞ。」
亮輔に声をかけた。
少し寂しい表情をさせて、
背中にバック、
ポケットに手をつっこんで
先に行く。
「何、すねた顔してんだよ。」
「べ、別に!
そんなんじゃねぇよ。」
遠くで、雪が変な顔をしているのを
瑞希と話しながら横目で確認する桜。
近いようで遠い距離にいる2人だった。
「桜、休み時間に
そっちのクラス行っていい?」
「え、なんで?」
「なんでって別に深い意味はないよぉ。」
少しご機嫌の瑞希は、鼻歌を歌っていた。
なんとなく、状況を読めた桜は、
またこの調子になるのかと
苦虫をつぶした顔をした。
「瑞希、こっちのクラスじゃなくて、
私がそっちのクラスに行くよ。」
「え、なんで?」
「いいじゃん。
私に用事あるでしょう。」
「え、まぁ、そうだけど。
やだな。」
気持ちを読み取った桜は先手を打った。
少しでも瑞希に雪の顔は見せない。
バトルになるのは目に見えていたからだ。
「んじゃ、そういうことで。」
手をパタパタと振って、
教室に入る桜。
その横からそっと桜のクラスを覗いた。
雪は、まだ席に着いていなかった。
桜はガッツポーズを小さく作っていた。
「なーんだ、つまんない。」
そう言って、瑞希は、隣のクラスの
教室に入って行った。
ふっとため息をつくと
前の出入り口から雪が教室に
入ってくるのが見えた。
「あ、お、おはよう。」
桜は、さっきできなかった挨拶をした。
自分に声をかけられたとは思わずに
スルーした。
「うわ、漆島、最悪だな。
無視かよ。」
桜の横に座る菊地が騒いだ。
「え、あ、ごめん。
俺にだったの?
おはよう。」
「…うん。大丈夫。」
少し困った表情をさせた。
菊地は雪のせいだとはやしたてた。
「あ、無視したわけじゃないから。
本当、マジで。
俺に声かけられたとは
思わなかっただけだから。
ごめん。」
「ううん。大丈夫だよ。
私の方こそ、ごめんね。」
変な空気になり、そのまま雪は、
席に移動した。
瑞希は、申し訳ないことしたなっと
ため息をついた。
「綾瀬、大丈夫?」
菊地が声をかける。
「ああ、ごめん。
うん、大丈夫だよ。」
「何かあったら、俺に言って。
あいつ、俺と同じ中学だから。
話つけられるよ?」
「あー、そうなんだ。
わかった、何かあったら
その時はお願いするね。」
話しかけられた言葉が
頭に入ってこなかったが、適当に答えた。
「おう、任せておけって。」
変にやる気を出す菊地。
桜はよくわからずに答えていたため、
なぜ、そんな様子なのか
疑問を抱いた。
近くの席に座っていた亮輔はしっかり
その様子を見ていて、
雪、大丈夫かと心配した。
また菊地との絡みがあったら、
精神的にきついだろうと予測する。
しっかりと様子を見ようと決心した。
授業が終わり、合間の休み時間。
瑞希と約束していたため、
席を立ち、隣のクラスに移動する桜。
トイレに立ち、
何となく、ぼーっと
廊下の窓を眺めていると、
隣のクラスの金城が声をかけてきた。
「漆島くん、
そろそろ決断してくれたかな。」
「決断も何も俺は初めから決めてるんだけど、
金城が聞きたくないっていうだろ。」
「わーわー。絶対聞きたくない。」
両耳を塞いで、騒いでいる。
瑞希と話を終えた桜が、
元の教室に戻ると
雪と金城が仲睦まじいそうに
会話しているのを見て、
付き合ってる人くらいいるんだろうと
半ばモヤモヤした。
嫉妬していた。
ハッと、雪は桜が教室に入ってくのを
見かけた。
変な勘違いされると嫌だと思い、
慌てて、金城に言う。
「というか、
もう、俺に話しかけてこないで。」
急に言葉がキツくなった。
金城はその言葉に驚いた。
「ひど。急に突き放すの?」
「はっきり言わせてくれないからだろ?」
「……。」
わかっていたことだけどと思いながら、
金城は、表情を暗くさせる。
誰でもいいわけじゃない。
切り捨てる人もいる。
好きな人を選ぶ自由はあるはずだと
雪は考えた。
「あらー、雪ちゃん。
何してるの?」
過去のトラブル女子、石川亜香里だ。
「は?何もしてないよ。」
「どうした?深月。」
同じクラスで仲の良い亜香里と金城深月。
「えー、今、漆島くんに
酷いこと言われてた。」
「なになに、ちょっと、
私の深月いじめないでくれない?」
「別に、いじめてねぇし。」
ここは強気で行かないと
またいじめに遭いたくはない。
「亜香里、漆島くん責めないで。
私が悪いんだから。」
「えー、だって、
酷いこと言われたんでしょう。
高校デビューしたからって
いじめていいとはならないからね、
雪ちゃん。」
ジリジリと寄る亜香里に恐怖を感じる。
「おい、どうした。
雪、もう、次の授業始まるぞ。」
亮輔が教室から廊下に出て、
雪の近くに駆け寄った。
「あ、あらあら、助っ人登場だわ。」
「亜香里、私たちも教室戻ろう?」
「…もっといじれると思ったんだけど。」
そう言いながら、2人は隣のクラスに
戻っていく。
雪は、なんでまた嫌な思いしなくちゃ
いけないんだとにぎりこぶしを作った。
金城にきちんと話さない自分が
良くないんだと責めた。
険しい表情の雪を見て、
心配そうに桜は見つめていた。
教壇に立った、
日本史の小岩先生が出席簿を開いた。
ちょうどその時、チャイムが鳴った。
雪は、昇降口で靴を交換して屈んでいた。
不意に後ろから声をかけられた。
誰だと思って、顔を見る。
一瞬、桜だと思って笑顔になったが、
様子がおかしい。
何かが違う。
笑顔が瞬時に崩れた。
「あ、おはよう。」
「え、今、誰だと思ったの?」
「……いや、別に。」
瑞希は茶化すように言った。
雪はバレてはいけないと焦った。
「わかりやすいねー。」
ニコニコと自分の上靴をロッカーから
取って、靴を交換した。
「瑞希ー、足早い。
なんで、早く行くの?!」
瑞希を追いかけてきた桜が
走って昇降口に入る。
廊下でじっと桜が靴箱に近づくのが
見えた。
雪の顔を一瞬見て、固まった桜。
「おはよう、伊藤くん。」
グルッと体を振り返って、
靴箱にいた亮輔に声をかけた。
突然のことでびっくりした亮輔は
慌てて挨拶する。」
「あ、綾瀬、おはよう。
靴箱、そこだろ?
後ろわざわざ、
振り返らなくてもいいだろ。」
「あー、だって、ご近所さんに
挨拶は大事でしょう。」
「そ、そうか?」
納得させようとする桜。
意識されてるのか、
避けられてる気がして、
変に緊張する雪は、
先に進もうとする。
「あ、おい、雪。
待てよ、置いてくなって。」
亮輔は手を伸ばして、
雪の近くに駆け寄った。
双子姉妹も合流していた。
少し混み合う昇降口は
じょじょに騒がしくなっていた。
「行くぞ。」
亮輔に声をかけた。
少し寂しい表情をさせて、
背中にバック、
ポケットに手をつっこんで
先に行く。
「何、すねた顔してんだよ。」
「べ、別に!
そんなんじゃねぇよ。」
遠くで、雪が変な顔をしているのを
瑞希と話しながら横目で確認する桜。
近いようで遠い距離にいる2人だった。
「桜、休み時間に
そっちのクラス行っていい?」
「え、なんで?」
「なんでって別に深い意味はないよぉ。」
少しご機嫌の瑞希は、鼻歌を歌っていた。
なんとなく、状況を読めた桜は、
またこの調子になるのかと
苦虫をつぶした顔をした。
「瑞希、こっちのクラスじゃなくて、
私がそっちのクラスに行くよ。」
「え、なんで?」
「いいじゃん。
私に用事あるでしょう。」
「え、まぁ、そうだけど。
やだな。」
気持ちを読み取った桜は先手を打った。
少しでも瑞希に雪の顔は見せない。
バトルになるのは目に見えていたからだ。
「んじゃ、そういうことで。」
手をパタパタと振って、
教室に入る桜。
その横からそっと桜のクラスを覗いた。
雪は、まだ席に着いていなかった。
桜はガッツポーズを小さく作っていた。
「なーんだ、つまんない。」
そう言って、瑞希は、隣のクラスの
教室に入って行った。
ふっとため息をつくと
前の出入り口から雪が教室に
入ってくるのが見えた。
「あ、お、おはよう。」
桜は、さっきできなかった挨拶をした。
自分に声をかけられたとは思わずに
スルーした。
「うわ、漆島、最悪だな。
無視かよ。」
桜の横に座る菊地が騒いだ。
「え、あ、ごめん。
俺にだったの?
おはよう。」
「…うん。大丈夫。」
少し困った表情をさせた。
菊地は雪のせいだとはやしたてた。
「あ、無視したわけじゃないから。
本当、マジで。
俺に声かけられたとは
思わなかっただけだから。
ごめん。」
「ううん。大丈夫だよ。
私の方こそ、ごめんね。」
変な空気になり、そのまま雪は、
席に移動した。
瑞希は、申し訳ないことしたなっと
ため息をついた。
「綾瀬、大丈夫?」
菊地が声をかける。
「ああ、ごめん。
うん、大丈夫だよ。」
「何かあったら、俺に言って。
あいつ、俺と同じ中学だから。
話つけられるよ?」
「あー、そうなんだ。
わかった、何かあったら
その時はお願いするね。」
話しかけられた言葉が
頭に入ってこなかったが、適当に答えた。
「おう、任せておけって。」
変にやる気を出す菊地。
桜はよくわからずに答えていたため、
なぜ、そんな様子なのか
疑問を抱いた。
近くの席に座っていた亮輔はしっかり
その様子を見ていて、
雪、大丈夫かと心配した。
また菊地との絡みがあったら、
精神的にきついだろうと予測する。
しっかりと様子を見ようと決心した。
授業が終わり、合間の休み時間。
瑞希と約束していたため、
席を立ち、隣のクラスに移動する桜。
トイレに立ち、
何となく、ぼーっと
廊下の窓を眺めていると、
隣のクラスの金城が声をかけてきた。
「漆島くん、
そろそろ決断してくれたかな。」
「決断も何も俺は初めから決めてるんだけど、
金城が聞きたくないっていうだろ。」
「わーわー。絶対聞きたくない。」
両耳を塞いで、騒いでいる。
瑞希と話を終えた桜が、
元の教室に戻ると
雪と金城が仲睦まじいそうに
会話しているのを見て、
付き合ってる人くらいいるんだろうと
半ばモヤモヤした。
嫉妬していた。
ハッと、雪は桜が教室に入ってくのを
見かけた。
変な勘違いされると嫌だと思い、
慌てて、金城に言う。
「というか、
もう、俺に話しかけてこないで。」
急に言葉がキツくなった。
金城はその言葉に驚いた。
「ひど。急に突き放すの?」
「はっきり言わせてくれないからだろ?」
「……。」
わかっていたことだけどと思いながら、
金城は、表情を暗くさせる。
誰でもいいわけじゃない。
切り捨てる人もいる。
好きな人を選ぶ自由はあるはずだと
雪は考えた。
「あらー、雪ちゃん。
何してるの?」
過去のトラブル女子、石川亜香里だ。
「は?何もしてないよ。」
「どうした?深月。」
同じクラスで仲の良い亜香里と金城深月。
「えー、今、漆島くんに
酷いこと言われてた。」
「なになに、ちょっと、
私の深月いじめないでくれない?」
「別に、いじめてねぇし。」
ここは強気で行かないと
またいじめに遭いたくはない。
「亜香里、漆島くん責めないで。
私が悪いんだから。」
「えー、だって、
酷いこと言われたんでしょう。
高校デビューしたからって
いじめていいとはならないからね、
雪ちゃん。」
ジリジリと寄る亜香里に恐怖を感じる。
「おい、どうした。
雪、もう、次の授業始まるぞ。」
亮輔が教室から廊下に出て、
雪の近くに駆け寄った。
「あ、あらあら、助っ人登場だわ。」
「亜香里、私たちも教室戻ろう?」
「…もっといじれると思ったんだけど。」
そう言いながら、2人は隣のクラスに
戻っていく。
雪は、なんでまた嫌な思いしなくちゃ
いけないんだとにぎりこぶしを作った。
金城にきちんと話さない自分が
良くないんだと責めた。
険しい表情の雪を見て、
心配そうに桜は見つめていた。
教壇に立った、
日本史の小岩先生が出席簿を開いた。
ちょうどその時、チャイムが鳴った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる