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第2話
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「雪~!」
男子生徒が、昇降口で
バックを高い位置で持って
後ろから頭にバンっとぶつけた。
「いってー。何すんだよ。」
「悪い悪い。
眠気覚ましにと思ったけど
想像以上に力が強かった。」
「やったなぁー!
そういうやつにはこうしてやるぞ!」
雪はこれでもかと
バックで頭を叩いた亮輔の
両脇をくすぐった。
「やめ、やめ。
俺、マジで弱いから。」
笑いながら抵抗する。
「なんかいうことあるよね?
亮輔くん!」
雪はまだまだくすぐる。
「はい、はい!|
申し訳ありませんでした。
マジでやめて。」
「分かればよろしい。」
「お前は母ちゃんか?」
「え?んなわけじゃないじゃん。
漆島雪《うるしま ゆき》って
名前があるってーの。
何が悲しくてお前の母ちゃんに
ならなくちゃいけないんだよ。
そもそも男なんだからお父さんだろ。」
「いや、そういうことじゃないんだけどさ。
言い方が母ちゃんそっくりって話だよ。」
亮輔は頭をぼりぼりとかいた。
がやがやと賑わう昇降口に
静かに双子の姉妹は入っていく。
「なあ、あの2人。
そっくりだよな。
双子だって話だよ。」
「へぇ、そうなんだ。
顔がそっくりだと
名前間違えそうだよな。
一卵性双生児かな?」
ボソボソと亮輔と雪は話していると
横をすーっと2人は通り過ぎていく。
シトラスの香りが鼻に触った。
シャンプーの香りだろうか。
セミロングのストレートな髪が
靡いている。
雪は初めて会った感じがしなかった。
バチッと目が合って
ドキッとする。
姉の桜はにこと笑って
ぺこりとお辞儀した。
瑞希は、桜の肩をたたいて
先に誘導している。
今日は入学式で
クラス発表の日。
新入生同士ののご対面だ。
「何、ぼーっとしてんだよ、雪。
俺らがクラス一緒か死活問題だろ?」
「いやいや、亮輔と
中学3年間ずっと一緒だから
そろそろ腐れ縁も離れてみたいって
思いはあるよ?」
「あ、そういうこと言っちゃう?
クラス別になっても
忘れもの貸してやんねえからな。」
「え。それは困るな。
んじゃ、先のは無しな。」
「もう、遅いわ。」
亮輔はご機嫌斜めになった。
雪はクラス発表のリストに目をやった。
「忘れものはもう諦めるしかないな。」
雪はつぶやいた。
「え、また同じクラスじゃんか。
やったね。
俺らどこまでも一緒だな。」
ケタケタと亮輔は笑った。
雪はクラス一覧表をじっと見つめた。
24名の1年A組は
男女ちょうど半分の人数で
分けられていた。
自分の名前を指差していると
隣に見たことある女子がいた。
雪のことを気にもせず
クラス一覧表の前に立ちはばかった。
「瑞希、私、A組だ。
やっぱりバラバラだね。」
さっきの双子の姉妹だった。
綾瀬 桜と
綾瀬 瑞希は
一卵性双生児だ。
「でも、私B組だし、
隣だから
忘れもの借りにいくね。」
「なるべく忘れないでほしいんだけど…。」
ざわざわと同級生たちに囲まれて
身動きが取れなくなってきた。
ドンっと後ろにいた男子に気づかずに
ぶつかった。
「あ、ごめんなさい!」
背中が当たったようだ。
「あ、いや、大丈夫。」
「良かった。」
ぶつかった雪は、さらりと桜の髪が
自分の顔に触れたことが逆に
申し訳なくなったが、
いつの間にかいなくなっていた。
いい香りがした。
「おーい、雪、何してんだ?
教室行くぞー。」
「あ、ああ。
今行く。」
バックを背負い直して、
雪は亮輔とともに
1年A組の教室に向かった。
男子生徒が、昇降口で
バックを高い位置で持って
後ろから頭にバンっとぶつけた。
「いってー。何すんだよ。」
「悪い悪い。
眠気覚ましにと思ったけど
想像以上に力が強かった。」
「やったなぁー!
そういうやつにはこうしてやるぞ!」
雪はこれでもかと
バックで頭を叩いた亮輔の
両脇をくすぐった。
「やめ、やめ。
俺、マジで弱いから。」
笑いながら抵抗する。
「なんかいうことあるよね?
亮輔くん!」
雪はまだまだくすぐる。
「はい、はい!|
申し訳ありませんでした。
マジでやめて。」
「分かればよろしい。」
「お前は母ちゃんか?」
「え?んなわけじゃないじゃん。
漆島雪《うるしま ゆき》って
名前があるってーの。
何が悲しくてお前の母ちゃんに
ならなくちゃいけないんだよ。
そもそも男なんだからお父さんだろ。」
「いや、そういうことじゃないんだけどさ。
言い方が母ちゃんそっくりって話だよ。」
亮輔は頭をぼりぼりとかいた。
がやがやと賑わう昇降口に
静かに双子の姉妹は入っていく。
「なあ、あの2人。
そっくりだよな。
双子だって話だよ。」
「へぇ、そうなんだ。
顔がそっくりだと
名前間違えそうだよな。
一卵性双生児かな?」
ボソボソと亮輔と雪は話していると
横をすーっと2人は通り過ぎていく。
シトラスの香りが鼻に触った。
シャンプーの香りだろうか。
セミロングのストレートな髪が
靡いている。
雪は初めて会った感じがしなかった。
バチッと目が合って
ドキッとする。
姉の桜はにこと笑って
ぺこりとお辞儀した。
瑞希は、桜の肩をたたいて
先に誘導している。
今日は入学式で
クラス発表の日。
新入生同士ののご対面だ。
「何、ぼーっとしてんだよ、雪。
俺らがクラス一緒か死活問題だろ?」
「いやいや、亮輔と
中学3年間ずっと一緒だから
そろそろ腐れ縁も離れてみたいって
思いはあるよ?」
「あ、そういうこと言っちゃう?
クラス別になっても
忘れもの貸してやんねえからな。」
「え。それは困るな。
んじゃ、先のは無しな。」
「もう、遅いわ。」
亮輔はご機嫌斜めになった。
雪はクラス発表のリストに目をやった。
「忘れものはもう諦めるしかないな。」
雪はつぶやいた。
「え、また同じクラスじゃんか。
やったね。
俺らどこまでも一緒だな。」
ケタケタと亮輔は笑った。
雪はクラス一覧表をじっと見つめた。
24名の1年A組は
男女ちょうど半分の人数で
分けられていた。
自分の名前を指差していると
隣に見たことある女子がいた。
雪のことを気にもせず
クラス一覧表の前に立ちはばかった。
「瑞希、私、A組だ。
やっぱりバラバラだね。」
さっきの双子の姉妹だった。
綾瀬 桜と
綾瀬 瑞希は
一卵性双生児だ。
「でも、私B組だし、
隣だから
忘れもの借りにいくね。」
「なるべく忘れないでほしいんだけど…。」
ざわざわと同級生たちに囲まれて
身動きが取れなくなってきた。
ドンっと後ろにいた男子に気づかずに
ぶつかった。
「あ、ごめんなさい!」
背中が当たったようだ。
「あ、いや、大丈夫。」
「良かった。」
ぶつかった雪は、さらりと桜の髪が
自分の顔に触れたことが逆に
申し訳なくなったが、
いつの間にかいなくなっていた。
いい香りがした。
「おーい、雪、何してんだ?
教室行くぞー。」
「あ、ああ。
今行く。」
バックを背負い直して、
雪は亮輔とともに
1年A組の教室に向かった。
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