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チョココロネなせかい
しおりを挟むある朝のごはんは、おかあさんが
白い皿にのせたチョココロネだった。
「いただきます」
食べようとした時、
僕はもし、
このコロネの中に入ったら
どうなるんだろうと考えた。
クリームの入っている穴を
のぞいて 確かめようとしたとたん、
ピューとカラダがどんどん小さくなり、チョココロネの中に吸い込まれた。
おちるー おちるー
と思ったら、
パンのはじっこにペッタリはりついた。クモになったみたいだ。
「きみ、そこでなにしているの?」
小さな男の子に話しかけられた。
後ろを振り向いてすぐに、
僕はそこから下に落ちてしまった。
思いのほか、パン生地でできていて、ふかふかだった。
「おっと、大丈夫かい? きみ、ここは、はじめて?」
「うん。ここはどこなの?」
「ここはチョココロネの中だよ。そっか、道に迷ったんだね。僕が案内してあげるよ! 僕の名前はカカオ。よろしくね。」
状況が読めないまま、
不意に握手をした。
そのまま、ふかふかのパン生地でできたらせん階段が長く続いていた。
カカオは、チョコレートの原料だった気がする。
僕はベタベタ体についたチョコクリームをなめた。甘くて美味しい。
先に進むと、
小さな部屋にフライパンでカカオ豆を炒るきつねがいた。
そのとなりには、アシナガザルがいた。石でカンカンとカカオをつぶしている。何回も何回も繰り返していた。
そして、さらにとなりには
さとうといっしょにすりこぎでぐるぐると豆をこする小さなおじいさんが三人いた。
また、その先にはチョコレートを冷蔵庫に入れて冷やし固めているお母さんがいた。
なんで、ここに?
お母さんがいるんだろう。
よく分からないけど、カカオに腕を引っ張られて案内されるがまま、ズンズン進むと、湯せんでチョコを溶かし、パンの中にブチューとチョコクリームを入れるネコたちがいた。
まさに、猫の手も借りたいっていうのはこのことか。
なるほど、こうやって、
チョコクリームはできていたのか。
できたてほかほかのチョココロネをほおばった。すごく幸せな気持ちになった。
小さな体だからたくさん食べられると思ったら、突然、カカオに肩をたたかれた。
「あそこにトンネルがあるよ。」
チョココロネの形をしたチョコ色のトンネルがあった。
まさか、もっと美味しいチョココロネがあるのかもしれない。
トンネルを抜けて、いつの間にか、もとの体に戻ってしまった。
白い皿にのったチョココロネが
すごく小さく見える。
ありがたくゆっくり味わって食べよう。
そうも言ってられない。
もう学校に遅刻しちゃう。
荷物を急いで持って、家を飛び出した。
頬にはチョコクリームがついたままだった。
また、次の日、朝ごはんにまたチョココロネが出てきた。
昨日と同じように穴を覗き込んだ。
今日はよく見たら、チョコじゃなくてピーナッツクリームだった。
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