上 下
41 / 67

第41話

しおりを挟む
今流行りのメンズファッションが置いているお店でごまかすように物色する颯人がいた。
星矢は落ち着いて見ることができず、キャップ帽を試しにかぶってみてはすぐに戻した。

「ねぇ、颯人。」

「星矢、星矢はスカジャンって
着たことあんの?」

突然持ってきた星のマークの白と黒のスカジャンを颯人はすすめてきた。リバイバルというのか昔流行ったものがまた流行り出してるらしい。
星矢は、何となく受け入れがたくて後退した。

「うーん、ちょっとそれは…。」

「いいから、試しに着てみろって。
ダメだったらやめていいから。」

急にノリノリのテンションで話す颯人に星矢は何も言えなくなり、店員さんにもすすめられて
試着室に入って着てみた。星矢の場合、服を買うのはほぼネットで済ましているため、試着室の使い方をわからなかった。アパレルショップの試着室はなぜか着替えたら、店員に見せるという場面がある。星矢はそのことを知らずに着たらすぐに脱いで出てきてしまった。

「え?! 星矢、着て出てきてよ。」

颯人がツッコミを入れる。
店員さんは苦笑い。

「え?うそ。そういうものなの?
僕の中で納得したからいいと思って…。
見せないといけないんだね。」

「一緒に着てるんだから見せろよ。」

「わかったよ。」

 カーテンを閉めて、
 もう一度着ているジャケットを脱いで
 スカジャンを着てみた。
 ドキドキしながら、カーテンを開ける。

「お?いいじゃん。似合うんじゃね?
あれ、でもサイズちょっとブカブカ…
すいませんこれより小さいのありますか?」

「少々お待ちください。
確認してまいります。」

女性店員さんは、颯人に言われた通り、ワンサイズ小さめのものを取りに行った。

「ちょっと待ってな。」

「あ、うん。これ脱いでてもいいよね。」

「ああ。いいぞ。」

 星矢は試着室で大きめサイズの
 スカジャンを脱いだ。

「お待たせしました。
 残り1点でしたが、 Mサイズを
ご用意できましたよ。」

「あーありがとうございます。
ほら、星矢、新しいの。」

カーテンの脇を手を伸ばしてハンガーごと渡す颯人。星矢はさっき着ていたスカジャンを颯人に渡した。交換したのだ。

「あ、ありがとう。」

星矢はもう一度着てみた。
さっきよりもしっくり来る。
ピッタリだった。

「着終わったけど。」

「おう、いいじゃね?ねぇ。坂本さん。」

名札を見てすぐ名前を覚えたのか
店員さんに声をかける颯人だ。

「そうですね。着丈もちょうど良いかと
思いますよ。そのままそちらに合う
パンツやシャツもいかがでしょうか。」


「ぱ、ぱ、パンツ?!
僕はその、大丈夫ですよぉ。」

「おい、何勘違いしてんだよ。
ジーンズのことをパンツって言うんだよ。
そしたら、お願いしてもいいですか。
多分、女子みたいに
ウエスト細いと思うのでメンズの中でも
1番細いので。」

「……あーそうなんだ。」

星矢は恥ずかしくなって、顔を赤くした。
店員の坂本は、急いで星矢に合うような服を選びに行った。
颯人は何故かご機嫌だった。

「え、ちょっと待って。
なんで、僕のウエストのサイズわかるのさ。
言ったことないよ?」

「……触ればわかるだろ。大体。」

颯人は、星矢のウエストあたりを両手でつかんでみる。うひゃっとびっくりさせた。

「何、びっくりしてんのさ。」

「だって、くすぐったいから。」

「…へぇ~。」

颯人は何とも言えない顔をした。

「俺よりもだいぶ細いし。
レディースものでもありかもな。」

「そんなに?」

「メンズサイズって結構大きいよ?
もやしくんには無理やね。」

「……。」

星矢は、何だか褒められているんだか貶されているんだかわからない複雑な表情した。

店員の坂本は、顧客からお願いされることが少なかったため、腕まくりをして、必死で服を集めていた。

颯人は歯をにかっとさせて鼻歌を歌っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒木くんと白崎くん

ハル*
BL
黒木くんは、男子にしてはちょっとだけ身長低めで、甘いもの好きなのに隠したがりなちょっと口が悪いのに面倒見がいい先輩。 白崎くんは、黒木くんより身長高めでキレー系の顔がコンプレックスの後輩。 中学1年の時に、委員会の先輩だった黒木くんが卒業する前に、白崎くんに残した言葉からうつむきがちだった生活が変わっていって…。 「先輩は何気ないつもりだったんでしょうけど、僕にとってはそれはまるで神様からの言葉みたいだったんです」 ノンケの先輩を好きになった、初恋が黒木先輩という白崎くん。 自分を意識してほしいけど、まるで子どもみたいなやり方でしか先輩の前に出られない。 …でも、男の僕が先輩を好きになってと望んでも、先輩を困らせたりしないかな。 女の子から意識されている先輩を見ていると、「僕の方が好きなのに!」とか、「僕の方が先に!」とか思う裏側で、「手をつなぎたいって言っても気持ち悪がられちゃうよね? だって、僕…男だし」って凹んでしまう。 それでもどんな形でもそばにいたい、黒木先輩のそばに…。 黒木くんのことを意識してから、追うように入学した高校で、ゆっくりと好きになってもらうための日々。 2歳差男子高校生二人の、卒業までの一年間のお話。 ※コンテストの関係で、なろうでも同作を連載開始しました。  こちらよりは更新ゆっくりめです。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

太陽に恋する花は口から出すには大きすぎる

きよひ
BL
片想い拗らせDK×親友を救おうと必死のDK 高校三年生の蒼井(あおい)は花吐き病を患っている。 花吐き病とは、片想いを拗らせると発症するという奇病だ。 親友の日向(ひゅうが)は蒼井の片想いの相手が自分だと知って、恋人ごっこを提案した。 両思いになるのを諦めている蒼井と、なんとしても両思いになりたい日向の行末は……。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...