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第1話
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真っ青な空に綿雲が浮かんでいた。
飛行機雲が東の空に伸びていた。
雲のないところに1つの野球ボールが
飛んでいく。バットに当たる音が
響いていた。
先頭バッターがヒットを打つと1塁に
走っていく。
ボールはセンターに飛んでいくが、
ファーストに渡されるが、アウトには
ならなかった。
ランナーは、
帽子を被りなおして、グローブを外す。
「2アウトだから!
次はアウト取るぞ。」
ピッチャーは守りのチームのみんなに
声をかけた。
キャッチャーは次はストレートで投げるんだと合図を送った。
見事その初球でホームランを打たれる。
まさかの敗退。
ピッチャーは悔しがった。
学校内での先輩後輩の練習試合だった。
キャプテンでもある竹下翔太《たけしたしょうた》は、ピッチャーをしていた。
汗まみれで着ていたジャージで汗を拭った。
「片付け開始!」
「おっす。」
部員たちは、暗くなってきた学校内の
グラウンドで転がったボールを
拾い集めて、
土を平らにならしはじめた。
全体の挨拶を終えて、
校舎にフェンスの鍵を返そうと翔太は、
大きな荷物を持って、進んだ。
部員たちはお疲れ様ですと声掛けすると、
校門の方へ向かっていた。
少し薄暗い中、翔太は渡り廊下を歩く。
「職員室行かないとな…。」
練習でだいぶ疲れが溜まっていた。
筋トレはしているが、時々筋肉痛になる。
鍛え不足かなと考えていると、
音楽室から音色が聞こえた。
もう部活を終える時間だというのに
何度も同じ箇所を練習しているようだ。
翔太は、煌々と光る音楽室を下から
眺めた。
立ち止まって聞いてると、
野球の試合でよく演奏している曲だった。
きっと今年も試合の時に吹奏楽部が
応援に来てくれるんだろうなと思った。
目を閉じて、音色を聞いていた。
(この音は何の楽器だろう…。)
ふと、音が止まった。
窓が開いていたようで、演奏していた
生徒が外の様子を眺めては
窓をしめようとした。
はっと、目が合う。
野球部の生徒が教員用駐車場で
立ち止まって、こちらを見ていた。
もしかしてと閉めた窓を開けた。
「…あ!もしかして、今聞こえてました?」
1人の男子生徒がこちらを見ていた。
自分のことかと改めて、周りを見ると
誰もいなかった。
「…俺に言ってる?」
男子生徒は、こくこくと何度も頷いた。
「どうでした?」
「どうって…いい音色だった。」
「…本当ですか?」
「ああ。」
「良かった。」
「あのさ!それ、その楽器ってなんだ?」
2階の音楽室と外との会話。
少し遠くて大きかった。
「これ、フルートです。
まだはじめたばかりで自信なくて、
1人で練習してました。
ありがとうございます!」
「あー、フルートか。」
「野球部ですよね?」
「…ああ。」
「試合の時に応援行きますから。
まだ一年だから演奏にフルートで
参加できるかわからないけど…。」
「俺も頑張るから。
お前も頑張れ!」
「は、はい。あ、あの。
名前、教えてもらってもいいですか?」
話しかけてくれたことが嬉しかった。
「俺、3年の竹下翔太。君は?」
「ぼ、僕は、工藤星矢です。
吹奏楽部の1年です。」
誰かに聞いてもらって、
喜んでもらえるのは、
楽器演奏者にとって
この上ない幸せだ。
星矢は、えくぼを出して、
ほほえんだ。
窓を開けたまま、またフルートを
吹いてみた。
翔太は、何も言わずに親指をいいねと
あげて笑顔で交わした。
それが、初めて工藤星矢に
会った瞬間だった。
東の空には1番星が輝いていた。
飛行機雲が東の空に伸びていた。
雲のないところに1つの野球ボールが
飛んでいく。バットに当たる音が
響いていた。
先頭バッターがヒットを打つと1塁に
走っていく。
ボールはセンターに飛んでいくが、
ファーストに渡されるが、アウトには
ならなかった。
ランナーは、
帽子を被りなおして、グローブを外す。
「2アウトだから!
次はアウト取るぞ。」
ピッチャーは守りのチームのみんなに
声をかけた。
キャッチャーは次はストレートで投げるんだと合図を送った。
見事その初球でホームランを打たれる。
まさかの敗退。
ピッチャーは悔しがった。
学校内での先輩後輩の練習試合だった。
キャプテンでもある竹下翔太《たけしたしょうた》は、ピッチャーをしていた。
汗まみれで着ていたジャージで汗を拭った。
「片付け開始!」
「おっす。」
部員たちは、暗くなってきた学校内の
グラウンドで転がったボールを
拾い集めて、
土を平らにならしはじめた。
全体の挨拶を終えて、
校舎にフェンスの鍵を返そうと翔太は、
大きな荷物を持って、進んだ。
部員たちはお疲れ様ですと声掛けすると、
校門の方へ向かっていた。
少し薄暗い中、翔太は渡り廊下を歩く。
「職員室行かないとな…。」
練習でだいぶ疲れが溜まっていた。
筋トレはしているが、時々筋肉痛になる。
鍛え不足かなと考えていると、
音楽室から音色が聞こえた。
もう部活を終える時間だというのに
何度も同じ箇所を練習しているようだ。
翔太は、煌々と光る音楽室を下から
眺めた。
立ち止まって聞いてると、
野球の試合でよく演奏している曲だった。
きっと今年も試合の時に吹奏楽部が
応援に来てくれるんだろうなと思った。
目を閉じて、音色を聞いていた。
(この音は何の楽器だろう…。)
ふと、音が止まった。
窓が開いていたようで、演奏していた
生徒が外の様子を眺めては
窓をしめようとした。
はっと、目が合う。
野球部の生徒が教員用駐車場で
立ち止まって、こちらを見ていた。
もしかしてと閉めた窓を開けた。
「…あ!もしかして、今聞こえてました?」
1人の男子生徒がこちらを見ていた。
自分のことかと改めて、周りを見ると
誰もいなかった。
「…俺に言ってる?」
男子生徒は、こくこくと何度も頷いた。
「どうでした?」
「どうって…いい音色だった。」
「…本当ですか?」
「ああ。」
「良かった。」
「あのさ!それ、その楽器ってなんだ?」
2階の音楽室と外との会話。
少し遠くて大きかった。
「これ、フルートです。
まだはじめたばかりで自信なくて、
1人で練習してました。
ありがとうございます!」
「あー、フルートか。」
「野球部ですよね?」
「…ああ。」
「試合の時に応援行きますから。
まだ一年だから演奏にフルートで
参加できるかわからないけど…。」
「俺も頑張るから。
お前も頑張れ!」
「は、はい。あ、あの。
名前、教えてもらってもいいですか?」
話しかけてくれたことが嬉しかった。
「俺、3年の竹下翔太。君は?」
「ぼ、僕は、工藤星矢です。
吹奏楽部の1年です。」
誰かに聞いてもらって、
喜んでもらえるのは、
楽器演奏者にとって
この上ない幸せだ。
星矢は、えくぼを出して、
ほほえんだ。
窓を開けたまま、またフルートを
吹いてみた。
翔太は、何も言わずに親指をいいねと
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それが、初めて工藤星矢に
会った瞬間だった。
東の空には1番星が輝いていた。
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