8 / 36
第8話
しおりを挟む
買い物から帰宅した晃と比奈子。
果歩はガレージに車が入る音で気づいた。
車の後部座席では、
熟睡している比奈子がいた。
0歳児にとっての外出は大人で言うところの仕事に行くような気疲れを要する。
いや、それ以上の気疲れかもしれない。
よだれを垂らし、持っていたおもちゃも
足元に落としていた。
「比奈子、だいぶ、疲れたんだな。」
そう言いながら、晃はチャイルドシートからおろし、家の中のベビーベッド寝かせた。
「おかえり。」
パジャマ姿の果歩が玄関で出迎えた。
「ただいま。熱下がったの?」
「うん。おかげさまでゆっくり休めたよ。
お粥もごちそうさま。」
「そっか。それは良かった。」
晃は車から
荷物をどんどん家の中に運び入れた。
買い物していた袋と
いつもの大きなバックが重かった。
出かけるとなるといつも荷物が多くなる。
忘れ物ももちろん多い。
果歩が1人で出かけるときも同じだなと
晃は、1人、何度も家と車を
行ったり来たりして買ってきた
荷物を運んでいた。
「何か買ってきたの?」
「うん。最近、果歩が
あれがないとかいるとか
言ってただろ?
比奈子の紙おむつと
半袖インナーを選んで
買ってきたよ。」
果歩はクローゼットの中から
どーんと買っていた紙おむつ3パックを
晃に見せた。
「え、あ、あれ?
もう買ってたの?」
「これ、私のおばあちゃんから
最近送ってくれてて。
買わずに済んでたの。
ごめん、言わなかった。
あと、インナーも買ってたけど
それは多くあっても困らないから
大丈夫。
買うなら聞いてよ。」
「あー、気を利かせたつもりだった。
先走ったね。」
がっかりした晃は首をがっくりした。
果歩は買ってきた袋の中を漁った。
「これは大正解だね。」
お弁当やさんの唐揚げ弁当が2つ
入っていた。
「あ、それも入っていたんだった。
ごめん、病み上がりなのに
こってりしたもの
買ってきたね。」
「私、からあげは、
具合悪くても食べられるから、
大丈夫だよ。」
「そっか。そこだけ合格か。」
「そんな落ち込まないで。
私が具合悪くしてると思って
晃なりに頑張ったんだもんね。
あ・り・が・と・う!」
果歩は晃の背中をポンと優しく触れた。
「う、うん。」
「晃、無理してない?
失敗しないようにって
必死で良くしようってやってる?」
「え?」
果歩は晃をハグをして、
背中を撫でた。
「よしよし。」
「俺は犬か?」
「大丈夫だよ。
無理しなくても。
頼まれたことだけやっても
私は嫌いにならないよ。
変に気を使わないで。」
「……うん。」
ベビーベッドで横になっていた
比奈子は、いびきをかいたふりをした。
果歩の言ったことをしっかり聞いていた。
(夫婦で気を使おうと晃は考えていたの?
どうして果歩はそう考えてるって
わかるのかな。
私にはわからない領域だ。)
「でも、果歩、具合悪くしてたし、
比奈子のこと見てないと
具合悪いのに
果歩が動いちゃうと思ったから。」
「あ~……。まぁ。それはあるよね。」
果歩の性格柄、具合悪いことを隠して
そのままやり続けることが多い。
熱を測っても周りには絶対本当のことを
言わない。
それが例え高熱39.0度を超えていても
ずっと働き続ける。
さっきの保冷剤一つ取るだけでも
比奈子を優先して自分のことは
後回しにしていた。
それは、仕事をするのも
一緒で、
熱があっても素知らぬ顔をして
働き続ける。
一緒に働いていた時も
こちらの体調は気にかけるが、
自分自身は
全然労わろうとしない。
晃はそういう性格だと前から知っていた。
絵里香にはない性格だった。
元嫁の絵里香は具合悪いとすぐ訴えては
育児、家事から逃げる。
わかりやすい。
(悪かったわね。
具合悪いから休むのをサボりなのか。
無理して働くのが美談ってことに
してほしくないけどね。
体調管理も仕事のうちだと思うけど…。)
比奈子は
ベビーベッドの上で寝たふりをしながら
考えた。
「ま、いいじゃん。
俺、今日、結構頑張ったよ。
教えられなくても、比奈子1人連れて
買い物できたし。
泣いて、オムツ交換になった時は
多目的トイレ行くし、
お腹すいたって泣かれた時は
赤ちゃんルームのポットの
お湯でミルク作って、水道で冷まして
飲ませたの。
ミルクの前にパウチの離乳食も
食べさせたよ。
結構、大変だね。
この月齢で買い物するの。
やっぱ、ショッピングモールは大きいから
赤ちゃん連れでも助かるものが
いっぱいあるね。
良い勉強になりましたよ。」
腰に手をあてて、えっへんというような
かっこうになる。
果歩はまた小さい子供に接するかの
ようによしよしと頭を撫でた。
「俺は犬じゃない!ワン。」
「たいへんよくがんばりました!」
母は、自然の流れですべて赤ちゃんミッションをこなすが、父は外の仕事が基本で
あって、赤ちゃんミッションは、スイッチが入らないとできないものだ。
向き不向きもあるだろう。
褒められないと次はないとめんどくさいこともある。果歩は、しっかりやってくれたことに感謝して、あえて、それ以上求めることはしなかった。むしろ、自分の仕事に手をつけられているようで、あまり心地よくなかったようだ。
人それぞれ子育ての考え方は違う。
父親としての役割も母親の判断で
変わることもある。
夫婦で会話して成り立つものかも
しれない。
晃は、これが正しくて正しくないとか
まだまだわからないなと
過去の失敗を活かせないこともあると
学んだ。
果歩はガレージに車が入る音で気づいた。
車の後部座席では、
熟睡している比奈子がいた。
0歳児にとっての外出は大人で言うところの仕事に行くような気疲れを要する。
いや、それ以上の気疲れかもしれない。
よだれを垂らし、持っていたおもちゃも
足元に落としていた。
「比奈子、だいぶ、疲れたんだな。」
そう言いながら、晃はチャイルドシートからおろし、家の中のベビーベッド寝かせた。
「おかえり。」
パジャマ姿の果歩が玄関で出迎えた。
「ただいま。熱下がったの?」
「うん。おかげさまでゆっくり休めたよ。
お粥もごちそうさま。」
「そっか。それは良かった。」
晃は車から
荷物をどんどん家の中に運び入れた。
買い物していた袋と
いつもの大きなバックが重かった。
出かけるとなるといつも荷物が多くなる。
忘れ物ももちろん多い。
果歩が1人で出かけるときも同じだなと
晃は、1人、何度も家と車を
行ったり来たりして買ってきた
荷物を運んでいた。
「何か買ってきたの?」
「うん。最近、果歩が
あれがないとかいるとか
言ってただろ?
比奈子の紙おむつと
半袖インナーを選んで
買ってきたよ。」
果歩はクローゼットの中から
どーんと買っていた紙おむつ3パックを
晃に見せた。
「え、あ、あれ?
もう買ってたの?」
「これ、私のおばあちゃんから
最近送ってくれてて。
買わずに済んでたの。
ごめん、言わなかった。
あと、インナーも買ってたけど
それは多くあっても困らないから
大丈夫。
買うなら聞いてよ。」
「あー、気を利かせたつもりだった。
先走ったね。」
がっかりした晃は首をがっくりした。
果歩は買ってきた袋の中を漁った。
「これは大正解だね。」
お弁当やさんの唐揚げ弁当が2つ
入っていた。
「あ、それも入っていたんだった。
ごめん、病み上がりなのに
こってりしたもの
買ってきたね。」
「私、からあげは、
具合悪くても食べられるから、
大丈夫だよ。」
「そっか。そこだけ合格か。」
「そんな落ち込まないで。
私が具合悪くしてると思って
晃なりに頑張ったんだもんね。
あ・り・が・と・う!」
果歩は晃の背中をポンと優しく触れた。
「う、うん。」
「晃、無理してない?
失敗しないようにって
必死で良くしようってやってる?」
「え?」
果歩は晃をハグをして、
背中を撫でた。
「よしよし。」
「俺は犬か?」
「大丈夫だよ。
無理しなくても。
頼まれたことだけやっても
私は嫌いにならないよ。
変に気を使わないで。」
「……うん。」
ベビーベッドで横になっていた
比奈子は、いびきをかいたふりをした。
果歩の言ったことをしっかり聞いていた。
(夫婦で気を使おうと晃は考えていたの?
どうして果歩はそう考えてるって
わかるのかな。
私にはわからない領域だ。)
「でも、果歩、具合悪くしてたし、
比奈子のこと見てないと
具合悪いのに
果歩が動いちゃうと思ったから。」
「あ~……。まぁ。それはあるよね。」
果歩の性格柄、具合悪いことを隠して
そのままやり続けることが多い。
熱を測っても周りには絶対本当のことを
言わない。
それが例え高熱39.0度を超えていても
ずっと働き続ける。
さっきの保冷剤一つ取るだけでも
比奈子を優先して自分のことは
後回しにしていた。
それは、仕事をするのも
一緒で、
熱があっても素知らぬ顔をして
働き続ける。
一緒に働いていた時も
こちらの体調は気にかけるが、
自分自身は
全然労わろうとしない。
晃はそういう性格だと前から知っていた。
絵里香にはない性格だった。
元嫁の絵里香は具合悪いとすぐ訴えては
育児、家事から逃げる。
わかりやすい。
(悪かったわね。
具合悪いから休むのをサボりなのか。
無理して働くのが美談ってことに
してほしくないけどね。
体調管理も仕事のうちだと思うけど…。)
比奈子は
ベビーベッドの上で寝たふりをしながら
考えた。
「ま、いいじゃん。
俺、今日、結構頑張ったよ。
教えられなくても、比奈子1人連れて
買い物できたし。
泣いて、オムツ交換になった時は
多目的トイレ行くし、
お腹すいたって泣かれた時は
赤ちゃんルームのポットの
お湯でミルク作って、水道で冷まして
飲ませたの。
ミルクの前にパウチの離乳食も
食べさせたよ。
結構、大変だね。
この月齢で買い物するの。
やっぱ、ショッピングモールは大きいから
赤ちゃん連れでも助かるものが
いっぱいあるね。
良い勉強になりましたよ。」
腰に手をあてて、えっへんというような
かっこうになる。
果歩はまた小さい子供に接するかの
ようによしよしと頭を撫でた。
「俺は犬じゃない!ワン。」
「たいへんよくがんばりました!」
母は、自然の流れですべて赤ちゃんミッションをこなすが、父は外の仕事が基本で
あって、赤ちゃんミッションは、スイッチが入らないとできないものだ。
向き不向きもあるだろう。
褒められないと次はないとめんどくさいこともある。果歩は、しっかりやってくれたことに感謝して、あえて、それ以上求めることはしなかった。むしろ、自分の仕事に手をつけられているようで、あまり心地よくなかったようだ。
人それぞれ子育ての考え方は違う。
父親としての役割も母親の判断で
変わることもある。
夫婦で会話して成り立つものかも
しれない。
晃は、これが正しくて正しくないとか
まだまだわからないなと
過去の失敗を活かせないこともあると
学んだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる