82 / 105
第82話 妖怪たちが横行闊歩する 参
しおりを挟む シェリーが謎の生命体と呼んでいる者に初めて接触されたのは、15年前の3歳の誕生日のことだった。まだその頃は身の回りの世話をしてくれるばあやがおり、それほど不自由ではない生活をしていた。
夢の中でシェリーは歩いていた。黒い髪を一つにまとめ、黒のパンツスーツに黒いパンプス。高くそびえ立つコンクリートの建物、その横を走る鉄の馬車。空は狭くその隙間に空を飛ぶ鉄の塊が見え、橋の下の川にはゴミが浮いている。すれ違う人々は時間に追われる様に黙々と歩いている。
ふと、橋の上で立ち止まりいったい私は何に向かって歩いているのだろうと疑問に思った。
「やあ。こんにちは」
突然声をかけられた。振り向くと、この情景には不釣り合いな白い人物が立っていた。
はっきり言って気味が悪いぐらい白いしか印象に残らない風貌だ。
「僕は君をなんて呼べばいいかな?」
いきなり何なんだと思いつつも答える。
「シェリー。」
「そうだね。今はそうかもしれないけどこの情景に合う名前があるんじゃないかな?」
「佐々木です。」
「ササーキね。うーん?他に名前はない?」
この時点でこの夢はおかしいことに気づいた。よくある小説の中で真名を知られてはいけないという話があったことを思い出した。
「ササキです。」
「おや、警戒されてしまったかな?まあ、これでも十分だからいいよ。今まで失敗したけど今回は行けるはず。君には良いツガイをつけてあげたからね。詳しいことはまた今度にするね。誕生日おめでとう」
「なにそれ!」
自分の声で目覚めてしまった。
次に会ったのは6歳のとき、その頃にはばあやは息子夫婦のところへ行ってしまったので、1歳のルークの世話と研究三昧の同居人の世話でくたくたになって休んでいるシェリーの夢に侵入してきた。
シェリーは海辺の砂浜で一心不乱になって砂城をつくっている。そこに足が降ってきて、城は無惨にも破壊されてしまった。
「さっきから声をかけているのに気づいてよ。」
不貞腐れたいつかの白い人がいた。
「勝手に侵入してきて、完成寸前の私の城を壊して、そのいいぐさなに?」
「今日は君にやってもらいたい事を言いに来たんだ。」
白い人はにこやかに言う。
「謝ってよ。」
「この世界には人々が吐き出した、悪意・憎悪・嫉妬などの悪い心が溜まり続けているんだ。それが凝縮し、意思を持って動いて破壊行動を繰り返すモノを魔王と呼ばれる存在になるんだけど、それは君の両親が倒したから問題ないよ。でも、それ以外にも各地では溜まり続けているんだ。」
白い人は自分の言いたいことを話続ける。
「人の話を聞け。」
「それを聖女の君が浄化して欲しいんだよ。」
「嫌だけど。」
シェリーはすぐさま拒否をする。
「それを放置すると魔物も増えて、魔王が発現しちゃうからさ。」
「私は子供だし、今はかわいい弟を育てるのに忙しい。」
シェリーは拒否し続ける。しかし、白い人は変わらず話続ける。
「それを補助させるために番を5人用意したよ。各種族の強者ばかりだ。もう、これで完璧だね。」
「3歳の時に確認しました。ツガイが5人ってどこのビッチ属性のヒロインだ。嫌がらせじゃないか。」
「いやー。今までも聖女にいろんな番を宛がったんだけどね。番が弱ちいと聖女の力に目の眩んだヤツに殺されたし、強いと監禁してしまったし、教会の教皇でも同じ、王族でも同じ。もう、人の悪の心が溜まりに溜まっちゃって魔王が出来てしまったじゃん。それで、人族の強いヤツを三人、番につけてみたんだよ。そしたらさ、共通の敵の魔王を倒したら、番を巡って殺しあい。いや、参ったね。だから、今回は異種族で5人にしたよ。」
失敗し続けた実験の愚痴を言っているかのような言い分だ。
「悪化している。ツガイが一人という常識を覆した上に別種族なんて、怪獣大戦並。」
「少し前に勇者が大暴れをしたおかげで、人々の心の闇が一気に増えてしまってね。魔王を倒して100年ぐらいかけて浄化してもらえればよかったんだけど、このままだと20年しない内に魔王が復活しそうなんだよね。大変。大変。」
白い人は明日の天気を言うが如く、しれっと魔王復活を予言してきた。
「あのバカ勇者。今はルーちゃん育てるので忙しいし、まだ子供だから遠くとかは無理。力も体力もないので無理だから15年程は準備期間が欲しい。あと、思い通りの能力が欲しいから自由に創れる魔法かスキルが欲しい。」
シェリーはこの話を聞いて益々、ツガイというものに会ってしまうことに危機感を抱いた。すべて自分自身で成し遂げるなら、何者にも負けない力が必要だと考えた。
「最初はシーラン王国がいいと思うよ。多種族がたくさんいるから、番の特性を知るには適しているよ。子育てするにも、体を鍛えるのも、スキルの構築をするのにもいいところだよ。」
そう言って白い人は消えていった。
夢の砂浜に残されたシェリーはスキルの創造の権利を得ることができたことがわかり、これからの事を計画立てるのであった。
夢の中でシェリーは歩いていた。黒い髪を一つにまとめ、黒のパンツスーツに黒いパンプス。高くそびえ立つコンクリートの建物、その横を走る鉄の馬車。空は狭くその隙間に空を飛ぶ鉄の塊が見え、橋の下の川にはゴミが浮いている。すれ違う人々は時間に追われる様に黙々と歩いている。
ふと、橋の上で立ち止まりいったい私は何に向かって歩いているのだろうと疑問に思った。
「やあ。こんにちは」
突然声をかけられた。振り向くと、この情景には不釣り合いな白い人物が立っていた。
はっきり言って気味が悪いぐらい白いしか印象に残らない風貌だ。
「僕は君をなんて呼べばいいかな?」
いきなり何なんだと思いつつも答える。
「シェリー。」
「そうだね。今はそうかもしれないけどこの情景に合う名前があるんじゃないかな?」
「佐々木です。」
「ササーキね。うーん?他に名前はない?」
この時点でこの夢はおかしいことに気づいた。よくある小説の中で真名を知られてはいけないという話があったことを思い出した。
「ササキです。」
「おや、警戒されてしまったかな?まあ、これでも十分だからいいよ。今まで失敗したけど今回は行けるはず。君には良いツガイをつけてあげたからね。詳しいことはまた今度にするね。誕生日おめでとう」
「なにそれ!」
自分の声で目覚めてしまった。
次に会ったのは6歳のとき、その頃にはばあやは息子夫婦のところへ行ってしまったので、1歳のルークの世話と研究三昧の同居人の世話でくたくたになって休んでいるシェリーの夢に侵入してきた。
シェリーは海辺の砂浜で一心不乱になって砂城をつくっている。そこに足が降ってきて、城は無惨にも破壊されてしまった。
「さっきから声をかけているのに気づいてよ。」
不貞腐れたいつかの白い人がいた。
「勝手に侵入してきて、完成寸前の私の城を壊して、そのいいぐさなに?」
「今日は君にやってもらいたい事を言いに来たんだ。」
白い人はにこやかに言う。
「謝ってよ。」
「この世界には人々が吐き出した、悪意・憎悪・嫉妬などの悪い心が溜まり続けているんだ。それが凝縮し、意思を持って動いて破壊行動を繰り返すモノを魔王と呼ばれる存在になるんだけど、それは君の両親が倒したから問題ないよ。でも、それ以外にも各地では溜まり続けているんだ。」
白い人は自分の言いたいことを話続ける。
「人の話を聞け。」
「それを聖女の君が浄化して欲しいんだよ。」
「嫌だけど。」
シェリーはすぐさま拒否をする。
「それを放置すると魔物も増えて、魔王が発現しちゃうからさ。」
「私は子供だし、今はかわいい弟を育てるのに忙しい。」
シェリーは拒否し続ける。しかし、白い人は変わらず話続ける。
「それを補助させるために番を5人用意したよ。各種族の強者ばかりだ。もう、これで完璧だね。」
「3歳の時に確認しました。ツガイが5人ってどこのビッチ属性のヒロインだ。嫌がらせじゃないか。」
「いやー。今までも聖女にいろんな番を宛がったんだけどね。番が弱ちいと聖女の力に目の眩んだヤツに殺されたし、強いと監禁してしまったし、教会の教皇でも同じ、王族でも同じ。もう、人の悪の心が溜まりに溜まっちゃって魔王が出来てしまったじゃん。それで、人族の強いヤツを三人、番につけてみたんだよ。そしたらさ、共通の敵の魔王を倒したら、番を巡って殺しあい。いや、参ったね。だから、今回は異種族で5人にしたよ。」
失敗し続けた実験の愚痴を言っているかのような言い分だ。
「悪化している。ツガイが一人という常識を覆した上に別種族なんて、怪獣大戦並。」
「少し前に勇者が大暴れをしたおかげで、人々の心の闇が一気に増えてしまってね。魔王を倒して100年ぐらいかけて浄化してもらえればよかったんだけど、このままだと20年しない内に魔王が復活しそうなんだよね。大変。大変。」
白い人は明日の天気を言うが如く、しれっと魔王復活を予言してきた。
「あのバカ勇者。今はルーちゃん育てるので忙しいし、まだ子供だから遠くとかは無理。力も体力もないので無理だから15年程は準備期間が欲しい。あと、思い通りの能力が欲しいから自由に創れる魔法かスキルが欲しい。」
シェリーはこの話を聞いて益々、ツガイというものに会ってしまうことに危機感を抱いた。すべて自分自身で成し遂げるなら、何者にも負けない力が必要だと考えた。
「最初はシーラン王国がいいと思うよ。多種族がたくさんいるから、番の特性を知るには適しているよ。子育てするにも、体を鍛えるのも、スキルの構築をするのにもいいところだよ。」
そう言って白い人は消えていった。
夢の砂浜に残されたシェリーはスキルの創造の権利を得ることができたことがわかり、これからの事を計画立てるのであった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
【完結】『霧原村』~少女達の遊戯が幽の地に潜む怪異を招く~
潮ノ海月
ホラー
五月の中旬、昼休中に清水莉子と幸村葵が『こっくりさん』で遊び始めた。俺、月森和也、野風雄二、転校生の神代渉の三人が雑談していると、女子達のキャーという悲鳴が。その翌日から莉子は休み続け、学校中に『こっくりさん』の呪いや祟りの噂が広まる。そのことで和也、斉藤凪紗、雄二、葵、渉の五人が莉子の家を訪れると、彼女の母親は憔悴し、私室いた莉子は憑依された姿になっていた。莉子の家から葵を送り届け、暗い路地を歩く渉は不気味な怪異に遭遇する。それから恐怖の怪奇現象が頻発し、ついに女子達が犠牲に。そして怪異に翻弄されながらも、和也と渉の二人は一つの仮説を立て、思ってもみない結末へ導かれていく。【2025/3/11 完結】
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる