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第68話 少女の誘拐 弐
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赤い鳥居の一番端に烏兎翔が乗っていた。ここは、迅の実家でもある晴明神社だ。迅の祖父 土御門 嘉将は、狩衣《かりぎぬ》をまとい、厄払い儀式に集中していた。
砂利の音が響く境内にある石畳の通路に迅は、足を踏み入れた。迅の横には白狐兎がいる。初めて訪れる神社に白狐兎はドキドキしていた。これから空狐を助けに地獄へ行かなければならないことを報告と札を多めに持っておかなければならないと実家に帰って来た。
「お前ん家って神々しいなぁ……」
だんだん白狐兎の持つべき力が内側から出て来そうになっている。狐の仮面の下の頭からにょきっと少しだけ狐の耳が出て来ている。これは白狐兎も知らない能力だ。神社に来て初めて出て来た症状だ。不思議な力が宿っているだろう。
「別にただの神社だろ。陰陽師ならわかるだろ、それくらい」
「……いや、狐の里と比べたら、それ以上だ」
「ふーん、聞いたことないけどな。まぁ、いいや。あれ、空狐はどうした?」
「空狐は先に里に帰ったわ。ママンが恋しいじゃないの?」
「……お前じゃないんだからんわ訳ないだろ」
「うっせーわ」
風の強さが変わった。儀式を終えた土御門 嘉将が外に出てきた。迅と白狐兎の体にも念が伝わる。
「誰を連れて来てるんだ、迅」
「……誰って、白狐兎だけど」
嘉将は、遠目から白狐兎の姿を見る。じわじわと妖力が湧き出て来るようだ。いつの間にか、嘉将が出した式神である狩衣を着たうさぎが数十匹現れた。白狐兎の周りを取り囲む。
「おい、何しているんだよ!?」
迅は嘉将の行動に疑いの目を向けた。妖怪や鬼の除霊に使う技を使っている。
「え?! 嘘だろ?」
白狐兎本人もたくさんのうさぎたちに囲まれて、身動きできない。式神のうさぎに両手を向けられて、体を動かすことができなくなっている。
「妖怪と一緒にいるにも関わらず、除霊しないのはなぜだ、迅。こいつはまやかしの狐だぞ」
「な?! んなわけねぇだろ! そいつは陰陽師だって言ってたから……嘘だろ?」
嘉将が術を使えば使うほど、白狐兎の頭からにょきにょきと狐の耳が生えてきていた。顔につけていた狐の仮面は耳にひっかかり、すっかり顔を出していた。瞳は青く、色白の顔をむき出していていた。
「うぉおおおああああああ、やめろーーー」
本来あるべき姿の白狐兎が空中に浮かぶ。嘉将は、札を出して、さらに強い術を唱えようとするが、迅は、それを必死で止める。
「じいちゃん!! それだけはやめてくれ!!」
「何を言うか。あいつはれっきとした狐の妖怪だぞ。陰陽師の術だって、そんなの真似すれば狐なんだからできるだろ。騙されるな。全部まやかしだ。気づけ、迅」
嘉将の腕にしがみつく迅の爪が細く皮膚の奥の奥にまで差し込んでいる。
「俺は、信じねぇ!! 絶対信じねぇ!!」
迅の目が紫に光り出す。嘉将が急いでその場から跳んで離れた。迅の様子がおかしい。人間の姿からじわじわと豹変していく。物々しい雰囲気と変化していく。
砂利の音が響く境内にある石畳の通路に迅は、足を踏み入れた。迅の横には白狐兎がいる。初めて訪れる神社に白狐兎はドキドキしていた。これから空狐を助けに地獄へ行かなければならないことを報告と札を多めに持っておかなければならないと実家に帰って来た。
「お前ん家って神々しいなぁ……」
だんだん白狐兎の持つべき力が内側から出て来そうになっている。狐の仮面の下の頭からにょきっと少しだけ狐の耳が出て来ている。これは白狐兎も知らない能力だ。神社に来て初めて出て来た症状だ。不思議な力が宿っているだろう。
「別にただの神社だろ。陰陽師ならわかるだろ、それくらい」
「……いや、狐の里と比べたら、それ以上だ」
「ふーん、聞いたことないけどな。まぁ、いいや。あれ、空狐はどうした?」
「空狐は先に里に帰ったわ。ママンが恋しいじゃないの?」
「……お前じゃないんだからんわ訳ないだろ」
「うっせーわ」
風の強さが変わった。儀式を終えた土御門 嘉将が外に出てきた。迅と白狐兎の体にも念が伝わる。
「誰を連れて来てるんだ、迅」
「……誰って、白狐兎だけど」
嘉将は、遠目から白狐兎の姿を見る。じわじわと妖力が湧き出て来るようだ。いつの間にか、嘉将が出した式神である狩衣を着たうさぎが数十匹現れた。白狐兎の周りを取り囲む。
「おい、何しているんだよ!?」
迅は嘉将の行動に疑いの目を向けた。妖怪や鬼の除霊に使う技を使っている。
「え?! 嘘だろ?」
白狐兎本人もたくさんのうさぎたちに囲まれて、身動きできない。式神のうさぎに両手を向けられて、体を動かすことができなくなっている。
「妖怪と一緒にいるにも関わらず、除霊しないのはなぜだ、迅。こいつはまやかしの狐だぞ」
「な?! んなわけねぇだろ! そいつは陰陽師だって言ってたから……嘘だろ?」
嘉将が術を使えば使うほど、白狐兎の頭からにょきにょきと狐の耳が生えてきていた。顔につけていた狐の仮面は耳にひっかかり、すっかり顔を出していた。瞳は青く、色白の顔をむき出していていた。
「うぉおおおああああああ、やめろーーー」
本来あるべき姿の白狐兎が空中に浮かぶ。嘉将は、札を出して、さらに強い術を唱えようとするが、迅は、それを必死で止める。
「じいちゃん!! それだけはやめてくれ!!」
「何を言うか。あいつはれっきとした狐の妖怪だぞ。陰陽師の術だって、そんなの真似すれば狐なんだからできるだろ。騙されるな。全部まやかしだ。気づけ、迅」
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「俺は、信じねぇ!! 絶対信じねぇ!!」
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