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第67話 少女の誘拐 壱
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大嶽丸の前に槍を投げたのは、白狐兎と同じの狐族、空狐だった。後ろには風狐もいる。まさかの2人の登場に白狐兎は、さらにしかめっ面をする。急いで、そばに駆け寄った。
「お前ら、なんでこんなところに来てるんだよ!?」
「なんでって、じいやに頼まれて、ここに来たんだよ。白狐兎のサポートしろって。じいやの言うことは絶対でしょう。それより、あたしの槍、どうよ。使いこなしてるでしょう?」
「空狐が新しく手に入れた槍使いたくて仕方ないだけよ。もう、この娘も言うこと聞かないわ。じいやと一緒」
「あのなぁ、そんなお遊びで出来るもんじゃないんだぞ。まだまだひよっこのくせによぉ……!?」
3人でぺちゃくちゃ会話をしていると、その様子にご立腹の大嶽丸が体と同じ大きさの剣を白狐兎の前を通り過ぎた。頬に線を書いたように血が出ている。大嶽丸が歩くたびに地響きが鳴り響く。
「俺様を無視して、何を騒いでいるんだ!? お前ら、もう存在の価値さえないな。弱いんだから当たり前か!! 雑魚が!?」
ずかずかと巨大な体が動くたびに地面が揺れた。
「逃げろ!!」
白狐兎は空狐と風狐に反対側に逃げるよう指示を出す。
「よそ見をしてるのはどっちだよ!!」
迅は後ろからジャンプして大嶽丸の肩から背中にかけて、霊剣を振り下ろした。叫び声をあげて、痛がっている。
「ぐおぉおぉぉおおぉおおーーーー」
大嶽丸のあちこちに血しぶき飛んでいく。
「……これで勝ったと思うなよ?!」
一瞬倒れたかと思ったが、大嶽丸の体はみるみるうちに再生していく。体を起こして、大きな体が瞬時に風狐の横に移動して、体を片手でひょいっと持ち上げた。風狐は、恐怖のあまりに声を出せない。
「俺の女はこいつに決まりだな! ハハハハ!!」
「お姉ちゃん!!」
空狐は叫ぶが、大嶽丸は虹色の空間に吸い込まれてあっという間に消え去って行った。
「くっ……なんで風狐が巻き込まれなくちゃいけないだ、ちくっしょーー」
白狐兎はアスファルトをこぶしで叩くとほんの少しひび割れていた。
「まさか連れていくとはね……。あいつらの行く場所は大体決まってるけどな」
「「地獄」」
迅と白狐兎は顔を見合わせて、指をさす。シンクロして、声が重なったことに吐き気をもよおした。
「お前とシンクロしたくねぇ……」
「こっちから願いさげだわ」
「仲いいんだね、君ら」
「「仲良くねぇ!!!」」
「だって、また、そろってる……」
顔をうなだれてがっかりする2人に、けらけらと空狐は笑った。
「でもさ、なんであたしじゃないの? 目の前にいたよね」
「お前、連れ去られたかったのか?」
「…………」
「かわいいじゃん。あたしも」
「どこがだよ」
「言ったなぁーーー」
白狐兎は空狐に追いかけまわされていた。迅は、1人ため息をついて、タバコに火をつけた。煙がぷかぷかと浮かぶ先には大きな満月が押し出すように輝いていた。
「お前ら、なんでこんなところに来てるんだよ!?」
「なんでって、じいやに頼まれて、ここに来たんだよ。白狐兎のサポートしろって。じいやの言うことは絶対でしょう。それより、あたしの槍、どうよ。使いこなしてるでしょう?」
「空狐が新しく手に入れた槍使いたくて仕方ないだけよ。もう、この娘も言うこと聞かないわ。じいやと一緒」
「あのなぁ、そんなお遊びで出来るもんじゃないんだぞ。まだまだひよっこのくせによぉ……!?」
3人でぺちゃくちゃ会話をしていると、その様子にご立腹の大嶽丸が体と同じ大きさの剣を白狐兎の前を通り過ぎた。頬に線を書いたように血が出ている。大嶽丸が歩くたびに地響きが鳴り響く。
「俺様を無視して、何を騒いでいるんだ!? お前ら、もう存在の価値さえないな。弱いんだから当たり前か!! 雑魚が!?」
ずかずかと巨大な体が動くたびに地面が揺れた。
「逃げろ!!」
白狐兎は空狐と風狐に反対側に逃げるよう指示を出す。
「よそ見をしてるのはどっちだよ!!」
迅は後ろからジャンプして大嶽丸の肩から背中にかけて、霊剣を振り下ろした。叫び声をあげて、痛がっている。
「ぐおぉおぉぉおおぉおおーーーー」
大嶽丸のあちこちに血しぶき飛んでいく。
「……これで勝ったと思うなよ?!」
一瞬倒れたかと思ったが、大嶽丸の体はみるみるうちに再生していく。体を起こして、大きな体が瞬時に風狐の横に移動して、体を片手でひょいっと持ち上げた。風狐は、恐怖のあまりに声を出せない。
「俺の女はこいつに決まりだな! ハハハハ!!」
「お姉ちゃん!!」
空狐は叫ぶが、大嶽丸は虹色の空間に吸い込まれてあっという間に消え去って行った。
「くっ……なんで風狐が巻き込まれなくちゃいけないだ、ちくっしょーー」
白狐兎はアスファルトをこぶしで叩くとほんの少しひび割れていた。
「まさか連れていくとはね……。あいつらの行く場所は大体決まってるけどな」
「「地獄」」
迅と白狐兎は顔を見合わせて、指をさす。シンクロして、声が重なったことに吐き気をもよおした。
「お前とシンクロしたくねぇ……」
「こっちから願いさげだわ」
「仲いいんだね、君ら」
「「仲良くねぇ!!!」」
「だって、また、そろってる……」
顔をうなだれてがっかりする2人に、けらけらと空狐は笑った。
「でもさ、なんであたしじゃないの? 目の前にいたよね」
「お前、連れ去られたかったのか?」
「…………」
「かわいいじゃん。あたしも」
「どこがだよ」
「言ったなぁーーー」
白狐兎は空狐に追いかけまわされていた。迅は、1人ため息をついて、タバコに火をつけた。煙がぷかぷかと浮かぶ先には大きな満月が押し出すように輝いていた。
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