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第55話 鬼柳の秘密 六
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天国と地獄の間にある審判の間、おどろどろしいその空間で、身長が人間よりも3メートル以上はあっただろうか。金の冠をかぶり、手には笏《しゃく》を思っていた。まるで鬼のような形相で席を立ちあがり、ふたくちおんなから逃れた迅と心咲に迫って来る。
≪誰が勝手に助けてもよいと言ったのだ!!!!≫
地面が揺れる。閻魔様が歩くたびに大きな地震が起きている。2人は怖くなって、必死になって逃げ惑う。どこに逃げればいいのかと迷い果て、迅ががっちりと心咲の腕を引っ張った。来た道を戻るため、現実と異空間の狭間のガラスの割れ目に向かった。
「こっちだ!!」
「えーーー?!」
有無を言わせず、迅は心咲を無我夢中で腕を引っ張った。ひょいっとジャンプして、現実世界に戻って来る。出て来た場所は、迅の自宅の部屋にたどり着いた。狭間の向こうでは、閻魔様が恐ろしい顔をして向かってくるが、念を唱え、パチンと空間が一瞬にして消えた。空中には何も無くなっている。
迅は、息を荒くして、呼吸を整える。迅は、散らかった部屋のベッドにどさっと寝ころんだ。よく見ると、元々、迅の肉体はベッドの上に横になっていて、今まで、心咲と一緒にいたのは霊体だったようだ。青白い光とともに元の体に戻っていく。
体を上半身だけ起こして、状況を把握した。寝汗を大量にかいていた。
「助かってよかったな……」
まだ息が荒い。
「どういうこと? どうして私を助けたの? 私はもう死んだ人間で、霊体だし、さっきの場所だって普通の人には行けない場所なんじゃ……」
心咲は、霊体のまま、迅に話しかける。まともに生きていた頃のため、首はつながっている。
「そっちの念が俺に届いたんだよ。金縛り……。俺の睡眠邪魔しやがって……。腹立ったから念の糸をたどったら、あんたの所に繋がっていたってことだ」
「念の糸? 金縛り? 私、別にそんなことしてない」
「無意識の領域だ。俺はあんたを知らないし、あんたを俺を知らない。見えない誰かが俺たちを引き合わせたかもしんねぇな」
「そんなことってありえるの?」
「さーてね。まぁ、今までたくさんの人除霊してきたけど、執念が深いとそうなるんじゃないかと俺は感じている。憶測でしかないけどな」
「……執念」
「生きていた頃にあれしたかったとかこれしたかったとか……後悔することが多いってことかなぁ。俺は死んだことねぇけどな。でも、俺、閻魔様に顔を見られちまったから地獄に落ちるかもしんねぇな……ハハハ」
「え、あー、それはあるかもしれない。幼少期からの思いとか今までも」
「思い当たる節があるんならそうじゃないか」
迅は仕事中にも関わらず、突然の睡魔に襲われ、どうにか鬼柳の目を盗んで、自宅で仮眠を取っていた。すると、突然の強いオーラとともに念がわきあがり、じわじわと下から金縛りがしたかと思うと、引っ張られるように肉体から霊体がはがされ、うっすら見える執念の糸を追いかけると、ふたくちおんなの集団に襲われている心咲を見て、無意識に助けていた。
「それで? あんたのやり残したことってなんなんだ?」
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、ごくごくと飲んだ。心咲が喋ろうとした瞬間、迅の部屋の玄関のドアが勢いよく開いた。またドアが外れて壊れたようだ。
「なっ?! まさか。あいつか?!」
迅は、ドアの壊れる音が聞こえて、誰が来たかすぐにわかった。心咲は首をかしげて、空中にふわふわと浮かんだ。
廊下には壊れたドアが飛んでホコリが舞い上がっていた。
≪誰が勝手に助けてもよいと言ったのだ!!!!≫
地面が揺れる。閻魔様が歩くたびに大きな地震が起きている。2人は怖くなって、必死になって逃げ惑う。どこに逃げればいいのかと迷い果て、迅ががっちりと心咲の腕を引っ張った。来た道を戻るため、現実と異空間の狭間のガラスの割れ目に向かった。
「こっちだ!!」
「えーーー?!」
有無を言わせず、迅は心咲を無我夢中で腕を引っ張った。ひょいっとジャンプして、現実世界に戻って来る。出て来た場所は、迅の自宅の部屋にたどり着いた。狭間の向こうでは、閻魔様が恐ろしい顔をして向かってくるが、念を唱え、パチンと空間が一瞬にして消えた。空中には何も無くなっている。
迅は、息を荒くして、呼吸を整える。迅は、散らかった部屋のベッドにどさっと寝ころんだ。よく見ると、元々、迅の肉体はベッドの上に横になっていて、今まで、心咲と一緒にいたのは霊体だったようだ。青白い光とともに元の体に戻っていく。
体を上半身だけ起こして、状況を把握した。寝汗を大量にかいていた。
「助かってよかったな……」
まだ息が荒い。
「どういうこと? どうして私を助けたの? 私はもう死んだ人間で、霊体だし、さっきの場所だって普通の人には行けない場所なんじゃ……」
心咲は、霊体のまま、迅に話しかける。まともに生きていた頃のため、首はつながっている。
「そっちの念が俺に届いたんだよ。金縛り……。俺の睡眠邪魔しやがって……。腹立ったから念の糸をたどったら、あんたの所に繋がっていたってことだ」
「念の糸? 金縛り? 私、別にそんなことしてない」
「無意識の領域だ。俺はあんたを知らないし、あんたを俺を知らない。見えない誰かが俺たちを引き合わせたかもしんねぇな」
「そんなことってありえるの?」
「さーてね。まぁ、今までたくさんの人除霊してきたけど、執念が深いとそうなるんじゃないかと俺は感じている。憶測でしかないけどな」
「……執念」
「生きていた頃にあれしたかったとかこれしたかったとか……後悔することが多いってことかなぁ。俺は死んだことねぇけどな。でも、俺、閻魔様に顔を見られちまったから地獄に落ちるかもしんねぇな……ハハハ」
「え、あー、それはあるかもしれない。幼少期からの思いとか今までも」
「思い当たる節があるんならそうじゃないか」
迅は仕事中にも関わらず、突然の睡魔に襲われ、どうにか鬼柳の目を盗んで、自宅で仮眠を取っていた。すると、突然の強いオーラとともに念がわきあがり、じわじわと下から金縛りがしたかと思うと、引っ張られるように肉体から霊体がはがされ、うっすら見える執念の糸を追いかけると、ふたくちおんなの集団に襲われている心咲を見て、無意識に助けていた。
「それで? あんたのやり残したことってなんなんだ?」
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、ごくごくと飲んだ。心咲が喋ろうとした瞬間、迅の部屋の玄関のドアが勢いよく開いた。またドアが外れて壊れたようだ。
「なっ?! まさか。あいつか?!」
迅は、ドアの壊れる音が聞こえて、誰が来たかすぐにわかった。心咲は首をかしげて、空中にふわふわと浮かんだ。
廊下には壊れたドアが飛んでホコリが舞い上がっていた。
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