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第53話 鬼柳の秘密 肆
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とあるファミリーレストランの中、河岡心咲はたった一人ホールのど真ん中でテーブルにある食べ物を目の前にしていたが、目には見えない力によって、空中に皿が浮かんでいた。何がどうなっているかわからないまま、ただただ、呆然と見つめることしかできない体になっている。霊感のある者は、河岡心咲の背中から灰色のオーラを放ち、人ではないような長い両手が伸びて、食べ物を後頭部の大きな口に運んでいるのが見えた。数珠を両手に握りしめたホールスタッフの熊谷麻美だった。
「南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》……」
「何、これ。なんで、ふわふわと皿が浮かぶの? そして、なんでみんな外に逃げているの?」
河岡心咲の体は霊感のないものには見えない硬い鎖のようなもので縛りつけられて、身動きができなかった。それでもなお、後頭部にある大きな口は、次々と他の席の食べ物をむさぼり食べている。
≪うまいうまい。美味しいなぁ……。次はこれにしよう≫
野太い声で呟きながら、腕が次から次と増え続け、口の中に放り込む。周りにいたお客さんたちはおびえて、食事どころではなく、逃げ惑っていた。
「やめて、やめて! そんなに食べたら、私のお腹が破裂する!! やめて。私はそんなに食べたくない!!」
大きな声を出していた。河岡心咲の後頭部に口をつけていたのは通称『ふたくちおんな』と言われる妖怪だった。好き嫌いが激しく、小食の彼女に取りついた。選んで食べていることに嫉妬心が芽生えて憑依した。食べたことのないくらいのお腹の膨らみに限界を感じる。自分の手で食べているわけではない。ふたくちおんなの両腕でしかも後ろからどんどん体に入っている。河岡心咲の言葉を聞いて、ふと食べていた手が止まった。
≪妬ましい……妬ましい……≫
じりじりと河岡心咲の体にふたくちおんなの両腕が戻って来た。
陰のオーラが強まって来ると同時に彼女の首が一瞬のうちに吹き飛んだ。
シャワーのように血しぶきがあたり一面に飛ぶ。
「きゃぁぁああああーーーーーー」
数メートル近くで様子を伺っていたホールスタッフの熊谷麻美の頬に血が斜めに吹き飛ぶ。ごろんと床に河岡心咲の頭が転がった。まだ目が開いたままだった。
ふたくちおんなはブツブツとつぶやきながら、河岡心咲から抜け出て、レストランの外にフラフラと移動した。いくらかすっきりした顔はしていたが、まだ欲求は満たされていなかったようだ。次の憑依するターゲットを探しに行った。
一緒に来ていた佐野華愛、吉村優菜、坂田七海は、屋外にあるカフェテーブルに集まって改めてメニューを注文して談笑していた。河岡心咲の話題はしないように必死に避けて話していた。交差点でパトカーのサイレンが鳴り響いた頃にはただ事じゃないと改めて、レストランの中に入った時には3人は想像も絶するような顔をしていた。
夕日が沈む頃、迅の式神の烏兎翔がレストランのクルクル回る看板の上で一休みしていた。
「南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》……」
「何、これ。なんで、ふわふわと皿が浮かぶの? そして、なんでみんな外に逃げているの?」
河岡心咲の体は霊感のないものには見えない硬い鎖のようなもので縛りつけられて、身動きができなかった。それでもなお、後頭部にある大きな口は、次々と他の席の食べ物をむさぼり食べている。
≪うまいうまい。美味しいなぁ……。次はこれにしよう≫
野太い声で呟きながら、腕が次から次と増え続け、口の中に放り込む。周りにいたお客さんたちはおびえて、食事どころではなく、逃げ惑っていた。
「やめて、やめて! そんなに食べたら、私のお腹が破裂する!! やめて。私はそんなに食べたくない!!」
大きな声を出していた。河岡心咲の後頭部に口をつけていたのは通称『ふたくちおんな』と言われる妖怪だった。好き嫌いが激しく、小食の彼女に取りついた。選んで食べていることに嫉妬心が芽生えて憑依した。食べたことのないくらいのお腹の膨らみに限界を感じる。自分の手で食べているわけではない。ふたくちおんなの両腕でしかも後ろからどんどん体に入っている。河岡心咲の言葉を聞いて、ふと食べていた手が止まった。
≪妬ましい……妬ましい……≫
じりじりと河岡心咲の体にふたくちおんなの両腕が戻って来た。
陰のオーラが強まって来ると同時に彼女の首が一瞬のうちに吹き飛んだ。
シャワーのように血しぶきがあたり一面に飛ぶ。
「きゃぁぁああああーーーーーー」
数メートル近くで様子を伺っていたホールスタッフの熊谷麻美の頬に血が斜めに吹き飛ぶ。ごろんと床に河岡心咲の頭が転がった。まだ目が開いたままだった。
ふたくちおんなはブツブツとつぶやきながら、河岡心咲から抜け出て、レストランの外にフラフラと移動した。いくらかすっきりした顔はしていたが、まだ欲求は満たされていなかったようだ。次の憑依するターゲットを探しに行った。
一緒に来ていた佐野華愛、吉村優菜、坂田七海は、屋外にあるカフェテーブルに集まって改めてメニューを注文して談笑していた。河岡心咲の話題はしないように必死に避けて話していた。交差点でパトカーのサイレンが鳴り響いた頃にはただ事じゃないと改めて、レストランの中に入った時には3人は想像も絶するような顔をしていた。
夕日が沈む頃、迅の式神の烏兎翔がレストランのクルクル回る看板の上で一休みしていた。
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