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第32話 氷上に隠れる漆黒の者 弐
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スーパーマーケットの駐車場に到着した。鬼柳が運転席から外に出る。迅は、なんでこんなところに来たんだろうと疑問に思う。こめかみが痛いのは間違いない。
「先輩、なんでスーパーマーケットですか」
「今日の事件はそっちじゃない。こっち」
鬼柳は、スーパーマーケットのテナント店舗がならぶ端の方を指さした。『アイスリンク・フローズン』という店の名前が書かれた看板があった。迅はやっと車から体を起こして立ち上がってみる。
「アイスリンク? え、ここに出たってことですか?」
「……らしいのよ。ほら、行くぞ」
「俺、寒いの苦手……夏に行くのは涼しいのはわかりますけど、結局、中は寒いっすよね」
「文句言わない。妖怪はところ構わずでしょうが」
「……それはわかってますけども!」
両腕を撫でて、まだ中に入ってない寒さを想像して肌が震えた。
「やだなぁ」
ふとこめかみに痛みが走る。
「気をつけろ」
keepoutの黄色いテープの先に進んだ。建物がぼろぼろになっている。警察関係者たちがごった返していた。事件の調査をしていた。迅と鬼柳は恐る恐る中の方へ入って行く。
◇◇◇
数時間前のアイスリンク・フローズンーーー。
「たっくん、待ってよー」
スケート教室が終わる時間だった。スケートクラブの子どもたち2人がふざけて、リンクの中で鬼ごっこをしていた。
「しゅうくん、こっちだよ。ほらほら」
スケート靴が氷に触れる度音が鳴る。氷そのものは滑ることができない。スケート靴の刃があることにより、氷が削れて水ができる。その水が滑りやすい原因を作っている。滑る音が氷の奥の奥に響いている。
ざわざわと利用客が滑る人とこれから帰る人でごった返しだった。白かったアイスリンクが黒い何かで覆われている。
「たっくん、何か氷の下に泳いでるよ」
いつも真っ白なアイスリンク。今日は何だか不気味な色に変化していることに気づいたのは小学生の藤田拓弥《ふじたたくや》と横田琉聖《よこたりゅうせい》だった。黒く大きな魚のシルエットができていた。
「ねぇ、上にあがってくるみたい。逃げた方いいんじゃない?」
「うん。危ないよ」
2人は何か危険を察したようで、アイスリンクの端の方に滑っていく。予想は当たっている。氷の下で何か泳いでいると思っていたものが、氷を突き抜けて、地上に這い上がって来た。海のような水しぶきをあげて、2人に襲ってくる。黒いジンベイザメだった。
「うわぁぁぁああああーーー」
「こっち来るぅーーー、ママー、逃げてーーー」
藤田拓弥は腰が抜けてその場に崩れてしまった。横田琉聖は母親の元に駆け出して、すぐに自動ドアの出入り口まで移動した。恐怖のあまりに拓弥を助けるという気持ちが出てこなかった。無我夢中で逃げていた。思い出した時はすでに遅かった。体長は10mはあるだろうか。とても温厚で大人しく、怖がり屋の性格のジンベイザメが人間を襲うのはおかしい。瞳の色は黒いものから赤くなっていた。そのジンベイザメは、操られていたのだ。ジンベイザメの背中に乗って、腕を組んでいる。背の小さい派手な赤い花を描かれた着物を着て、頭に青い狐の仮面を付けている男の子が原因かもしれない。
「遊んでいるやつは連れていけ。そんなやつは必要ない」
腰が抜けて、とどまった拓弥は、ジンベイゼメに足を口でくわえられて、引きずり込まれた。氷の中に吸い込まれていく。中で何が起こっているかわからない。バキボキと骨が折れる音が氷の中で響いていた。
「ぐわあぁああああーーーー」
「……それでいい。言うこときかないやつはそれくらいお仕置きが必要だ」
拓弥の手足すべてジンベイゼメに持っていかれてしまう。氷の上に体をポイっと投げ出された。琉聖は拓弥のことを思い出した。アイスリンクに戻ると、足元に突然高いところから拓弥の胴体のみが転がって来た。落ちた床は血まみれになっている。
信じられなかったが、急いで逃げ惑う。
「え、え!? たっくんが。うわぁわわあわああーーーママーーー」
拓弥の母は、膝を床につけて、現実を受け入れられず、声を失っていた。
琉聖の母は、わんわん泣く琉聖をなだめるのに必死だった。
なんで、こんなことが起きるのか不思議で仕方ない。
アイスリンクの氷は南極の氷のようにぼこぼこの岩になっていた。
ジンベイザメに襲われて、1人の男の子が被害者となった。
救急車のサイレンとパトカーのサイレンが響きわたっていた。
「先輩、なんでスーパーマーケットですか」
「今日の事件はそっちじゃない。こっち」
鬼柳は、スーパーマーケットのテナント店舗がならぶ端の方を指さした。『アイスリンク・フローズン』という店の名前が書かれた看板があった。迅はやっと車から体を起こして立ち上がってみる。
「アイスリンク? え、ここに出たってことですか?」
「……らしいのよ。ほら、行くぞ」
「俺、寒いの苦手……夏に行くのは涼しいのはわかりますけど、結局、中は寒いっすよね」
「文句言わない。妖怪はところ構わずでしょうが」
「……それはわかってますけども!」
両腕を撫でて、まだ中に入ってない寒さを想像して肌が震えた。
「やだなぁ」
ふとこめかみに痛みが走る。
「気をつけろ」
keepoutの黄色いテープの先に進んだ。建物がぼろぼろになっている。警察関係者たちがごった返していた。事件の調査をしていた。迅と鬼柳は恐る恐る中の方へ入って行く。
◇◇◇
数時間前のアイスリンク・フローズンーーー。
「たっくん、待ってよー」
スケート教室が終わる時間だった。スケートクラブの子どもたち2人がふざけて、リンクの中で鬼ごっこをしていた。
「しゅうくん、こっちだよ。ほらほら」
スケート靴が氷に触れる度音が鳴る。氷そのものは滑ることができない。スケート靴の刃があることにより、氷が削れて水ができる。その水が滑りやすい原因を作っている。滑る音が氷の奥の奥に響いている。
ざわざわと利用客が滑る人とこれから帰る人でごった返しだった。白かったアイスリンクが黒い何かで覆われている。
「たっくん、何か氷の下に泳いでるよ」
いつも真っ白なアイスリンク。今日は何だか不気味な色に変化していることに気づいたのは小学生の藤田拓弥《ふじたたくや》と横田琉聖《よこたりゅうせい》だった。黒く大きな魚のシルエットができていた。
「ねぇ、上にあがってくるみたい。逃げた方いいんじゃない?」
「うん。危ないよ」
2人は何か危険を察したようで、アイスリンクの端の方に滑っていく。予想は当たっている。氷の下で何か泳いでいると思っていたものが、氷を突き抜けて、地上に這い上がって来た。海のような水しぶきをあげて、2人に襲ってくる。黒いジンベイザメだった。
「うわぁぁぁああああーーー」
「こっち来るぅーーー、ママー、逃げてーーー」
藤田拓弥は腰が抜けてその場に崩れてしまった。横田琉聖は母親の元に駆け出して、すぐに自動ドアの出入り口まで移動した。恐怖のあまりに拓弥を助けるという気持ちが出てこなかった。無我夢中で逃げていた。思い出した時はすでに遅かった。体長は10mはあるだろうか。とても温厚で大人しく、怖がり屋の性格のジンベイザメが人間を襲うのはおかしい。瞳の色は黒いものから赤くなっていた。そのジンベイザメは、操られていたのだ。ジンベイザメの背中に乗って、腕を組んでいる。背の小さい派手な赤い花を描かれた着物を着て、頭に青い狐の仮面を付けている男の子が原因かもしれない。
「遊んでいるやつは連れていけ。そんなやつは必要ない」
腰が抜けて、とどまった拓弥は、ジンベイゼメに足を口でくわえられて、引きずり込まれた。氷の中に吸い込まれていく。中で何が起こっているかわからない。バキボキと骨が折れる音が氷の中で響いていた。
「ぐわあぁああああーーーー」
「……それでいい。言うこときかないやつはそれくらいお仕置きが必要だ」
拓弥の手足すべてジンベイゼメに持っていかれてしまう。氷の上に体をポイっと投げ出された。琉聖は拓弥のことを思い出した。アイスリンクに戻ると、足元に突然高いところから拓弥の胴体のみが転がって来た。落ちた床は血まみれになっている。
信じられなかったが、急いで逃げ惑う。
「え、え!? たっくんが。うわぁわわあわああーーーママーーー」
拓弥の母は、膝を床につけて、現実を受け入れられず、声を失っていた。
琉聖の母は、わんわん泣く琉聖をなだめるのに必死だった。
なんで、こんなことが起きるのか不思議で仕方ない。
アイスリンクの氷は南極の氷のようにぼこぼこの岩になっていた。
ジンベイザメに襲われて、1人の男の子が被害者となった。
救急車のサイレンとパトカーのサイレンが響きわたっていた。
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