【完結】ひとり焼肉が好きなひと。

もちっぱち

文字の大きさ
上 下
2 / 11

ひとり焼肉 牛タン2枚目

しおりを挟む
 
 デスクに座ってすぐに、
 目の前にある
 白く、ボタンがたくさんある
 固定電話が
 赤いランプを光らせてコールした。


 これから、トイレに行って、
 ストッキングを履き替えて、
 靴擦れをした踵の絆創膏を
 貼り替えようと
 思ったのにと思いながら、
 片手に受話器を取り、
 耳と肩で押さえて、電話に出た。


「はい、ネクスト株式会社の
 沢村でございます。」

 いつも通りにいつもの声の調子で出る。
 ちょうど、電話してきたのは、
 同僚の佐藤だった。

『あ、沢村さん。おはようございます。
 佐藤です。
 申し訳ないんですけど、
 わたし、今日、熱あるので、
 お休みします。
 部長に伝えててもらえますか?』

「おはようございます。
 なんで、ラインしないの?
 会社のグループラインあるよね?」


「あ、そうでしたね。
 でも、嘘ついたって言われたりするの
 嫌なので…ゴホゴホッ。
 電話の方が信憑性あるかなと思って
 それに沢村さんが出たから。」

「そうですか。
 分かりました。
 お大事にしてくださいね。」


「…沢村さん、冷たいですね。」


「私、今、それどころじゃないのよ。
 んじゃ、部長に伝えておくから。」

「はーい。」

 佐藤は、すぐに切り替えて、
 通話終了ボタンを押した。
 瑞季は、すぐにトイレに駆け出して、
 ストッキングを履き替えに行った。

 パーテーションで区切りられている
 株式会社ネクストは
 インターネット通信会社の下請けで
 電柱や光通信の申請書作りを主に行う
 会社だった。
 次々と社員が出勤し始めていた。
 瑞季は、慌てて、自分のデスクに
 戻って、
 荷物を整えると、廊下や、
 デスクの床周りの掃除を始めた。
 
 女性社員が基本、部屋の掃除や、
 お茶出し
 を率先してやるという暗黙のルールが
 ここにはまだ存在している。

 瑞季はいわゆるOLを勤めていた。

 さっき電話で休みの連絡を入れた
 佐藤遥香《さとうはるか》と
 女子は2人しか
 ここの部署はいない。

 1人休むと全部瑞紀がやりこなさないと
 いけない。

 1人の割に男性社員は
 10人も存在している。


「おはようございます。」

「おはようございます。
 部長、今朝、電話がありまして、
 佐藤さん、熱があるということで
 お休みするそうです。」

「あー、そうでしたか。
 わかりました。
 佐藤さん、ラインには
 連絡ないですよね。
 電話だったんですね。」


「一応、声かけはしたんですけど、
 電話の方が信じてくれるかなとか
 言ってました。
 具合悪そうな声はもちろん
 してましたけども。」


「なるほどね。
 そういう意味で。
 沢村さん、ありがとう。
 若い人の対応、お疲れ様です。」


 部長の山下 透やましたとおる
 沢村瑞紀の上司である。
 さらに、深い関係性でもある。


 山下は瑞季の横に行き、
 耳打ちで話す。

「今日、大丈夫だから。
 夜、よろしくね。」

「あ、はい。
 わかりました。」

 業務連絡のごとく、作り笑顔で
 返事をする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

純粋な私の汚れた復讐

平本りこ
恋愛
私、越智香苗には、社内に秘密の恋人がいる。 若手ながら将来の地位が約束されている、有能な彼の名は溝沼紘一。「香苗の純粋なところが好き」と真摯な目をして言った彼はしかし、私の知らないところで既婚者になっていた。 あまりの衝撃に、現実逃避のためにアルコールを大量に摂取した私は、泥酔して意識を失ってしまう。 次に気づいた時、目に映ったのは、秘密の恋人との関係が始まったあの日の居酒屋の風景だった。 強烈な依存心はやがて憎悪となる。騙され、転がされ、仕事も恋人も失った純粋な私の汚れた復讐が今、幕を開ける。

乗り換え ~結婚したい明子の打算~

G3M
恋愛
 吉田明子は職場の後輩の四谷正敏に自分のアパートへの荷物運びを頼む。アパートの部屋で二人は肉体関係を持つ。その後、残業のたびに明子は正敏を情事に誘うようになる。ある日、明子は正敏に結婚してほしいと頼みむのだが断られてしまう。それから明子がとった解決策 は……。 <登場人物> 四谷正敏・・・・主人公、工場勤務の会社員 吉田明子・・・・正敏の職場の先輩 山本達也・・・・明子の同期 松本・・・・・・正敏と明子の上司、課長 山川・・・・・・正敏と明子の上司

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

最愛の彼

詩織
恋愛
部長の愛人がバレてた。 彼の言うとおりに従ってるうちに私の中で気持ちが揺れ動く

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...