上 下
58 / 61

第58話

しおりを挟む
不満はない。
呼吸も落ち着いている。

部屋のストーブにも灯油は入っているし、
ポカポカ温かい。

最近買ってくれた
クリスマスプレゼントの
カピバラの足を入れるクッションが気に入ってる。

こうやって机に向かって宿題するのも、
あと少しで終わる。
冬休みの宿題は
思ったより少ない。


英和辞典を開きながら、英文を日本語訳に
してドリルを解いていた。

スマホスタンドに置いていた
スマホの画面が
待ち受け画面から切り替わった。

ライン電話だった。

音楽を聴いていたイヤホンで電話する。

「もしもし?」


『ごめん、今いい?』

「うん。英語の宿題してた。
 ドリルの。」

『まじめだね。
 珍しい。休みいっぱいあるのに…。』

「早めに終わらせて、自由になりたいの。」

『そういうことか。』

「それで?
 なんの用事?」

『うん。
 年明けたら、初詣行かないかなと
 思ってた。』

「いいね。
 合格祈願するの?」

『もちろん。
 絵馬にも書こうかな。
 やっぱ学問の神様って言ったら?』

「塩竃神社だよね。
 私も高校受験の時行ったよ。
 合格祈願大事!」

『雪菜は、祈願いいの?
 専門学校行くんでしょう。』 

「うん。 
 でも、大学と違って、
 申し込みみたいなもんだから。
 書類選考と面接はあるけど
 よほどのことで落ちることはないって 
 先輩に聞いたから。
 別に祈願するほどではないかな。」

『そしたらさ、
 その後のことを祈ればよくない?
 うまく行きますようにって。
 願い事すればいいじゃん。』

「あー、そっか。
 んじゃ、絵馬に書けばいいかな。
 美容師になれますようにって。」

『そうそう。』

 電話で話してる途中にドアのノックが鳴る。

「姉ちゃん!?
 誰と話してるの?
 ちょっと平澤先輩じゃないよね?!」

「げげ。徹平うるさいよ?!」

『なに、徹平くん?』

「そう。」

『あーゲームのことか?』

「姉ちゃん、早く電話やめてよ。
 平澤先輩とゲームするんだから!!」

 ドアの向こうで叫ぶ。
 すると、横の隣の家の窓からも
 何か聞こえてくる。

「そうだぞ!!
 平澤先輩を独占は許さないぞ。」
 
 雅俊が窓を開けて叫んでいる。
 モテモテの凛汰郎のようだ。
 あっちもこっちも誘いがある。

「凛汰郎くん。
 今日はゲーム休もうよぉ。」

『えー、明日、出かけるから
 やってもいいっしょ?』

「何それぇ。
 ゲームと私でどっち好きなの?」

『どっちもぉ。』

「雪菜!! 
 早く平澤先輩をよこしなさい!!」

雅俊が叫ぶ。

「むむむ……。
 明日は1日ずっと一緒だからね。」

『はいはい。わかりました。
 徹平くんらに言っておいて
 今ログインするからって。』

「はぁい。
 雅俊、徹平~!
 今、凛汰郎くんログインするって。」

「よっしゃー。
 やってやるぞ。」
 
 グーのポーズで、横の窓でいう雅俊。

「マジで。
 今、部屋戻るから。
 今日も1位になれっかも。」

 徹平はジャンプして喜んでは
 慌てて、自分の部屋に戻って
 スマホを持ち、ヘッドホンを装着した。

 彼女とゲームを天秤にかけるのは
 間違っているのかと
 もやもやする雪菜だった。

 明日は悔しいから
 凛汰郎を1日独占してやると
 決意した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...