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第42話
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のんびり時間が流れている昼休み。
雪菜と緋奈子と凛汰郎は中庭で
お弁当を食べていた。
まだ緋奈子に心を開けていない凛汰郎は、
向かい合わせに2人を座らせて、
横の席に外側を向いて、一人で
いるかのようなスタイルで食べていた。
耳には、しっかりとワイヤレスイヤホンを
つけて、音楽を聴いている。
「ねぇねぇ、
彼氏になったのいいけど、
なんで、ここ?
隣じゃないの?
しかも顔つき合わせてないし。
意味ある?」
緋奈子は、場所を指さし言う。
小声で雪菜は言う。
「凛汰郎くん、人見知りだから。
緋奈子のことよく知らないし、
近くにはいるって話で…。」
「え、だったら、うちらだけでも
よくない?」
「だーめ。
凛汰郎くん友達いないから、
かわいそうでしょう。」
「ぼっちか。
ぼっちなのね。」
「ちょっと、ぼっち、言わないで。
同じ空間いられればいいってことだから
空気の存在って思ってて。」
(いてもいなくてもいい存在の空気って…。
雪菜の方がひどい気がするけど。)
緋奈子は、声を普通の大きさに戻す。
「そっか。
んじゃ、2人はラブラブなわけね。
私はお邪魔かなぁと思ってしまうけど、
親友だからいさせてもらうよ?
聞こえてないかもしれないけど。」
雪菜と緋奈子は、お弁当を広げて
食べ始める。
凛汰郎は、近くに飛んできた
鳩にパンかすをあげながら、
大きなハムとたまごを挟んだ
サンドイッチを食べていた。
「あ、いたいた。
探してたんだ。」
2階の廊下の窓から声をかけるのは、
雅俊だった。
「出た、出た。
お騒がせくん。」
緋奈子は、つぶやく。
2階にいたかと思ったら、
中庭まで駆け出してくる。
「みーつけた。
雪菜、今日は、お弁当に
ハンバーグ入ってるね。」
「ちょっと見ないでよ。」
そして横から凛汰郎が
無言の圧をかける。
「あ、いたんすね。先輩。」
「ちょっと、雪菜、
雅俊くん相手にしないで
私の話聞いてよ。」
「え、どうしたの?」
「最近、彼氏と別れてさぁ。
最悪なんだよねぇ。
あっちに年上の好きな人
できたからって
年下は飽きたとか言うの。
ひどくない?」
ポロポロと話し出す。
横では頬杖をついて雅俊も聞いている。
「それは、大変だったね。
年下ってことは、相手の彼氏は、
年上の人だったの?」
「そう、部活の先輩だった人。
今は、大学生だったんだけどさ。
やっぱ、大学には誘惑が多いよね。
サークルとかバイトとかいろいろ
あるじゃない。
こっちは受験だと思って連絡も
途切れてたからさ。
悲しいよぉ。」
腕の中に顔をうずめる緋奈子。
「そっか。
でも、まぁ、ご縁がなかったってことで
新たな恋を見つけに行けばいいじゃない。」
「そうだよね。
でも、そう簡単に次の彼氏見つかる?
3年は付き合ってたんだよぉ。
引きずるわぁ。」
「俺、どうすか?」
キラキラの笑顔で自分の顔を指さし、
雅俊はアピールする。
「え?!」
雪菜は驚いた。
後ろ向きで聞いていた
凛汰郎の耳もぴくぴくとなる。
「俺、今、フリーですよ。
空いてます!」
軽いノリで話す雅俊。
「え、本当?
この間、告白されてなかったっけ。
フラッシュモブ系の…。」
数日前、雅俊はファンクラブから選出されて
いたフラッシュモブ告白が、生徒たちが
大勢いる校庭で行われて、断りづらくなり、
好きじゃないのにOKして
3日で別れていた。
「好きでもないのにOKしてはいけないと
学びましたよ。
良い経験でしたわ。」
「へぇー、そうなんだ。
でも、誘うってことは?」
「脈ありでーす!」
指パッチンをして、反応する。
「え、緋奈子。まさか。」
「別にいいじゃない?
高校生の男女交際ってさ、
別れるために付き合うっていうのあるしさ。
よぉし、そのノリ乗った。
雅俊くん、付き合おうじゃないか。
ね?」
緋奈子は、雅俊の肩に手をまわした。
雪菜は、その様子を見て、ドキドキが
とまらない。
「え、それ、本当?」
「まぁまぁ、そんなお堅くならず。
2人は2人の世界を楽しみな。
んじゃ、まーくん、屋上行こう。
あたしの愚痴を聞いて。」
「はーい。
んじゃあな。雪菜。」
後ろ向きで手をパタパタと
振って立ち去る2人。
雪菜と凛汰郎はしばらくその姿を見ながら
沈黙になる。
凛汰郎は、雪菜の向かい側に座った。
「あのさ、今朝、あのぬいぐるみ、
あいつ、持ってたけど、なんで?」
雪菜は、ハッと思い出した。
バックから狼のぬいぐるみが取れて
しまって、雅俊が持っていたことに
凛汰郎は気になっていた。
「えっと、別にあげたとかじゃなくて、
バックから取れちゃってたのを
雅俊が拾ってくれて、
それで、汚れてたから
洗ってくれたみたいで。」
「ふーん。そっか。
別に、無くしたとか壊れたとかは
気にしないけど、
なんであいつなのかなって思っただけ。
まぁ、いいや。
物はいずれ壊れるものだから、
その代わり、雪菜はいなくならないでよ。」
凛汰郎の口から突然名前で呼ばれたことに
心臓が飛び出そうになった。
頭から火が出そうなくらい真っ赤になる。
「え、え?
いなくならないよ。
なんでそういうこと言うかな。」
「あのぬいぐるみより大事だから。」
ぼそっとすごい発言をする凛汰郎に
雪菜は何も言えなくなった。
柔らかな風が中庭に巻き起こる。
カザミドリは急いでぐるぐるとまわっている。
まるで照れて焦っている雪菜のようだった。
雪菜と緋奈子と凛汰郎は中庭で
お弁当を食べていた。
まだ緋奈子に心を開けていない凛汰郎は、
向かい合わせに2人を座らせて、
横の席に外側を向いて、一人で
いるかのようなスタイルで食べていた。
耳には、しっかりとワイヤレスイヤホンを
つけて、音楽を聴いている。
「ねぇねぇ、
彼氏になったのいいけど、
なんで、ここ?
隣じゃないの?
しかも顔つき合わせてないし。
意味ある?」
緋奈子は、場所を指さし言う。
小声で雪菜は言う。
「凛汰郎くん、人見知りだから。
緋奈子のことよく知らないし、
近くにはいるって話で…。」
「え、だったら、うちらだけでも
よくない?」
「だーめ。
凛汰郎くん友達いないから、
かわいそうでしょう。」
「ぼっちか。
ぼっちなのね。」
「ちょっと、ぼっち、言わないで。
同じ空間いられればいいってことだから
空気の存在って思ってて。」
(いてもいなくてもいい存在の空気って…。
雪菜の方がひどい気がするけど。)
緋奈子は、声を普通の大きさに戻す。
「そっか。
んじゃ、2人はラブラブなわけね。
私はお邪魔かなぁと思ってしまうけど、
親友だからいさせてもらうよ?
聞こえてないかもしれないけど。」
雪菜と緋奈子は、お弁当を広げて
食べ始める。
凛汰郎は、近くに飛んできた
鳩にパンかすをあげながら、
大きなハムとたまごを挟んだ
サンドイッチを食べていた。
「あ、いたいた。
探してたんだ。」
2階の廊下の窓から声をかけるのは、
雅俊だった。
「出た、出た。
お騒がせくん。」
緋奈子は、つぶやく。
2階にいたかと思ったら、
中庭まで駆け出してくる。
「みーつけた。
雪菜、今日は、お弁当に
ハンバーグ入ってるね。」
「ちょっと見ないでよ。」
そして横から凛汰郎が
無言の圧をかける。
「あ、いたんすね。先輩。」
「ちょっと、雪菜、
雅俊くん相手にしないで
私の話聞いてよ。」
「え、どうしたの?」
「最近、彼氏と別れてさぁ。
最悪なんだよねぇ。
あっちに年上の好きな人
できたからって
年下は飽きたとか言うの。
ひどくない?」
ポロポロと話し出す。
横では頬杖をついて雅俊も聞いている。
「それは、大変だったね。
年下ってことは、相手の彼氏は、
年上の人だったの?」
「そう、部活の先輩だった人。
今は、大学生だったんだけどさ。
やっぱ、大学には誘惑が多いよね。
サークルとかバイトとかいろいろ
あるじゃない。
こっちは受験だと思って連絡も
途切れてたからさ。
悲しいよぉ。」
腕の中に顔をうずめる緋奈子。
「そっか。
でも、まぁ、ご縁がなかったってことで
新たな恋を見つけに行けばいいじゃない。」
「そうだよね。
でも、そう簡単に次の彼氏見つかる?
3年は付き合ってたんだよぉ。
引きずるわぁ。」
「俺、どうすか?」
キラキラの笑顔で自分の顔を指さし、
雅俊はアピールする。
「え?!」
雪菜は驚いた。
後ろ向きで聞いていた
凛汰郎の耳もぴくぴくとなる。
「俺、今、フリーですよ。
空いてます!」
軽いノリで話す雅俊。
「え、本当?
この間、告白されてなかったっけ。
フラッシュモブ系の…。」
数日前、雅俊はファンクラブから選出されて
いたフラッシュモブ告白が、生徒たちが
大勢いる校庭で行われて、断りづらくなり、
好きじゃないのにOKして
3日で別れていた。
「好きでもないのにOKしてはいけないと
学びましたよ。
良い経験でしたわ。」
「へぇー、そうなんだ。
でも、誘うってことは?」
「脈ありでーす!」
指パッチンをして、反応する。
「え、緋奈子。まさか。」
「別にいいじゃない?
高校生の男女交際ってさ、
別れるために付き合うっていうのあるしさ。
よぉし、そのノリ乗った。
雅俊くん、付き合おうじゃないか。
ね?」
緋奈子は、雅俊の肩に手をまわした。
雪菜は、その様子を見て、ドキドキが
とまらない。
「え、それ、本当?」
「まぁまぁ、そんなお堅くならず。
2人は2人の世界を楽しみな。
んじゃ、まーくん、屋上行こう。
あたしの愚痴を聞いて。」
「はーい。
んじゃあな。雪菜。」
後ろ向きで手をパタパタと
振って立ち去る2人。
雪菜と凛汰郎はしばらくその姿を見ながら
沈黙になる。
凛汰郎は、雪菜の向かい側に座った。
「あのさ、今朝、あのぬいぐるみ、
あいつ、持ってたけど、なんで?」
雪菜は、ハッと思い出した。
バックから狼のぬいぐるみが取れて
しまって、雅俊が持っていたことに
凛汰郎は気になっていた。
「えっと、別にあげたとかじゃなくて、
バックから取れちゃってたのを
雅俊が拾ってくれて、
それで、汚れてたから
洗ってくれたみたいで。」
「ふーん。そっか。
別に、無くしたとか壊れたとかは
気にしないけど、
なんであいつなのかなって思っただけ。
まぁ、いいや。
物はいずれ壊れるものだから、
その代わり、雪菜はいなくならないでよ。」
凛汰郎の口から突然名前で呼ばれたことに
心臓が飛び出そうになった。
頭から火が出そうなくらい真っ赤になる。
「え、え?
いなくならないよ。
なんでそういうこと言うかな。」
「あのぬいぐるみより大事だから。」
ぼそっとすごい発言をする凛汰郎に
雪菜は何も言えなくなった。
柔らかな風が中庭に巻き起こる。
カザミドリは急いでぐるぐるとまわっている。
まるで照れて焦っている雪菜のようだった。
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