31 / 61
第31話
しおりを挟む
後ろを気にせずにペデストリアンデッキを
歩いて行く。
目的地の雑貨屋デパートの入口に着いてもなお、
後ろを向かずにさっさと、
エスカレーターを登っていく。
声をかけてとめようとするが、
雪菜はあきらめて、
そのまま一人歩いて行く。
ハッと後ろを振り向いた凛汰郎は、
雪菜がいないことに気づく。
まったく知らない女性が下の段の
エスカレーターに乗っていた。
小さなため息をついて、3階の踊り場で
待っていた。
雪菜は、下を向いたまま、
3階におりる。
声をかけるのも恥ずかしさがあった。
「……悪かった。」
顔を横にして、雪菜はふくれっ面になっていた。
「迷子になったら困るから、
こうしておこう。」
凛汰郎は、雪菜の右手を自分の左手で
つかんで、さらに上の5階フロアに
向かった。
この瞬間が初めて手をつなぐのが
初めてだった。
無意識に手をつないでる。
凛汰郎は雪菜を子どもかのように
保護者目線で対応をしていた。
雪菜はそんなふうに思われているなんて
思いもしていない。
でも、目的地って一体どこだったのか。
頭が働かなくなっていた。
つないだ手が想像よりも
骨骨していて、
細い指ひとつひとつが
暖かいことになんだか、
胸がどきどきと気持ちもホクホクしていた。
手汗がかいてないかも気になる。
「あのさ、ここでいい?
ついでに見ていきたいんだけど。」
凛汰郎は、音楽フロアコーナーを指さした。
せっかく手をつないでいたのが急に離れて
寂しくなった。
「……あ、えっと、うん。
あれ、そういや、なんでここに来たんだっけ。」
「これ。」
凛汰郎は、自分の耳を指さして、アピールする。
「あ!! ワイヤレスイヤホンだよね。
その節は、本当にごめんなさい。」
何度も謝る雪菜は、申し訳なさそうに
顔を上げてとジェスチャーする。
「選ぶから、見てよ。」
「うん。わかった。」
2人は、縦並びに店の中に入って行った。
イヤホンコーナーでは、ワイヤレスイヤホンと
コード付きイヤホンといろんな種類のものが
あった。
「これいいかもなぁ…。」
商品を手に取り、雪菜に見せる。
「え?!! それはちょっと…。
いくら弁償するって言っても
高すぎるよ…。」
凛汰郎は反応を見たかったようで、
わざとお高いワイヤレスイヤホンを出して見せた。
金額は10950円と書かれている。
「嘘に決まってるだろ。」
「え……。」
舌をペロッと出す。
「これで勘弁してやる。」
高いイヤホンの隣にあった3000円相当の
ワイヤレスイヤホンをぽいっと雪菜の両手に
渡した。
ほっと一安心した半面、
凛汰郎にこんな茶目っ気あったかなと
信じられなかった。
いつも部活では終始真面目な様子で、
違ったいじわるのされ方していたのに、
前と違う性格にどぎまぎしていた。
「ちなみにこれより安い商品は、
コードつきイヤホンだよね。」
「一番安くてその金額が相場だよ。
俺が前買ったワイヤレスイヤホンは
それくらいの値段。」
「そうなんだね。
私が壊してしまったんだから、
仕方ない。
しっかりと弁償させていだたきます。」
「ああ。」
腕を組んでうなずいた。
雪菜は凛汰郎から渡された商品をレジカウンターに
持って行った。
本当は壊した買ってもらうつもりなんて
さらさらなかった。
会う口実ができていたため、本来の思いと
違う行動をしていた。
私服姿で雪菜に会うことは今までなかったため、
興味本位もある。
申し訳ない気持ちを解消するために
凛汰郎は何かを企んでいた。
「こちらをお受け取りください。」
「あ、どうも。」
無事、雪菜が買ったイヤホンは、凛汰郎の手に渡った。
「これで任務完了だね。
よかった。」
雪菜は胸をなでおろした。
「これで許したとは言ってないけどな。」
「え?どういうこと。」
目を丸くする雪菜。
「ちょっと、来てほしいんだけど。」
また迷子になると心配した凛汰郎は
自然に手をつないでいた。
拒否する理由も見つからない雪菜は言う通りに
着いて行った。
歩いて行く。
目的地の雑貨屋デパートの入口に着いてもなお、
後ろを向かずにさっさと、
エスカレーターを登っていく。
声をかけてとめようとするが、
雪菜はあきらめて、
そのまま一人歩いて行く。
ハッと後ろを振り向いた凛汰郎は、
雪菜がいないことに気づく。
まったく知らない女性が下の段の
エスカレーターに乗っていた。
小さなため息をついて、3階の踊り場で
待っていた。
雪菜は、下を向いたまま、
3階におりる。
声をかけるのも恥ずかしさがあった。
「……悪かった。」
顔を横にして、雪菜はふくれっ面になっていた。
「迷子になったら困るから、
こうしておこう。」
凛汰郎は、雪菜の右手を自分の左手で
つかんで、さらに上の5階フロアに
向かった。
この瞬間が初めて手をつなぐのが
初めてだった。
無意識に手をつないでる。
凛汰郎は雪菜を子どもかのように
保護者目線で対応をしていた。
雪菜はそんなふうに思われているなんて
思いもしていない。
でも、目的地って一体どこだったのか。
頭が働かなくなっていた。
つないだ手が想像よりも
骨骨していて、
細い指ひとつひとつが
暖かいことになんだか、
胸がどきどきと気持ちもホクホクしていた。
手汗がかいてないかも気になる。
「あのさ、ここでいい?
ついでに見ていきたいんだけど。」
凛汰郎は、音楽フロアコーナーを指さした。
せっかく手をつないでいたのが急に離れて
寂しくなった。
「……あ、えっと、うん。
あれ、そういや、なんでここに来たんだっけ。」
「これ。」
凛汰郎は、自分の耳を指さして、アピールする。
「あ!! ワイヤレスイヤホンだよね。
その節は、本当にごめんなさい。」
何度も謝る雪菜は、申し訳なさそうに
顔を上げてとジェスチャーする。
「選ぶから、見てよ。」
「うん。わかった。」
2人は、縦並びに店の中に入って行った。
イヤホンコーナーでは、ワイヤレスイヤホンと
コード付きイヤホンといろんな種類のものが
あった。
「これいいかもなぁ…。」
商品を手に取り、雪菜に見せる。
「え?!! それはちょっと…。
いくら弁償するって言っても
高すぎるよ…。」
凛汰郎は反応を見たかったようで、
わざとお高いワイヤレスイヤホンを出して見せた。
金額は10950円と書かれている。
「嘘に決まってるだろ。」
「え……。」
舌をペロッと出す。
「これで勘弁してやる。」
高いイヤホンの隣にあった3000円相当の
ワイヤレスイヤホンをぽいっと雪菜の両手に
渡した。
ほっと一安心した半面、
凛汰郎にこんな茶目っ気あったかなと
信じられなかった。
いつも部活では終始真面目な様子で、
違ったいじわるのされ方していたのに、
前と違う性格にどぎまぎしていた。
「ちなみにこれより安い商品は、
コードつきイヤホンだよね。」
「一番安くてその金額が相場だよ。
俺が前買ったワイヤレスイヤホンは
それくらいの値段。」
「そうなんだね。
私が壊してしまったんだから、
仕方ない。
しっかりと弁償させていだたきます。」
「ああ。」
腕を組んでうなずいた。
雪菜は凛汰郎から渡された商品をレジカウンターに
持って行った。
本当は壊した買ってもらうつもりなんて
さらさらなかった。
会う口実ができていたため、本来の思いと
違う行動をしていた。
私服姿で雪菜に会うことは今までなかったため、
興味本位もある。
申し訳ない気持ちを解消するために
凛汰郎は何かを企んでいた。
「こちらをお受け取りください。」
「あ、どうも。」
無事、雪菜が買ったイヤホンは、凛汰郎の手に渡った。
「これで任務完了だね。
よかった。」
雪菜は胸をなでおろした。
「これで許したとは言ってないけどな。」
「え?どういうこと。」
目を丸くする雪菜。
「ちょっと、来てほしいんだけど。」
また迷子になると心配した凛汰郎は
自然に手をつないでいた。
拒否する理由も見つからない雪菜は言う通りに
着いて行った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる