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第29話
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学校というものは
さもこうして
毎日アルゴリズムを刻みながら
同じ時刻同じ場所に
行かないといけないのか。
昨日と同じメンバーが
真四角の並べなれた机に座り、
同じ授業を受ける。
好きか嫌いかは関係ない。
でもその中で境界線を引いた時、
とてつもなく、この場所に
存在してて本当にいいのだろうかと
疑問さえ感じてくる。
あの人の顔を直視できない。
それは、凛汰郎と雪菜は
お互いに感じるようになっていた。
告白のような発言をされた雪菜は、
逐一に斜め後ろから視線を感じる。
目が合いそうになると
何事もなかったようにそらした。
そんな時間が煩わしさを感じる。
いつもより長い学校の授業がやっとこそ
終わろうとしたとき、
教室を出てすぐの廊下で
雪菜は、凛汰郎の前を通り過ぎた。
合皮でできた茶色のスクールバックに
ついていたクマの
小さなぬいぐるみが3つのうち、
1つがポロンと落ちた。
落ちたことに気づかなかった雪菜は、
そのまま進んでいく。
凛汰郎は、
耳につけたワイヤレスイヤホンを
外して、廊下に落ちた
ふわふわでかわいい白いクマの
ぬいぐるみを拾おうとすると、
今度は自分のイヤホンがポロンと
落ちた。
「白狼!」
声をかけると、後ろを振り返った瞬間に
今度は、凛汰郎の片方イヤホンの上に
雪菜の足が乗っかった。
嫌な音が廊下に響いた。
「これ、落ちたぞ。」
左手にしっかりとつかんだ
白いクマのぬいぐるまは、
雪菜の目にしっかりと見えたが、
それ以上に変なものを
踏んだとショックが
大きかった。
「なんか、踏んだんだけど…。」
雪菜が足をよけると、
白いワイヤレスイヤホンの
片方が落ちて、バラバラに
壊れていた。
しゃがんで、まじまじと見て、
目から大粒の涙がこぼれた。
「凛汰郎くん、ごめんね。
私、踏んだみたい。」
凛汰郎は、怒る様子はなく、
同じようにしゃがんでお陀仏になった
イヤホンを拾った。
「……足、大丈夫だったか?
そっちってけがしたところだろ?」
泣きながら、目をおさえた。
怒られるのではなく、心配されるとは
思ってもみなかった雪菜はさらに
涙が出た。
「痛かったのか?」
黙って首を振った。
泣きたいのはイヤホンを壊された
凛汰郎のはずなのに。
「そっか。大丈夫ならいいんだけど、
これ、チェーン外れてるけどいいのか?」
バックにつけていた白いクマのボールチェーンが
どこかに落ちたらしい。
イヤホンよりも雪菜の所有物の方を心配している。
「なに、なに。どうしたの?
あー、平澤、雪菜泣かした~。」
緋奈子が2人のそばに駆け寄ってきた。
「緋奈子、違うの。
私が、ひどいことしたの。
凛汰郎くん、これ、弁償するから。
これと同じの買うから。」
「……いい。」
緋奈子が近づいてきて、
不機嫌になった凛汰郎は、
そそくさと立ち上がって、
階段の方に行ってしまう。
納得できなかった雪菜は、
追いかけた。
「緋奈子、ごめんね。
先帰るね。」
「え、ああ、うん。
またあした。」
緋奈子は、何かまずいこと
言ったかなと気にして、さっぱりと
別れを告げた。
急いで、駆け下りて、凛汰郎の前に
たちはばかる。
「それ、一緒に買いに行こう。
私、ワイヤレスイヤホン?だっけ。
使ったことなくて、
どれを買えばいいか
わからないから、
来週の日曜日、一緒に買いに行こうよ。
えっと、でも、塾あるかな。」
慌てた様子で雪菜はジェスチャーで
説明する。
ちょっとうれしくなった凛汰郎は
頬のはじっこを赤らめた。
「……午後からなら。
塾の講義終わってからなら行ける。」
「ほんと?
んじゃ、駅前で待ち合わせでもいいかな。」
「そしたら、白狼のそれの
キーホルダーチェーンも買ったらいい。」
「ああ、そっか。そうだよね。
たぶんこれは、百円ショップとかで
売ってるかもしれないよね。」
雪菜は、おもむろに
バックからスマホを取り出した。
「連絡先聞いてもいい?
あ、でも、彼女でもなんでもないのに
交換するの変かな。」
あたふたして、バックから取ろうしたら
なくてよく探してみたら、
ズボンのポケットにスマホが入っていた。
「はい。……どうぞ。」
返答する間もなく、ライン交換をした。
3年間ずっと一緒の部活であるにも
関わらず、グループラインで接点はあっても
全然交流する機会はなかった。
個人ラインは初めてだった。
「ありがとう。
んじゃ、来週って言ったけど明後日ね。
ごめんね、その間音楽聴けないけど。」
「全然…。俺は平気だけど。」
なんでもない顔を装っていたが、
本当は心の底からうれしかった。
雪菜も部活以外の理由で接点が持てて
笑みがこぼれていた。
残った2つのぬいぐるみは
仲良さそうにくっついていた。
階段の踊り場で、お互いに長く話せるなんてと
心臓の音が鳴りやまなかった。
さもこうして
毎日アルゴリズムを刻みながら
同じ時刻同じ場所に
行かないといけないのか。
昨日と同じメンバーが
真四角の並べなれた机に座り、
同じ授業を受ける。
好きか嫌いかは関係ない。
でもその中で境界線を引いた時、
とてつもなく、この場所に
存在してて本当にいいのだろうかと
疑問さえ感じてくる。
あの人の顔を直視できない。
それは、凛汰郎と雪菜は
お互いに感じるようになっていた。
告白のような発言をされた雪菜は、
逐一に斜め後ろから視線を感じる。
目が合いそうになると
何事もなかったようにそらした。
そんな時間が煩わしさを感じる。
いつもより長い学校の授業がやっとこそ
終わろうとしたとき、
教室を出てすぐの廊下で
雪菜は、凛汰郎の前を通り過ぎた。
合皮でできた茶色のスクールバックに
ついていたクマの
小さなぬいぐるみが3つのうち、
1つがポロンと落ちた。
落ちたことに気づかなかった雪菜は、
そのまま進んでいく。
凛汰郎は、
耳につけたワイヤレスイヤホンを
外して、廊下に落ちた
ふわふわでかわいい白いクマの
ぬいぐるみを拾おうとすると、
今度は自分のイヤホンがポロンと
落ちた。
「白狼!」
声をかけると、後ろを振り返った瞬間に
今度は、凛汰郎の片方イヤホンの上に
雪菜の足が乗っかった。
嫌な音が廊下に響いた。
「これ、落ちたぞ。」
左手にしっかりとつかんだ
白いクマのぬいぐるまは、
雪菜の目にしっかりと見えたが、
それ以上に変なものを
踏んだとショックが
大きかった。
「なんか、踏んだんだけど…。」
雪菜が足をよけると、
白いワイヤレスイヤホンの
片方が落ちて、バラバラに
壊れていた。
しゃがんで、まじまじと見て、
目から大粒の涙がこぼれた。
「凛汰郎くん、ごめんね。
私、踏んだみたい。」
凛汰郎は、怒る様子はなく、
同じようにしゃがんでお陀仏になった
イヤホンを拾った。
「……足、大丈夫だったか?
そっちってけがしたところだろ?」
泣きながら、目をおさえた。
怒られるのではなく、心配されるとは
思ってもみなかった雪菜はさらに
涙が出た。
「痛かったのか?」
黙って首を振った。
泣きたいのはイヤホンを壊された
凛汰郎のはずなのに。
「そっか。大丈夫ならいいんだけど、
これ、チェーン外れてるけどいいのか?」
バックにつけていた白いクマのボールチェーンが
どこかに落ちたらしい。
イヤホンよりも雪菜の所有物の方を心配している。
「なに、なに。どうしたの?
あー、平澤、雪菜泣かした~。」
緋奈子が2人のそばに駆け寄ってきた。
「緋奈子、違うの。
私が、ひどいことしたの。
凛汰郎くん、これ、弁償するから。
これと同じの買うから。」
「……いい。」
緋奈子が近づいてきて、
不機嫌になった凛汰郎は、
そそくさと立ち上がって、
階段の方に行ってしまう。
納得できなかった雪菜は、
追いかけた。
「緋奈子、ごめんね。
先帰るね。」
「え、ああ、うん。
またあした。」
緋奈子は、何かまずいこと
言ったかなと気にして、さっぱりと
別れを告げた。
急いで、駆け下りて、凛汰郎の前に
たちはばかる。
「それ、一緒に買いに行こう。
私、ワイヤレスイヤホン?だっけ。
使ったことなくて、
どれを買えばいいか
わからないから、
来週の日曜日、一緒に買いに行こうよ。
えっと、でも、塾あるかな。」
慌てた様子で雪菜はジェスチャーで
説明する。
ちょっとうれしくなった凛汰郎は
頬のはじっこを赤らめた。
「……午後からなら。
塾の講義終わってからなら行ける。」
「ほんと?
んじゃ、駅前で待ち合わせでもいいかな。」
「そしたら、白狼のそれの
キーホルダーチェーンも買ったらいい。」
「ああ、そっか。そうだよね。
たぶんこれは、百円ショップとかで
売ってるかもしれないよね。」
雪菜は、おもむろに
バックからスマホを取り出した。
「連絡先聞いてもいい?
あ、でも、彼女でもなんでもないのに
交換するの変かな。」
あたふたして、バックから取ろうしたら
なくてよく探してみたら、
ズボンのポケットにスマホが入っていた。
「はい。……どうぞ。」
返答する間もなく、ライン交換をした。
3年間ずっと一緒の部活であるにも
関わらず、グループラインで接点はあっても
全然交流する機会はなかった。
個人ラインは初めてだった。
「ありがとう。
んじゃ、来週って言ったけど明後日ね。
ごめんね、その間音楽聴けないけど。」
「全然…。俺は平気だけど。」
なんでもない顔を装っていたが、
本当は心の底からうれしかった。
雪菜も部活以外の理由で接点が持てて
笑みがこぼれていた。
残った2つのぬいぐるみは
仲良さそうにくっついていた。
階段の踊り場で、お互いに長く話せるなんてと
心臓の音が鳴りやまなかった。
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