21 / 61
第21話
しおりを挟む
校舎のカザミドリが、
いつも以上に強く風が吹いて
勢いを増していた。
お昼休みのチャイムが鳴った。
授業を終えた生徒たちが、
一目散に購買部に
駆け出している。
教室のあちらこちらの引き戸が、
大きな音を立てて
開いていく。
雪菜はようやく松葉杖から解放されて、
健康的な日常を取り戻していた。
机の脇にかけていたバックの中から
長財布を取り出した。
「雪菜、今日購買部行くの?」
緋奈子が声をかけた。
「うん。久しぶりにパンでも
買おうかなって。
お弁当今日、持ってきて無いから。」
「雪菜の好きなパンは人気だから
難しいかもよ?」
2人は廊下で話しながら、購買部へ行く。
その声を座席で聞き耳を立てながら、
聞いていたのは凛汰郎だった。
(俺も、購買でも行こうかな。)
バックから財布を取り出す。
「ねぇねぇ、凛汰郎くん。」
クラスメイトの伊藤あゆみに声を
かけられた。
「ごめんね、初めて話しかけるんだけど、
君の家ってお花屋さん?」
「え…。」
「先週の土曜日に母と一緒に花、
買いに行ったとき、
直接話してなかったけど、
ちょうど君が部活から
帰ってくるところ見かけたの。」
後ろ頭をガリガリとかいて、
照れ臭そうに話す。
「あー。うん。そうだけど。」
「え!? マジで?!」
その話を聞いていたのは2年の
斎藤雅俊だった。
コンビニで飲み物を買った以来
犬猿の仲だった。
「お前のうち、花屋なの?」
「……。」
突然、後輩が先輩の教室に入ってきて、
話に割ってくる神経が
気に入らない凛汰郎はだんまりを続けた。
「なるほど~。」
雅俊は、雪菜の机に寄りかかって
顎に指をつけた。
「だから、あの花…。
だよな、急に、男が花を持って
行ったらキモイよなぁ。
花屋って聞いて安心したわ。」
独り言のようにぶつぶつという雅俊。
隣にいた伊藤あゆみも反応する。
「斎藤くん、急にどうしたん?」
「え、伊藤さん。この人知ってるの?」
凛汰郎は、指をさしていう。
「えっと、元部活で一緒だったのよ。
中学の時、同じ学校で。
先輩、後輩。」
「伊藤先輩こそ、
ここのクラスだったんっすね。
知りませんでしたよ。
今日は、雪菜に会いに来たんですけど、
いないっすね。
購買でも行ったのかな。」
窓際に駆け寄って、外を眺める。
「…というか、あんた、送ってもない花で
名前、名乗っただろ。」
「あ…。やっぱり、
あれ、先輩だったっすね。
ここでバラすんですか?
本人いないけど、大丈夫です?」
「俺じゃない。」
「またまた強がっちゃって…。
でも、俺の性格では
あんなことしないかな。
なんとなく、陰キャラが
しそうかなぁって…。
黙っておくってことは俺しないし。」
喧嘩を売るように話す雅俊の頬に
強烈なパンチが入った。
罰悪くその良くないシーンで、
雪菜が緋奈子とともに
購買で買ってきたビニール袋を持って、
教室出入り口で
目撃していた。
「は? なにすんだよ!?」
雪菜が来てるとは知らずに
乱闘騒ぎになる。
横では伊藤あゆみが雅俊をとめて、
その隣では凛汰郎の両腕をおさえる
五十嵐竜次がいた。
慌てて、雪菜がもめている中の間に
入った。
「ちょっと2人とも、やめて。
原因は一体何なの?」
息が上がって、両者とも頬は赤くなる。
お互いに黙ったまま、何も言わない。
「そうやって、黙るの良くないと
思うんだけど…。」
「……さっき聞いてた話では、
花がどうたらこうたら
言ってたよ。」
伊藤あゆみが声を出した。
「花?何のことだろう。」
「凛汰郎の家が花屋なんだってさ。」
竜次が興奮した凛汰郎をなだめながら
いう。
「え……。」
なんとなく、花と聞いて思い出すのは、
雪菜が入院していた時にもらった
お見舞いの花束。
雅俊から受け取ったはずだけども、
この2人が殴り合う
ということは何かがおかしいと察した。
「もしかして、入院中に届けてくれた花って
雅俊じゃなくて、凛汰郎くんなのかな?」
2人とも何も言えずにずっと黙っている。
いたたまれなくなって、
凛汰郎は廊下に飛び出していった。
「雅俊、嘘ついていたの?」
「そんなの知らねぇよ。」
そう吐き出すと教室を出て行った。
クラスメイトたちは、なんだか
もやもやした空気の中、
それぞれの座席に着席した。
「雪菜、モテモテだねぇ。」
「そんなじゃないでしょう、別に。」
「え、付き合ってないの?」
「えーだって、誰と?」
「雅俊くんとじゃないの?」
雪菜はまさかと首を横に振った。
「幼馴染だよ。近所だし。」
「あ、わかった。んじゃ、凛汰郎くんと?」
「ブッブー。部活が一緒ってだけ。
違います。」
(そうなれたらいいなぁとは思うけど、
緋奈子には
まだ黙っておこう。)
「もう、高校生活あと少しで終わるんだから、
恋の1つや2つ、進展させてみようよ。」
「努力します!」
雪菜は机に両手をついて、軽く緋奈子にお辞儀をした。
購買部で買ってきた大きいパンを
大きな口を開けて
ほおばった。
コーヒー牛乳がのどを潤した。
まさか、雅俊と凛汰郎が乱闘するとは
思わなかった。
なんとなく、教室を飛び出した
凛汰郎が気になって、
パンを食べ終えると、
凛汰郎の後を追いかけた。
昼休みの廊下は生徒たちの会話で
ざわついていた。
いつも以上に強く風が吹いて
勢いを増していた。
お昼休みのチャイムが鳴った。
授業を終えた生徒たちが、
一目散に購買部に
駆け出している。
教室のあちらこちらの引き戸が、
大きな音を立てて
開いていく。
雪菜はようやく松葉杖から解放されて、
健康的な日常を取り戻していた。
机の脇にかけていたバックの中から
長財布を取り出した。
「雪菜、今日購買部行くの?」
緋奈子が声をかけた。
「うん。久しぶりにパンでも
買おうかなって。
お弁当今日、持ってきて無いから。」
「雪菜の好きなパンは人気だから
難しいかもよ?」
2人は廊下で話しながら、購買部へ行く。
その声を座席で聞き耳を立てながら、
聞いていたのは凛汰郎だった。
(俺も、購買でも行こうかな。)
バックから財布を取り出す。
「ねぇねぇ、凛汰郎くん。」
クラスメイトの伊藤あゆみに声を
かけられた。
「ごめんね、初めて話しかけるんだけど、
君の家ってお花屋さん?」
「え…。」
「先週の土曜日に母と一緒に花、
買いに行ったとき、
直接話してなかったけど、
ちょうど君が部活から
帰ってくるところ見かけたの。」
後ろ頭をガリガリとかいて、
照れ臭そうに話す。
「あー。うん。そうだけど。」
「え!? マジで?!」
その話を聞いていたのは2年の
斎藤雅俊だった。
コンビニで飲み物を買った以来
犬猿の仲だった。
「お前のうち、花屋なの?」
「……。」
突然、後輩が先輩の教室に入ってきて、
話に割ってくる神経が
気に入らない凛汰郎はだんまりを続けた。
「なるほど~。」
雅俊は、雪菜の机に寄りかかって
顎に指をつけた。
「だから、あの花…。
だよな、急に、男が花を持って
行ったらキモイよなぁ。
花屋って聞いて安心したわ。」
独り言のようにぶつぶつという雅俊。
隣にいた伊藤あゆみも反応する。
「斎藤くん、急にどうしたん?」
「え、伊藤さん。この人知ってるの?」
凛汰郎は、指をさしていう。
「えっと、元部活で一緒だったのよ。
中学の時、同じ学校で。
先輩、後輩。」
「伊藤先輩こそ、
ここのクラスだったんっすね。
知りませんでしたよ。
今日は、雪菜に会いに来たんですけど、
いないっすね。
購買でも行ったのかな。」
窓際に駆け寄って、外を眺める。
「…というか、あんた、送ってもない花で
名前、名乗っただろ。」
「あ…。やっぱり、
あれ、先輩だったっすね。
ここでバラすんですか?
本人いないけど、大丈夫です?」
「俺じゃない。」
「またまた強がっちゃって…。
でも、俺の性格では
あんなことしないかな。
なんとなく、陰キャラが
しそうかなぁって…。
黙っておくってことは俺しないし。」
喧嘩を売るように話す雅俊の頬に
強烈なパンチが入った。
罰悪くその良くないシーンで、
雪菜が緋奈子とともに
購買で買ってきたビニール袋を持って、
教室出入り口で
目撃していた。
「は? なにすんだよ!?」
雪菜が来てるとは知らずに
乱闘騒ぎになる。
横では伊藤あゆみが雅俊をとめて、
その隣では凛汰郎の両腕をおさえる
五十嵐竜次がいた。
慌てて、雪菜がもめている中の間に
入った。
「ちょっと2人とも、やめて。
原因は一体何なの?」
息が上がって、両者とも頬は赤くなる。
お互いに黙ったまま、何も言わない。
「そうやって、黙るの良くないと
思うんだけど…。」
「……さっき聞いてた話では、
花がどうたらこうたら
言ってたよ。」
伊藤あゆみが声を出した。
「花?何のことだろう。」
「凛汰郎の家が花屋なんだってさ。」
竜次が興奮した凛汰郎をなだめながら
いう。
「え……。」
なんとなく、花と聞いて思い出すのは、
雪菜が入院していた時にもらった
お見舞いの花束。
雅俊から受け取ったはずだけども、
この2人が殴り合う
ということは何かがおかしいと察した。
「もしかして、入院中に届けてくれた花って
雅俊じゃなくて、凛汰郎くんなのかな?」
2人とも何も言えずにずっと黙っている。
いたたまれなくなって、
凛汰郎は廊下に飛び出していった。
「雅俊、嘘ついていたの?」
「そんなの知らねぇよ。」
そう吐き出すと教室を出て行った。
クラスメイトたちは、なんだか
もやもやした空気の中、
それぞれの座席に着席した。
「雪菜、モテモテだねぇ。」
「そんなじゃないでしょう、別に。」
「え、付き合ってないの?」
「えーだって、誰と?」
「雅俊くんとじゃないの?」
雪菜はまさかと首を横に振った。
「幼馴染だよ。近所だし。」
「あ、わかった。んじゃ、凛汰郎くんと?」
「ブッブー。部活が一緒ってだけ。
違います。」
(そうなれたらいいなぁとは思うけど、
緋奈子には
まだ黙っておこう。)
「もう、高校生活あと少しで終わるんだから、
恋の1つや2つ、進展させてみようよ。」
「努力します!」
雪菜は机に両手をついて、軽く緋奈子にお辞儀をした。
購買部で買ってきた大きいパンを
大きな口を開けて
ほおばった。
コーヒー牛乳がのどを潤した。
まさか、雅俊と凛汰郎が乱闘するとは
思わなかった。
なんとなく、教室を飛び出した
凛汰郎が気になって、
パンを食べ終えると、
凛汰郎の後を追いかけた。
昼休みの廊下は生徒たちの会話で
ざわついていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる