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第16話
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「お疲れさまです。
長い間、お休みしちゃってごめんなさい。
みんな元気にしていたかな。
これ、差し入れの
バアムクーヘン持ってきたから
食べてね。」
雪菜は、制服姿のまま、松葉杖をついて
弓道場に訪れていた。
手には紙袋にバウムクーヘンを
部員のために買ってきていた。
「おかえりなさい。雪菜先輩。
待ってましたよぉ。
もう、大変だったんですから。
いただきます、やったあ。」
弓道着を着た1年の楠木が雪菜に
ハグをしてお菓子を受け取って話し出す。
「えー、どうしたの?
私いなくて寂しかった?」
「寂しいのはそうですけど、
だってぇ、副部長の平澤先輩が…。」
「彩絵、しっ!」
同じ1年の細川絵莉《ほそかわえり》が
凛汰郎が弓道場に入ってくるのが見えたのを指差した。
「あ…。」
「なになに。もしかして、凛汰郎くんの話?
大体予測はつくけどね。」
小声で話す雪菜は、後ろを振り返ると
なぜか来たばかりの凛汰郎は、
制服姿のまま校舎の方へ戻ろうと
している。
それに気づいた雪菜は慌てて
追いかけた。
「ちょ、ちょっと凛汰郎くん!!
待って、あっ・・・。」
ズテンと転んだ雪菜。
松葉杖が地面にひっかかっていた。
膝をぶつけていた。
「いたたた…。」
それに気づいた凛汰郎は、
急ぎ足で戻ってきた。
何も言わずに、腕を引き上げて
起こしてくれた。
「あ、ありがとう。」
「まだ治ってないんだろ…。」
「う、うん。まぁ、そうなんだけど。
部活始まるんだから、
なんで帰るのかと思って。」
「…帰ろうと思ったけど。」
「え、なんで、帰るの?」
「やっぱ戻るわ。
引き止められたから。」
「ん?」
よくわからないまま、弓道場に戻ろう
とした。
「白狼、俺、やっぱ、間違ってたわ。」
後ろ向きのまま話し続ける。
「え?何が?」
「部長代わるって簡単に言って悪かった。」
「え、ああ。そのこと?
随分前のことだから覚えてないよ。
気にしないで。
ほら、稽古しに行こう。」
本当はすごく傷ついていたが、
傷ついていないふりをした。
それを言ったことで凛汰郎が困るのを
見たくなかった。
顔がふっと緩んでいたのを見て、
安心した。
「あのさ、白狼、入院してる時、
花飾ってた?」
「え、あーー。
そうだね。なんか、
雅俊が贈ってくれたって言う話だけど、
あの人花なんて
全然興味ないくせに
変なのって思ってさ。
ん?凛汰郎くん、なんで
そんなこと聞くの?」
その話を聞いて、凛汰郎は、
ムカムカと止まらなかったが、
グッと堪えて、耐えた。
怖い顔をおさえるのが逆に
気持ち悪い顔になっていた。
「え、どうかしたの?
すごい変な顔してるけど…。」
「……いや、綺麗な花だったん
だろうなって。」
「ん?
そうだねぇ…雅俊が
ソネットフレージュの花だって言ってて、
それ違うよって
ソネットフレーズだよって教えてあげた
んだけど。」
状況が読めずに雪菜は花の出来事を
話し続ける。
「え、ソネットフレージュでしょう?」
「え、違うよ、凛汰郎くん。
ほら、見て。」
雪菜はスマホを見せて、正式な名前を
確認させた。
「あ、本当だ。」
「ここにも間違う人いたね。
雅俊と同じ間違いするんだ。
男子って細かいところ
気にしないもんね。
なんでだろう…。」
そういいながら、
スマホをぽちぽちと触ってバックに
しまおうとした。
「それ、俺だから!!」
黙っていられなくなった凛汰郎は叫んだが、雪菜には理解不能だった。
そこへ、雅俊が通りかかる。
「あ! 雪菜、大丈夫なのか?
今日から部活参加するの?」
「雅俊!
ううん、今日は見学しながら、
後輩指導だよ。まだ松葉杖だしね。」
「そっか、あんま、無理すんなよ。
ん、誰?」
雅俊は、雪菜の横に立ち、近くにいた
凛汰郎を指差す。
「誰って指差すな。
先輩。3年の平澤凛汰郎くんだよ。」
「あー、弓道部の。どうも。
雪菜がお世話になってます。」
「誰がお世話よ。
保護者じゃないんだからやめて。」
「……。」
「ごめんね、凛汰郎くん。
この子、ウチの近所に住んでて
幼馴染なの。
生意気だからしごいてくれないかな。」
「そっか。どうも。」
眼力を強めに凛汰郎は、
雅俊を睨みつける。
「こわっ。」
「こら!!」
「それじゃぁ、お邪魔しましたぁ。」
雅俊は、睨みを恐れて
急いで、体育館の方へ
進んでいく。
「ごめんね。生意気で。
申し訳ない。」
「白狼が謝ることはない。」
「まぁ確かに。んじゃ、行こうよ。」
松葉杖を横に無意識に
凛汰郎の制服シャツを
くいっと引っ張った。
少し接近したため、
凛汰郎は頬を赤くして
黙っていた。
屋上に飾られているカザミドリが
カラカラと急いで回っていた。
長い間、お休みしちゃってごめんなさい。
みんな元気にしていたかな。
これ、差し入れの
バアムクーヘン持ってきたから
食べてね。」
雪菜は、制服姿のまま、松葉杖をついて
弓道場に訪れていた。
手には紙袋にバウムクーヘンを
部員のために買ってきていた。
「おかえりなさい。雪菜先輩。
待ってましたよぉ。
もう、大変だったんですから。
いただきます、やったあ。」
弓道着を着た1年の楠木が雪菜に
ハグをしてお菓子を受け取って話し出す。
「えー、どうしたの?
私いなくて寂しかった?」
「寂しいのはそうですけど、
だってぇ、副部長の平澤先輩が…。」
「彩絵、しっ!」
同じ1年の細川絵莉《ほそかわえり》が
凛汰郎が弓道場に入ってくるのが見えたのを指差した。
「あ…。」
「なになに。もしかして、凛汰郎くんの話?
大体予測はつくけどね。」
小声で話す雪菜は、後ろを振り返ると
なぜか来たばかりの凛汰郎は、
制服姿のまま校舎の方へ戻ろうと
している。
それに気づいた雪菜は慌てて
追いかけた。
「ちょ、ちょっと凛汰郎くん!!
待って、あっ・・・。」
ズテンと転んだ雪菜。
松葉杖が地面にひっかかっていた。
膝をぶつけていた。
「いたたた…。」
それに気づいた凛汰郎は、
急ぎ足で戻ってきた。
何も言わずに、腕を引き上げて
起こしてくれた。
「あ、ありがとう。」
「まだ治ってないんだろ…。」
「う、うん。まぁ、そうなんだけど。
部活始まるんだから、
なんで帰るのかと思って。」
「…帰ろうと思ったけど。」
「え、なんで、帰るの?」
「やっぱ戻るわ。
引き止められたから。」
「ん?」
よくわからないまま、弓道場に戻ろう
とした。
「白狼、俺、やっぱ、間違ってたわ。」
後ろ向きのまま話し続ける。
「え?何が?」
「部長代わるって簡単に言って悪かった。」
「え、ああ。そのこと?
随分前のことだから覚えてないよ。
気にしないで。
ほら、稽古しに行こう。」
本当はすごく傷ついていたが、
傷ついていないふりをした。
それを言ったことで凛汰郎が困るのを
見たくなかった。
顔がふっと緩んでいたのを見て、
安心した。
「あのさ、白狼、入院してる時、
花飾ってた?」
「え、あーー。
そうだね。なんか、
雅俊が贈ってくれたって言う話だけど、
あの人花なんて
全然興味ないくせに
変なのって思ってさ。
ん?凛汰郎くん、なんで
そんなこと聞くの?」
その話を聞いて、凛汰郎は、
ムカムカと止まらなかったが、
グッと堪えて、耐えた。
怖い顔をおさえるのが逆に
気持ち悪い顔になっていた。
「え、どうかしたの?
すごい変な顔してるけど…。」
「……いや、綺麗な花だったん
だろうなって。」
「ん?
そうだねぇ…雅俊が
ソネットフレージュの花だって言ってて、
それ違うよって
ソネットフレーズだよって教えてあげた
んだけど。」
状況が読めずに雪菜は花の出来事を
話し続ける。
「え、ソネットフレージュでしょう?」
「え、違うよ、凛汰郎くん。
ほら、見て。」
雪菜はスマホを見せて、正式な名前を
確認させた。
「あ、本当だ。」
「ここにも間違う人いたね。
雅俊と同じ間違いするんだ。
男子って細かいところ
気にしないもんね。
なんでだろう…。」
そういいながら、
スマホをぽちぽちと触ってバックに
しまおうとした。
「それ、俺だから!!」
黙っていられなくなった凛汰郎は叫んだが、雪菜には理解不能だった。
そこへ、雅俊が通りかかる。
「あ! 雪菜、大丈夫なのか?
今日から部活参加するの?」
「雅俊!
ううん、今日は見学しながら、
後輩指導だよ。まだ松葉杖だしね。」
「そっか、あんま、無理すんなよ。
ん、誰?」
雅俊は、雪菜の横に立ち、近くにいた
凛汰郎を指差す。
「誰って指差すな。
先輩。3年の平澤凛汰郎くんだよ。」
「あー、弓道部の。どうも。
雪菜がお世話になってます。」
「誰がお世話よ。
保護者じゃないんだからやめて。」
「……。」
「ごめんね、凛汰郎くん。
この子、ウチの近所に住んでて
幼馴染なの。
生意気だからしごいてくれないかな。」
「そっか。どうも。」
眼力を強めに凛汰郎は、
雅俊を睨みつける。
「こわっ。」
「こら!!」
「それじゃぁ、お邪魔しましたぁ。」
雅俊は、睨みを恐れて
急いで、体育館の方へ
進んでいく。
「ごめんね。生意気で。
申し訳ない。」
「白狼が謝ることはない。」
「まぁ確かに。んじゃ、行こうよ。」
松葉杖を横に無意識に
凛汰郎の制服シャツを
くいっと引っ張った。
少し接近したため、
凛汰郎は頬を赤くして
黙っていた。
屋上に飾られているカザミドリが
カラカラと急いで回っていた。
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