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第33話
こうなることを知っていた
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遠くの方でカラスの鳴き声が聞こえた。
今朝は路面が凍るくらい寒かった。
吐く息が白い。
横断歩道の前で待っていると。
歩道用信号の音が青に切り替わった。
颯爽と反対側に歩き進めるとスマホのピロンという音が鳴った。
見たことのない番号からSMSメッセージが届いた。
『仙台勾当台公園に17時30分に来るべし。』
特に宛名も無く、どこからの発信か分からないまま、祐輔はそのメッセージを見ていたずらだろうと、返事もせずにスリープ画面に切り替えた。
またピロンとなった。
『話したいことがある。』
2通に分けてメッセージを送るにはいたずらにしては変だなと思い、返事をせずにとりあえず公園に行ってみるかと考えて、今日もいつもの市役所に出勤する。
数時間後、仕事を終えた祐輔は発信元が不明のメッセージ通りに勾当台公園に17時30分、時間を間違えずに行ってみた。
黒い皮の手袋をはめていたが、それでも外は寒かった。
ポケットに入ってるホッカイロがほんの少し暖を取れた。
辺りを見渡しても、小型犬を散歩するご婦人やサングラスをかけた若い男性がジョギングしているくらいで、誰もいなかった。
やっぱりいたずらだろうと5分待って立ち去ろうしたが、後ろから声をかけられた。
「祐輔!」
小声で遠くから叫ぶ人がいる。
建物の横から顔だけ出している。
ニット帽をかぶりマスクしてサングラスして、いかにも怪しい人だった。
「は?誰?」
「ちょ、こっち来て!」
手招きをして、呼び出す。
とりあえず、近づいてみた。
腕をぐいっと引っ張られ、マスクとサングラスを外して、素顔を見せられた。
「あ、え、あ。さとし? なんで、ここにいるんだよ。今、テレビで行方不明になってるって話、どうなったんだ? 紗栄の仕事の違約金だか何とかって、大丈夫なのか?」
人差し指を口にあてて、周りを気にしながら静かにしろと言わんばかりのポーズをした。
「あまり、表沙汰にしたくないからこうやって呼んだんだよ。祐輔に言いたいことがあってさ。」
さとしは横に向かって手招きすると地下通路の反対側からマスクにニット帽、サングラスの女性がそろりそろりと近づいてきた。
「え、紗栄? なんで2人ともこんなところにいるんだよ。探されてるんじゃないの?嘘だろ?」
祐輔にもしばらく音信不通だった紗栄は申し訳なさそうに、サングラスを外して…深々とさとしと一緒に謝った。
「ごめんなさい!」
「申し訳ない。」
ほぼ同時だった。
「え、急に謝られても、しかも、音信不通だった2人から突然呼び出しで俺、どうすればいい?」
状況を飲み込めずにいた。
紗栄から話し出す。
「私、石川くんの気持ちに応えられてなかったのね。だから申し訳ないけど、友達の付き合いに戻しても良いかなと思って…。」
「別れようってこと? まあ、1ヶ月も音信不通ならもう違うかなって気づいていたけど、何だか傷口に塩塗られた気分だよ…。でも、それをわざわざ俺に言いにきたの?」
一喜一憂しながら祐輔は話す。
さとしも口を開いた。
「俺も、祐輔のことを応援するつもりで過ごしてたけど、やっぱり自分のものを取られたみたいで嫌な気持ちになったから仕事のことを関係なく、自分の気持ちに素直になろうと思って、紗栄とより戻すことにしたから、だからすまん!」
祐輔はボクサーの強烈なパンチを浴びたみたいにショックが大きかった。
繰り返される恋愛事情。
祐輔が紗栄のことを好きになれば、さとしがしゃしゃり出てのうのうと奪っていく。
しかも、タイマンはってそれを言いに来る。
もう、心の中は負けを認めるしかない生気を失った敗退選手のようだった。
何も言えなくなってしまった。
「…ああ。もういいよ。俺の中では諦めていたことだし、気にするな。」
祐輔はさとしの首を右腕でプロレスのようにガシッとおさえた。
「今度は絶対別れないでずっとずっと紗栄と一緒にいるんだぞ!」
さとしは苦しそうに祐輔の腕をバシバシ叩く。
小さなカウンターだった。
静かに離れた。
「当たり前だろ? こうやって仕事辞めてまで世間から逃げ回ってるんだから別れません!」
「浮気もすんじゃねえぞ、さとし。」
「…ど、努力します。」
動揺を隠せずにいた。
紗栄はさっと帽子とサングラスをつける。さとしの肩を叩いた。
「祐輔、俺らそろそろ行くな。しばらく連絡できないけど、この、騒動が落ち着いたら連絡するからそれまで元気でいろよ!」
「ああ。そっちもな。」
手を振り、さとしもニット帽をかぶってキャリーバックを引っ張りながら、2人は立ち去って行った。
祐輔は姿が見えなくなるまで見守った。
「…付き合おうって言った時から、気づいてはいたけどなぁ。ストレートに言われると結構傷つくな。」
足元にあった石ころを蹴飛ばした。
蹴飛ばして、心寂しくなる。
目の前にある石でさえも
そばから離れていく。
街の電灯が輝き始めていたが、北風が吹いて、吐く息が白くなった。
今夜は雪が積もりそうだ。
祐輔は、ため息をついて、冷たい心を癒しを求めに人が集まる音が鳴り響き、ネオン輝く場所へと歩いて行った。
今朝は路面が凍るくらい寒かった。
吐く息が白い。
横断歩道の前で待っていると。
歩道用信号の音が青に切り替わった。
颯爽と反対側に歩き進めるとスマホのピロンという音が鳴った。
見たことのない番号からSMSメッセージが届いた。
『仙台勾当台公園に17時30分に来るべし。』
特に宛名も無く、どこからの発信か分からないまま、祐輔はそのメッセージを見ていたずらだろうと、返事もせずにスリープ画面に切り替えた。
またピロンとなった。
『話したいことがある。』
2通に分けてメッセージを送るにはいたずらにしては変だなと思い、返事をせずにとりあえず公園に行ってみるかと考えて、今日もいつもの市役所に出勤する。
数時間後、仕事を終えた祐輔は発信元が不明のメッセージ通りに勾当台公園に17時30分、時間を間違えずに行ってみた。
黒い皮の手袋をはめていたが、それでも外は寒かった。
ポケットに入ってるホッカイロがほんの少し暖を取れた。
辺りを見渡しても、小型犬を散歩するご婦人やサングラスをかけた若い男性がジョギングしているくらいで、誰もいなかった。
やっぱりいたずらだろうと5分待って立ち去ろうしたが、後ろから声をかけられた。
「祐輔!」
小声で遠くから叫ぶ人がいる。
建物の横から顔だけ出している。
ニット帽をかぶりマスクしてサングラスして、いかにも怪しい人だった。
「は?誰?」
「ちょ、こっち来て!」
手招きをして、呼び出す。
とりあえず、近づいてみた。
腕をぐいっと引っ張られ、マスクとサングラスを外して、素顔を見せられた。
「あ、え、あ。さとし? なんで、ここにいるんだよ。今、テレビで行方不明になってるって話、どうなったんだ? 紗栄の仕事の違約金だか何とかって、大丈夫なのか?」
人差し指を口にあてて、周りを気にしながら静かにしろと言わんばかりのポーズをした。
「あまり、表沙汰にしたくないからこうやって呼んだんだよ。祐輔に言いたいことがあってさ。」
さとしは横に向かって手招きすると地下通路の反対側からマスクにニット帽、サングラスの女性がそろりそろりと近づいてきた。
「え、紗栄? なんで2人ともこんなところにいるんだよ。探されてるんじゃないの?嘘だろ?」
祐輔にもしばらく音信不通だった紗栄は申し訳なさそうに、サングラスを外して…深々とさとしと一緒に謝った。
「ごめんなさい!」
「申し訳ない。」
ほぼ同時だった。
「え、急に謝られても、しかも、音信不通だった2人から突然呼び出しで俺、どうすればいい?」
状況を飲み込めずにいた。
紗栄から話し出す。
「私、石川くんの気持ちに応えられてなかったのね。だから申し訳ないけど、友達の付き合いに戻しても良いかなと思って…。」
「別れようってこと? まあ、1ヶ月も音信不通ならもう違うかなって気づいていたけど、何だか傷口に塩塗られた気分だよ…。でも、それをわざわざ俺に言いにきたの?」
一喜一憂しながら祐輔は話す。
さとしも口を開いた。
「俺も、祐輔のことを応援するつもりで過ごしてたけど、やっぱり自分のものを取られたみたいで嫌な気持ちになったから仕事のことを関係なく、自分の気持ちに素直になろうと思って、紗栄とより戻すことにしたから、だからすまん!」
祐輔はボクサーの強烈なパンチを浴びたみたいにショックが大きかった。
繰り返される恋愛事情。
祐輔が紗栄のことを好きになれば、さとしがしゃしゃり出てのうのうと奪っていく。
しかも、タイマンはってそれを言いに来る。
もう、心の中は負けを認めるしかない生気を失った敗退選手のようだった。
何も言えなくなってしまった。
「…ああ。もういいよ。俺の中では諦めていたことだし、気にするな。」
祐輔はさとしの首を右腕でプロレスのようにガシッとおさえた。
「今度は絶対別れないでずっとずっと紗栄と一緒にいるんだぞ!」
さとしは苦しそうに祐輔の腕をバシバシ叩く。
小さなカウンターだった。
静かに離れた。
「当たり前だろ? こうやって仕事辞めてまで世間から逃げ回ってるんだから別れません!」
「浮気もすんじゃねえぞ、さとし。」
「…ど、努力します。」
動揺を隠せずにいた。
紗栄はさっと帽子とサングラスをつける。さとしの肩を叩いた。
「祐輔、俺らそろそろ行くな。しばらく連絡できないけど、この、騒動が落ち着いたら連絡するからそれまで元気でいろよ!」
「ああ。そっちもな。」
手を振り、さとしもニット帽をかぶってキャリーバックを引っ張りながら、2人は立ち去って行った。
祐輔は姿が見えなくなるまで見守った。
「…付き合おうって言った時から、気づいてはいたけどなぁ。ストレートに言われると結構傷つくな。」
足元にあった石ころを蹴飛ばした。
蹴飛ばして、心寂しくなる。
目の前にある石でさえも
そばから離れていく。
街の電灯が輝き始めていたが、北風が吹いて、吐く息が白くなった。
今夜は雪が積もりそうだ。
祐輔は、ため息をついて、冷たい心を癒しを求めに人が集まる音が鳴り響き、ネオン輝く場所へと歩いて行った。
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