62 / 63
第62話
しおりを挟む
昨日と変わりなく、
拓海の部屋で過ごすのかと
少し安心した紬は
ベッドに座って、
足をぶらんぶらんと動かした。
修学旅行の前日のようで
楽しくなってきた。
いつまでいれるか分からないけど、
いっそならずっとこのままでも
良いのになぁと考えた。
そんな時、インターフォンが鳴った。
「はい。」
拓海は、
インターフォン画面に映る
颯太を見た。
さっきの美羽へのラインに念の為、
自宅住所を送っておいた。
時間差がそんなにない。
迎えに来たのかと玄関に出る。
「ごめん、拓海くん。
どうしても、美羽が
受け入れられないからって
紬を迎えに来た。
出してくれるかな。」
「あ…はい。
ちょっと待ってくださいね。」
紬は、かくれんぼするように
クローゼットから出てこない。
「紬、お父さん。
迎えに来たぞ。」
「…やだ。」
姿を隠しながら返事をする。
「このままじゃ、お互い良く無いから
まずは帰ろう。」
「だって、反対してるんだよ?」
「そうかもしれないけどさ。
まずは、両親説得してきて。」
「拓海さんできなくて、私になんて
尚更できないよ。」
「大丈夫だよ。
長く一緒に暮らしてきた家族なんだから
俺よりどうしたいかくらいわかるだろ?」
「……どうしたいか。
そりゃぁ、幸せになりたいと思う。」
拓海は、クローゼットに隠れる紬に
声をかけ続ける。
紬は、暗闇の中、考える。
「俺も、幸せになりたいから。な?」
「……できるかな。私に。」
「できる。
仕事のミッションやるより簡単だ。」
「えー、どんだけ私仕事できない人なの?」
「できない人だったのか?」
「いえ、違います!」
「よし。」
紬がやっとクローゼットの
中から出てきた。
拓海はポンポンと頭を撫でる。
「待ってるから。
期待してるよ?」
「うん、わかった。」
颯太は、玄関の外で腕を組んで
待っていた。
「お待たせしました。」
「紬!
良かった。
母さん心配してたぞ。」
「……。」
「なんだか、お母さんときちんと話するって
言ってましたよ。」
代弁して答えた。
「そっか。
それじゃぁ、帰ろう。
迷惑かけたな、拓海くん。」
「いえ、じゃぁ、よろしくお願いします。」
お辞儀をして、見送った。
紬は不満そうにしながら、
颯太の横に立ち
家路に向かう。
***
チャプンと水の音がなる。
紬と美羽は、数十年ぶりに
自宅のお風呂に入った。
お風呂の中で2人になり、
向き合ったら、
ちゃんと話せるかもと美羽が考えた。
「紬、大きくなったよね。
初めて会った時は
こんなに小さかったのに…。」
昔を思い出す美羽。
頑張って親目線で話そうと努力した。
「うん。
いつもお父さんと2人きりだった時は、
1人でお風呂済ませるようにしてたから、
美羽さんが来てから寂しさ埋められた。
あの時は嬉しかった。」
過去を振り返り、寂しい気持ちを
補っていたことを思い出す。
「…そうなんだ。
良かった。喜んでもらえてたんだ。」
「その時から同時に美羽さんに嫉妬した。
拓海さんにゲーセンで
ぬいぐるみ取って
もらった時、
すごく嬉しくて美羽さんより
私のためなんだって
小さいながらに感じてた。
再会してなかったら、
付き合うなんて考えないよ。」
両手で湯船のお湯をすくう。
入浴剤で白く色ついたお湯が
さらさらしていた。
「紬、その時から、
拓海のこと気になっていたの?」
「かっこいいお兄さんって思ってたよ。
当時は、自分は子供だし、
相手にはされないだろうとは
思ってたけどね。」
「……そっか。」
だんだんと気持ちが冷静に
なってきたようだ。
「まだ反対する?
私、婚期が遅れても大丈夫?」
首を横に振る。
「紬、ごめんね。
私の嫉妬なの。
若い人が良いのかなって
感じてたけどそうじゃないみたい。
元彼だし、焦ったっていうのもある。
自分で別れを告げた訳なんだけどさ。
拓海も見てると何だか本気っぽいし、
私みたいな扱いされないことを祈るわ。」
「それって、付き合ってもいいってこと?」
「でも、同棲は…。」
「えーーー。同棲はだめなの?」
「そろそろ、あがろう。
指先がシワシワなっちゃった。」
美羽は長湯しすぎて肌はシワシワに
顔が真っ赤になった。
紬は平気そうだった。
「スッキリした。
良かった。」
「大嫌いって初めて言われたから
かなり傷ついたよ。」
美羽は体をタオルで拭きながらいう。
「ごめんなさい。
大嫌いは愛情の裏返しです。
大好きな人にしか言いません。」
美羽はその言葉を聞いて救われた。
「ねぇねぇ、
随分今日はお風呂にぎやかだね。
なんかあったの?」
スナック菓子を食べながらテレビを
見ていた琉久は言う。
「さーてね、何があったんだろうね。」
「父さんは、知らないの?」
「知らないよ。」
「へぇ、まあ別になんだっていいけど。」
紬は、お風呂のほかに
美羽と隣同士で寝ることにした。
拓海の癖のこととか、
注意した方がいいことを
勉強するようにふむふむと聞くためだ。
案外仲良くやっていけそうな気がした。
女子の会話で夜は長くなりそうだ。
拓海の部屋で過ごすのかと
少し安心した紬は
ベッドに座って、
足をぶらんぶらんと動かした。
修学旅行の前日のようで
楽しくなってきた。
いつまでいれるか分からないけど、
いっそならずっとこのままでも
良いのになぁと考えた。
そんな時、インターフォンが鳴った。
「はい。」
拓海は、
インターフォン画面に映る
颯太を見た。
さっきの美羽へのラインに念の為、
自宅住所を送っておいた。
時間差がそんなにない。
迎えに来たのかと玄関に出る。
「ごめん、拓海くん。
どうしても、美羽が
受け入れられないからって
紬を迎えに来た。
出してくれるかな。」
「あ…はい。
ちょっと待ってくださいね。」
紬は、かくれんぼするように
クローゼットから出てこない。
「紬、お父さん。
迎えに来たぞ。」
「…やだ。」
姿を隠しながら返事をする。
「このままじゃ、お互い良く無いから
まずは帰ろう。」
「だって、反対してるんだよ?」
「そうかもしれないけどさ。
まずは、両親説得してきて。」
「拓海さんできなくて、私になんて
尚更できないよ。」
「大丈夫だよ。
長く一緒に暮らしてきた家族なんだから
俺よりどうしたいかくらいわかるだろ?」
「……どうしたいか。
そりゃぁ、幸せになりたいと思う。」
拓海は、クローゼットに隠れる紬に
声をかけ続ける。
紬は、暗闇の中、考える。
「俺も、幸せになりたいから。な?」
「……できるかな。私に。」
「できる。
仕事のミッションやるより簡単だ。」
「えー、どんだけ私仕事できない人なの?」
「できない人だったのか?」
「いえ、違います!」
「よし。」
紬がやっとクローゼットの
中から出てきた。
拓海はポンポンと頭を撫でる。
「待ってるから。
期待してるよ?」
「うん、わかった。」
颯太は、玄関の外で腕を組んで
待っていた。
「お待たせしました。」
「紬!
良かった。
母さん心配してたぞ。」
「……。」
「なんだか、お母さんときちんと話するって
言ってましたよ。」
代弁して答えた。
「そっか。
それじゃぁ、帰ろう。
迷惑かけたな、拓海くん。」
「いえ、じゃぁ、よろしくお願いします。」
お辞儀をして、見送った。
紬は不満そうにしながら、
颯太の横に立ち
家路に向かう。
***
チャプンと水の音がなる。
紬と美羽は、数十年ぶりに
自宅のお風呂に入った。
お風呂の中で2人になり、
向き合ったら、
ちゃんと話せるかもと美羽が考えた。
「紬、大きくなったよね。
初めて会った時は
こんなに小さかったのに…。」
昔を思い出す美羽。
頑張って親目線で話そうと努力した。
「うん。
いつもお父さんと2人きりだった時は、
1人でお風呂済ませるようにしてたから、
美羽さんが来てから寂しさ埋められた。
あの時は嬉しかった。」
過去を振り返り、寂しい気持ちを
補っていたことを思い出す。
「…そうなんだ。
良かった。喜んでもらえてたんだ。」
「その時から同時に美羽さんに嫉妬した。
拓海さんにゲーセンで
ぬいぐるみ取って
もらった時、
すごく嬉しくて美羽さんより
私のためなんだって
小さいながらに感じてた。
再会してなかったら、
付き合うなんて考えないよ。」
両手で湯船のお湯をすくう。
入浴剤で白く色ついたお湯が
さらさらしていた。
「紬、その時から、
拓海のこと気になっていたの?」
「かっこいいお兄さんって思ってたよ。
当時は、自分は子供だし、
相手にはされないだろうとは
思ってたけどね。」
「……そっか。」
だんだんと気持ちが冷静に
なってきたようだ。
「まだ反対する?
私、婚期が遅れても大丈夫?」
首を横に振る。
「紬、ごめんね。
私の嫉妬なの。
若い人が良いのかなって
感じてたけどそうじゃないみたい。
元彼だし、焦ったっていうのもある。
自分で別れを告げた訳なんだけどさ。
拓海も見てると何だか本気っぽいし、
私みたいな扱いされないことを祈るわ。」
「それって、付き合ってもいいってこと?」
「でも、同棲は…。」
「えーーー。同棲はだめなの?」
「そろそろ、あがろう。
指先がシワシワなっちゃった。」
美羽は長湯しすぎて肌はシワシワに
顔が真っ赤になった。
紬は平気そうだった。
「スッキリした。
良かった。」
「大嫌いって初めて言われたから
かなり傷ついたよ。」
美羽は体をタオルで拭きながらいう。
「ごめんなさい。
大嫌いは愛情の裏返しです。
大好きな人にしか言いません。」
美羽はその言葉を聞いて救われた。
「ねぇねぇ、
随分今日はお風呂にぎやかだね。
なんかあったの?」
スナック菓子を食べながらテレビを
見ていた琉久は言う。
「さーてね、何があったんだろうね。」
「父さんは、知らないの?」
「知らないよ。」
「へぇ、まあ別になんだっていいけど。」
紬は、お風呂のほかに
美羽と隣同士で寝ることにした。
拓海の癖のこととか、
注意した方がいいことを
勉強するようにふむふむと聞くためだ。
案外仲良くやっていけそうな気がした。
女子の会話で夜は長くなりそうだ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる