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第13話
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厨房で実花は
今日もパン生地をこねていた。
いつもより機嫌がよく
出たことのない鼻歌が聞こえてくる。
父の雄亮は、なんで機嫌がいいんだろうと
思いながら一緒にパンの生地をこねていた。
紬は、父の颯太に会えなかったことが
悔しくて、引きずっていた。
「おはよう。」
「紬、おはよう。
今日は、鮭茶漬けにしてみたよ。
どうした、そんな険しい顔して。」
「ねぇ、なんで、ママ、
あんなに機嫌がいいの?
つむちゃん、すごい機嫌わるいのに!」
「あー、そうだよね。
パパに会えなかったもんね。」
「……うん。」
「ママ、明日、デートって言ってたよ。」
「え?まさか、パパと?」
「おばあちゃんはそう思うんだけど…。
違うかな。」
実花は、
体裁上は、颯太とデートすると
家族に宣伝しておいた。
母の言った言葉を鵜吞みにして、
新たな人生を踏み切ろうと、
マッチングアプリに登録して、
新しい彼氏を見つけていた。
本当は颯太を男性として、
見れていなかったんだと
改めて再確認して、
部屋のテーブルにはちゃっかり
緑色の用紙に丁寧に名前を書いて
準備していた。
実花の母は、まだその真実を知らない。
もちろん、娘の紬の耳には入らなかった。
理想の彼氏の欄には、しっかりと
料理ができて、パン作りができる人と
書いてあった。
「そうなんだ。
パパとデートするなら、
つむちゃん、うれしいなぁ。
帰ってきてくれるのかな。」
「そうだといいね。」
豊美は孫との食事は、
とても美味しく感じていた。
◇◇◇
颯太はチャイムを鳴らした。
美羽は毛布を頭からかぶって、
ガタガタ言わせながら
インターフォンを眺めた。
何も言わずに
玄関の前に立っている颯太がいて
風邪も吹き飛ぶくらいに
笑えた。
玄関の扉を開けては
お化けのような格好で
颯汰を中の方へ案内した。
「お客さんのような
対応できないけど…。」
美羽は玄関の鍵を開けては
すぐにベッドに横になった。
「いいよ。
その為に来たんだから
気にしないでベッドで寝てて。」
腕まくりをして
キッチンに立ち、
料理なんて
したことがないのに
美羽のためならと
その辺にあった
小鍋を取り出して
お粥を作ろうとした。
米と卵とお出汁と
スマホのレシピ動画を見ながら
大きなお椀に盛り付けては
トレイと一緒に
美羽のベッドのところまで
運んだ。
コゲコゲの明らかに失敗作の
卵お粥ができた。
額の汗を拭いては
美羽に頑張ったぞアピールをした。
「あ…うん。
ありがとう。
ちょっとだけ
頂こうかな。」
明らかに塩と砂糖を間違えて
作ったようで甘味が強かった。
顔を青くしては
無理して
「美味しいよ…。うん。」
具合悪くしてるのが
もっと具合悪くなりそうだった。
そういうこともあろうと
颯太は慌てて
レトルトパウチのお粥を
レンジで温めては
入れ直した。
「いや、その。
無理すんなって。
マズイならマズイって言って。
ちょっと試して
美羽のために
作ってみようとしただけだから
改めて
これ、食べて。
俺、おすすめの梅がゆパウチ。」
「え?
何、これ。
美味しい。
梅がちょうど酸味が効いてて
食べやすいね。」
美羽の本当の笑顔が見れて、
颯太は嬉しそうだった。
「ごめんな、俺、作るの苦手で。
1人でいつもレトルトとか
弁当とか買って来てるからさ。
どう作ったらいいか…
わからなくて。」
「嬉しい…。
作れないのに
私のために頑張ってくれたんだよね。
どうしても、食べることは
難しいけど、気持ちは
受け取っておくよ。
ありがとう。」
ベッドから
横にいる颯太に優しく
微笑みかける美羽。
感動のシーンと思ったら、
気持ち悪かったのか、
食べたものが一気に
噴水のように飛び出した。
「ご、ごめん。台無しに
しかも、身体中にかかってるし。
申し訳ない。」
「大丈夫、片付けくらいなら
慣れてるから。
作るより楽だよ。」
颯太はテキパキと散らかった
床やベッドなどを
早急に片付け始めた。
嫌がらずにやってくれて
頼もしかった。
「ごめんなさい。
やっぱり本調子じゃないみたい。
横になって寝るね。」
「ああ。
ここに水置いておくから
飲むんだよ?
俺、そっちのソファで寝てるから
なんかあったら呼んで?」
「うん。ありがとう。」
普通ならば
服汚れた床汚れただけで
嫌がるものを
むしろ、
自然に当たり前だろ人間だからと
いうような流れで
対応してくれて
何だか心がほんわかした。
(拓海だったら嫌がりそう…。)
寝返りを打ってはまた眠りについた。
(紬が赤ちゃんの頃、
何度もミルクの吐き戻しがあったから
全然慣れてるし
食事よりそっちの片付けなら
平気だけど…。
でも、バレたら嫌だろうな…。)
複雑な心境の中、毛布を体にかけて
颯太はソファで眠りについた。
誰かがいる空間で寝るだけで
なぜかほっとした。
今日もパン生地をこねていた。
いつもより機嫌がよく
出たことのない鼻歌が聞こえてくる。
父の雄亮は、なんで機嫌がいいんだろうと
思いながら一緒にパンの生地をこねていた。
紬は、父の颯太に会えなかったことが
悔しくて、引きずっていた。
「おはよう。」
「紬、おはよう。
今日は、鮭茶漬けにしてみたよ。
どうした、そんな険しい顔して。」
「ねぇ、なんで、ママ、
あんなに機嫌がいいの?
つむちゃん、すごい機嫌わるいのに!」
「あー、そうだよね。
パパに会えなかったもんね。」
「……うん。」
「ママ、明日、デートって言ってたよ。」
「え?まさか、パパと?」
「おばあちゃんはそう思うんだけど…。
違うかな。」
実花は、
体裁上は、颯太とデートすると
家族に宣伝しておいた。
母の言った言葉を鵜吞みにして、
新たな人生を踏み切ろうと、
マッチングアプリに登録して、
新しい彼氏を見つけていた。
本当は颯太を男性として、
見れていなかったんだと
改めて再確認して、
部屋のテーブルにはちゃっかり
緑色の用紙に丁寧に名前を書いて
準備していた。
実花の母は、まだその真実を知らない。
もちろん、娘の紬の耳には入らなかった。
理想の彼氏の欄には、しっかりと
料理ができて、パン作りができる人と
書いてあった。
「そうなんだ。
パパとデートするなら、
つむちゃん、うれしいなぁ。
帰ってきてくれるのかな。」
「そうだといいね。」
豊美は孫との食事は、
とても美味しく感じていた。
◇◇◇
颯太はチャイムを鳴らした。
美羽は毛布を頭からかぶって、
ガタガタ言わせながら
インターフォンを眺めた。
何も言わずに
玄関の前に立っている颯太がいて
風邪も吹き飛ぶくらいに
笑えた。
玄関の扉を開けては
お化けのような格好で
颯汰を中の方へ案内した。
「お客さんのような
対応できないけど…。」
美羽は玄関の鍵を開けては
すぐにベッドに横になった。
「いいよ。
その為に来たんだから
気にしないでベッドで寝てて。」
腕まくりをして
キッチンに立ち、
料理なんて
したことがないのに
美羽のためならと
その辺にあった
小鍋を取り出して
お粥を作ろうとした。
米と卵とお出汁と
スマホのレシピ動画を見ながら
大きなお椀に盛り付けては
トレイと一緒に
美羽のベッドのところまで
運んだ。
コゲコゲの明らかに失敗作の
卵お粥ができた。
額の汗を拭いては
美羽に頑張ったぞアピールをした。
「あ…うん。
ありがとう。
ちょっとだけ
頂こうかな。」
明らかに塩と砂糖を間違えて
作ったようで甘味が強かった。
顔を青くしては
無理して
「美味しいよ…。うん。」
具合悪くしてるのが
もっと具合悪くなりそうだった。
そういうこともあろうと
颯太は慌てて
レトルトパウチのお粥を
レンジで温めては
入れ直した。
「いや、その。
無理すんなって。
マズイならマズイって言って。
ちょっと試して
美羽のために
作ってみようとしただけだから
改めて
これ、食べて。
俺、おすすめの梅がゆパウチ。」
「え?
何、これ。
美味しい。
梅がちょうど酸味が効いてて
食べやすいね。」
美羽の本当の笑顔が見れて、
颯太は嬉しそうだった。
「ごめんな、俺、作るの苦手で。
1人でいつもレトルトとか
弁当とか買って来てるからさ。
どう作ったらいいか…
わからなくて。」
「嬉しい…。
作れないのに
私のために頑張ってくれたんだよね。
どうしても、食べることは
難しいけど、気持ちは
受け取っておくよ。
ありがとう。」
ベッドから
横にいる颯太に優しく
微笑みかける美羽。
感動のシーンと思ったら、
気持ち悪かったのか、
食べたものが一気に
噴水のように飛び出した。
「ご、ごめん。台無しに
しかも、身体中にかかってるし。
申し訳ない。」
「大丈夫、片付けくらいなら
慣れてるから。
作るより楽だよ。」
颯太はテキパキと散らかった
床やベッドなどを
早急に片付け始めた。
嫌がらずにやってくれて
頼もしかった。
「ごめんなさい。
やっぱり本調子じゃないみたい。
横になって寝るね。」
「ああ。
ここに水置いておくから
飲むんだよ?
俺、そっちのソファで寝てるから
なんかあったら呼んで?」
「うん。ありがとう。」
普通ならば
服汚れた床汚れただけで
嫌がるものを
むしろ、
自然に当たり前だろ人間だからと
いうような流れで
対応してくれて
何だか心がほんわかした。
(拓海だったら嫌がりそう…。)
寝返りを打ってはまた眠りについた。
(紬が赤ちゃんの頃、
何度もミルクの吐き戻しがあったから
全然慣れてるし
食事よりそっちの片付けなら
平気だけど…。
でも、バレたら嫌だろうな…。)
複雑な心境の中、毛布を体にかけて
颯太はソファで眠りについた。
誰かがいる空間で寝るだけで
なぜかほっとした。
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