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第2話
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拓海は、颯太の胸ぐらをつかもうとした。
「どうしました~?」
営業スマイルなのか、
さわやかに笑顔をふりまく、
カラカラと自転車をおす警察官がいた。
パトロール中だったのだろうか。
「こんなところで喧嘩ですか?」
自転車をとめて近づいてきた。
「い、いえいえ。
久しぶりに会った同級生で、
話が盛り上がっていたんですよ?!」
拓海はつかもうとしていた
颯太のワイシャツを
整えた。
「こんな、真夜中にですか?」
「そ、そうですよ。
なあ?」
初対面で名前も知らない2人。
拓海は颯太の肩に手をまわす。
必死でごまかしている。
美羽は、明らかに不自然だろうと
呆れて黙って見ていた。
「……ええ。」
颯太が苦笑いをして、答えた。
「久しぶり?」
「そう。」
「同級生?」
「はい。」
警察官は、
2人の姿を
ジロジロと頭のてっぺんから
つま先まで見つめる。
同い年ににわか疑問が生じた。
「…まぁ、いいでしょう。
気をつけてくださいね。
真夜中ですから。」
警察官は、厳重注意という流れで、
自転車のスタンドをあげた。
「それじゃぁ、仲良くねぇ。」
サドルに座って、颯爽と行く。
最後まで見送ってから、
拓海は、肩に置いていた手を
離した。
「誰が、同級生だよ?!
違いすぎるだろう。」
自分が言っておいてツッコミしている。
颯太は、ガクッと体をうなだれた。
「ほら、帰るぞ。」
拓海は、美羽の手をつないで
連れて行こうとした。
「やだ。」
パッとつないだ手を離す。
「なんで?」
「やだから。」
「いいから!!」
無理やりにまた連れて行こうとする。
「だから!
それ、良くないから!!」
颯太が声を荒げる。
手を包丁のようにして、
拓海と美羽の手を切って
離した。
「さっきから、あんた何なんだよ!
邪魔するのやめてくんねぇ?」
イラ立ちを隠せない。
息を荒げる拓海。
「同意も得ずに連れていくのは
良くないって言ってるんだ。」
颯太は冷静な様子。
「こいつは俺の彼女だから。
お前、関係ないだろ!?」
「もう、彼女じゃない!!」
美羽は叫んだ。
「はぁ?!」
「私、この人と付き合うから!!」
美羽は颯太の隣にそっと行き、
腕をつかんだ。
「え?!」
「あ?!!」
拓海も颯太も驚いたようすで
しばし固まった。
「…ああ!!そう!!
勝手にしろ!!」
拓海は、信じられなかったが、
突き放したら戻ってくるだろうと
たかをくくった。
その場から離れて、振り向きもせずに
アパートの部屋に戻った。
玄関に着いても追いかけてくる
様子もない。
ドアの鍵を開ける音が妙に響いた。
鍵ケースのかごにキーホルダーが
ついた鍵を入れた。
壁掛け時計を見ると時刻は午前3時。
テレビをつけても面白いものなんて
やってない。
ベッドに横になって
ふとんを体にかけても
落ち着かない。
隣に美羽のいないベッドで
熟睡なんて全然できなかった。
何が不満で嫌だというのか
わからない拓海だった。
「あ、あの…。
よかったんですか?
彼氏さん。
行ってしまいましたけど…。」
勢い余って付き合うと叫んだ美羽は、
恥ずかしいのが勝っていた。
硬直して何も言えなくなっている。
顔を真っ赤にしていた。
「……。」
「とりあえず、ベンチに座りますか。」
指さして、ベンチに誘導する。
さっき飲んでいた缶のカフェオレが
残っていた。
気持ちを落ち着かせて、ごくんと飲んだ。
「あ、あの。
もし、迷惑じゃなかったらで
いいんですけど。」
「え、ああ。
まぁ、友達くらいからなら
大丈夫ですけど。
彼氏さんより年上っぽいですが、
いいんですか?」
颯太は、ダメとも言えない
お人よしだ。
「年齢は関係ないと思ってるので!
そこは、大丈夫です。
連絡先交換してもいいですか?」
颯太はポケットに入れていたスマホを
取り出す。
「あ、電池がなかったんだった。」
美羽が取り出したスマホは
赤い電池マークで
画面さえも開けなかった。
うなだれた。
「そしたら、
電話番号言ってもらっても?」
颯太は、
電話帳新規登録画面を開いた。
「080*******です。」
「登録完了っと。
ラインは次会った時にしましょう。
夜が明けちゃいますよ。
家まで送りますから
帰りましょう。」
飲んでいた缶を
くずかごにポイっと投げた。
「年上なら、敬語じゃなくても
いいですよ。
というか、何歳ですか?」
「え?
26歳ですよ。」
「あれ、あまり変わらない。
私、24歳です。
拓海は、私と同い年なので、
同級生って言ってもおかしく
なかったですね。」
「2歳差はあるんですけどね。
ちょっと納得できませんが…。」
「あ、すいません。
逆鱗に触れましたか?」
「そこまで怒ってはないです。」
「颯太さん、やっぱり面白いです。」
颯太は
ちょっと不機嫌になりながら、
美羽の横に移動し、
数センチ間を開けて、
家路を歩いた。
酔いは完全に冷めていた。
アパートの外から
美羽が2階の玄関ドアを
開けるところに
手を振って、遠くから見送った。
夜が明けて、朝日がのぼっていた。
細長い雲が流れている。
遠くでニワトリが鳴くのが聞こえた。
夜から朝まで起きていたのは
何年ぶりだろう。
颯太は、
ポケットに手を入れて、
小石を転がしながら
朝日に向かって
路地を歩いて行った。
「どうしました~?」
営業スマイルなのか、
さわやかに笑顔をふりまく、
カラカラと自転車をおす警察官がいた。
パトロール中だったのだろうか。
「こんなところで喧嘩ですか?」
自転車をとめて近づいてきた。
「い、いえいえ。
久しぶりに会った同級生で、
話が盛り上がっていたんですよ?!」
拓海はつかもうとしていた
颯太のワイシャツを
整えた。
「こんな、真夜中にですか?」
「そ、そうですよ。
なあ?」
初対面で名前も知らない2人。
拓海は颯太の肩に手をまわす。
必死でごまかしている。
美羽は、明らかに不自然だろうと
呆れて黙って見ていた。
「……ええ。」
颯太が苦笑いをして、答えた。
「久しぶり?」
「そう。」
「同級生?」
「はい。」
警察官は、
2人の姿を
ジロジロと頭のてっぺんから
つま先まで見つめる。
同い年ににわか疑問が生じた。
「…まぁ、いいでしょう。
気をつけてくださいね。
真夜中ですから。」
警察官は、厳重注意という流れで、
自転車のスタンドをあげた。
「それじゃぁ、仲良くねぇ。」
サドルに座って、颯爽と行く。
最後まで見送ってから、
拓海は、肩に置いていた手を
離した。
「誰が、同級生だよ?!
違いすぎるだろう。」
自分が言っておいてツッコミしている。
颯太は、ガクッと体をうなだれた。
「ほら、帰るぞ。」
拓海は、美羽の手をつないで
連れて行こうとした。
「やだ。」
パッとつないだ手を離す。
「なんで?」
「やだから。」
「いいから!!」
無理やりにまた連れて行こうとする。
「だから!
それ、良くないから!!」
颯太が声を荒げる。
手を包丁のようにして、
拓海と美羽の手を切って
離した。
「さっきから、あんた何なんだよ!
邪魔するのやめてくんねぇ?」
イラ立ちを隠せない。
息を荒げる拓海。
「同意も得ずに連れていくのは
良くないって言ってるんだ。」
颯太は冷静な様子。
「こいつは俺の彼女だから。
お前、関係ないだろ!?」
「もう、彼女じゃない!!」
美羽は叫んだ。
「はぁ?!」
「私、この人と付き合うから!!」
美羽は颯太の隣にそっと行き、
腕をつかんだ。
「え?!」
「あ?!!」
拓海も颯太も驚いたようすで
しばし固まった。
「…ああ!!そう!!
勝手にしろ!!」
拓海は、信じられなかったが、
突き放したら戻ってくるだろうと
たかをくくった。
その場から離れて、振り向きもせずに
アパートの部屋に戻った。
玄関に着いても追いかけてくる
様子もない。
ドアの鍵を開ける音が妙に響いた。
鍵ケースのかごにキーホルダーが
ついた鍵を入れた。
壁掛け時計を見ると時刻は午前3時。
テレビをつけても面白いものなんて
やってない。
ベッドに横になって
ふとんを体にかけても
落ち着かない。
隣に美羽のいないベッドで
熟睡なんて全然できなかった。
何が不満で嫌だというのか
わからない拓海だった。
「あ、あの…。
よかったんですか?
彼氏さん。
行ってしまいましたけど…。」
勢い余って付き合うと叫んだ美羽は、
恥ずかしいのが勝っていた。
硬直して何も言えなくなっている。
顔を真っ赤にしていた。
「……。」
「とりあえず、ベンチに座りますか。」
指さして、ベンチに誘導する。
さっき飲んでいた缶のカフェオレが
残っていた。
気持ちを落ち着かせて、ごくんと飲んだ。
「あ、あの。
もし、迷惑じゃなかったらで
いいんですけど。」
「え、ああ。
まぁ、友達くらいからなら
大丈夫ですけど。
彼氏さんより年上っぽいですが、
いいんですか?」
颯太は、ダメとも言えない
お人よしだ。
「年齢は関係ないと思ってるので!
そこは、大丈夫です。
連絡先交換してもいいですか?」
颯太はポケットに入れていたスマホを
取り出す。
「あ、電池がなかったんだった。」
美羽が取り出したスマホは
赤い電池マークで
画面さえも開けなかった。
うなだれた。
「そしたら、
電話番号言ってもらっても?」
颯太は、
電話帳新規登録画面を開いた。
「080*******です。」
「登録完了っと。
ラインは次会った時にしましょう。
夜が明けちゃいますよ。
家まで送りますから
帰りましょう。」
飲んでいた缶を
くずかごにポイっと投げた。
「年上なら、敬語じゃなくても
いいですよ。
というか、何歳ですか?」
「え?
26歳ですよ。」
「あれ、あまり変わらない。
私、24歳です。
拓海は、私と同い年なので、
同級生って言ってもおかしく
なかったですね。」
「2歳差はあるんですけどね。
ちょっと納得できませんが…。」
「あ、すいません。
逆鱗に触れましたか?」
「そこまで怒ってはないです。」
「颯太さん、やっぱり面白いです。」
颯太は
ちょっと不機嫌になりながら、
美羽の横に移動し、
数センチ間を開けて、
家路を歩いた。
酔いは完全に冷めていた。
アパートの外から
美羽が2階の玄関ドアを
開けるところに
手を振って、遠くから見送った。
夜が明けて、朝日がのぼっていた。
細長い雲が流れている。
遠くでニワトリが鳴くのが聞こえた。
夜から朝まで起きていたのは
何年ぶりだろう。
颯太は、
ポケットに手を入れて、
小石を転がしながら
朝日に向かって
路地を歩いて行った。
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