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第4話 会議は大層踊った様です。-1-
しおりを挟む次の日、私が目覚めた時には既に太陽は大分高い位置まで登っていた。
「お早うございますお嬢様。随分とお早いお目覚めで」
ベットの上で伸びをする私にエミリッタから声がかかった。
「お早うエミリッタ。グッスリ眠れて気分がいいから今の嫌味は聞かなかった事にしてあげる」
「お嬢様の格別のご配慮に感謝致します」
「エミリッタ、着替えをお願い。それからマテウスに昼食の準備とエラリー様の様子をそれとなく探るよう伝えて頂戴。それと、昼食は貴女とマテウスと一緒に取ります。少しお話があるので」
「承知致しました。では先にマテウスへの連絡を済ませますのでお嬢様はもう暫くベットの上でお寛ぎください」
「ええ。有り難くそうさせて貰うわ」
私は部屋を出て行く彼女を横目にベットの上で怠惰な温もりを満喫した。
「マテウス、エミリッタ。既に知っていると思うけれど私に婚約の申し込みがあったと父様がおっしゃてました」
昼食の席に着いた私は同じく席に着いて食事をとっていたマテウスとエミリッタに視線を向ける。
従者とは思えない実に洗練された動作で食事をする彼らを横目に私は言葉を続ける。
「相手はアルトシュタイン公爵家の当主様。マテウス、王都にいた貴方に聞きたいのだけど、この情報に間違いはないかしら」
「はい、間違いございません。私の愚考する所ではありますがこの話は実に内々に進められているのではないかと。ご存知なのはモンロー公爵夫妻と公爵家筆頭執事のヘンリック様くらいでしょう。当事者である公爵本人すらご存知でない可能性がございます。ヘンリック様以外の公爵家従者はもちろん、他家の従者の間でもその様な話題は一切耳にした事がございませんので。そもそもこの話はヘンリック様がモンロー伯に、いつまでも結婚しようとしない主人についに運命の人が現れたと零したところから始まった様です」
「なるほど、その話詳しく聞かせて頂戴。なんだか重要な気がするわ」
「承知しました。私もモンロー伯から伝え聞いた話ですので、それが真実であるかは確証はありませんが、どうやら公爵が教会での祭事の際に神よりお告げがあり、自分の運命の人は赤と青の瞳と銀の御髪を持った女性であると、ヘンリック様に零したそうです。ヘンリック様にはその様な容姿の人物に心当たりがあった様で、その人物と深い縁のあるモンロー伯に相談なさったそうです。確かこれは6日前の話だったと記憶してございます」
「なるほど、確かに公爵が述べた条件とお嬢様の容姿は一致しますね。御髪と瞳以外に条件がなければ」
「エミリッタ、それはどういう事かしら?」
「いえ、誰も発育が良いや女性らしいなどの肉体的条件がつけばお嬢様が該当する事もなかったのに等とは思っておりません」
「とりあえずエミリッタの機嫌が未だに治ってない事はよく分かったわ。あと、貴女に貧相とは言われたくない。それで、その条件を聞いたモンロー伯が私を思い浮かべて、父様に手紙をよこして、舞い上がった父様の所為で今私はここにると、そういう事ね?」
「はい。私の知る限りではこれがお嬢様に対する婚約申し込みの真相となります」
「なるほどね、ありがとうマテウス。エミリッタ、一つ聞きたいのだけど、例の公爵様は女性嫌いで有名な彼の方で間違い無いわよね?」
「はい、間違い無いかと。その様な噂話はよく耳にします。私的な見解を挟むのであれば女性嫌いと言うよりも他人にあまり興味のない部類の人物かと愚考します。どちらもあまり頻繁に社交の場に現れないとはいえ、目立つ容姿のお嬢様とモンロー伯の関係を知らず、自身の従者がモンロー伯と繋がりがある事も知らない様ですから。また、結婚にも興味がない様で、しつこく結婚を迫る令嬢や貴族たちを疎んじていという話もよく耳にします」
「なるほどなるほど、なんとなく話が見えてきたわね」
「ええ、大方お嬢様の予想した通りかと」
はあ、と私がため息をつけば、マテウスもエミリッタも苦笑いを浮かべていた。
「どうやら公爵様の体のいい言い訳にまんまと該当しちゃったみたいね」
食卓に流れた沈黙はそれが満場一致の意見である事を雄弁に示していた。
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