王様の伴侶 -続・辺境村から来た少年-

ひなた理実

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天界 編

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照れ隠しで寝たふりをしていたカミーユだが、本当に寝てしまっていたらしい。
気配を感じてゆっくりと瞼を開けると、黒虎が横寝に肘枕の姿勢で片手を伸ばしてきたところだった。
「…黒虎」
「気配を察するのが上手くなったな」
「なんでだろうな」
「天界に馴染んできた証拠だ」
黒虎がカミーユの問いに答えながら黄金の髪を梳く。
カミーユの髪はいよいよ尻より下まで長くなっていた。
「髪って切ったら駄目なのか」
「邪魔か」
「庭でおにごっこしてもかくれんぼしても、髪で見つかったり捕まったりする」
黒虎が軽く笑った。

…今更だけど、黒虎って男前なんだな。

目の色が目立っていたからかあまり意識していなかったけれど、よく見ればかなり整っている。
顔をじっと見ていると、黒虎がカミーユの長い髪をひと房手に取り持ち上げた。
「綺麗だからこのままでもいいと思うが、邪魔なのなら切ればいい」
「じゃハサミ貸して」
「だがその前に」
黄金色の髪がはらりと黒虎の手から零れるに、黒虎が覆いかぶさってきた。
「長い髪のカミーユを堪能したい」
覆いかぶさっている黒虎に、カミーユの長い黄金色の髪がふわりと舞い落ちてくる。
首肯するより先に、黒虎の厚い唇がカミーユの口を捕らえていた。

黒虎が創ったカミーユの中の生殖器が消滅してから、かなり経っている。
今日、これから、それを新たに創るのかも知れない。
怖い反面、新しい器官に黒虎を迎え入れたあの快楽を思い出す。

カミーユの心が期待と不安で揺れているうちに、いつの間にか裸にされ、優しいながらも性急な手つきに翻弄される。
口腔をくまなく舌で愛撫され、ようやく唇が離れた時、カミーユも黒虎も軽く息が上がっていた。

灰虎は、黒虎は淡白だなんて言っていたけど絶対嘘だ。
覆いかぶさる黒虎の目は猛獣そのもの捕食者のそれだ。
怖いのに期待している自分もいて、自然と黒虎の顔をじっと見つめてしまう。それに気づいた黒虎が、くっと口角を上げた。

「欲しいと言え」

人間界でカミーユをからかっていた時のような口調と笑みに、カミーユはなにかの塊が解けていくような感じを覚えた。

「カミーユ?」

様子が変わったと察した黒虎が、大きな掌でカミーユのこめかみから髪を撫で、指の間に黄金の糸を絡め梳いていく。

カミーユを気遣う黄玉の瞳を見つめながら、黒虎の目ってこんなに綺麗だったんだなってしみじみと思った。
初めて会ったときは石にされそうだなんて恐怖を感じていたのに。


『あなたにしかできないことが、王都にあります。カミーユ。あなたはそのために生まれてきたのです』

『預言云々関係なく、カミーユだから惹かれたっていえば信じるか』


余計なことを全部締め出して残った思い。

俺は―――


心をよまれているとしたら、きっと気づいているだろう。
だからあえて口にしなかったし、神様に人間のような感情は、きっと、ない。

心を通わせることが相思相愛を示すのかはわからない。
カミーユはそれでもいいと思った。

紺青の瞳で黄玉の瞳を見上げながら、カミーユは両手を伸ばし黒虎のこめかみを包んだ。

「伴侶に選んでくれてありがとう」
「…カミーユ」

カミーユが上体を起こし、黒虎の唇に口づける。

初めてカミーユから示した積極的な行為に、黒虎の瞳が愛おし気に細められたように見えたのは、カミーユの欲目かもしれない。

一度離れた唇はまた近づき、次に合わさった時は深く繋がる。互いの舌が絡まり合い、時折歯列をなぞる。黒虎の大きな犬歯を舌で愛撫すると、黒虎の押し付けられていた雄がぐっと張り詰めたのを感じた。
「煽るな」
「犬歯って舐められると気持ちいいのか」
「聞くな」
互いの唾液で濡れた唇が息をつく間もなく合わさり、交わる。黒虎の手がカミーユの肌を這い片足の膝裏に回り、ぐっと股を開かされた。口腔を舌で愛撫されながら、尻のあわいに這う指は濡れていて、花油の香りが漂う。襞をくにくにと捏ねられ、塞がれている口から悶える声が漏れる。やがて口襞を広げながら黒虎の指が孔に沈んでいく。
「ん、…ふ……っ」

口腔は舌に、後孔は指に翻弄される。どちらからも粘る水音が立っている。

やっと唇を離してくれた時、後ろの孔に埋まる指が増やされていて、カミーユは艶めかしい声を上げてしまう。
「あっ!ぁあっ、んんっ」

前立腺が刺激され、カミーユの紺青の目に生理的な涙が滲む。
孔の口がかなり解れたことを確かめた黒虎の指がさらに増やされた。
「あぁっ!」
カミーユの孔の口の襞がさらにのび、太い指をしっかり咥え込む。ぐちょぐちょといやらしい音が黒虎が指を動かすたびに大きくなっていく。
カミーユの雄は腹につくほど反り勃ち、先端の小さな穴からは光るものが零れ出ていた。ひくひくと蠢くその裏側に根元から先へと舌を這わせた黒虎が大きく口を開け先端を含んだ。
「や、やだっ」
口腔壁に擦り付けるように根元近くまで咥え込まれる。
「黒虎、だめぇ!でる!」
手で黒虎の顔を離そうと頑張るが、雄も孔の中も気持ちよくて力が入らない。

口淫と、後孔は指で翻弄され、吐精寸前の状態になった頃、ようやく雄が解放された。
精神的にはぐったりだが、雄は今にも射精しそうにびくびくしている。
「ぁンっ」
ぐちょっといやらしい音を立てて後孔の指が引き抜かれた。

濡れた黒虎の指と口元を目にして、カミーユの体温がさらに上がる。
カミーユの股をさらに広げ、黒虎が体を脚の間に入れ、長大な雄を孔の入り口に押し当てた。

来る!

「カミーユ」

目をぎゅっと閉じてその時を待つカミーユの名を黒虎が呼んだ。

「ちゃんと見ろ」
「…や、それは…」

「誰がカミーユの中に入るのか、しっかり見ろ」

躊躇する間の後、カミーユはぎゅっと閉じていた瞼をそろそろと開いた。
思ったよりも近くに黒虎の黄玉の瞳があってどきりとする。

「ちゃんと見ろ」

そこには欲だけではない真摯な色が浮かんで見えて、カミーユは覚悟を決める。

「…うん」

腰の下にたくさんの毛皮を敷かれ、自身の雄も、脚の間にいる黒虎の雄も丸見えだ。
さすがに恥ずかしい。
さらに体が熱くなった。

「挿れるぞ」
「ぅ、ぅん」

長大な杭が後孔の口襞を押し広げながらカミーユの中へと埋まっていく。

カミーユからはさすがに結合部は見えないけれど、確かに脚の間に陣取っているのは黒虎で、中に入ってくるモノは黒虎の雄に間違いない。
あんなに指でほぐされたのにきつい。
ヒトではないモノのモノなんだからと、カミーユはできるだけ黒虎の出し入れに呼吸を合わせ、括約筋を緩めるように協力する。

もう何度か黒虎を中に迎えているんだ、大丈夫。

ゆっくりとした突き挿れに併せ息を吐き、黒虎を迎える。
黒虎の雄が通る度に炙られるような熱さに我を忘れそうになるがどうにか耐える。

ゆっくり突いてゆっくり抜いてを何度も繰り返し、黒虎の雄がほぼカミーユの中に収まった。
これ以上奥を突いたら結腸まで入ってしまうところで、黒虎が腰を回す。
「は!…ぁあっ!!」
「最奥まで入った」
「い、ちいち言わなくても、いいっ…!」
「つらいか」
「だ、いじょ、ぶ」
「動くぞ」
熱杭が直腸から引き上げていく。
内臓がもっていかれるような感覚と炙られる感覚がカミーユを襲う。

ゆっくりだった抜き差しが徐々に速くなり、卑猥な水音と炙られるような熱さが、内壁を摩擦されるたびに上がっていく。
往復する毎に肥大する熱杭に併せ、カミーユの喘ぐ声もどんどん大きくなる。
カミーユの腹で揺れる雄に、黒虎が手を伸ばし扱き上げた。
「でる!ぁ、あ、あ!あっ!」
いやらしい音を立てて黒虎を咥え込んだ穴が、杭の中身を搾り取るように締め付ける。
カミーユは自身の胸や顎に快楽の証を飛び散らせた。

はあはあと荒く息をするカミーユの中に、黒虎の杭はまだ居座ったままだ。びくびくと蠢いているが太さも硬さも維持しているのが分かる。

「…なんで」

肩で息をしている黒虎の額から汗が伝い、カミーユの頬に落ちた。

「……いやでなければ、新しい場所を創りたい」

黄玉の瞳には欲があるのがはっきりとわかる。
相当我慢をして射精を耐えたのだろう。
そう思うとかわいそうだと思う反面おかしくて思わず吹き出してしまった。

「っ」

それで刺激されたのか、中の黒虎がびくびくびくっと跳ねた。

「カミーユ、やめ、ろ」
「我慢するからだろ」

落ち着いたのか、苦しそうに顔をゆがめていた黒虎が目を合わせてきて、カミーユのこめかみの髪を大きな掌で撫でた。

「俺の子を、産んでくれるか」

髪を撫でる黒虎の手をぎゅっと掴む。

「俺と黒虎の子、だろ」

一瞬、瞳孔が丸くなったと思ったその目を愛し気に細め、黒虎は言い直した。

「カミーユと俺のふたりの子だ」

見つめ合い微笑み合ったふたりの唇が合わさる。
ふたりはそのまましばらく抱き締め合っていた。








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