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パポル草原

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口パポル草原
 
 
 ここは、厳冬のリリー湖のほとりにある。パポル草原。
 季節は夏。
 草原の中、3人の冒険者が汗だくで、探索している。
 3人は、ロッドセスでパーティを組んだばっかりの、新米冒険者だ。
 目的地の見えないように、3人はひた歩く。
 子供の背程、育った牧草畑は、端が見えない程広い。
 まるで、海のようだ。
 歩き疲れてきた冒険者の頬を、ここちよい風がなでる。
 草原に風が吹いて来る。
 大海の波のように、風にそよぐ牧草。
 「良い風」
 「ふぅ。景風だのう」
 太陽を手で遮りながら、歩く。ドワーフとエルフとシーフ。流れる汗もひく。
 草なりの3人の影もそよぐ。
 ちらりと、シーフを見やるドワーフ。
 「それにしても、このシーフ。景附がつきまとっているような…」
 汗をぬぐうシーフ。
 シーフはエルフを見る。
 美しい白絹のような、グラマラスな肢体を、なめ回すように見る。
 蒼顔で狡猾そうな、鋭い目で探るシーフ。
 エルフの腰につけた、短剣に目がいく。
 シーフの心の声「なかなかの、値打ち物だ、ミッションで儲けれなかってもな」
 かれこれ、6時間。依頼されたシルバースネークの巣を、捜しているエルフとドワーフとシーフ。
 「もうそろそろ、依頼にあったヤツにあたる所だ」
 気を潜める、冒険者達。
 牧草の波が止まる。
 すると背丈ほど育った、牧草の中から、一匹のシルバースネーク(白銀蛇)が飛び出してくる。
 ミュイーン。
 「ふぅ。かわしたぜぃ」
 ミュイーン。
 オウチ。
  「ドワーフの精霊、ノームよ、我が輩の、鎚に宿りたまえ」
 光輝く、鎚。稲妻のように振り下ろされる。
 「土中、とど盛り!」
 ポンスク。
 ポンスク。
 スワンプ。ミュイーン。
 縮んで行く、シルバースネーク。
 「ふぅ。ひとまず倒したな」
 背後で何か動く。
 ピキューン。ピキューン。
 「ウワチッ。何だぁァ」
 シーフは一目散に逃げ出す。
 「俺は、こんな、化け物はとりあわねぇー」
 叫ぶドワーフ。
 「レイラーァ」
 これから、生まれて来る子供に一目会いたかった…。
 瞳をとじるドワーフ。
 「まだ、寝ぼけている所では、ありませんわ」
 光輝く衣を身にまとったエルフが、気付け袋をほうる。
 飛び起きる。ドワーフ。
 「冗談じゃわ。おぬしに、言われる筋合いはないわい」
 「それにしても、あんな口から光を吐く蟻なんて見た事ないぞ」
 次々に集まってくる、ジャイアントアント(巨大蟻)。
 「これでは、きりがないわい」
 「それにしても、光線を放つ、蟻などみたことないぞ」
 弓を構えた、エルフが言う。
 「メカみたい」
 「わたしに、まかせて」
 呪文を唱えるエルフ。
 「内なる精霊。空の精霊と交わりし時、天のみかごにのって、現れるシルフよ。我に付き添いたまえ」
 風が強くなり、空に、無数の精霊が現れ、渦となって歌い出す。
 ジャイアントアントの、一番巨大なヤツに的をしぼるエルフ。
 エルフが呪文を唱える。「風の精霊シルフよ、我に力を!」
 エルフの回りに精霊が回り始め、歌い出す。矢に精霊の光が集まってくる。
 エルフの弓は正弦を切る。
 矢は白銀の線になり、アントの触覚を見事に打ち抜く。
 白く光る、ジャイアントアント。
 ピキキキ。
 一瞬止まったかのように見えたジャイアントアントは、気が狂ったように、同士討ちを始める。
 グワッシャーン。爆発するジャイアントアント。
 壊れたメカの山になる。
 側に、シーフの死体も、転がっていた。
 「よし」
 「やったー」
 ミッションクリア。
 「しかたない、シーフどのには、ここで安らかに眠ってもらうか」
 石積みをするドワーフ。
 祈る二人。
 成功報酬1000ゴールド獲得!!

 END.





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