契約妻と無言の朝食

野地マルテ

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後日談

※ 軽い復讐

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 私たちはランチの時間が過ぎても、裸のまま抱き合い、ベッドの上に転がっていた。ベッドの周りには今朝方脱ぎ捨てた衣服がそのまま散乱し、ひどい有様になっている。今朝まではお日様の匂いがしていた寝室は、精の臭いが充満していた。あの清らかだった日々が嘘のようだ。

「エリオン様……」

 うっそりと微笑み、エリオンの厚い胸板に頬を寄せる。汗でしっとりした肌の感触が心地いい。鼻を寄せるとスンッと男の匂いがした。けして今は良い匂いを発しているわけではないだろうに、彼の素の匂いが好きだと思った。彼を愛しく思い、さらに身体を寄せた。
 位置的に仕方がないが、自分の双丘が彼の固い胴に当たり、むにゅりと潰れると、慌てたような声が頭上から振ってくる。

「あ、アレクシア、もう……」

 精も根も尽き果ててしまったエリオンは、勃っても吐き出すのは、先走りのような透明な精液だけになってしまっている。いくら久しぶりの交合とはいえ、私は少々貪りすぎてしまったようだ。ついさっきも私は彼と向かい合った状態で、彼の腿の上に跨り、腰を押し付けるように動いた。肉棒の丸い先端が奥の快いところに当たり、夢中になって腰を振った。あのもどかしい刺激は麻薬だ。もっともっとと欲しくなる。もっとどろどろなった自分のなかを抉って、かき混ぜて欲しい。思い出すだけでも堪らない気持ちになり、自分の太ももを擦り合わせる。くちゅりと水音がした。散々精を吐き出された下腹の奥には、出し切れていないものが残っていた。

「すごく熱くて硬くて気持ちよかったです。足先が痺れるほど良くて……たくさんねだってしまってごめんなさい」

 素直な感想を口にする。ヘレナから『ちんちんの何がどう良かったのか言わないと、次に繋がらないよ。子作りは継続が命だって、うちのお姉ちゃんが言ってた』とアドバイスを貰ったのだ。
 私はくたりと力を失った、エリオンの陽根にそろりと手を伸ばす。先ほどまでは触れればぴくりと反応してくれたのに。今はもう少し握ったぐらいでは動かない。それでも誘うように竿に指先を這わせた。

「いや、あの、アレクシア、俺はもう……」

 エリオンはとまどい、困ったような掠れた声を出すも、私の手自体は止めなかった。柔らかな竿部分をぎゅっと力を入れて握り込むと「うっ」と苦しげな反応が返ってきた。そのまま、くたりとした肉竿を上下に軽くさする。イメージは乳搾りだ。彼の肉棒を伸ばすようにしごいた。

 軽い仕返しのつもりだった。エリオンと出会ってから合計二年近くになるが、彼には何かと振り回されっぱなしだったから。

 エリオンの雄は若いからか、もう精液は出せなくても、いちおう水平には勃つらしい。嬉しくなった私は重怠い身体を起こし、エリオンの脚の間に半端強引に座ると、彼につけられた半月型の紅い痕が浮く乳房を、肉棒にむにゅりと押し付けた。二つのふくらみの間に挟みこむと言ったほうが正しいかもしれない。両手で乳房を持ち上げるように寄せ、肉棒の先端をすっぽり包みこむ。丸い先が白い谷間へ吸い込まれるように消えていく。

「殺すつもりか……」

 エリオンは本気で命の危機を感じたらしい。なにやらとても物騒なことを言っている。肉杭の先を胸の間に埋められて苦しいのか、眉根を寄せていた。しかし、やはり私を止めるつもりはないらしく、シーツをぐっと掴んで何かに耐えている。

「やだぁ、エリオン様ってば、大袈裟ですね」
「大袈裟じゃない……っ! あっ、ゆ、胸を揺らすな! あぁぁっ、だ、だめっ、先っぽをそんな……!」

 さすがに私の胸でエリオンの陽根をすべて挟むのは不可能なので、とりあえず先端だけを乳房で包みこみ、身体をごと揺らした。ゴム鞠のように胸をぼんぼん弾ませるたび、力を失いくたりとなっていた肉棒が、私の乳房の間でまた熱を持つ。硬さは少し物足りないが、エリオンは私の中で七回も吐き出したあとなのだ。これだけでも充分だろう。

「あ、アレクシアぁっ、うぅっ、うっ、やわかいっ、はぁっ、やわらかっ、……」

 エリオンは柔らかい柔らかいとうわ言のように言い、私の胸の間で透明な体液をうっすら滲ませている。翡翠の瞳は虚で、目の下にはうっすら隈が出来ていた。口は開きっぱなしで、端からは唾液が一筋滴っている。一般的には情けない顔だろうが、それでも彼は美しかった。容姿が良いのは得だなと思う。

 エリオンはおっぱいが好きだ。今日もあれから尖りをちゅうちゅう音を立てて吸い、乳房に顔を埋めて気持ちよさそうにしていた。
 だから大好きな胸でしごけば、彼が喜ぶと思ったのだ。

「アレクシアっ、でるっ、でるからっ、はっ、はぅっあっ」

 肉竿の下にある睾丸が軽く迫り上がるも、丸い先から出たのは透明な液だ。乳房で挟んだまま、また力を失った肉棒の先端に舌を這わせ、鈴口を刺激するように舌先をぐっと押し当てた。青臭いような苦味が口のなかに広がるが、嫌いな味じゃない。

「ぁっ…………」

 エリオンが信じられないと言わんばかりの顔をしてこちらを見るので、私はにっこり微笑んで「美味しいですよ?」と言った。すっかり動けなくなった彼の身体の上に跨ると、私は身をかがめて彼にちゅっと口づける。寝ている彼には恥ずかしくて出来なかった行為だが、散々睦み合った今なら簡単に出来た。

「一年半も出来なかったんですよ? もっと頑張ってください。それに、私を襲うつもりだったのでしょう? 七回ではぜんぜん足りません」

 これは色々された復讐だ。
 それに今後の結婚生活のためにも、夫婦の主導権イニシアチブを握っておくことは大切だとヘレナからも助言されていた。私は貧乏子爵家の娘で何も持たない。植民地のことがあったとはいえ、それでも名のある伯爵家出身のエリオン相手に、優位になれるものが必要だった。思いついたのは閨だ。エリオンは性豪だが、女は体力さえつければ何回でも出来る。清らかだった時代も私は毎日スクワットを欠かさずやっていた。ただ漫然とエリオンの事務処理の手伝いをしていたわけではないのだ。いつかは来るであろう閨の日に備え、体力を作っておいたのだ。

 完全にただの柔らかな肉の棒と化したエリオンの雄の上に跨り、秘裂をぐっと押し当てた。肉の花弁で棒を挟みこみ、そのまま腰を前後に動かすと、エリオンは苦しげに呻きだす。

「エリオン様、気持ちいいですか?」
「ああ、気持ちいい。気持ちいいが、もう無理だ……無理……」

 もっとエリオンを攻め立てたかったが、彼はこの後気を失うように眠ってしまった。普段からこんな事は出来ないが、休みの日ぐらいはいいかもしれない。私も眠る彼の隣で瞼を閉じた。久しぶりにとても満たされた気持ちだ。
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