契約妻と無言の朝食

野地マルテ

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※ 信じられない

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「可愛いよ、アレクシア……。こんなに乱れて」

 私の股から顔を上げたエリオンは、下履きの紐に手をかけるとそれをしゅるりと解いた。
 上着の裾を押し上げるように、それは猛々しく反り返っていた。エリオンが持つ雄の象徴は、亀の頭のような先はてらてらと濡れていて、肉色の棒部分には血管が浮き出ていた。
 またそそり勃った男性器を私のあわいに擦りつけ、一人で気持ち良くなって果てるつもりなのだろうか。
 悲しく思ったが抵抗しても無駄だと思い、私は胸を上下させながら瞼を閉じた。
 それを同意だとエリオンは受け止めたのか、彼は私の片足の膝裏を掴むと、ぐっと高く持ち上げた。

 ──えっ……?

 愛液が滴る蜜口に確かに感じた、違和感。隘路の入り口に何かをぐっと強く押し当てられたと思ったら、それは僅かな反発を覚えた後ずりりと奥まで入ってきた。

 蜜口を通る瞬間、つきんと痛むような強い快感を感じ、私は甘い声を漏らしたが、すぐに正気を取り戻した。
 陰茎を膣の中に挿入され、抽送されている。ハッとして起きあがろうとするも片足をがっちり抱えられていて無理だった。

「いやっ、いや! 挿れないで‼︎」

 こんなことをしたら孕んでしまうかもしれない。本当にエリオンは何を考えているのか。膣外に昂りを出せばいいと思っているのかもしれないが、そんなのは避妊にはならない。先走りの液にも子種が含まれていると、俗本には書いてあった。
 さあっと血の気がひいた。
 止めてと叫ぶが、エリオンは恍惚とした表情を浮かべながら腰を振り、私を穿った。

「アレクシアっ……はぁっ、あっ……! うっ、出る……!」

 私の片足を抱えたまま、三回ほどずりりと媚肉内に肉棒を滑らせたエリオンは、あっという間に果ててしまった。ぶるりと腰を震わせて、低い喘ぎ声を漏らしながらどくどくと精液を私の中へ吐き出したのだ。

 ──信じられない……っ!

 義兄達が三日後に帰ってくるから、その時に離縁しようと言ったのは彼だ。それなのに、彼は射精感を堪えることもなく欲望の赴くまま、私の中に子種を吐き出したのだ。

「はじめて挿れた時は摩擦が強くてあまり気持ち良くなかったが……。今はしっとり濡れていて締め付けもちょうど良くて最高だ」
「いやっ、もうやめて‼︎」

 エリオンは私のなかへ一度精を吐き出したのに、さらに自身の雄を硬く膨張させて私の中を力強く擦り上げ始めた。
 私の膣の具合がどれほど良いかエリオンは息荒く語るが、そんな卑猥な話は聞きたく無い。

「アレクシア、もっと俺を締め上げるんだ」
「ああっ、あっ、だめ! そんなところまで入れないで! いやぁっ!」

 さらに腰を進められて、肉棒の丸い先を深いところまで差し込まれる。膣の最奥に切先を突きつけられ、腰を回して執拗にぐりぐり捏ねられた。子宮の入り口を擦られると、びくんびくんと腰が跳ね、エリオンの雄が収まったままの媚肉内がぎゅっと窄まった。
 苦しい。胸が痛くなるぐらい気持ちが良かった。

「いいぞ、アレクシアは奥を擦られるのが好きなのか? よく締まる……うっ、」
「も、もう出しちゃだめっ……!」

 啜り泣きながら中に子種を出さないでと懇願するが、エリオンはまったく聞いてくれない。彼はまた私の中に熱い飛沫を撒き散らした。二回果てても張りがちっとも治らない肉棒を私の中へ挿れたまま、彼は私の両脇に腕を付き、何かの運動のように腰をぐいぐいスライドさせている。泥濘を歩くような水音と肌を打ちつけ合う音が耳をつく。
 昨日、屋上から落ちたばかりだというのに、身体はどこも痛くないのだろうか? こんなに激しく腰を振って、大丈夫なのだろうか?
 エリオンの心配をしている場合じゃないのに、ついそんなことを考えてしまう。

「嫌と言っているのに、何故俺を締め付ける? 気持ちがよすぎてクセになる……」
「だって、勝手に締めつけちゃって……!」
「そうなのか……。アレクシア、俺は君をすっかり淫乱な身体にしてしまった。せめてもの償いだ。兄達が帰ってくるまでたくさん抱こう」
「だめっ! 妊娠しちゃう!」
「俺のほうで避妊薬を飲んでいる。問題はない。半年間何も出来なかった分、最後ぐらいしっかり夫婦生活を愉しもうじゃないか」

 愉しむ気分になんかなれない。私は敬語を使っている余裕すらなく、咽び泣いた。昨夜謝ってくれたのは嘘なのか、いや、エリオンが嘘をついているようには見えなかった。
 エリオンは私を傷つけたことは悪かったと思っているが、それはそれとして気持ち良いことはしたいのだろう。
 理解できない。ほんとうに信じられない。

 「胸が見たい」と言われ、ナイトドレスの胸ぐらをぐっと下までさげられた。ぽろりと双丘がまろびでる。すぐに胸の尖りに音をたてながら吸いつかれ、舌先で芯を持った尖りを押しつぶされると、気持ちがよすぎて涙が溢れた。
 エリオンのことが理解できない。何故別れが決まったのにこんなことをするのか。
 一番理解できないのは自分の身体だ。
 身体を無理やり暴かれているというのに、本気で抵抗出来ないのだ。肌にじっとり舌を這わせられれば、甘い声が勝手に漏れてしまう。

 下を穿られながら胸をいじられると、身体がぶるると震えた。気持ちがよすぎて何も考えられなくなる。最低なことをされているというのに。

「うっうっ、いやっ……いやあっ、やめて……っ!」

 朝の医務室。エリオンの様子を見るために誰かが訪ねて来てもおかしくないのに、何故か戸が開かれることがない。
 この屋敷の人間はやっぱりエリオンの味方で、私を助けてはくれなかった。
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