契約妻と無言の朝食

野地マルテ

文字の大きさ
上 下
16 / 34

※ 信じられない

しおりを挟む


「可愛いよ、アレクシア……。こんなに乱れて」

 私の股から顔を上げたエリオンは、下履きの紐に手をかけるとそれをしゅるりと解いた。
 上着の裾を押し上げるように、それは猛々しく反り返っていた。エリオンが持つ雄の象徴は、亀の頭のような先はてらてらと濡れていて、肉色の棒部分には血管が浮き出ていた。
 またそそり勃った男性器を私のあわいに擦りつけ、一人で気持ち良くなって果てるつもりなのだろうか。
 悲しく思ったが抵抗しても無駄だと思い、私は胸を上下させながら瞼を閉じた。
 それを同意だとエリオンは受け止めたのか、彼は私の片足の膝裏を掴むと、ぐっと高く持ち上げた。

 ──えっ……?

 愛液が滴る蜜口に確かに感じた、違和感。隘路の入り口に何かをぐっと強く押し当てられたと思ったら、それは僅かな反発を覚えた後ずりりと奥まで入ってきた。

 蜜口を通る瞬間、つきんと痛むような強い快感を感じ、私は甘い声を漏らしたが、すぐに正気を取り戻した。
 陰茎を膣の中に挿入され、抽送されている。ハッとして起きあがろうとするも片足をがっちり抱えられていて無理だった。

「いやっ、いや! 挿れないで‼︎」

 こんなことをしたら孕んでしまうかもしれない。本当にエリオンは何を考えているのか。膣外に昂りを出せばいいと思っているのかもしれないが、そんなのは避妊にはならない。先走りの液にも子種が含まれていると、俗本には書いてあった。
 さあっと血の気がひいた。
 止めてと叫ぶが、エリオンは恍惚とした表情を浮かべながら腰を振り、私を穿った。

「アレクシアっ……はぁっ、あっ……! うっ、出る……!」

 私の片足を抱えたまま、三回ほどずりりと媚肉内に肉棒を滑らせたエリオンは、あっという間に果ててしまった。ぶるりと腰を震わせて、低い喘ぎ声を漏らしながらどくどくと精液を私の中へ吐き出したのだ。

 ──信じられない……っ!

 義兄達が三日後に帰ってくるから、その時に離縁しようと言ったのは彼だ。それなのに、彼は射精感を堪えることもなく欲望の赴くまま、私の中に子種を吐き出したのだ。

「はじめて挿れた時は摩擦が強くてあまり気持ち良くなかったが……。今はしっとり濡れていて締め付けもちょうど良くて最高だ」
「いやっ、もうやめて‼︎」

 エリオンは私のなかへ一度精を吐き出したのに、さらに自身の雄を硬く膨張させて私の中を力強く擦り上げ始めた。
 私の膣の具合がどれほど良いかエリオンは息荒く語るが、そんな卑猥な話は聞きたく無い。

「アレクシア、もっと俺を締め上げるんだ」
「ああっ、あっ、だめ! そんなところまで入れないで! いやぁっ!」

 さらに腰を進められて、肉棒の丸い先を深いところまで差し込まれる。膣の最奥に切先を突きつけられ、腰を回して執拗にぐりぐり捏ねられた。子宮の入り口を擦られると、びくんびくんと腰が跳ね、エリオンの雄が収まったままの媚肉内がぎゅっと窄まった。
 苦しい。胸が痛くなるぐらい気持ちが良かった。

「いいぞ、アレクシアは奥を擦られるのが好きなのか? よく締まる……うっ、」
「も、もう出しちゃだめっ……!」

 啜り泣きながら中に子種を出さないでと懇願するが、エリオンはまったく聞いてくれない。彼はまた私の中に熱い飛沫を撒き散らした。二回果てても張りがちっとも治らない肉棒を私の中へ挿れたまま、彼は私の両脇に腕を付き、何かの運動のように腰をぐいぐいスライドさせている。泥濘を歩くような水音と肌を打ちつけ合う音が耳をつく。
 昨日、屋上から落ちたばかりだというのに、身体はどこも痛くないのだろうか? こんなに激しく腰を振って、大丈夫なのだろうか?
 エリオンの心配をしている場合じゃないのに、ついそんなことを考えてしまう。

「嫌と言っているのに、何故俺を締め付ける? 気持ちがよすぎてクセになる……」
「だって、勝手に締めつけちゃって……!」
「そうなのか……。アレクシア、俺は君をすっかり淫乱な身体にしてしまった。せめてもの償いだ。兄達が帰ってくるまでたくさん抱こう」
「だめっ! 妊娠しちゃう!」
「俺のほうで避妊薬を飲んでいる。問題はない。半年間何も出来なかった分、最後ぐらいしっかり夫婦生活を愉しもうじゃないか」

 愉しむ気分になんかなれない。私は敬語を使っている余裕すらなく、咽び泣いた。昨夜謝ってくれたのは嘘なのか、いや、エリオンが嘘をついているようには見えなかった。
 エリオンは私を傷つけたことは悪かったと思っているが、それはそれとして気持ち良いことはしたいのだろう。
 理解できない。ほんとうに信じられない。

 「胸が見たい」と言われ、ナイトドレスの胸ぐらをぐっと下までさげられた。ぽろりと双丘がまろびでる。すぐに胸の尖りに音をたてながら吸いつかれ、舌先で芯を持った尖りを押しつぶされると、気持ちがよすぎて涙が溢れた。
 エリオンのことが理解できない。何故別れが決まったのにこんなことをするのか。
 一番理解できないのは自分の身体だ。
 身体を無理やり暴かれているというのに、本気で抵抗出来ないのだ。肌にじっとり舌を這わせられれば、甘い声が勝手に漏れてしまう。

 下を穿られながら胸をいじられると、身体がぶるると震えた。気持ちがよすぎて何も考えられなくなる。最低なことをされているというのに。

「うっうっ、いやっ……いやあっ、やめて……っ!」

 朝の医務室。エリオンの様子を見るために誰かが訪ねて来てもおかしくないのに、何故か戸が開かれることがない。
 この屋敷の人間はやっぱりエリオンの味方で、私を助けてはくれなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

処理中です...