6 / 34
※ 夢かもしれない
しおりを挟む「どうして泣く? アレクシア」
エリオンは私のなかを緩く穿ちながら淡々と聞いてきた。
──あなたに犯されてるからよ‼︎
……と言いたかったが、そもそも誘ったのは私からだ。半年間にもおよぶ無言の夫婦生活に嫌気がさした私は、閨のことがしたい子どもがほしいと駄々をこね、彼はただ、私の誘いに淡々と応じただけである。
私が黙って顔を背けると、彼は着たままだったシャツの袖で口元を拭い、ボタンをすべて外して後ろ手に脱ぎはじめた。
戦神の彫像のような肉体があらわになり、息をのむ。なかなか上を脱がないので、てっきり彼の身体は傷だらけなのかと思いきや、意外にも傷らしい傷は見当たらない。胸板はぶ厚く腹筋は六つどころか八つに割れている。くっきりと筋肉が浮いた綺麗な身体だった。
「……どうした? 俺の身体に興奮したのか? 締めつけが強くなった」
「そんなことないですっ!」
私の否定の言葉に、エリオンは喉をくくっと鳴らして笑った。
美形の微笑みはほんと、心臓に悪い。
いたずらっ子のように白い歯を覗かせて笑う彼に、今までに無いほどドキリとした。
半年間も夫婦でいたはずなのに、彼のこんな表情をみるのは初めてだ。
「アレクシア」
顔を近づけられ、また唇にキスをされる。一回目のキスよりも胸がどきどきするのは何故だろう。二人とも生まれたままの姿になっているからか、それとも身体を繋げているからだろうか。
「……もう痛くはないか?」
「平気です……」
──熱い……。
気遣わしげに問いかけられる。
不思議ともう結合部は痛くはないが、どこもかしこも、熱をもったように熱かった。特に熱いのはエリオンの雄がおさまったままの下腹の奥だ。エリオンが抽送するたびに粘着のある水音がする。少しだけ膣壁内に余裕が出来たからか、彼の形が分かるようになってきた。滑らかなのに硬くて熱い不思議な感触だ。
「はっ……はぁっ、ふあっ……ぁっ……」
──すごい、奥に入っていく……。
腰を軽く揺さぶりながら、少しずつ肉の棒を奥に進められ、最奥のぶにぶにしたところに丸い先がコツンと当たると、そのままぐっぐっと優しく押された。何故だか分からないけど、奥のぶにぶにしたところを押されると足先が痺れ、足の指がきゅっと丸まった。
奥を刺激されながら、片方の乳房を咥えられ、じゅっとキツく吸われる。乳首は芯を持ち、固くなっていた。先程まではくすぐったいだけだった行為が、今はむしょうに気持ちがいい。どうしようもない堪えきれないもどかしさに涙がとまらなくなり、口を閉じていられなくなった。
「はぁっ……だんなさまっ、あぁっ……!」
全身に汗がびっしり浮く。ふと見ると、エリオンのすべらかな額にも玉のような汗が浮いていた。彼の艶のある黒髪も少し濡れている。
「すまない、アレクシア。君がそんなに感じているのに、俺はもう持ちそうにない……っ」
「えっ、きゃあっ⁉︎」
エリオンは上体を起こすと、私の両腰をがっちりと固定するように掴んだ。そしてそのまま、今までゆっくりだったのが嘘のように、彼はがつがつ私の中を貫きはじめた。
まったりとした気持ち良さを感じていたのに。急に腰を揺さぶられ、私はまた快楽の高みへと昇ってしまった。
しかしエリオンは止めることなく、絶頂を迎えた私の中を執拗に何度も何度も貫きつづける。
仮眠室の簡易ベッドがぎしぎし音を立てて揺れた。
「あぁぁっ、ああっ、だめ、だめっ……! あっあっあぁっ!」
それからどれだけ時間が経ったのか。
私が二回達した後、下腹の奥に愛液が漏れ出るのとは違う、熱い液体がどくどく注がれるのを感じた。私の中におさまったままだった肉棒がぶるんと跳ね、何かをびゅっびゅっと勢いよく吐き出したのだ。
おそらく私の中で吐精したのだろう。
妙な達成感が胸に沸き、破顔が止められない。
「……嬉しいのか?」
「え、あのっ、その……」
自分で自分の気持ちが分からない。嬉しいといえば、そうなのかもしれない。
私はろくにエリオンと何もしないまま、彼と離縁するものだと思っていたから。
「君が悪くない気持ちなら、このままもう一度したい」
「えっ、あ、はい、ど、どうぞ……」
おかわりを要求され了承すると、首筋に端正な顔を埋められた。エリオンが付けているグリーン系の香水の匂いが鼻腔をくすぐる。今まではあまり意識したことがなかったが、この人から漂う爽やかな香りは好きかもしれない。あと、筋肉質な固い身体も、高めの体温も。
せっかくだし私からも触っちゃおうと思い、エリオンの逞しい肩や背中にべたべた手を這わせていると、私のお腹の中におさまったままの彼の雄がまた大きくなったような気がした。
「あっ……」
「あんまり煽るな。なかなか終われなくなるぞ」
私の首筋を舐めていたエリオンが少しだけ顔をあげる。その表情は少し不満げだ。
──終わらなくてもいいかも……。
俗本で読んだ、性行為の気持ちよさというのがどういうことなのか、少しずつ分かってきたような気がする。もっとこうしていたいなと思ったのだ。
「もっとこうしていたいです。夢かもしれませんし……」
「夢? それは困るな」
「だって、旦那様は昨日まで、私とほとんど口すらきいてくださらなかったわ」
「……悪かった。なかなか会話の糸口が掴めなかったんだ」
そんな馬鹿なと思った。抗議したかったのに、唇に唇を重ねられながら、隘路におさまったままだった雄でまた力強く穿られたので無理だった。
愛液や精液をまとわせた肉棒で敏感になったところを執拗に擦られると、下半身の震えが止まらなくなった。また脚の先がきゅっと丸まった。
膣壁は、私の意思とは関係なく、エリオンの精を絞り取ろうとなおも執拗にうねり、蠢く。私が締め上げるからだろう。エリオンはとても苦しそうだった。
「あんっ、ああっあっ、あ、はぁっ」
「また出る……アレクシア……っ」
熱い飛沫がまた私の胎を満たす。
綺麗に結いあげていたはずの自分の髪はめちゃくちゃになり、全身色々な体液でべとべとになった。清潔そうだった簡易ベッドのシーツにも染みが出来ているかもしれない。
二回吐精し、やや柔らくなった自身をエリオンは私の中から引き抜いた。白くてねばついた体液が糸をひき、彼の肉棒や陰毛にまとわりついている。
「出血の痕があるな。……はじめてなのに連続でして悪かった。痛かっただろう?」
一筋の赤い痕跡。たしかに今、下腹に痺れるような痛みを感じているが、痛みよりもむしろ充足感のほうが強いかもしれない。
「大丈夫です……」
私はこうして、いきなり処女を失った。
いつもどおり無言の朝食をとっていたはずなのに。わけがわからない。
──二年契約の契約妻のはずが、契約満了金が払えないから無期限の妻になってほしいと言われて、拒否したら抱かれた。いや、私が閨事もしないのに結婚生活を続けるなんて嫌だと言ったから、私から誘った形になって……。
私の頭上には、いくつもの疑問符がぽぽぽんと浮かんでは消えていった。
16
お気に入りに追加
3,232
あなたにおすすめの小説
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。
木山楽斗
恋愛
ラフィティアは夫であるアルフェルグとおしどり夫婦を演じていた。
あくまで割り切った関係である二人は、自分達の評価を上げるためにも、対外的にはいい夫婦として過ごしていたのである。
実際の二人は、仲が悪いという訳ではないが、いい夫婦というものではなかった。
食事も別なくらいだったし、話すことと言えば口裏を合わせる時くらいだ。
しかしともに過ごしていく内に、二人の心境も徐々に変化していっていた。
二人はお互いのことを、少なからず意識していたのである。
そんな二人に、転機が訪れる。
ラフィティアがとある友人と出掛けることになったのだ。
アルフェルグは、その友人とラフィティアが特別な関係にあるのではないかと考えた。
そこから二人の関係は、一気に変わっていくのだった。
婚約解消から5年、再び巡り会いました。
能登原あめ
恋愛
* R18、シリアスなお話です。センシティブな内容が含まれますので、苦手な方はご注意下さい。
私達は結婚するはずだった。
結婚を控えたあの夏、天災により領民が冬を越すのも難しくて――。
婚約を解消して、別々の相手と結婚することになった私達だけど、5年の月日を経て再び巡り合った。
* 話の都合上、お互いに別の人と結婚します。白い結婚ではないので苦手な方はご注意下さい(別の相手との詳細なRシーンはありません)
* 全11話予定
* Rシーンには※つけます。終盤です。
* コメント欄のネタバレ配慮しておりませんのでお気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
ローラ救済のパラレルのお話。↓
『愛する人がいる人と結婚した私は、もう一度やり直す機会が与えられたようです』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる