8 / 40
※ 風邪を引いてしまった③
しおりを挟む次にリオノーラが目覚めた時、部屋はすっかり暗くなっていた。ぐっしょり寝汗はかいているが、気分はかなりスッキリしている。
彼女が着替えようか悩んでいると、扉がコンコンと鳴らされた。
「リオノーラ、起きたのか?」
「旦那様!」
「食事を貰ってきた。……が、先に着替えをするか? 君は熱を出していたし、汗をかいているだろう」
首や肩の怠さはもう無い。リオノーラは先にシャワーを借りることにした。
アレスが用意した着替えを受け取り、シャワールームへ入る。水栓をひねりながら、我ながら凄い回復力だと思う。お腹も空いていて、シャワーの水音を出しながらもぐるぐる鳴っているのが分かった。
身体からほこほこ湯気を出しながらダイニングへ行くと、鍋で温め直されたスープや粥がちょうど盛られているところだった。
よく見ると、アレスは騎士服ではない。ラフなシャツ姿だった。エミリオの世話をするために軽装になったのかもしれない。
リオノーラはダイニングのテーブル席に着きながら尋ねる。
「エミリオは?」
「ああ、託児所に預けてきた。夕飯を食べさせて、風呂に入れて、寝かしつけてきた。今日はたくさん遊んだから寝つきは良かったぞ」
「完璧ですね……」
十年近く子育てをしていて、しかも子どもは四人目であるアレスのルーティンは完璧だった。
ふとダイニングの壁にある時計を見ると、夕飯には遅い時間帯だった。こんな時間まで自分は寝ていたのかとリオノーラは驚く。自分がすやすやと寝ている間も、夫はずっと息子の相手をしていたかと思うともはや尊敬の念しかない。
「野菜スープとふすま粥を持ってきた」
「ありがとうございます! いただきますね」
自分が用意しなくても出てくる温かい食事。ありがた過ぎて少し涙が出る。
野菜スープもふすま粥も柔らかく煮込まれている。熱を出して消耗した身体に、優しい味のスープが沁みた。
「顔色が良くなったな」
「旦那様のおかげですよ」
「今夜は泊まっていくといい」
アレスは白湯が入ったカップをリオノーラの前に置くと、ダイニングの脇にある可動棚の前へ行き、四角い布を数枚取ると寝室へ消えていった。
ばさばさと布が擦れる音がする。寝室のシーツを取り替えてくれているようだ。
アレスは王立騎士団近衛部隊の団長補佐。王立騎士団のトップである近衛の、それも上から二番目の地位にあるばりばりの上級将校だ。こんな使用人のようなことをする立場ではないのだが、家事をするのに彼は躊躇がない。いつもそれとなく動いてやってくれている。
ありがたい、でも申し訳ない。リオノーラは相反する気持ちを抱えながら、スープを食べ進めるのであった。
◆
それから三日後。
すっかり元気になったリオノーラは近衛部隊の詰所を訪ねていた。
エミリオを街の託児所へ預けた彼女は、その足でアレスに会いに来たのだ。
(旦那様にお礼をしなきゃ!)
彼女の腕には、アレスの好物である果物の乾物が抱えられている。今回は何から何まで世話になった。何かせねば気がすまない。
幸い、今日のアレスは半休を取っているらしい。
部屋に戻るであろう彼に、お詫びの品を渡したい。そう思って訪ねたのだが。
看病のお詫びが果物の乾物だけで済むはずもなく。
「あぁっ! ああっ、あ、あんっ」
気がついたらリオノーラはベッドの上に押し倒され、四つん這いの状態で後ろからがつがつと貫かれていた。一突きするたびに彼女のささやかな胸の膨らみが揺れる。
いつもよりもずっと激しい剛直の突き上げに、彼女は助けを求めるように片腕を前方へ伸ばす。濡れた中を硬くて熱い陰茎でごりごり擦り上げられて、泣き出しそうになる。弱いところを亀頭が掠めると、下腹がうねり、膣内が戦慄いた。
ぱんぱんと肌と肌とがぶつかり合う音が、容赦なく寝室に響いた。
「君が潤んだ瞳で見つめてくるから、我慢するのが大変だった。今日はとことん付き合ってほしい」
「えっ、あうっ、そ、そんな……! あぁっ、あぅっ」
片腕を後ろに引かれ、さらに強く股間を押し付けられる。柔らかな子宮口を亀頭で強く抉られたリオノーラは、あられもない悲鳴をあげる。太ももには泡立った体液の筋がいくつも滴り落ちた。
アレスに看病をさせた代償は大きかった。
その後、エミリオを迎えに行く時間まで、リオノーラがはちゃめちゃに抱き潰されたのは言うまでもない。
50
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~
しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。
とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。
「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」
だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。
追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は?
すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。
小説家になろう、他サイトでも掲載しています。
麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる