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※ 風邪を引いてしまった③
しおりを挟む次にリオノーラが目覚めた時、部屋はすっかり暗くなっていた。ぐっしょり寝汗はかいているが、気分はかなりスッキリしている。
彼女が着替えようか悩んでいると、扉がコンコンと鳴らされた。
「リオノーラ、起きたのか?」
「旦那様!」
「食事を貰ってきた。……が、先に着替えをするか? 君は熱を出していたし、汗をかいているだろう」
首や肩の怠さはもう無い。リオノーラは先にシャワーを借りることにした。
アレスが用意した着替えを受け取り、シャワールームへ入る。水栓をひねりながら、我ながら凄い回復力だと思う。お腹も空いていて、シャワーの水音を出しながらもぐるぐる鳴っているのが分かった。
身体からほこほこ湯気を出しながらダイニングへ行くと、鍋で温め直されたスープや粥がちょうど盛られているところだった。
よく見ると、アレスは騎士服ではない。ラフなシャツ姿だった。エミリオの世話をするために軽装になったのかもしれない。
リオノーラはダイニングのテーブル席に着きながら尋ねる。
「エミリオは?」
「ああ、託児所に預けてきた。夕飯を食べさせて、風呂に入れて、寝かしつけてきた。今日はたくさん遊んだから寝つきは良かったぞ」
「完璧ですね……」
十年近く子育てをしていて、しかも子どもは四人目であるアレスのルーティンは完璧だった。
ふとダイニングの壁にある時計を見ると、夕飯には遅い時間帯だった。こんな時間まで自分は寝ていたのかとリオノーラは驚く。自分がすやすやと寝ている間も、夫はずっと息子の相手をしていたかと思うともはや尊敬の念しかない。
「野菜スープとふすま粥を持ってきた」
「ありがとうございます! いただきますね」
自分が用意しなくても出てくる温かい食事。ありがた過ぎて少し涙が出る。
野菜スープもふすま粥も柔らかく煮込まれている。熱を出して消耗した身体に、優しい味のスープが沁みた。
「顔色が良くなったな」
「旦那様のおかげですよ」
「今夜は泊まっていくといい」
アレスは白湯が入ったカップをリオノーラの前に置くと、ダイニングの脇にある可動棚の前へ行き、四角い布を数枚取ると寝室へ消えていった。
ばさばさと布が擦れる音がする。寝室のシーツを取り替えてくれているようだ。
アレスは王立騎士団近衛部隊の団長補佐。王立騎士団のトップである近衛の、それも上から二番目の地位にあるばりばりの上級将校だ。こんな使用人のようなことをする立場ではないのだが、家事をするのに彼は躊躇がない。いつもそれとなく動いてやってくれている。
ありがたい、でも申し訳ない。リオノーラは相反する気持ちを抱えながら、スープを食べ進めるのであった。
◆
それから三日後。
すっかり元気になったリオノーラは近衛部隊の詰所を訪ねていた。
エミリオを街の託児所へ預けた彼女は、その足でアレスに会いに来たのだ。
(旦那様にお礼をしなきゃ!)
彼女の腕には、アレスの好物である果物の乾物が抱えられている。今回は何から何まで世話になった。何かせねば気がすまない。
幸い、今日のアレスは半休を取っているらしい。
部屋に戻るであろう彼に、お詫びの品を渡したい。そう思って訪ねたのだが。
看病のお詫びが果物の乾物だけで済むはずもなく。
「あぁっ! ああっ、あ、あんっ」
気がついたらリオノーラはベッドの上に押し倒され、四つん這いの状態で後ろからがつがつと貫かれていた。一突きするたびに彼女のささやかな胸の膨らみが揺れる。
いつもよりもずっと激しい剛直の突き上げに、彼女は助けを求めるように片腕を前方へ伸ばす。濡れた中を硬くて熱い陰茎でごりごり擦り上げられて、泣き出しそうになる。弱いところを亀頭が掠めると、下腹がうねり、膣内が戦慄いた。
ぱんぱんと肌と肌とがぶつかり合う音が、容赦なく寝室に響いた。
「君が潤んだ瞳で見つめてくるから、我慢するのが大変だった。今日はとことん付き合ってほしい」
「えっ、あうっ、そ、そんな……! あぁっ、あぅっ」
片腕を後ろに引かれ、さらに強く股間を押し付けられる。柔らかな子宮口を亀頭で強く抉られたリオノーラは、あられもない悲鳴をあげる。太ももには泡立った体液の筋がいくつも滴り落ちた。
アレスに看病をさせた代償は大きかった。
その後、エミリオを迎えに行く時間まで、リオノーラがはちゃめちゃに抱き潰されたのは言うまでもない。
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