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レオポールの執念

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 レオポールがシーラと出会ったのは五年前。

 探偵事務所のビルの前に貼った、求人ポスターを見たシーラが電話をかけてきたのだ。
 すぐに面接を行い、シーラに志望動機を訊ねると、
『……せっかく働くなら、面白そうな仕事がしたいと思って』
 と、彼女ははにかみながら答えた。

 レオポールは、当初はシーラを不採用にしようとした。
 理由は一つで、志望動機を答えたシーラの少し恥ずかしそうな笑顔に強く惹かれてしまったからだ。

 シーラは人の妻で子持ちだった。
 レオポールは好きになってはいけない相手に、好意を抱いてしまったのだ。

 父親の探偵事務所を継ぐまでは、弁護士としてばりばり働いていたレオポールはもてた。
 だが、仕事人間だった彼は、女性と付き合ってもすぐに相手から別れを切り出されてしまう。
 結婚願望などとうになくしていたレオポールは、悩んだ末、シーラを採用した。
 彼女を好きでいても、きっと何か過ちが起こるようなことはないだろう。
 そうレオポールは高を括ったのだ。

 だが、レオポールのシーラへの想いは年々募っていく。出入り業者からシーラが自分の妻だと勘違いされるたび、表向きは困ったふりをしたが内心ものすごく喜んでいた。

 シーラが自分の妻だったら……。
 そう思わない日はこの五年間一度もなかった。

 いけないと思いつつも、シーラの夫ジョンの動向は常に気にしていた。
 かつては名うての弁護士で、ありとあらゆる浮気調査をこなしてきたレオポールは、ジョンの顔を一目見た時から勘づいていた。
 ジョンは男を好む男だろうと。

 夫が男に走ってしまった──弁護士や探偵をしていると、それなりにある相談だ。
 何せ同性同士の不貞は、男女のそれとは違い、この国の法律上不貞扱いにならないからだ。それでも何とかしたいと、世の中の妻達は相談にやってくる。
 そんな妻達の夫に、ジョンは雰囲気がどこか似ていた。

『……夫と結婚したきっかけ? お互いの父親同士が知り合いでね。勝手にお見合いが組まれていたのよ。その時は知らない人と会うなんて嫌だなって思っていたけど……。ふふっ、人の運命なんて分からないものね』

 シーラにジョンとの結婚のきっかけを訊ねると、案の定、見合いの場で二人は出会っていた。
 父親が勝手に組んだ見合い──きっとジョンは断れなかったはずだ。
 
 シーラ曰く、二人の仲人となったジョンの父親は十年も前に亡くなったらしい。
 彼に男との出会いさえあれば、きっと何かが変わるはず。
 レオポールは辛抱強く、その時を待った。
 そして三ヶ月前、ついに運命は動き出した。
 彼がこの五年間、望み続けた方向へと。
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