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※初めての夜

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 ユークスにドレスを破られてはかなわない。アルキニナは自分で着ているものを脱いだ。特に今日のドレスはアンベラの結婚式に合わせて作った質の良いものだ。飾り気はなく、シンプルな紺色一色のドレスだが、それなりに値は張る。

「申し訳ありません。本当は男が脱がすのですよね?」
「ハンガーへ掛けて貰えるだけで充分ですわ」

 ユークスはシルクのシュミーズ一枚になったアルキニナを見ないようにしているのか、視線を逸らしている。こんなにうぶな騎士はなかなかいないのではないか。
 騎士は清廉ぶっていても、護衛した令嬢や貴婦人と関係を持っている者は多い。なぜそんなことを知っているのかと言うと、女だけの茶会では騎士と身体を重ねた経験談が一番盛り上がるからだ。やれ、だれそれのテクニックは凄かっただの、一物が短すぎて入っているのが分からなかっただの。
 これらの話を聞くたび、アルキニナは好きな相手と肌を重ねられたら、それで充分ではないかと思ってきた。

「さぁ、ユークスも脱ぎましょう?」
「恥ずかしいですね……。私の身体には傷が少なくないですから」
「傷があるほうが男らしくて素敵ですわよ」

 アルキニナは慣れた手つきでユークスの騎士服の鎖飾りを外し、固いボタンも取っていく。意外と脱がせ方も覚えているものだ。
 元夫ゲラシムは女が好きではないくせに、アルキニナに性処理をさせたがった。彼女は元夫に指示されるがまま、要求を受け入れていたのである。

 ユークスの上着を皺にならないよう、ハンガーにかけると、アルキニナはインナーシャツのボタンも外し、胸元をはだけさせた。
 元夫とは比べものにならないぐらい、逞しい上半身が露わになる。胸板も腹筋も岩のようにぼこっと盛り上がっているが、触れると弾力があった。

「ん、素敵……。逞しいですのね」

 アルキニナは指先を巧みに使って、そろりそろりと筋肉が盛り上がった上半身を撫でる。その刹那、ユークスの肌がびくりと震えた。
 ユークスの反応を見て楽しく思ったアルキニナは、今度は彼の胸板に顔を埋める。胸筋が大きく盛り上がっているのとは裏腹に、乳首は小粒だった。
 アルキニナはその乳首を押しつぶすように、ねっとり舌を這わせる。

「あっ、ああっっ」

 やはりユークスは敏感なようで、少し舐められただけで腰をくねらせる。

「ユークス、立ったままでは行為がしにくいですわ。ベッドへ参りましょう?」
「は、はい……アルキニナ様……」

 先ほど、この部屋へアルキニナを引き込んだあの力強さはどこへやら。ユークスは彼女に手を引かれるがまま、ベッドへ向かった。


 ◆


 クッションを背にベッドに横たわるユークスを見て、アルキニナは思った。

 (陽根が吃立するのがずいぶん早いですわね……)

 少し上半身を撫でて、乳首を舐めただけなのにユークスの股間にあるものはズボンを押し上げていた。騎士服のズボンは硬めの素材で細身に出来ている。ユークスも気になっているのか、ちらちらと自分の股間に視線をやっては、眉間に皺を寄せていた。
 このまま上半身を攻めてはきっとズボンを汚してしまう。早々に脱がしてしまうことにした。

「ユークス、ズボンを脱ぎましょうね」
「す、すみません、お手を煩わせてしまって」
「良いのですよ。ふふ……興奮して貰えて嬉しいですわ」

 アルキニナはユークスのズボンに手を掛けると、かちゃちゃと金属が擦れる音を出しながらベルトを外した。外れかけていたズボンのボタンも、千切れてしまわないように慎重に外す。冷たい指先に彼の熱が伝わってきて胸が高鳴った。
 下着もすでに一部に染みを作っている。出来れば布の上から慣れるまでじっくり撫でたかったが、汚れてしまっては可哀想なので、下着も早々に脱がすことにする。

 中途半端に衣服を身につけているのも恥ずかしいとのことで、ユークスはアルキニナよりも先に全裸になった。彼はかなり恥ずかしそうだ。

「美しい裸ですわ。まるで戦神の彫像のよう」
「本当ですか?」
「ええ、だから……。堂々とすべてを曝け出してくださいませ」

 またアルキニナはユークスに微笑みかけると、彼の身体に触れ出した。逞しく張った臀部に指先を這わせると、また胸元に顔を埋める。もちろん、アルキニナ自身もユークスに触れるよう、身を寄せている。

「あぁっ、アルキニナ様……」

 舌先で小粒な乳首を転がし、ユークスが腰を震わせたところでちゅっと音を立てて吸い上げる。手の方も留守にならないよう、六つに割れた腹筋などを手のひらを使って優しく撫でた。
 いきなり股間を攻めたりしない。刺激が強すぎて、逆に萎えてしまうこともあるからだ。
 しかし、ユークスはアルキニナから与えられる刺激すべてを素直に受け取りすぎているのか、早くもその雄は硬く怒張している。無意識なのか、ユークスは愚息に手を伸ばそうとした。
 それを目にしたアルキニナは、ユークスの手首を掴んだ。

「こんなにも逞しい手で擦っては、私の女陰で果てることが難しくなってしまいますわ」
「ごめんなさい……」
「良いのですよ。……一回出しましょうね」

 瑠璃色の瞳に涙を浮かべたユークスは、子どものようにアルキニナに謝る。彼はもう、アルキニナの掌の上で転がされていた。
 アルキニナはそっとユークスから身体を離すと、今度は彼の脚の間に座り込んだ。目の前にはそそり立った肉の棒がある。彼女はこんなにも太くて長い雄を目にしたのは初めてだった。元夫は勃起しても、目の前にある肉棒の半分の長さにしかならなかった。
 アルキニナはユークスの腰に両手をつくと、恭しく口を開け、その剛直を上から呑みこんでいった。

「はっ、あっ、あううっっ」

 亀頭が張り出した先を口に含み、唇を窄めただけでユークスは腰を揺らして悲鳴をあげた。
 なんて敏感なのだろうか。嬉しくなったアルキニナの行為はどんどんエスカレートする。今日は自分が持つ手練手管をすべて使って、彼を気持ちよくしたい。

 アルキニナはずずっと啜り上げる音を出しながら、ユークスの雄を攻めた。舌を肉棒の皮膚に絡みつくように這わせると、頭を上下に振った。
 彼を気持ちよくさせるためにしている行為なのに、不思議と自分も気持ちよくなった。肉厚な丸い穂先が上顎に当たると、官能がそそられて下腹が落ち着かなくなる。
 口の端から唾液が滴り落ちるのにもかまわず、アルキニナは口淫を続ける。ユークスの陰毛は彼女の唾液でぐっしょり濡れていた。

「い、いけません……! 出ますっ! で……あぁあああっっ‼︎」

 ユークスは悲鳴を上げると、腰をビクビクと震わせてアルキニナの口内へ精を放った。
 アルキニナは自分の喉に吐き掛けられるものの熱さと量に息を呑む。むせかえるような青臭い匂いが鼻に抜ける。
 彼女は白濁を少しこぼしながらも、肉棒から口を引き抜く。細い指先で口端を拭いながら口の中にあるものをごくりと呑み干した。
 その光景を目にしたユークスは荒い息をはき、厚い胸板を上下させながら、また自身の雄を勃ち上がらせていた。
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