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《番外編》本編終了後のお話
ドカ喰い大好き!リオノーラ様《節制編④》
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二日後、すっかり筋肉痛が癒えたリオノーラは、演習場にいた。
「今日は趣向を変えて、剣の打ち合いをしましょうか」
アレスから差し出された木製の剣を、リオノーラは受け取った。
侯爵家の元私設兵長のレイラから護身術を習っていたリオノーラは、それなりに剣が扱える。
久しぶりに手にした木製の剣の重みに、懐かしさを覚えた。
(レイラは厳しい師匠だったわ……)
何度、身体ごと吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられたか分からない。
それでも幼かったリオノーラは泣きべそをかきながら、再び木製の剣を構え、レイラに立ち向かっていったのだ。
いつだったか、レイラにこんなことを教わった。
『いつか婿殿と夫婦喧嘩をすることもあるだろう。今からリオに婿殿を倒す秘策を授ける』
『レイラ、暴力で解決しようとするのはちょっと……』
『婿殿は宗国一の殺し屋で、前人未到の戦果を上げた最強の騎士だ。だがな、どれだけ強い者でも弱点はある』
『人の話を聞いて、レイラ』
夫婦をしていれば喧嘩ぐらいはするかもしれないが、暴力に発展するとは思えない。
レイラの血生臭い提案に最初こそリオノーラは断っていたが、とうとう押し切られてアレスを倒す秘策を伝授されてしまった。
(今、試してみるのもアリかもしれないわね……)
アレスは、まさかリオノーラに倒されてしまうとは露ほどにも考えていないだろう。油断しきっているはずだ。
「アレス様、ひとつ提案があるんですけど~」
「なんですか?」
「私がアレス様から一本取れたら……今日のデザートにケーキが食べたいです。せっかく打ち合いするなら、ごほうびがほしいな~なんて」
リオノーラは可愛らしくおねだりしてみる。きっとアレスは気軽に応じてくれるだろう。
そう思っていたのだが……。
「へえ……何か秘策でもあるのですか?」
一瞬で、アレスの目の色が変わった。鋭い眼光に、リオノーラは脇にぶわりと汗をかく。
「と、特にないですけど……あは、ちょっと言ってみただけです……」
「……そうですか。今、あなたが何か思い出したような顔をしていたものですから。てっきりレイラさんに俺を倒す秘策でも伝授されたのかと」
(ひえぇっっ……! アレス様鋭いっ!)
さすが国一番の殺し屋と謳われるだけある。こと戦いにおいてはこの人は絶対に騙せないだろう。
「……まぁ、いいですよ。俺を倒す秘策、試してみてください。自分弱点を知りたいですから」
「そう言われるとやりづらいんですけど……」
「ケーキ、好きなものを何でもいくつでも買ってあげますよ」
「頑張ります!!」
デザートのケーキのため、リオノーラは木製の剣を構える。
この戦いだけは絶対に負けられない。
「リオノーラだけご褒美があるのは公平ではないので、俺が買ったら俺にご褒美をくださいね」
そう言うアレスの深緑の瞳が、また怪しく光ったような気がした。
《つづく》
「今日は趣向を変えて、剣の打ち合いをしましょうか」
アレスから差し出された木製の剣を、リオノーラは受け取った。
侯爵家の元私設兵長のレイラから護身術を習っていたリオノーラは、それなりに剣が扱える。
久しぶりに手にした木製の剣の重みに、懐かしさを覚えた。
(レイラは厳しい師匠だったわ……)
何度、身体ごと吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられたか分からない。
それでも幼かったリオノーラは泣きべそをかきながら、再び木製の剣を構え、レイラに立ち向かっていったのだ。
いつだったか、レイラにこんなことを教わった。
『いつか婿殿と夫婦喧嘩をすることもあるだろう。今からリオに婿殿を倒す秘策を授ける』
『レイラ、暴力で解決しようとするのはちょっと……』
『婿殿は宗国一の殺し屋で、前人未到の戦果を上げた最強の騎士だ。だがな、どれだけ強い者でも弱点はある』
『人の話を聞いて、レイラ』
夫婦をしていれば喧嘩ぐらいはするかもしれないが、暴力に発展するとは思えない。
レイラの血生臭い提案に最初こそリオノーラは断っていたが、とうとう押し切られてアレスを倒す秘策を伝授されてしまった。
(今、試してみるのもアリかもしれないわね……)
アレスは、まさかリオノーラに倒されてしまうとは露ほどにも考えていないだろう。油断しきっているはずだ。
「アレス様、ひとつ提案があるんですけど~」
「なんですか?」
「私がアレス様から一本取れたら……今日のデザートにケーキが食べたいです。せっかく打ち合いするなら、ごほうびがほしいな~なんて」
リオノーラは可愛らしくおねだりしてみる。きっとアレスは気軽に応じてくれるだろう。
そう思っていたのだが……。
「へえ……何か秘策でもあるのですか?」
一瞬で、アレスの目の色が変わった。鋭い眼光に、リオノーラは脇にぶわりと汗をかく。
「と、特にないですけど……あは、ちょっと言ってみただけです……」
「……そうですか。今、あなたが何か思い出したような顔をしていたものですから。てっきりレイラさんに俺を倒す秘策でも伝授されたのかと」
(ひえぇっっ……! アレス様鋭いっ!)
さすが国一番の殺し屋と謳われるだけある。こと戦いにおいてはこの人は絶対に騙せないだろう。
「……まぁ、いいですよ。俺を倒す秘策、試してみてください。自分弱点を知りたいですから」
「そう言われるとやりづらいんですけど……」
「ケーキ、好きなものを何でもいくつでも買ってあげますよ」
「頑張ります!!」
デザートのケーキのため、リオノーラは木製の剣を構える。
この戦いだけは絶対に負けられない。
「リオノーラだけご褒美があるのは公平ではないので、俺が買ったら俺にご褒美をくださいね」
そう言うアレスの深緑の瞳が、また怪しく光ったような気がした。
《つづく》
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