21 / 26
《番外編》本編終了後のお話
ドカ喰い大好き!リオノーラ様《節制編③》
しおりを挟む
「う、腕が……っ! 足がぁっ……!」
筋力トレーニングをしたその晩、リオノーラは早速筋肉痛に苛まれていた。
しばらく感じる機会がなかった痛みで眠れない。熱を持った患部はしっかり冷やしたが、それでも額に脂汗が浮く。
こんなにキツい筋肉痛を覚えたのは、護身術をレイラから習い始めた時以来だ。あの時もベッドの上で悶え苦しんだ。
「関節を痛めた様子はないですし、二、三日もすれば痛みは引きますよ」
リオノーラのふくらはぎに湿布を貼り、慣れた様子で包帯をぐるぐる巻きながらアレスは言う。
「二、三日も苦しむのですか……!」
「超回復と言って、この痛みに耐え抜けば筋肉がついて以前よりも太りにくい身体になれますよ」
太りにくい身体にはなりたいが、痛いのは辛い。
「明日明後日は安静にしていてください。俺は仕事があるので詰所に行きますけど、食事の時間には戻りますから」
「うっうっ……」
次の日の朝も、猛烈な筋肉痛でリオノーラは動けなかった。手洗いに行くのがやっと。
ベッドからろくに動けず、アレスに食事を運んでもらい、食べさせてもらった。
今朝の食事も粥だ。
「あーん」
「あ、あーん……」
粥の中には黒豆が入っていて香ばしく美味しかった。筋肉疲労が激しい身体に、やさしい味わいの粥が沁みる。普段はこってりとした料理を好むリオノーラも、今朝はさすがに揚げ物が食べたいとは思わない。
(今は揚げ物も甘い物も受け付けないわ……もしかして、これが真の狙いだったのかしら)
「今日、帰りに果物を買ってきますね」
「……よろしくお願いします」
二、三日痛みが続くと言われていたが、湿布の効果か、夜にはかなり楽になった。
リオノーラがダイニングに行くと、テーブルには粥とひと口サイズに切られたリンゴが用意されていた。
今夜の粥は、鶏のささみ肉と赤い木の実がのった白濁したものだ。南方地域の料理だろうか。
粥生活に少し慣れてきたリオノーラは、口元を綻ばせる。
「美味しそうですね!」
「そろそろタンパク質も摂りたいところですから、鶏ベースの粥にしてみました」
ごま油がほんのり香る粥を掬う。
細かく割かれたささみ肉は柔らかく、食べやすい。赤い木の実もほどよく酸味があり、良いアクセントになっている。
「はー……筋肉の痛みが引いてやれやれです」
「明日一日休んだら、また軽いランニングから始めましょうか」
また走るのか……とリオノーラは遠い目になる。だが、アレスの引き継ぎが終われば二人でティンエルジュ領に戻る。帰った際に自分がぶくぶく太っていれば、また父に色々言われてしまうだろう。
間違いなく、ここがふんばりどころだ。
リオノーラは粥を啜りながら、また頑張ろうと決意を新たにするのであった。
《つづく》
筋力トレーニングをしたその晩、リオノーラは早速筋肉痛に苛まれていた。
しばらく感じる機会がなかった痛みで眠れない。熱を持った患部はしっかり冷やしたが、それでも額に脂汗が浮く。
こんなにキツい筋肉痛を覚えたのは、護身術をレイラから習い始めた時以来だ。あの時もベッドの上で悶え苦しんだ。
「関節を痛めた様子はないですし、二、三日もすれば痛みは引きますよ」
リオノーラのふくらはぎに湿布を貼り、慣れた様子で包帯をぐるぐる巻きながらアレスは言う。
「二、三日も苦しむのですか……!」
「超回復と言って、この痛みに耐え抜けば筋肉がついて以前よりも太りにくい身体になれますよ」
太りにくい身体にはなりたいが、痛いのは辛い。
「明日明後日は安静にしていてください。俺は仕事があるので詰所に行きますけど、食事の時間には戻りますから」
「うっうっ……」
次の日の朝も、猛烈な筋肉痛でリオノーラは動けなかった。手洗いに行くのがやっと。
ベッドからろくに動けず、アレスに食事を運んでもらい、食べさせてもらった。
今朝の食事も粥だ。
「あーん」
「あ、あーん……」
粥の中には黒豆が入っていて香ばしく美味しかった。筋肉疲労が激しい身体に、やさしい味わいの粥が沁みる。普段はこってりとした料理を好むリオノーラも、今朝はさすがに揚げ物が食べたいとは思わない。
(今は揚げ物も甘い物も受け付けないわ……もしかして、これが真の狙いだったのかしら)
「今日、帰りに果物を買ってきますね」
「……よろしくお願いします」
二、三日痛みが続くと言われていたが、湿布の効果か、夜にはかなり楽になった。
リオノーラがダイニングに行くと、テーブルには粥とひと口サイズに切られたリンゴが用意されていた。
今夜の粥は、鶏のささみ肉と赤い木の実がのった白濁したものだ。南方地域の料理だろうか。
粥生活に少し慣れてきたリオノーラは、口元を綻ばせる。
「美味しそうですね!」
「そろそろタンパク質も摂りたいところですから、鶏ベースの粥にしてみました」
ごま油がほんのり香る粥を掬う。
細かく割かれたささみ肉は柔らかく、食べやすい。赤い木の実もほどよく酸味があり、良いアクセントになっている。
「はー……筋肉の痛みが引いてやれやれです」
「明日一日休んだら、また軽いランニングから始めましょうか」
また走るのか……とリオノーラは遠い目になる。だが、アレスの引き継ぎが終われば二人でティンエルジュ領に戻る。帰った際に自分がぶくぶく太っていれば、また父に色々言われてしまうだろう。
間違いなく、ここがふんばりどころだ。
リオノーラは粥を啜りながら、また頑張ろうと決意を新たにするのであった。
《つづく》
80
お気に入りに追加
1,171
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。