50 / 57
第50話 最期
しおりを挟む
「お父様!?」
衝撃的な光景に、アザレアは叫ぶ。
いきなりこの場に現れた大公が、ストメリナを後ろから刺したからだ。
クレマティスやディルクから、大公がストメリナを討つつもりだと聞いていたが、まさか今、魔石鉱山の坑道へやってくるとは思わなかった。
大公は、ストメリナに突き刺した氷の槍の上に足を置いた。急所を刺されたストメリナはもう絶命寸前だ。
「やめてください、お父様!!」
「黙っていなさい、アザレア。私は今からこいつに、真実を告げねばならない」
「真実……?」
アザレアは大公の言葉に、足を止める。
「ストメリナ、お前は……私の子ではない」
「えっっ……!」
大公の言葉に、アザレアは両手で口を覆う。
(ストメリナが……お父様の娘ではないですって!?)
ストメリナは大公と同じ、銀色の髪を持つ。
誰もが、大公とストメリナの血縁関係を疑っていなかったはずだ。
大公の足元にいるストメリナも、動揺に瞳を揺らす。
「そ、そんな……そんなはずは……」
「ストメリナ、お前は知らんだろうが、私はお前の母親を一度も抱いていない。それなのにお前が産まれた」
「……!!」
「お前の父は私の異母弟だ。お前の母親に腰を打ちつけている弟の背に氷の槍を刺してやったのだ。今のお前のようにな」
「そ、……そん……な」
大公はストメリナを見下ろしながら、薄笑いを浮かべている。
「……お前の母親も私が殺した。あの女も、血統ばかりを誇る愚かな女だった。……お前と同じでな!!」
「ぐふぅぅ!!」
大公は氷の槍の上に置いた、足に体重を掛ける。
ストメリナは血を吐き出した。
「お父様、やめてくださいっ!」
「どうして止める、アザレア! お前はずっとストメリナから虐げられていただろう! 今こそ復讐の時だぞ!」
大公から復讐の時だと言われても、アザレアは首を横に振る。
「悪かったのは、あなたです! お父様!!」
「なっっ……」
「あなたがストメリナを愛してくださっていたら、こんなことにならなかった……!!」
アザレアは大公を両手でドンと突き飛ばす。
「何を言ってるんだ、アザレア。ストメリナは裏切り者から生まれた娘だぞ!!」
「ストメリナの両親があなたを裏切っていたとしても、彼女には関係ありませんっ! 謝って!! 謝りなさい!!」
アザレアがぼろぼろと涙を溢しながら叫ぶ。
(ストメリナは私に嫉妬していた。私がお父様の関心を集めていたと思って)
ストメリナが自分を迫害していたのは、愛情不足が原因なのは明らかだった。
大公がストメリナに関心を向けていたら、こんなことにはならなかっただろう。
愛せないなら愛せないなりに、ストメリナにきちんと真実を明かしていたのなら、もっと別の展開があっただろう。
「すべてを黙っていて復讐するなんて、最低です!!」
「……だまりなさい」
アザレアが大公を糾弾していると、ストメリナが口を開いた。
ストメリナの目には、すでに光はなかった。
「大丈夫!? 今、回復魔法を……」
「いらないわ……。あっ、あんたなんかに……同情されたくない……」
「ストメリナ……!」
「私は……あんたのそういうところが……嫌いよ……」
「!! ストメリナ……? ストメリナッ!! ねぇ、目を開けて……!」
口から鼻から、血を吐き出すと、ストメリナは目を見開かせたまま、動かなくなった。
「そんな……こんなことって……」
ストメリナの美しかった銀色の髪はすべて抜け落ち、あたりに散らばっている。白かった肌も火傷をしたように真っ赤に爛れていた。
義姉の最期に、アザレアは呆然とすることしかできなかった。
衝撃的な光景に、アザレアは叫ぶ。
いきなりこの場に現れた大公が、ストメリナを後ろから刺したからだ。
クレマティスやディルクから、大公がストメリナを討つつもりだと聞いていたが、まさか今、魔石鉱山の坑道へやってくるとは思わなかった。
大公は、ストメリナに突き刺した氷の槍の上に足を置いた。急所を刺されたストメリナはもう絶命寸前だ。
「やめてください、お父様!!」
「黙っていなさい、アザレア。私は今からこいつに、真実を告げねばならない」
「真実……?」
アザレアは大公の言葉に、足を止める。
「ストメリナ、お前は……私の子ではない」
「えっっ……!」
大公の言葉に、アザレアは両手で口を覆う。
(ストメリナが……お父様の娘ではないですって!?)
ストメリナは大公と同じ、銀色の髪を持つ。
誰もが、大公とストメリナの血縁関係を疑っていなかったはずだ。
大公の足元にいるストメリナも、動揺に瞳を揺らす。
「そ、そんな……そんなはずは……」
「ストメリナ、お前は知らんだろうが、私はお前の母親を一度も抱いていない。それなのにお前が産まれた」
「……!!」
「お前の父は私の異母弟だ。お前の母親に腰を打ちつけている弟の背に氷の槍を刺してやったのだ。今のお前のようにな」
「そ、……そん……な」
大公はストメリナを見下ろしながら、薄笑いを浮かべている。
「……お前の母親も私が殺した。あの女も、血統ばかりを誇る愚かな女だった。……お前と同じでな!!」
「ぐふぅぅ!!」
大公は氷の槍の上に置いた、足に体重を掛ける。
ストメリナは血を吐き出した。
「お父様、やめてくださいっ!」
「どうして止める、アザレア! お前はずっとストメリナから虐げられていただろう! 今こそ復讐の時だぞ!」
大公から復讐の時だと言われても、アザレアは首を横に振る。
「悪かったのは、あなたです! お父様!!」
「なっっ……」
「あなたがストメリナを愛してくださっていたら、こんなことにならなかった……!!」
アザレアは大公を両手でドンと突き飛ばす。
「何を言ってるんだ、アザレア。ストメリナは裏切り者から生まれた娘だぞ!!」
「ストメリナの両親があなたを裏切っていたとしても、彼女には関係ありませんっ! 謝って!! 謝りなさい!!」
アザレアがぼろぼろと涙を溢しながら叫ぶ。
(ストメリナは私に嫉妬していた。私がお父様の関心を集めていたと思って)
ストメリナが自分を迫害していたのは、愛情不足が原因なのは明らかだった。
大公がストメリナに関心を向けていたら、こんなことにはならなかっただろう。
愛せないなら愛せないなりに、ストメリナにきちんと真実を明かしていたのなら、もっと別の展開があっただろう。
「すべてを黙っていて復讐するなんて、最低です!!」
「……だまりなさい」
アザレアが大公を糾弾していると、ストメリナが口を開いた。
ストメリナの目には、すでに光はなかった。
「大丈夫!? 今、回復魔法を……」
「いらないわ……。あっ、あんたなんかに……同情されたくない……」
「ストメリナ……!」
「私は……あんたのそういうところが……嫌いよ……」
「!! ストメリナ……? ストメリナッ!! ねぇ、目を開けて……!」
口から鼻から、血を吐き出すと、ストメリナは目を見開かせたまま、動かなくなった。
「そんな……こんなことって……」
ストメリナの美しかった銀色の髪はすべて抜け落ち、あたりに散らばっている。白かった肌も火傷をしたように真っ赤に爛れていた。
義姉の最期に、アザレアは呆然とすることしかできなかった。
85
お気に入りに追加
2,550
あなたにおすすめの小説
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる