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第48話 護るべきもののために
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「焔よ、焼き尽くして!」
サフタールやイルダフネの人達を護るために戦う。
アザレアは覚悟を決め、魔法のスペルを唱える。
二週間前に賊相手に放った炎魔法。その強化版をストメリナへ向ける。
ストメリナの足元にごうごうと音を立て、火柱が上がった。
(効いていない……!?)
しかし、ストメリナの身体は炎に巻かれるも、彼女は平然としている。着ている服すら燃えていなかった。
焦るアザレアに、ストメリナはうすら笑いを浮かべる。
朱い魔石を取り込んだストメリナは、どうも魔法の耐性を得ているらしい。
「あら? これで終わり? そんなぬっるい炎じゃあ私を倒せないわよ!! 攻撃魔法の手本を見せてあげるわ!!」
「っ!!」
ストメリナが両腕を振り上げると、その頭上に氷の槍が現れた。一本、二本ではない。数えきれない本数の氷の槍に、アザレアは一歩後ずさる。
(あんなにたくさんの氷の槍が……!? でも、燃やせばいいだけよ! 怯んじゃだめよ、アザレア!)
アザレアは自分を鼓舞すると、両腕を突き出し、手のひらを氷の槍の集合体へ向ける。
「焔の珠よ!!」
アザレアの手のひらから、全身を覆えるほどの巨大な火の玉が出る。それをストメリナの頭上へ向かって思いっきり飛ばした。
「おおっ!! すっげえ!!」
「ディルク様、無理をなさってはいけません!」
アザレアの後ろで、回復魔法を受け、傷が癒えたらしいディルクが歓声をあげる。
彼女が放った火の玉が、氷の槍をバキバキに砕いたからだ。
(まだだわ……!)
氷の槍は確かに折れたが、破片となったそれがアザレア達へ向かって飛んでくる。
アザレアは破片を防ぐため、炎の壁を呼び出した。
「くっ……!」
氷の破片は凄まじい勢いで飛んでくる。
(防ぎ、きれない……!)
「アザレアッ!!」
隣でサフタールもバリアを張ってくれている。
だが、それでもストメリナの猛攻は苛烈だった。
アザレアは炎の壁を呼び出し続けながら、瞼を閉じた。
「あきらめるな、アザレア!!」
サフタールが叫ぶ。
アザレアはハッと目を開けた。
隣にいる、サフタールの横顔を見上げる。
(そうよ、諦めてはいけない……!)
二ヶ月半後には、二人の結婚式を挙げるのだ。
ここで死ぬわけにはいかない。
「はあああああっっ!!」
アザレアは手のひらにありったけの魔力を込めた。
◆
「ディルク様、動けそうですか?」
クレマティスの心配そうな視線が向けられる。
ディルクは身体を起こしながら頷いた。全身痛くて重だるいが、命には別状ないだろう。
「……おかげさまで」
「……良かった。ディルク様、今のうちに坑道から出てください。ここは危険です」
「ふん、俺だけ逃げるなんて、そんなカッコ悪いことできませんよ」
アザレアとサフタールが命がけで戦っているのだ。
戦線に加われないにせよ、何かしなければ気がすまない。
「あなたは帝国の王子だ。ここで死んでは国際問題になる」
「ハッ! ……身分の低い母親から生まれた名ばかり王子など、死んだところで誰も何もこまりませんよ」
「ディルク様!」
「おっと、すみません。あなたは違いましたね、クレマティス将軍」
クレマティスの言う通りだとディルクは思う。
だが、ここまで足を突っ込んだ以上、最後までアザレア達を助けたいと思う。
クレマティスのためにも。
「せめてアザレア様とサフタール殿が快適に戦えるよう、魔法で換気しましょう。いくらだだっ広い坑道内とはいえ、これだけ派手にやってたら酸欠になりますよ」
「先ほどまで、サフタール様が魔法で換気をしてくださってましたが……思えば、あれだけアザレア様が炎魔法を繰り出しているのに、私達は煙に巻かれていませんね」
「確かに……。あ、もしかして朱い魔石が煙を吸ってるんじゃないですか?」
ディルクはストメリナの背後を指差す。
「なるほど……。それならば、アザレア様とストメリナ様が繰り出している魔法の魔力も、朱い魔石が吸っているのかも……。この坑道が崩れそうな感じもありませんし」
「二人とも!」
呑気にも二人があれやこれや話し合ってると、サフタールの声が飛んできた。
「お手隙なら、一緒にバリアを張ってください!!」
ディルクとクレマティスは顔を見合わせると、慌ててサフタールのもとへ駆け寄った。
サフタールやイルダフネの人達を護るために戦う。
アザレアは覚悟を決め、魔法のスペルを唱える。
二週間前に賊相手に放った炎魔法。その強化版をストメリナへ向ける。
ストメリナの足元にごうごうと音を立て、火柱が上がった。
(効いていない……!?)
しかし、ストメリナの身体は炎に巻かれるも、彼女は平然としている。着ている服すら燃えていなかった。
焦るアザレアに、ストメリナはうすら笑いを浮かべる。
朱い魔石を取り込んだストメリナは、どうも魔法の耐性を得ているらしい。
「あら? これで終わり? そんなぬっるい炎じゃあ私を倒せないわよ!! 攻撃魔法の手本を見せてあげるわ!!」
「っ!!」
ストメリナが両腕を振り上げると、その頭上に氷の槍が現れた。一本、二本ではない。数えきれない本数の氷の槍に、アザレアは一歩後ずさる。
(あんなにたくさんの氷の槍が……!? でも、燃やせばいいだけよ! 怯んじゃだめよ、アザレア!)
アザレアは自分を鼓舞すると、両腕を突き出し、手のひらを氷の槍の集合体へ向ける。
「焔の珠よ!!」
アザレアの手のひらから、全身を覆えるほどの巨大な火の玉が出る。それをストメリナの頭上へ向かって思いっきり飛ばした。
「おおっ!! すっげえ!!」
「ディルク様、無理をなさってはいけません!」
アザレアの後ろで、回復魔法を受け、傷が癒えたらしいディルクが歓声をあげる。
彼女が放った火の玉が、氷の槍をバキバキに砕いたからだ。
(まだだわ……!)
氷の槍は確かに折れたが、破片となったそれがアザレア達へ向かって飛んでくる。
アザレアは破片を防ぐため、炎の壁を呼び出した。
「くっ……!」
氷の破片は凄まじい勢いで飛んでくる。
(防ぎ、きれない……!)
「アザレアッ!!」
隣でサフタールもバリアを張ってくれている。
だが、それでもストメリナの猛攻は苛烈だった。
アザレアは炎の壁を呼び出し続けながら、瞼を閉じた。
「あきらめるな、アザレア!!」
サフタールが叫ぶ。
アザレアはハッと目を開けた。
隣にいる、サフタールの横顔を見上げる。
(そうよ、諦めてはいけない……!)
二ヶ月半後には、二人の結婚式を挙げるのだ。
ここで死ぬわけにはいかない。
「はあああああっっ!!」
アザレアは手のひらにありったけの魔力を込めた。
◆
「ディルク様、動けそうですか?」
クレマティスの心配そうな視線が向けられる。
ディルクは身体を起こしながら頷いた。全身痛くて重だるいが、命には別状ないだろう。
「……おかげさまで」
「……良かった。ディルク様、今のうちに坑道から出てください。ここは危険です」
「ふん、俺だけ逃げるなんて、そんなカッコ悪いことできませんよ」
アザレアとサフタールが命がけで戦っているのだ。
戦線に加われないにせよ、何かしなければ気がすまない。
「あなたは帝国の王子だ。ここで死んでは国際問題になる」
「ハッ! ……身分の低い母親から生まれた名ばかり王子など、死んだところで誰も何もこまりませんよ」
「ディルク様!」
「おっと、すみません。あなたは違いましたね、クレマティス将軍」
クレマティスの言う通りだとディルクは思う。
だが、ここまで足を突っ込んだ以上、最後までアザレア達を助けたいと思う。
クレマティスのためにも。
「せめてアザレア様とサフタール殿が快適に戦えるよう、魔法で換気しましょう。いくらだだっ広い坑道内とはいえ、これだけ派手にやってたら酸欠になりますよ」
「先ほどまで、サフタール様が魔法で換気をしてくださってましたが……思えば、あれだけアザレア様が炎魔法を繰り出しているのに、私達は煙に巻かれていませんね」
「確かに……。あ、もしかして朱い魔石が煙を吸ってるんじゃないですか?」
ディルクはストメリナの背後を指差す。
「なるほど……。それならば、アザレア様とストメリナ様が繰り出している魔法の魔力も、朱い魔石が吸っているのかも……。この坑道が崩れそうな感じもありませんし」
「二人とも!」
呑気にも二人があれやこれや話し合ってると、サフタールの声が飛んできた。
「お手隙なら、一緒にバリアを張ってください!!」
ディルクとクレマティスは顔を見合わせると、慌ててサフタールのもとへ駆け寄った。
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