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※今夜はしましょうよ

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「団長、ごめんなさい……」
「いいさ、サラは俺のことを庇ってくれたんだろ?」
「団長、うちの両親のことをめんどくさいって思いましたよね? ……結婚はなかったことにしてもいいですよ」

 義実家がどのような存在なのか。いざという時重要になってくる。私に何かあれば団長が困ることになるのだ。うちの両親は存外めんどくさい存在だということに気がついてしまった。
 しょんぼりする私に、団長は首を横に振る。

「それは駄目だ。サラが俺と結婚したくないのならともかく。サラのことを想ってくれる良い親御さんじゃないか」

 自分が『団長のことが好きだ』と認めてからと言うもの、団長の聖人っぷりがやたらと胸に来る。
 今はマトロアへ帰る道中にある宿にいる。二人ともお風呂に入って、後は寝るだけだ。
 ベッドの上に座り、私たちは向かい合っている。

「ありがとうございます。私、私……団長と結婚したいです!」
「ああ、マトロアについたら早速婚姻届を出そう」
「マトロアについたら? 早すぎません?」
「別に早くないだろう」
「いや~でも普通、婚約期間を設けません?」
「どのみち籍を入れるのだから、早いほうがいい。それにサラが孕んでいるかもしれないだろう」
「ああ……」

 そこまで頭が回らなかった。私は本当に自分のこととなるとダメダメだ。たぶん団長がいなかったら、私はこの三年の間で身を崩していたかもしれない。健康診断で毎回青くなっていたはずだ。

「さあ、今夜も早く寝よう。明日も早い」
「団長、今夜はセックスしましょうよ。お互いの両親から、結婚のお許しも得ましたし」
「……サラ、それは通常、男から言うべきセリフじゃないのか?」
「別にお互い人間ですし喋れるのですから。どっちから誘ってもいいんですよ、こういうのは」

 やはり私たちの間にはムードはない。
 ムードはないが、お互いの衣服を脱がせあっていると妙に興奮してくる。団長の傷痕のあるたくましい身体は好きだ。膨らんだ胸筋が露わになり、思わず顔を埋めたくなった。

「サラ」
「なんですか?」
「キスがしたい」
「いいですよ」

 もっと強引に迫られてみたい気持ちもあるけれど、団長のいちいち断りを入れてくる律儀さも好きだ。
 重なる唇。唇のやわらかな湿った感触を感じるだけでも堪らなくなる。角度を変えて触れるだけの口づけを交わしているとだんだん興奮してきた。
 私から、団長の口の中へそろりと舌をねじ込む。
 また団長から「これは男からするべき行為だろう?」と怒られてしまうだろうか。別に私たちは人間だし、どちらから仕掛けても良いと私は思う。

 団長の整った歯並びに舌をつつっと這わせながら、私は団長の股ぐらへ手を伸ばす。もうすでにそこは緩く立ち上がっているらしく、布ごしにだが肉棒から少し固さを感じた。

「んんっっ……うぅっ……」

 団長はキスをされながら股間に触られて、戸惑っているようだ。口の端から漏れる団長の声が妙にいやらしい。少し楽しくなってしまった私は、宿に備えつけられた簡素な夜着のズボンの中に、手を潜り込ませることにした。
 ゴムが入った裾を摘み、出来た隙間から手を差し入れる。団長は下着を身につけていなかったらしい。剥き出しになった男性器がそこにあった。

「んうぅっ……」

 緩く勃ち上がっている肉棒に直接触れると、それは人体とは思えないほど熱を持っていた。私とのキスに興奮して貰えていると思い嬉しくなった私は、その肉棒の先を掴むと、軽く捻るように手指を動かした。
 団長は顔を上げた。

「……ぷはっっ、さ、サラ……⁉︎」
「団長、固くなってますね」
「あっっ、ああぁっ、だ、だめだ、そんな真似をしては……」
「ええ~? どうしてですか?」

 裾に指をひっかけて団長のズボンを下ろすと、そこには先が濡れた肉棒があった。
 肉棒の穂先から滲む先走りの液を手のひらに馴染ませて、さらに手首を回す。肉棒の段差があるところにも指がかかるように右手を巧みに動かす。
 団長は股間だけ晒したなさけない格好をしているけど、頬を赤らめて興奮している団長は妙に扇情的なので良しとする。

 別に何かされているわけではないのに、私の股がじっとり濡れてきた。団長が興奮すると、なぜか私も興奮する。

「団長……私もう挿れたいです」
「サラは俺にキスして、股間を触っていただけじゃないか」
「んっ、指挿れてください。すごく濡れていますから」

 私は下着を脱ぐと、団長の前で大きく脚を横へ広げた。団長はおそるおそる、肉のあわいへ長い指を埋める。私のなかへ指を入れた団長は、喉を上下させた。団長の節くれだった指の異物感が気持ち良い。でも今は団長の雄のほうがもっと欲しい。はやく団長の熱を女陰の奥で感じたい。

「ああ、すごく濡れているな」
「団長、きて」
「ああ……」

 完全に私主導の行為になっている。でも二人で気持ちよくなれるのなら、どちらが主導でもいいと思う。

「あぁぁぁっ……団長っ……」

 しとど濡れた膣のなかに入ってくる、団長の熱棒。固くて熱くて、団長の存在がいつもよりも近くに感じる。私は腕を伸ばして、脱いで剥き出しになった団長の肩や背に手を回した。いつもは不自由を感じる足を団長の細腰にまとわりつかせる。

「サラ……サラ……」

 団長は私の名を呼ぶと、私の身体の両脇に手をついて、腰の動きを早めた。結合部からは早くもぬめった水音がする。ぐちゅぐちゅに濡れたなかを団長の雄で擦られると、じれったい快感が次々に沸いて泣きたくなる。

「団長、気持ちいい……もっとたくさん動いて」
「あ、ああ……でも後から中が腫れたりしないか? すごく狭いぞ?」

 こんな時に私のことを気遣わないで欲しい。

「大丈夫ですから、もっとお腹側をごしごしして欲しいです」

 私が下から指示を飛ばすと、団長は腑に落ちないと言わんばかりの顔をして、遠慮がちに腰を振った。
 肌と肌とが打ちつけ合う、乾いた音がする。たまに聞こえる団長の短い呻き声に興奮する。もっと団長にも喘いで欲しいのに、我慢しているようだ。なぜ?

「あっああっっ、い、良い感じです! でも、でも、奥ももっと抉ってほしいかも……」
「腹が痛くならないか?」
「あぅっ、あっ、痛みを覚えるたびに、今夜のこと、思い出せるので大丈夫です……っ!」
「腹が痛くなるなら、却下だ」
「ええ~~っ⁉︎ じゃあ、私から動きます……」
「それも駄目だ」
「なっ、なんっ……で⁉︎」
「今は帰る道中だからだ。サラに無理をさせて、体調を崩させるわけにはいかない」

 団長は隊の上官みたいな事を言う。あ、上官か。

 団長はいきなり起き上がると、私の中から肉棒を引き抜いた。何で? と思ったら、ベッドの頭に置いてあった箱から懐紙を数枚取ると、それを股間にあてがった。

「……何してるんです?」
「中に出すと、後処理が大変だろう」
「そんなの、気にしなくてもいいですよ。それに懐紙に出さなくても、私のお腹の上にびゅびゅっと出すとか」
「サラが汚れる」
「やっぱり潔癖ですよね……団長……」

 最初に身体を重ねた時、団長はそれはもう念入りに後処理をしていた。ベッドのシーツをバッと剥ぎ、マットは陰干ししていた。寝て起きてそのままの状態で放置しないのは何とも団長らしいと思った。

「私は団長が射精するとこ、見たかったのに……」
「何故……」
「団長の性的なところを見ると興奮するので……」

 二人の間に沈黙が流れる。
 沈黙のあと、団長のため息が聞こえた。
 いや、だって見たいじゃん。団長が精液を出すとこ。

「……まあ、いい。明日も早いからもう寝るぞ」
「ええ~? 二回戦しましょうよ! 私はイッてないですよ!」
「帰ったらたくさん相手してやる」
「本当ですか? 嘘ついたら、朝、団長の陽根を口に咥えて起こしますからね!」
「やれるものならやってみろ、俺より早く起きられたらな」

 あれよあれよと言う間に身体を濡れタオルで拭かれて、寝巻きを着せられてしまった。
 やはり私たちには色気がない。
 伊達に三年間、何も無かっただけのことはある。
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