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※開き直る
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マイヤは今夜も宿の一室にいた。
今日は一日最悪だった。全身筋肉痛を抱えたまま、朝番で客室のベッドメイクをこなしたのだ。シーツを広げるたびにレジナンドにされた行為の数々を思い出し、赤面するのも辛かった。
「マイヤさん、おまたせ!」
腰にタオルを巻いただけの姿のレジナンドは、ほこほこ湯気を出しながらシャワールームから出てきた。腕の付け根を抑えながら、マイヤはにこにこ顔の彼をキッと睨む。人の気も知らないで。
「マイヤさん、なんか機嫌悪いね?」
「当たり前でしょう⁉︎ 昨日はあれだけ抱きつぶされたのよ?」
「同意の上じゃん」
「寝ている人の上で勝手に腰を振っておきながら、よく言うわよ」
「ええ……前の晩は『あなたのモノが欲しい』って言ってたのに」
「あんな口約束、朝になったら無効よ」
マイヤはレジナンドへ敬語を使わなくなっていた。
そして、半端癖になっていた猫かぶりを止めていた。
マイヤは結婚したい一心で、いつからか初対面の男の前ではしおらしくする癖がついていたのだ。
向こうだって、最初から砕けた口調なのだ。依頼側であるこっちが気を使うなんて馬鹿馬鹿しいと、彼女はフンと息を吐く。
マイヤは一見すると儚げな女性だが、実は気が強い。女の園である王城侍女をやっている時点で、おとなしいワケがなかった。少しでもマシな条件の結婚をするために、色んな男と寝てきた今時の強かな女性だ。
強かすぎて、男運が悪くなっている面も否めないが。
「気の強いマイヤさんも素敵だよ」
レジナンドはマイヤの隣に腰掛けると、彼女の背に腕を回し、顔に唇を寄せた。マイヤも瞼を閉じるとキスに応じる。
昨日、レジナンドに散々抱き潰されたマイヤは開き直っていた。やってしまったものは仕方がないし、自分は彼には依頼料の三分の二も肩代わりさせる。身体の一つや二つ開くぐらいどうってことない。そう、彼女は自分自身を納得させていた。
マイヤは自分からもレジナンドにキスをしながら、タオル越しに彼の股間に触れ、弄った。陰茎と陰嚢を掌で包みこむようにして下から上へごしごしと擦り上げる。
レジナンドははぁと悩ましげな吐息を漏らす。
「マイヤさん、ダメだよ……。今夜は俺からするんだから。そんなにごしごし擦ったらすぐ出ちゃう」
「私、股間を舐められるとお小水が出なくなっちゃうから。股を舐めようとしたら殴るわよ?」
「ええ~~? じゃあ、おしっこ飲ませて?」
「それはもっと駄目」
特務部隊とはいえ、この男は本当に騎士なのだろうか。発言がふざけすぎている。
マイヤはイライラしながら、レジナンドの股間に顔を埋める。腰に巻かれていたタオルを取ると、そこにはぷっくり膨れた陰嚢と腹筋に付きそうなほどそそり勃った一物があった。
この国の騎士は病気予防のため、股間であっても無駄毛を生やさない。レジナンドはあまり色ムラの無い綺麗な陰嚢と陰茎をしているなとマイヤは思った。
そして、膨れた陰嚢の下には窄まりが。
マイヤはレジナンドのことを呼び捨てる。
「レジナンド、お尻の処理はしてきた?」
「ああ、それはもちろん。俺、娼館でも娼婦に尻穴を掘らせたことがないから楽しみだな」
レジナンドは性豪だ。毎回毎回、抱き潰されるのは辛い。
そこでマイヤはレジナンドの尻穴を刺激することにした。
尻穴で気持ちよくなることを覚えた男は勃ちが悪くなると言われている。事実、モーシュに直腸を抉られていた婚約者のリュボフも勃起障害を抱えていた。前立腺への刺激だけで射精する癖がついてしまうと、陰茎が硬くならなくなるのだ。
(余裕顔でいられるのも今のうちよ、レジナンド……!)
マイヤは不敵な笑みを浮かべながら潤滑剤のボトルを開け、掌に丁寧に伸ばすと、脚をM字に大きく開いたレジナンドの尻穴まわりに塗りたくっていく。
レジナンドの尻穴は色素沈着などはほとんど見られない。均一に寄った皺のまわりはやや薄紅色に色づいている。潤滑剤を塗り、ぬらぬらと艶めかせた姿は男なのにどこか色っぽい。
「はぁ、尻穴のまわりを撫でられるだけでも気持ちいいよ……」
「これから私がもっと良くしてあげるわ」
マイヤの瞳に陰鬱な光が宿る。彼女は中指の先だけ、レジナンドの尻穴へぬぷりと埋めた。
「あっ……」
尻穴に収まった指がきゅぅっと締め付けられるが、レジナンドは特に苦しそうではない。マイヤはさらに指をもう一本増やすと、穴の周りを掘るように動かした。
「あぅっ、あ、はっ、マイヤさん……!」
マイヤは男が悦ぶ場所を熟知していた。女の指が届く範囲ならば、排泄口まわりと陰嚢の後ろのあたり。ここを指で刺激して悦ばない男はいない。潤滑剤をまとわせた細い指先で直腸内で探るような動きを繰り返す。
すると、レジナンドの陰茎の角度が更に急なものとなった。張り出した亀頭からは透明な液を滲ませている。
尻穴を弄られてさらに勃起するとは。レジナンドはかなりの好きモノかもしれない。
マイヤは尻穴の中で二本の指をぐるりと回しながら、先走りを滲ませる亀頭を上から咥えこんだ。
「ひうぅっ⁉︎」
お世辞にも美味とは言えない味が舌の上に乗る。垢がすっかり落とされた雁首の段差に舌先を当て、ほじるように動かすと、レジナンドはあうあうと情けない声を上げた。
尻穴と陰茎、その両方を同時に攻められているレジナンドは顔を真っ赤に上気させ、切れ長の目の端に涙を浮かべている。膝裏を抱えた両腕を震わせていた。
一旦口を離したマイヤは、うっそりと微笑みながらレジナンドに問う。
「気持ちいい? レジナンド」
「すっげー……気持ちいい……けど」
「けど?」
「早くマイヤさんの中に入りたい」
受け手になっている男から、そんなことを言われたのは初めてだった。二年前に結婚を約束していた男も、それから床を共にしてきた男たちも、マイヤの奉仕に満足した日には彼女を抱こうとはしなかった。
「しょうがないわね」
マイヤは消毒液が入った桶に手を浸し、タオルで水気を拭うと、自分からベッドに寝そべって脚を広げた。
レジナンドはそんなマイヤを見て、嬉しそうに彼女の上に覆い被さる。
マイヤの股を指先でなぞったレジナンドは、口許を緩めた。
「マイヤさん、すっげー濡れてんじゃん。俺が喘いでる姿を見て興奮した?」
「ええ」
「じゃあ、遠慮なく……」
潤む膣口に亀頭がぬるりと埋められる。マイヤは「はっ」と短く息を吐く。少しずつ押し入ってくる陰茎は熱をはらんでいた。人肌が心地よくて、マイヤはつい下腹に力を入れてしまった。
レジナンドは焦った声を出す。
「マイヤさん、まだ締め付けないで」
「はやく動いて」
「はぁ……あったかい。もう出そう」
レジナンドはゆるゆると腰を動かしながら、涙目になっている。不覚にも、マイヤは可愛いなどと思ってしまった。この男は金を満足に支払えない依頼人に性的な関係を迫るクズ男だと言うのに。
(クズは私のほうね)
レジナンドに身体を差し出す変わりに、リュボフと婚約破棄出来るよう働いてもらう道を選んだのは他ならぬマイヤだ。それなのに、被害者気分でいる。
「ん、出して……」
マイヤはレジナンドの背に腕を回すと自らの腰をくねらせた。脚に力を入れ、少し腰を浮かせて、円を描くようにする。陰茎がより奥まで入り、亀頭が子宮口に触れる。
びくびく腰を震わせながら、彼女は瞼を閉じ、あえやかな吐息を漏らした。
「あぁぁん……!」
「うぅ……マイヤさん、でる……!」
下から攻められてしまったレジナンドは、低い呻き声をあげるとマイヤの中へ精を吐き出した。
◆
「はぁはあ……。も、もうダメだよマイヤさん……」
「まだこんなに硬いじゃない。もっと出せるでしょう?」
攻守交代した二人。マイヤは向かい合った状態でレジナンドの上に跨り、腰を振っていた。マイヤが腰を浮かせて下ろすたびに、結合部からはぬかるみを歩くようなぐちゅぐちゅという音が漏れ出ている。
二人はもう汗だくだった。お互いの水分を奪い合うようにキスをする。マイヤはレジナンドの口の中を舐め回した。
「っふぅっ」
「っ……はぁっ」
自分達は獣のようだとマイヤは思った。ずっと互いの性器を繋げたまま、何時間も浅ましくまぐわっている。
身体を重ねる理由は、あんなにも利己的だと言うのに。
身体は火照っていても、マイヤの頭の中はひどく冷静だった。
「マイヤさん、可愛い……。この依頼が終わっても、一緒にいたいな」
マイヤの胸を嬉しそうに掌で包み、やんわり揉みしだきながら、レジナンドは夢見心地に言葉を零す。そんな彼にマイヤは首を横へ振った。
「セフレなんかごめんだわ」
「じゃあ結婚して?」
「昨日、嫌だと言ったでしょう?」
「つれないなー。まぁ、いいや。この依頼が終わるまでにはその気にさせるから」
レジナンドの緊張感の無い笑顔にカチンと来たマイヤは、彼の乳首を両方とも摘んで軽く捻る。レジナンドは困ったような笑い声を漏らすのであった。
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