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3章 交錯
3-5.夜(2)
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「クロエ!」
壁際の寝台の上から、狼が吠え声のように叫んだ。ルークは頭を抱えて、台の上に丸まって震えていた。アメリアを通じて、ぞくぞくとした感覚が全身に広がる。――それは、前に花の香りを嗅いで、クロエに触れた時に感じたものとは違った。アメリアが感じている快感がそのまま伝わってくるのだ。本来であれば、自分が彼女に与える感覚。
森の中では、番を慈しむように、時間をかけて性愛行動を行う。その意味をルークははっきりと感じた。彼女たちの感覚を自分たちは直接感じる。だからこそ、ゆっくりと、気持ちを通わせるように行為を行うのだ。
クロエがアメリアに触れる指は容赦がなかった。激しい快感が大波のように襲ってきて、自分を飲み込む。ルークは奥歯を噛み締めて、身体を震わせた。思考力が奪われる。ぐぅと牙の間から唸り声を漏らした。
クロエは肉の尖りを指で擦りながらアメリアの耳元で囁いた。
「ねえ、お姉さま。気持ち良いでしょう。でも、お姉さまが本当にこうして欲しいのは誰かしら」
身を引きつらせたり、よじったりしながら、アメリアは視線を泳がせた。
(私が、こうして欲しいのは……だれ?)
潤んだ丸い緑の瞳は寝台の上に丸まる狼を映し、それから、自分を大きく開けた青い瞳で見つめるチャールズに向けた。頭が真っ白になるような快感の中、思考は全て飛んでいた。余計な言葉を取り去り、露わになった欲求の先に求めたのは、幼いころからずっと近くにいた彼だった。
「ああ……ん……、チャーリー……」
チャールズはアメリアの口から、熱を帯びた吐息と共に吐き出された自分の名前を聞いて、びくりと身体を震わせると、思わず手を伸ばした。
クロエは立ち上がると、微笑みを浮かべてその手を取った。誘うようにアメリアの元へ彼の手を引くと、その手を目の前の汗ばんだ女の裸体に触れさせた。
「チャールズ様、気持ちが伝わるように……、優しく、触ってあげてください」
森の中の里で、リーシャがルークの手を導いたように、硬直した手に自分の手のひらを重ねて、ゆっくりとアメリアの乳房を円を描くように擦った。穏やかな刺激にアメリアは悶えた。
「ねえ、ルーク、貴方はこうやって私に触ってくれたものね」
クロエは寝台の上で壁に向かい横になったまま震える狼に語りかけた。
チャールズは腕の中で身体を震わせ、荒い息を吐きながら身をよじるアメリアに触れながら、動揺と同時に興奮を感じた。ゆっくりと、彼女の汗ばんだ胸に触れる度、その身体はぴくぴくと反応する。
(彼女が呼んだのは、僕の名前だ)
そのことが、チャールズの心に光を灯した。自分も彼女に応えねば。そうすれば、気持ちが伝わるはずだ。どれだけ自分が彼女のことを想っているのか。
「アメリア」
妻の名前を呼ぶと、チャールズは彼女を抱き寄せ唇を重ねた。緩んだ口元と舌で辿ると、簡単にその中へ入れることができた。舌と舌が絡む。昨夜のように、自分の欲望をぶつけるのではなく、彼女の反応を見るように、掌を胸から下腹部へと滑らせた。
クロエは絡み合う二人から離れ、立ち上がると狼に近づいた。
肩を掴んで大きな体を仰向けにさせると、股間に手を伸ばす。そこは、見てわかるほど盛り上がっていた。麻の簡素なズボンの上からそこをさすると、ルークはびくんと身体を震わせた。それと同時に、アメリアが喘ぎ声を上げて、身体を跳ねさせた。チャールズはそれを支える。
「――番同士はこんなに感じ合うのね――、なのに、どうして貴方はお姉さまを抱かなかったの?」
ルークのズボンを下ろしながらクロエは呟いた。
「俺は……、だって俺は」
狼は自分の身体の上に跨る女を振りほどこうと身をゆすった。
クロエは鎖が繋がる滑車のところへ行くと、それを巻き上げた。ルークの身体が寝台に仰向けで固定された。
そして、自分の服の紐を解きながらどこか歪に微笑んだ。
「貴方も、私を愛してるんでしょう?」
壁際の寝台の上から、狼が吠え声のように叫んだ。ルークは頭を抱えて、台の上に丸まって震えていた。アメリアを通じて、ぞくぞくとした感覚が全身に広がる。――それは、前に花の香りを嗅いで、クロエに触れた時に感じたものとは違った。アメリアが感じている快感がそのまま伝わってくるのだ。本来であれば、自分が彼女に与える感覚。
森の中では、番を慈しむように、時間をかけて性愛行動を行う。その意味をルークははっきりと感じた。彼女たちの感覚を自分たちは直接感じる。だからこそ、ゆっくりと、気持ちを通わせるように行為を行うのだ。
クロエがアメリアに触れる指は容赦がなかった。激しい快感が大波のように襲ってきて、自分を飲み込む。ルークは奥歯を噛み締めて、身体を震わせた。思考力が奪われる。ぐぅと牙の間から唸り声を漏らした。
クロエは肉の尖りを指で擦りながらアメリアの耳元で囁いた。
「ねえ、お姉さま。気持ち良いでしょう。でも、お姉さまが本当にこうして欲しいのは誰かしら」
身を引きつらせたり、よじったりしながら、アメリアは視線を泳がせた。
(私が、こうして欲しいのは……だれ?)
潤んだ丸い緑の瞳は寝台の上に丸まる狼を映し、それから、自分を大きく開けた青い瞳で見つめるチャールズに向けた。頭が真っ白になるような快感の中、思考は全て飛んでいた。余計な言葉を取り去り、露わになった欲求の先に求めたのは、幼いころからずっと近くにいた彼だった。
「ああ……ん……、チャーリー……」
チャールズはアメリアの口から、熱を帯びた吐息と共に吐き出された自分の名前を聞いて、びくりと身体を震わせると、思わず手を伸ばした。
クロエは立ち上がると、微笑みを浮かべてその手を取った。誘うようにアメリアの元へ彼の手を引くと、その手を目の前の汗ばんだ女の裸体に触れさせた。
「チャールズ様、気持ちが伝わるように……、優しく、触ってあげてください」
森の中の里で、リーシャがルークの手を導いたように、硬直した手に自分の手のひらを重ねて、ゆっくりとアメリアの乳房を円を描くように擦った。穏やかな刺激にアメリアは悶えた。
「ねえ、ルーク、貴方はこうやって私に触ってくれたものね」
クロエは寝台の上で壁に向かい横になったまま震える狼に語りかけた。
チャールズは腕の中で身体を震わせ、荒い息を吐きながら身をよじるアメリアに触れながら、動揺と同時に興奮を感じた。ゆっくりと、彼女の汗ばんだ胸に触れる度、その身体はぴくぴくと反応する。
(彼女が呼んだのは、僕の名前だ)
そのことが、チャールズの心に光を灯した。自分も彼女に応えねば。そうすれば、気持ちが伝わるはずだ。どれだけ自分が彼女のことを想っているのか。
「アメリア」
妻の名前を呼ぶと、チャールズは彼女を抱き寄せ唇を重ねた。緩んだ口元と舌で辿ると、簡単にその中へ入れることができた。舌と舌が絡む。昨夜のように、自分の欲望をぶつけるのではなく、彼女の反応を見るように、掌を胸から下腹部へと滑らせた。
クロエは絡み合う二人から離れ、立ち上がると狼に近づいた。
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「――番同士はこんなに感じ合うのね――、なのに、どうして貴方はお姉さまを抱かなかったの?」
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「俺は……、だって俺は」
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クロエは鎖が繋がる滑車のところへ行くと、それを巻き上げた。ルークの身体が寝台に仰向けで固定された。
そして、自分の服の紐を解きながらどこか歪に微笑んだ。
「貴方も、私を愛してるんでしょう?」
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