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2章 森の中の生活
2-2.僕の(2)
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身を屈め、恥丘に顔を埋める。鼻先に絡みつく彼女の匂いが、チャールズの血をたぎらせた。閉じた花びらをめくるように舌を這わせる。びくん、と跳ねて閉じようとする足を布団に押さえつけ、舌を挿しこんだ。濡れないならと、唾液でそこを湿らせる。
身を起こすと、指でひだを広げ、その奥にちらちらと見えるピンク色の割れ目に、勃起したものをあてた。ぐ、と腰に力を入れると、アメリアは身をよじった。
アメリアのそこは狭くきつく、チャールズのものを押し返すように閉じられていて、ぐ、ぐ、と押す度に、彼女は無理矢理身体をこじ開けられる痛みに悶えた。その度、ベッドの上に広がった長い栗色の髪が荒れる川のようにうねる。アメリアの緑の瞳が涙で潤み、目尻から一筋、流れ落ちた。
ぐす、と鼻を鳴らし、アメリアはわめいた。
「チャーリーぃ、嫌ぁ」
チャールズは動きを止めた。暗闇に光る彼女の涙と、つながったそこを見比べる。ようやく半分ほど入ったところだった。自分のもので押し広げられたそこから血が滴り、彼女の太ももに涙のように垂れていた。もう一度、アメリアの顔を見る。
「あぁ」
彼は唸った。先端に集まった血が引いていくのを感じた。それと同時に、彼は彼女に初めて会った日を思い出した。
アメリアが5歳、チャールズが9歳の時に二人は婚約者になった。
チャールズの両親である国王と王妃は仲睦まじく、彼らには6人の子どもがいた。王子が4人に、姫が2人。チャールズは第4王子で末っ子だった。周辺領主との関係は不安定で、周辺国との小競り合いも多く、王族とはいえ王子は有事の際に戦うことが求められるので、兄3人は武芸を厳しく教えられたが、末っ子のチャールズについては、姉たちと人形遊びをしていても両親はそのまま遊ばせておいた。姉2人に可愛がられたチャールズは、兄たちに比べおっとりとした性格に育った。
そのせいか、兄たちに比べると小柄で弱弱しかったチャールズは、6歳を過ぎ、姉たちと離れ、兄たちの剣技の稽古に加わるようになると、全くついていけず、3人の兄――特に、年の一番近い3つ年上の兄には、「お前は本当にのろまだな」とからかわれた。言われる度に落ち込んだが、怒って喧嘩をしかけたところで勝てないのはわかっていたので、いつもはにかんだような笑いを浮かべて悔しさをごまかした。
ある日、チャールズは父親に謁見の間に呼ばれた。そこに、ヘクセン辺境伯一家がいた。
「彼女がアメリアだよ。――お前の、婚約者だ」
「アメリア、挨拶しなさい」
母親に背中を押されて前に出たその小柄な少女は、父親と母親の顔を交互に見比べてから、チャールズを見つめた。その表情は強張っていて、チャールズは困ってしまった。アメリアはスカートの裾をつまんで頭を下げ、大きく息を吸い込むと、間違えのないように気をつけてか、一言一言切りながら大きな声を出した。
「チャー、ルズさま、アメ、リアと、もう、します」
その様子が面白く、チャールズは噴き出してしまった。すると、アメリアはまた母親と父親の顔を見比べ、顔を赤くしてうつむいてしまった。
イアンは顔をしかめてヴィクトリアを睨む。
「――挨拶くらい、きちんと教えておけ」
「――ごめんなさい。アメリア、何度も練習したでしょう」
ヴィクトリアに小声で言われて、アメリアは困ったような笑顔を浮かべた。
「可愛らしいお嬢さんじゃないか。仲良くするんだよ、チャーリー」
父親はその場をとりなすように笑って言うと、チャールズの背中を叩いた。
その後、二人で遊ぶように言われた。自分より年下の子どもと接したことがなかったチャールズは途方に暮れて、取りあえず少女を庭に誘ってみた。彼女は「はい」と返事をして、とことことチャールズの後ろをついてきた。
振り返ると止まるので、面白がって途中で植木の陰に隠れてみる。枝のすき間からのぞいて見ると、アメリアは周囲をキョロキョロと見回していた。その様子が面白く、笑い声を漏らすと、少女は顔を真っ赤にして俯くと、そのままうずくまってしまった。
慌てて駆け寄ると、「笑わないでください」と涙声で言うのが聞こえた。アメリアはそのままぐすぐすと鼻をすすりながら涙声で呟いた。
「私がチャールズさまに笑われたら、お母様はまたお父様に怒られてしまうもの」
「僕が笑ったのは、君が可愛いと思ったから――」
精一杯でそう言うと、ようやくアメリアは顔を上げた。その顔が真っ赤になっていて、次に自分が言った言葉を改めて認識してチャールズが赤くなった。
(この子が、僕の婚約者)
頼りなげな自分より弱い存在を初めて目の前に感じて、チャールズは思った。
(この子は、僕が守るんだ)
それからは、苦手だった剣技の稽古にも熱心に取り組むようになった。兄に馬鹿にされても笑ってごまかすことはなくなり、敵わなくても食って掛かるようになった。
(だって、僕はアメリアと結婚して、彼女をずっと守るんだから)
一度も勝てなかったその兄に勝ったのは、12歳のときだった。兄弟と比較してひ弱なチャールズを見て、将来辺境伯領を任せて大丈夫かと不安になった父親は、アメリアの婚約者を第三王子に変えようかと話し合った。その兄もだんだん可愛らしく育っていくアメリアを見て、気乗りしたらしく、その方向で話が動き始めた。それを聞きつけたチャールズは、兄に真剣を渡し、決闘を申し出た。弟を簡単に倒せると思った兄は、面白がって承諾したが、結果はチャールズの勢いに押し倒された兄が腕を折る大怪我をして負けた。父親と母親からはひどく叱られたが、婚約者を変更するという話は水に流れた。今では、もう誰にも「弱い」だとか「のろま」だとか言わせない自信があった。
腰を引くと、熱量を失った陰茎がずるりと頭を垂れた。
チャールズは瞳が潤むのを感じた。彼女の横に横たわると、その裸の身体を抱きしめた。
「アメリア、僕の傍にいてよ」
胸に顔を埋めて呟く。
「――彼は、あの人狼の野人には何もしていない。彼は、クロエといるよ。君を連れ戻しに、彼の里へ案内してくれたのは、クロエだ」
チャールズの言葉にアメリアは息を飲んだ。
「クロエは、マキシムに連れ出されて、戻ってくるまでのしばらくの間、彼と一緒にいたんだよ」
「――そう、」
『彼は私が見つけた王子様よ』
クロエの言葉を思い出し、アメリアは瞳を伏せ、もう一度呻くように呟いた。
「――そう、」
身を起こすと、指でひだを広げ、その奥にちらちらと見えるピンク色の割れ目に、勃起したものをあてた。ぐ、と腰に力を入れると、アメリアは身をよじった。
アメリアのそこは狭くきつく、チャールズのものを押し返すように閉じられていて、ぐ、ぐ、と押す度に、彼女は無理矢理身体をこじ開けられる痛みに悶えた。その度、ベッドの上に広がった長い栗色の髪が荒れる川のようにうねる。アメリアの緑の瞳が涙で潤み、目尻から一筋、流れ落ちた。
ぐす、と鼻を鳴らし、アメリアはわめいた。
「チャーリーぃ、嫌ぁ」
チャールズは動きを止めた。暗闇に光る彼女の涙と、つながったそこを見比べる。ようやく半分ほど入ったところだった。自分のもので押し広げられたそこから血が滴り、彼女の太ももに涙のように垂れていた。もう一度、アメリアの顔を見る。
「あぁ」
彼は唸った。先端に集まった血が引いていくのを感じた。それと同時に、彼は彼女に初めて会った日を思い出した。
アメリアが5歳、チャールズが9歳の時に二人は婚約者になった。
チャールズの両親である国王と王妃は仲睦まじく、彼らには6人の子どもがいた。王子が4人に、姫が2人。チャールズは第4王子で末っ子だった。周辺領主との関係は不安定で、周辺国との小競り合いも多く、王族とはいえ王子は有事の際に戦うことが求められるので、兄3人は武芸を厳しく教えられたが、末っ子のチャールズについては、姉たちと人形遊びをしていても両親はそのまま遊ばせておいた。姉2人に可愛がられたチャールズは、兄たちに比べおっとりとした性格に育った。
そのせいか、兄たちに比べると小柄で弱弱しかったチャールズは、6歳を過ぎ、姉たちと離れ、兄たちの剣技の稽古に加わるようになると、全くついていけず、3人の兄――特に、年の一番近い3つ年上の兄には、「お前は本当にのろまだな」とからかわれた。言われる度に落ち込んだが、怒って喧嘩をしかけたところで勝てないのはわかっていたので、いつもはにかんだような笑いを浮かべて悔しさをごまかした。
ある日、チャールズは父親に謁見の間に呼ばれた。そこに、ヘクセン辺境伯一家がいた。
「彼女がアメリアだよ。――お前の、婚約者だ」
「アメリア、挨拶しなさい」
母親に背中を押されて前に出たその小柄な少女は、父親と母親の顔を交互に見比べてから、チャールズを見つめた。その表情は強張っていて、チャールズは困ってしまった。アメリアはスカートの裾をつまんで頭を下げ、大きく息を吸い込むと、間違えのないように気をつけてか、一言一言切りながら大きな声を出した。
「チャー、ルズさま、アメ、リアと、もう、します」
その様子が面白く、チャールズは噴き出してしまった。すると、アメリアはまた母親と父親の顔を見比べ、顔を赤くしてうつむいてしまった。
イアンは顔をしかめてヴィクトリアを睨む。
「――挨拶くらい、きちんと教えておけ」
「――ごめんなさい。アメリア、何度も練習したでしょう」
ヴィクトリアに小声で言われて、アメリアは困ったような笑顔を浮かべた。
「可愛らしいお嬢さんじゃないか。仲良くするんだよ、チャーリー」
父親はその場をとりなすように笑って言うと、チャールズの背中を叩いた。
その後、二人で遊ぶように言われた。自分より年下の子どもと接したことがなかったチャールズは途方に暮れて、取りあえず少女を庭に誘ってみた。彼女は「はい」と返事をして、とことことチャールズの後ろをついてきた。
振り返ると止まるので、面白がって途中で植木の陰に隠れてみる。枝のすき間からのぞいて見ると、アメリアは周囲をキョロキョロと見回していた。その様子が面白く、笑い声を漏らすと、少女は顔を真っ赤にして俯くと、そのままうずくまってしまった。
慌てて駆け寄ると、「笑わないでください」と涙声で言うのが聞こえた。アメリアはそのままぐすぐすと鼻をすすりながら涙声で呟いた。
「私がチャールズさまに笑われたら、お母様はまたお父様に怒られてしまうもの」
「僕が笑ったのは、君が可愛いと思ったから――」
精一杯でそう言うと、ようやくアメリアは顔を上げた。その顔が真っ赤になっていて、次に自分が言った言葉を改めて認識してチャールズが赤くなった。
(この子が、僕の婚約者)
頼りなげな自分より弱い存在を初めて目の前に感じて、チャールズは思った。
(この子は、僕が守るんだ)
それからは、苦手だった剣技の稽古にも熱心に取り組むようになった。兄に馬鹿にされても笑ってごまかすことはなくなり、敵わなくても食って掛かるようになった。
(だって、僕はアメリアと結婚して、彼女をずっと守るんだから)
一度も勝てなかったその兄に勝ったのは、12歳のときだった。兄弟と比較してひ弱なチャールズを見て、将来辺境伯領を任せて大丈夫かと不安になった父親は、アメリアの婚約者を第三王子に変えようかと話し合った。その兄もだんだん可愛らしく育っていくアメリアを見て、気乗りしたらしく、その方向で話が動き始めた。それを聞きつけたチャールズは、兄に真剣を渡し、決闘を申し出た。弟を簡単に倒せると思った兄は、面白がって承諾したが、結果はチャールズの勢いに押し倒された兄が腕を折る大怪我をして負けた。父親と母親からはひどく叱られたが、婚約者を変更するという話は水に流れた。今では、もう誰にも「弱い」だとか「のろま」だとか言わせない自信があった。
腰を引くと、熱量を失った陰茎がずるりと頭を垂れた。
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「クロエは、マキシムに連れ出されて、戻ってくるまでのしばらくの間、彼と一緒にいたんだよ」
「――そう、」
『彼は私が見つけた王子様よ』
クロエの言葉を思い出し、アメリアは瞳を伏せ、もう一度呻くように呟いた。
「――そう、」
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