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2夜 ワイルドな海賊の腕でさらわれたい
2-12.これは伝説の棒
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とぼとぼと波打ち際を歩いていく。後ろから「ソフィー!」とフレディの声が追いかけてきたので、私は走った。
いっそ、さっきクラーケンに食べられてしまえば良かったと思った。
生きていたって、身体はひどくなる一方だし。リッキーや、シェリーに病気を感染してしまって、不幸を人に振りまいている。何で私は生きているんだろう。
お父さまだってお母さまだって、王都のお医者様が言ったように私をさっさと殺してくれればよかったのに。
波打ち際を歩いていると、沖の方から何かが近寄ってくる気配がした。
いいわよ。心の中でつぶやく。もういいわよ。
それは私の足に絡みついた。タコの足のようなもの。さっき倒したはずのクラーケンの足。ずるずると水の中に引っ張られる。身体が海水に浸かった。口と鼻に塩水が入ってくる。鼻の奥が痛い。苦しい。その感覚は生々しくて、私は思わず海面に顔を出して暴れる。
――死にたいと思っているはずなのに。
キキっと猿の鳴き声がした。驚いて顔を上げると、リッキーが私の腕にしがみついている。 私はリッキーを放そうと手をばたつかせた。――また、死んでしまう、私のせいで。リッキーはしっかりと私の腕しがみついて、いくら振っても離れない。水中に沈んだり、水面に顔を出たりしながらも、大声で鳴き続けている。
その時、こちらに向かって走ってくる炎の灯りが見えた。
「ソフィー!!」
それは大声で私の名前を叫ぶと、じゃぶじゃぶと波を立てながら、こちらに突進してくる。
服くらい着てきなさいよ――私は水の中で苦笑した。全裸のフレディだった。松明を掲げてこちらに手を伸ばしてくる。
「くそっ」
私の足に絡みつく、クラーケンの足に気づき、踏みつける。
じゅっと火が消える音がした。フレディが、焚き木の棒でタコの足を殴っている。でも刃物じゃないので、ぼよんとそれを跳ね返してしまう。タコ足は一瞬動きを止めたが、また私を沖に引きずり出した。
「ソフィー、これは伝説の木の棒だ!」
フレディが叫ぶ。何言ってんの。
「光って、魔物を、滅ぼす!」
フレディが焚き木を空にかざすのが見える。何やってんのよ、もう。何よ、伝説の木の棒って。
馬鹿じゃないの。私は海水をごぼごぼ飲み込みながら、水中で笑った。
このまま死ぬの、馬鹿みたい。
――その瞬間、木の棒が輝き出した。
彼は、それを私に絡みつくタコの足に振り下ろした。
目の前が光りに包まれる。足を締め付けるものがなくなる。それは黒い霧になって海の中に消えていった。
気が付くと、全身びしょぬれで、全裸のフレディに抱きしめられていた。
そのまま抱きかかえられて陸地へ連れていかれる。
「何してるんだよ」
彼は眉間に皺を寄せて、私を見下ろした。泣きそうな顔をしている。
私は彼の顔を直視できずに、砂浜を見つめてつぶやいた。
「それはこっちのセリフよ」
肩にリッキーが上ってくる。
「なんで、助けるのよ。私が消えた方がいいんでしょ」
「だから、俺は、」
フレディがだんだんっと砂を足で踏んだ。今のがっしりした大人の男性の身体に似合わない動きだった。
「俺は、ソフィーに生きていてほしいんだ」
私は彼を睨む。
「なんで? あなたは、私が死なないと私の夢の外に出られないんでしょう」
「そうだけど、……わからないけど、俺は、」
フレディはうつむいた。彼の股間のものは、すっかり大きさを失って、しょぼしょぼした小さい塊になっている。リッキーが鳴いて、彼の肩に上った。
「こいつだって、君に死んでほしくないって、そう思ってるよ」
フレディは子猿の頭をなでる。リッキーはもう死んでるのに。
「君の中では生きてるよ」
フレディはしゃがみこむと、私にのしかかってきた。
両手でじたばたすると、砂浜に強く押し付けられる。
唇が押し付けられ、舌が絡んでくる。彼の手が、中に入ってきた。
今まで何度も絶頂を感じているので、そこは容易く反応する。
「んんっ」
私は喘いだ。フレディは唇を話すと、語り掛けるように言った。
「次は化け物なんかに邪魔させないくらい、気持ちよくしてあげるから」
彼は私を抱き起すと髪を撫でて、泣きそうな声で言った。
「だから、ご飯をたくさん食べて、元気になってからまた夢を見てよ、ソフィー」
彼は私の口に口付けた。ちゅっと優しく、唇と唇が触れるだけのキスだった。
「おやすみ、ソフィー、またね」
周囲が闇につつまれる。私はその中に落ちていった。
いっそ、さっきクラーケンに食べられてしまえば良かったと思った。
生きていたって、身体はひどくなる一方だし。リッキーや、シェリーに病気を感染してしまって、不幸を人に振りまいている。何で私は生きているんだろう。
お父さまだってお母さまだって、王都のお医者様が言ったように私をさっさと殺してくれればよかったのに。
波打ち際を歩いていると、沖の方から何かが近寄ってくる気配がした。
いいわよ。心の中でつぶやく。もういいわよ。
それは私の足に絡みついた。タコの足のようなもの。さっき倒したはずのクラーケンの足。ずるずると水の中に引っ張られる。身体が海水に浸かった。口と鼻に塩水が入ってくる。鼻の奥が痛い。苦しい。その感覚は生々しくて、私は思わず海面に顔を出して暴れる。
――死にたいと思っているはずなのに。
キキっと猿の鳴き声がした。驚いて顔を上げると、リッキーが私の腕にしがみついている。 私はリッキーを放そうと手をばたつかせた。――また、死んでしまう、私のせいで。リッキーはしっかりと私の腕しがみついて、いくら振っても離れない。水中に沈んだり、水面に顔を出たりしながらも、大声で鳴き続けている。
その時、こちらに向かって走ってくる炎の灯りが見えた。
「ソフィー!!」
それは大声で私の名前を叫ぶと、じゃぶじゃぶと波を立てながら、こちらに突進してくる。
服くらい着てきなさいよ――私は水の中で苦笑した。全裸のフレディだった。松明を掲げてこちらに手を伸ばしてくる。
「くそっ」
私の足に絡みつく、クラーケンの足に気づき、踏みつける。
じゅっと火が消える音がした。フレディが、焚き木の棒でタコの足を殴っている。でも刃物じゃないので、ぼよんとそれを跳ね返してしまう。タコ足は一瞬動きを止めたが、また私を沖に引きずり出した。
「ソフィー、これは伝説の木の棒だ!」
フレディが叫ぶ。何言ってんの。
「光って、魔物を、滅ぼす!」
フレディが焚き木を空にかざすのが見える。何やってんのよ、もう。何よ、伝説の木の棒って。
馬鹿じゃないの。私は海水をごぼごぼ飲み込みながら、水中で笑った。
このまま死ぬの、馬鹿みたい。
――その瞬間、木の棒が輝き出した。
彼は、それを私に絡みつくタコの足に振り下ろした。
目の前が光りに包まれる。足を締め付けるものがなくなる。それは黒い霧になって海の中に消えていった。
気が付くと、全身びしょぬれで、全裸のフレディに抱きしめられていた。
そのまま抱きかかえられて陸地へ連れていかれる。
「何してるんだよ」
彼は眉間に皺を寄せて、私を見下ろした。泣きそうな顔をしている。
私は彼の顔を直視できずに、砂浜を見つめてつぶやいた。
「それはこっちのセリフよ」
肩にリッキーが上ってくる。
「なんで、助けるのよ。私が消えた方がいいんでしょ」
「だから、俺は、」
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「俺は、ソフィーに生きていてほしいんだ」
私は彼を睨む。
「なんで? あなたは、私が死なないと私の夢の外に出られないんでしょう」
「そうだけど、……わからないけど、俺は、」
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「こいつだって、君に死んでほしくないって、そう思ってるよ」
フレディは子猿の頭をなでる。リッキーはもう死んでるのに。
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彼は私を抱き起すと髪を撫でて、泣きそうな声で言った。
「だから、ご飯をたくさん食べて、元気になってからまた夢を見てよ、ソフィー」
彼は私の口に口付けた。ちゅっと優しく、唇と唇が触れるだけのキスだった。
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