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1章 吸血鬼に転生しました。
1-13.森の中で狼と交流
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道路の真ん中で馬を停めたせいで、行き交う人々が不審げにアーティを見ているのがわかった。
「……今更よね、ごめんなさい」
言わなきゃ良かった。
「マント、マント羽織ってますから」
アーティが大きめの声を出したので、横を通り過ぎた人がびくっと彼を見た。
「……大丈夫です」
アーティはよし、と頷いて馬の腹を蹴った。馬はさっきより速足になっている。
周辺をうろうろしていたヤラたちが、急に速足になった馬に驚いて、一声吠えて、慌ててついてきた。
アーティは王宮を逸れて、館側に広がる森の方に行く。
人気のない林道に入り、しばらく行ったところにある開けた場所で、彼は地面に袋を広げ、私のドレスを人型に配置した。
「お嬢様、どうぞ」
「悪いけど、コルセットはどけてくれる?苦しくて、それ」
私は霧状のまましゅるしゅると服の中に入っていって、実体を戻した。
元のまま、しっかりと服に収まった状態に戻る。……便利ね。
洋服を着たことで心の安定を取り戻す。アーティの手をとって立ち上がる。
彼はじっと私の姿を見ていた。
「これ」
マントを押し付けられる。アーティの頬が赤くなり、目線が逸らされている。
私は自分の服を見た。コルセットを外したせいで、上に持ち上げていた胸元が崩れ、すき間ができて上から見ると、中が見える感じになっていた。
「……なんか、いろいろごめんなさいね」
私は苦笑しながら謝った。
「でも、ここ、犬舎?」
周囲は鬱蒼とした森だった。背の高い針葉樹が生い茂っている。足元は溶けかけの霜柱で湿っていて、まだ芽吹いたばかりの緑と、小さな白い花が見える。
犬舎というから、犬小屋的なものがいっぱい並んでるのかと思ったけど。
「ちょっと待ってくださいね」とアーティが笑った。そして、こほん、と咳ばらいをして、彼は吠えた。それは、大声を出すとかではなくて、犬の遠吠えだった。
馬がびくっと震える。影響されたヤラともう一頭の狼も吠えた。
森の中に狼の声がこだまする。
私がびっくりして硬直していると、あちらこちらから、応えるような狼の泣き声と、獣の足音が聞こえた。
あちらこちらから白とか灰色だとか黒とかの狼が現れる。
ざっと30頭近くが、私とアーティを取り囲むように、おすわり状態になっていた。
「この山で放し飼いですよー。餌や頭数や子供の管理なんかはアーロン様や俺たちでやってますけど」
一頭一頭の頭をわしゃわしゃとなでながら、アーティが答えた。
「雪が降るまでは休暇ですから、のびのびさせてやらないと。お、生まれてる」
アーティ―が母らしき雌の狼をよしよしとなでながら両掌に乗るくらいの大きさの黒い子狼を私に渡した。
これは、天使かと思うぐらい可愛らしい塊だった。
大人狼よりもさらに毛が柔らかくふわふわしている。
「あと、数週間したら、いったんこちらでお預かりして訓練ですね」
彼は私の手から子狼を回収して母親に返した。
「最初はあんまりべたべた触ると良くないですからね」
アーティはまた吠えた。どこから声が出てるのかわからないくらいよく響く。
ちょっと離れたところにいるヤラが他の狼の円陣に加わった。お座りしていた彼らが立ち上がり、くるくると変則的に動き出した。
何事かと思っていると、アーティがパン、と手を打ったところで静止する。
「さあ、ヤラはどれでしょう」
アーティはにっと笑って得意げに振り返った。そ、そういうこと。
私はぐるぐると彼らを見回した。灰色の毛、やや小柄でしっぽの付け根がちょっと黒い、
「ヤラ!」
私は奥の方にいた彼女に抱き着いた。
得意げに振り返るとアーティがびっくりしたような顔をしている。
「……今更よね、ごめんなさい」
言わなきゃ良かった。
「マント、マント羽織ってますから」
アーティが大きめの声を出したので、横を通り過ぎた人がびくっと彼を見た。
「……大丈夫です」
アーティはよし、と頷いて馬の腹を蹴った。馬はさっきより速足になっている。
周辺をうろうろしていたヤラたちが、急に速足になった馬に驚いて、一声吠えて、慌ててついてきた。
アーティは王宮を逸れて、館側に広がる森の方に行く。
人気のない林道に入り、しばらく行ったところにある開けた場所で、彼は地面に袋を広げ、私のドレスを人型に配置した。
「お嬢様、どうぞ」
「悪いけど、コルセットはどけてくれる?苦しくて、それ」
私は霧状のまましゅるしゅると服の中に入っていって、実体を戻した。
元のまま、しっかりと服に収まった状態に戻る。……便利ね。
洋服を着たことで心の安定を取り戻す。アーティの手をとって立ち上がる。
彼はじっと私の姿を見ていた。
「これ」
マントを押し付けられる。アーティの頬が赤くなり、目線が逸らされている。
私は自分の服を見た。コルセットを外したせいで、上に持ち上げていた胸元が崩れ、すき間ができて上から見ると、中が見える感じになっていた。
「……なんか、いろいろごめんなさいね」
私は苦笑しながら謝った。
「でも、ここ、犬舎?」
周囲は鬱蒼とした森だった。背の高い針葉樹が生い茂っている。足元は溶けかけの霜柱で湿っていて、まだ芽吹いたばかりの緑と、小さな白い花が見える。
犬舎というから、犬小屋的なものがいっぱい並んでるのかと思ったけど。
「ちょっと待ってくださいね」とアーティが笑った。そして、こほん、と咳ばらいをして、彼は吠えた。それは、大声を出すとかではなくて、犬の遠吠えだった。
馬がびくっと震える。影響されたヤラともう一頭の狼も吠えた。
森の中に狼の声がこだまする。
私がびっくりして硬直していると、あちらこちらから、応えるような狼の泣き声と、獣の足音が聞こえた。
あちらこちらから白とか灰色だとか黒とかの狼が現れる。
ざっと30頭近くが、私とアーティを取り囲むように、おすわり状態になっていた。
「この山で放し飼いですよー。餌や頭数や子供の管理なんかはアーロン様や俺たちでやってますけど」
一頭一頭の頭をわしゃわしゃとなでながら、アーティが答えた。
「雪が降るまでは休暇ですから、のびのびさせてやらないと。お、生まれてる」
アーティ―が母らしき雌の狼をよしよしとなでながら両掌に乗るくらいの大きさの黒い子狼を私に渡した。
これは、天使かと思うぐらい可愛らしい塊だった。
大人狼よりもさらに毛が柔らかくふわふわしている。
「あと、数週間したら、いったんこちらでお預かりして訓練ですね」
彼は私の手から子狼を回収して母親に返した。
「最初はあんまりべたべた触ると良くないですからね」
アーティはまた吠えた。どこから声が出てるのかわからないくらいよく響く。
ちょっと離れたところにいるヤラが他の狼の円陣に加わった。お座りしていた彼らが立ち上がり、くるくると変則的に動き出した。
何事かと思っていると、アーティがパン、と手を打ったところで静止する。
「さあ、ヤラはどれでしょう」
アーティはにっと笑って得意げに振り返った。そ、そういうこと。
私はぐるぐると彼らを見回した。灰色の毛、やや小柄でしっぽの付け根がちょっと黒い、
「ヤラ!」
私は奥の方にいた彼女に抱き着いた。
得意げに振り返るとアーティがびっくりしたような顔をしている。
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