上 下
3 / 4

来てしまった美少女

しおりを挟む
クリスマス当日。俺はお使いを頼まれたので(ケーキ買ってこいとのことだ)閑静な住宅街を歩いていた。
手には小さめのクリスマスケーキが入った箱。
もちろんサンタさんからのプレゼントではない。
向かいの家の、どこぞのバカが嬉しそうに手を振っていたが無視だ。
俺の家は小五でサンタさんなど来なくなった。はは。
そんな益体もないことを考えながら歩いていた、その時だった。
「お…」
思わず声が出てしまった。
閑静な住宅街。その道の真ん中に居たのは、フランス人形のように整った顔立ちの1人の少女。
綺麗な金髪は高めのポニーテールにまとめられており、その瞳は大きく澄んだ碧眼。高い鼻と桃色の唇が印象的だ。
そして何よりおっぱいデカイ。
よーし、謎の美少女Xと名付けよう。そういえば運命って英語でなんて言うんだっけ。

その美少女はきょろきょろとあたりを見回していたが、こちらを見ると―――
「琉矢さんっ!」
ぎゅっ!
あろうことか、道路の真ん中で俺に抱きついてきた!
「は!?ちょ、離れて…っ」
ほのかに甘い香りが鼻腔をくすぐる。
胸も当たってるし、このままいくと気絶するな…。
「あっ、ご挨拶が遅れましたね…」
ホールドしていた腕を外し、謎の美少女Xはふんわりと微笑むと(!)お辞儀をした。
「初めまして!私の名前は瑠花と言います。あなたの従順な下僕です!」
………今なんて?
「え、待って、最後なんつった?」
「あなたの従順な下僕です!」
「…え?」
なんか今変なことが聞こえた気がする。
「えへへ、琉矢さんが、何でもしてくれる女の子が欲しいって言ってたので、来ちゃいました!」
いやいや。
「来ちゃいました!じゃねーよお前…誰だよ?」
「?瑠花です」
「だーっ!もう!そうじゃねぇ!…お前何歳?親は?」
「親?サンタさんですよ!あと、この世に生を受けたのが昨日なので、ゼロ歳です」
「だめだこりゃ」
親がサンタさんってどこぞのバカと言ってることほぼ同じじゃん…ていうかこんな活発でぺらぺら喋るゼロ歳聞いた事ねぇよ。
会話が通じてねぇ。
ここまでの情報を纏めると、
・謎の美少女
・親はサンタさん
・ゼロ歳
・俺の下僕
あーもう意味不明。
「なぁ、つっこませてもらっていいか?」
「え、やだ…つっこむなんて…」
顔を赤らめ、くねくねと体を動かすゼロ歳児。
「そういう意味じゃねぇよ!なんでそんなことゼロ歳のくせに知ってんだよ!」 
「あ、そうですか。なんですか?」
途端に冷たくなりやがって。
「えっと…元いた家に帰れ」「やです」
「即答すんな。お前はちょっとおかしい。もう1回生まれ直してこい」
「実質の死ね発言!?えぇ…」
「死ねなんて言ってねーよ!じゃあ帰れよ!」
「おうちが、ないんです…」
おっ。
めんどくさそうな気配!
「とりあえず聞いてやる。なんでないんだ?」
「私…人間じゃないので…」
「それは知ってるわかってる。何?魔法少女とか?」
「魔法少女!?違いますよ(苦笑)」
苦笑すんなよ…傷つくじゃねーかよ…
「詳しくは言えませんが…とりあえず人間じゃないので、親もいないし当然おうちもありません」
「そ、そうか…よくわからんが大変そうだな」
家がないなら仕方ないよな、帰れないよな…
「ってなぁ、じゃあどこから来たんだ?」 
すると瑠花は明後日の方向を指さし
「画面の中」
「お前自分が画面の中の美少女みたいだからって調子乗んなよ?」
拉致が明かない。
とりあえず家に持って帰るか…
「俺、今から帰るから、一緒に来るか?」
瑠花の顔がぱあっと華やいだのがわかった。
「いいんですか…!?そんな、ご主人様の家だなんて…」
「頼むからご主人様はやめてくれ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高校デビューした美少女はクラスの美少女といちゃつく

明応わり
青春
高校デビューをした柚木真凛は周りと仲良くなり陽キャ女子グループの仲間になった。一方幼馴染の浅倉圭介はぼっちになり静かな生活をし2年生になった。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

素敵な彼女とオタクの僕のイベリス

梅鬼
青春
年齢=彼女なしの自分だったのだが...高校入学をして、とある女性を助けたら何故か1人の美少女に好かれていた!?僕こと松井秀(まついしゅう)はあの可愛い彼女こと鈴木命(すずきめい)の彼氏として恥じないために努力をしていった....

セッションへの招待状

gama
青春
 もうすぐ、夏休みを迎えようとする時期。 神鳥谷高校の一年生、庭山徹は、学業に部活にも何一つ没頭することのなく、ただ漠然と学校と家との往復する日々を過ごしていた。 そんなある日、クラスメイトの相馬貴美子から話しかけられ、放課後此処に来てほしいとメモを渡される。 ろくに話もした事もない彼女から誘いの話を受け、少し淡い期待をしてその場所に向かった先は、美術部の名を借りたTRPG同好会だった。 TRPGがまだこれ程知られていなかった頃に、体験した事を少し含めて、ゲームの面白さと楽しさを少しでも味わえたらと思っております。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな? これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。 ※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。 「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。

シラケン

あめいろ
青春
就活生の白瀬健太は、公園で不採用通知をビリビリに引き裂いていたところ、近くで銃声を聞くことになる。銃声の先にいたのは、、、? 生きる意味なんて分からない。 それを知っているのは、ほんとの自分だけ。 、、、、、てか自分って何だっけ? この物語は、ひとりの青年が自分のやりたいことを見つけるまでの物語。

処理中です...