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第二章 神様

神様との出会い~光と闇を分けるチェックリスト~

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旧約聖書を初めて読んだのが10歳の時。こんな世界があるんだと驚いた。

神様はどんな人間にも救いを与えてくれる。光り輝く神はいる。天使が舞う天上の世界から、いつだって僕達を見つめている……。



その日から僕は、寝ても覚めても『神』について考えるようになった。

神様ってどういう姿形をしているんだろう……。どこにいるんだろう……。どうやったら会えるんだろう…………。


色々なことを想像した。神様が出てくる本を、片っ端から読んでいった。

あらゆる宗教の教典、神話、小説、神学や宗教学の学術書……。
『神』が出てくるものは、ジャンルを問わず読み漁った。そういう日が続いた。



「……聖書に感動したのにキリスト教信者にはならなかったのね?」

僕の話が一段落したところで、火置ひおきさんが質問する。

「僕は『神』という概念が知りたかったんだ。神様はあらゆる時代、あらゆる場所に存在している。そういった神々には何が共通しているのか、人はどうして神という存在を生み出し、崇めるのか。
一つの宗教だけでは収まりきらないほどの世界が『神様』という、たった一つの言葉の中に広がっていたんだ。神様について考えているだけで、僕は満たされた気分になれた」

「それであなたは自分の宗教を作ったんだよね?」

「そう。僕は、自分なりの『神』を考え、自分が思う教義を作り上げ、『教典』にまとめた。あらゆる神の物語を読んで、自分なりの解釈を加えて、生活の中で実践できるような教義を」

「……なるほど」

「柔軟に考えてもらっていい。よくある宗教みたいな……神のために祈りなさいとか、何を食べてはいけないとか、そういうことはない。決まった儀式とかもない。
ただ『善く生きること』が僕の教義の柱だ。この世を善くするために必要なことだけを純粋に考えたんだ。そのわかりやすい一つが……『光と闇を分けるチェックリスト』だね」


<光と闇を分けるチェックリスト>

「『光と闇を分けるチェックリスト』は、99の項目でできている。半分以上にチェックが付いたら『光』、それ以下は『闇』だ。全部紹介すると長くなってしまうから、一部だけ紹介するね」

・困っている人を率先して助けられるか
・自己を高めようとする向上心があるか
・他人の幸せを願えるか
・自分が死ぬかもしれない状況でも、生きる望みを捨てずにいられるか
・自分の思想や主義、譲れないものを最後まで貫けるか
・自分の意見を正しく相手に伝えられるか、伝えようという努力をしているか
・恐怖や保身を理由にして、犯罪や不正、いじめなどに加担しないか
・今まで自分が不幸にした人間よりも幸せにした人間の方が多いか



「僕の考える教義は、現実的なんだ。最後の審判だとか、終末の聖戦だとか。物語としては面白いし壮大だし、それを信じている人がいることも知っているし、信じることを否定もしないけど……。
僕が一番重視したのは『わかりやすさ』。それで思いついたのが『チェックリスト』だったんだ」

「『チェックリスト』って……買い物メモみたいな気軽さね。これなら私でも今すぐヤミ教に入れそう」

火置さんは楽しそうに感想を述べた。いたずらっぽい瞳がチャーミングに輝く。僕はますます喋る気になる。
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