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第六章「悪魔のルコ」
58.とある傭兵の反乱
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(魔族領……、そしてあれが魔王城なのか……??)
魔族に自ら捕まり拉致されたレフォードとミタリア。縄で縛られ運ばれて来たのが瘴気漂う大地広がる魔族領。草も木も少ない黒き土地の中央に、同じく漆黒の城壁を持つ魔王城が聳え立つ。
気品溢れるラフェル王城とはまた違った意味で、魔王城は上質な邪気を纏った美しい城であった。
「さ、歩け!!」
魔王城中庭に下ろされたレフォードとミタリアが城内に入る様に急かされる。黒く分厚い鉄の門が開けられ、意外と明るい城内を魔族の後をついて歩く。やがて地下へ続く階段を下り、やはり黒くて大きな鉄の扉を開けると驚きの光景が広がっていた。
「青髪の男がこんなにも……」
それは各国から拉致された青い髪の男達。
細い者や太い者、老いた者から青年まであらゆる青髪の男が地下の大広間に監禁されている。地下なので窓はなく、空気がどっと重く沈んでいる。食事はきちんと与えられているようで皆は健康そうだが、その顔に笑みはない。
「酷い……」
大広間を歩きながらミタリアがぼそっとつぶやく。
青髪の男が来ることに慣れてしまっているのか、新参者であるレフォード達が来ても誰も興味を示さない。不安と恐怖。生気を抜かれたような顔をした青髪の男達が床に腰を下ろしぼうっとしている。
(確かに酷いことだが、殺されなかっただけましか……)
レフォードは直感的にこの広々とした大広間に集められた男達に、まだ犠牲者が出ていないと思った。
広く、そしてたくさんの『青髪の男』達が集う広間。レフォードは床に腰を下ろすと隣に座る中年の青い髪に男に声を掛けた。
「すまねえ、ちょっと聞きたいんだが」
「あー」
生気のない目をした男が顔を上げる。数日の拘束の為か無精髭が生えている。レフォードが尋ねる。
「俺達はどうしてここに連れて来られたんだ?」
男がレフォードと男装したミタリアの顔を見て言う。
「あー、誰かを探しているらしいけど……、知らねえ……」
男はそう言うと体育座りをして下を向く。そこへ別の男が声を掛けて来た。
「何でもさー、魔族長って女の子が青髪の男を探しているんだって」
振り返ると王都で流行っている流行の髪型をした軽そうな若者が、にこにこしながらこちらを向いている。
「魔族長? 女の子?」
レフォードが聞き直す。男が答える。
「そうだよ。小さいボブカットの女の子。可愛らしい顔してんのに魔族長だって言うから驚いちゃうよな」
黙り込むレフォードとミタリア。その魔族長がルコの可能性が高い。男がミタリアの顔を覗き込みながら尋ねる。
「って言うかあんたさー、ずいぶん整った顔してんね。俺もモテたけど、あんたも相当モテるんじゃない?」
確かに男装したミタリアは中性的な顔つきと言うか、クリっとした大きな目で愛嬌もあり女性受けしそうである。ミタリアが顔を背けて言う。
「モテないです!! モテなんだから!!」
妙なところを褒められて困惑するミタリア。そんなことに全く興味がないレフォードが男に尋ねる。
「どうして知ってるんだ?」
「え? いや、だってここに来たらみんな魔族長と面会するからさー」
「!!」
魔族長との面会。やはり誰かを探していることは間違いないようだ。ひとりひとり会って顔を確かめているのだろうか。男が続ける。
「数名が呼ばれてさー、魔族長の前まで連れて行かれて問いに答えるんだよ、『私は誰?』って言う問いに」
「私は誰……?」
ミタリアがその言葉を復唱する。
「そう。それで誰も答えられなくってさー、マジ焦ったよー、殺されるんじゃないかって。でもそのままここに戻された。いや、一体何がしたいんだろうね、魔族ってさー」
軽そうな口調からはまるでその緊張感が伝わって来ないが、周りにいる青髪に男達の生気のない顔を見ればここでの生活がどれだけ緊張を強いられるかは想像がつく。
「ありがとう、参考になった」
「いいよ~、別に。俺ヒマだし」
男は新しくやって来たふたりに興味津々のようだが、レフォードとミタリアは移動して人の少ない場所に腰を下ろした。
コン!
「きゃっ!」
座ってからすぐにレフォードがミタリアの頭に軽くげんこつを落とす。頭を押さえるミタリア。レフォードが小声で言う。
「ミタリア、何でついて来たんだ! 危ないからダメだって言ったろ!!」
「だって……」
レフォードは以前もこうやって叱ったんじゃないかと思いながら続ける。
「だってじゃない! どうするんだ、こんな男ばかりの場所に来て」
(ん? 男ばかり……??)
ミタリアはその言葉の違和感に気付く。
(あれ? 普通なら魔族の城に連れられてきて命の心配をしなきゃいけない筈なのに、男の心配をするって……、うそぉ!? それってまさか……)
――嫉妬??
決して嫉妬でも何でもないのだが、魔王城、監禁、男だけの異様な空間。それらが混ざり合ってミタリアの思考が妙な方向にずれてしまっていた。青髪ポニーテールのミタリアが色っぽい目をして言う。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。ミタリアはお兄ちゃんだけのものだから」
そう言ってレフォードの手を握るミタリア。慌てて手を振ってレフォードが言う。
「ば、馬鹿!? 何やってんだ、こんなところで!!」
ここ最近はずっとガイルが一緒でレフォードを独占できなかったミタリア。広い魔王城の地下。すぐ近くには誰もいない状況。ミタリアの目がとろんとしてレフォードを見つめながら言う。
「ミタリアはお兄ちゃんがずっと好きなんだよ。お兄ちゃんが好きで好きで好きで好きなの。だからずっと一緒に居たいし、早く子供も作りたい。ねえ、お兄ちゃん~」
そう言ってレフォードに密着するように座るミタリア。子供だと思っていたミタリアからは、男の理性を吹き飛ばすような甘く痺れるような香り漂ってくる。慌てるレフォードが言う。
「ちょ、ちょっと待て!? ミタリア、こんな場所で……」
「じゃあ、どこなら良いの~」
そう言ってレフォードの頬に手を添えてふっと息を吹きかけるミタリア。レフォードが言う。
「そ、そう意味じゃなくって……」
ミタリアの攻撃の前にたじたじになるレフォード。ミタリアはここぞとばかりに攻勢を仕掛けるが、そんなふたりの耳にひとりの青髪の男の声が響く。
「おい、お前らっ!!」
広間の中央で立ち上がるひとりの男。
後ろでひとつに縛られた長い青髪、惚れ惚れするような筋肉と見事な均整がとれた体。一見してただ者ではないと分かる男が皆に向かって言う。
「俺はジェラート。ガナリア大帝国の傭兵だ。お前らに問う、いつまでこんなとこにいるつもりだ??」
周りに魔族はいない。男の声は広間に集められた男達の耳にガンガンと響く。ジェラートが言う。
「俺はここから出る。現役の傭兵だ。あいつらなんかに負けるつもりはねえ!! 一緒に出たい奴はいねえか!?」
突然の脱出計画。だがここにいるのは魔族に怯えている者だけではなかった。
「俺は行く!!」
ひとりの男が立ち上がる。
「剣術は自信がないが、どうしても帰りたい!! 妻と娘が待っているんだ!!」
「俺も行くぜ!!」
「俺も!!」
「俺もだ!!」
あっと今に広がるジェラートの強い意志。それは肉塊にかぶりつく飢えた獣の様に皆に広まって行く。ジェラートが言う。
「よぉし!! ここには武器はねえ。素手で奴らと戦うことになるが、覚悟がある者だけついて来い!!!」
「おうっ!!」
各自が持っていた武器はここに連れられてきた時に没収されている。もちろんレフォードの腰に付けた三つの剣も今はない。ミタリアが不安そうな顔で言う。
「お兄ちゃん……」
「ああ」
無駄な血が流れる。
今のところ抵抗しなければ殺される心配はなさそうだが、魔族によってこんな場所に何日も閉じ込められれば人の感覚がおかしくなるのも理解できる。
(どうする……、止めたところでこちらの話など聞くはずもない……)
不安と恐怖に苛まれていた青髪の男達。それがジェラートの威勢のいい言葉によってある意味弾けてしまったと言っていい。彼らを止めるには確実に帰還できる方法を示す他ない。
(だがそんな方法はない……)
この際一緒に行って暴れるべきか。魔族長の元まで行って正体を確かめるべきか。そんなことを考えていたレフォードの耳に、鉄の扉をぶち破る爆音が響いた。
ドオオオオオオオオオン!!!!
「!!」
傭兵ジェラートは剣術だけでなく、拳を使った体術にも精通していた。一瞬だけ拳をまるで鉄のよう硬化させ放つ。レフォードも無意識に同じようなことをしているのだが、彼はそれを自由自在に操ることができた。ぶち抜かれた扉。ジェラートが叫ぶ。
「さあ、走れ!!! 俺達の自由に向かって!!!!!」
「おーーーーーーっ!!!」
弱った人間ほど洗脳しやすい。今極限の状態に追い込まれた青髪に男達は、脳裏に映るまばゆい脱出後の光景に酔いしれていた。レフォードが立ち上がって言う。
「くそっ、あいつら……」
その目には集団を成して入り口に走る男達の群れ。もはや誰にもその濁流のような流れを止めることはできなかった。
「脱獄です!!!」
城内に居た上級魔族達に地下広間での脱獄の報が入る。
ここは魔王城。いわば魔族の本拠地。当然ながら魔族最強の面々が待機している。余裕の顔をした魔族が皆に言う。
「おい、バカ共が脱獄を計ったそうだ。もういいだろ、殺しても」
「そうだな」
上級魔族達は自領で好き勝手始めた『青髪の男』達の制圧に立ち上がった。
魔族に自ら捕まり拉致されたレフォードとミタリア。縄で縛られ運ばれて来たのが瘴気漂う大地広がる魔族領。草も木も少ない黒き土地の中央に、同じく漆黒の城壁を持つ魔王城が聳え立つ。
気品溢れるラフェル王城とはまた違った意味で、魔王城は上質な邪気を纏った美しい城であった。
「さ、歩け!!」
魔王城中庭に下ろされたレフォードとミタリアが城内に入る様に急かされる。黒く分厚い鉄の門が開けられ、意外と明るい城内を魔族の後をついて歩く。やがて地下へ続く階段を下り、やはり黒くて大きな鉄の扉を開けると驚きの光景が広がっていた。
「青髪の男がこんなにも……」
それは各国から拉致された青い髪の男達。
細い者や太い者、老いた者から青年まであらゆる青髪の男が地下の大広間に監禁されている。地下なので窓はなく、空気がどっと重く沈んでいる。食事はきちんと与えられているようで皆は健康そうだが、その顔に笑みはない。
「酷い……」
大広間を歩きながらミタリアがぼそっとつぶやく。
青髪の男が来ることに慣れてしまっているのか、新参者であるレフォード達が来ても誰も興味を示さない。不安と恐怖。生気を抜かれたような顔をした青髪の男達が床に腰を下ろしぼうっとしている。
(確かに酷いことだが、殺されなかっただけましか……)
レフォードは直感的にこの広々とした大広間に集められた男達に、まだ犠牲者が出ていないと思った。
広く、そしてたくさんの『青髪の男』達が集う広間。レフォードは床に腰を下ろすと隣に座る中年の青い髪に男に声を掛けた。
「すまねえ、ちょっと聞きたいんだが」
「あー」
生気のない目をした男が顔を上げる。数日の拘束の為か無精髭が生えている。レフォードが尋ねる。
「俺達はどうしてここに連れて来られたんだ?」
男がレフォードと男装したミタリアの顔を見て言う。
「あー、誰かを探しているらしいけど……、知らねえ……」
男はそう言うと体育座りをして下を向く。そこへ別の男が声を掛けて来た。
「何でもさー、魔族長って女の子が青髪の男を探しているんだって」
振り返ると王都で流行っている流行の髪型をした軽そうな若者が、にこにこしながらこちらを向いている。
「魔族長? 女の子?」
レフォードが聞き直す。男が答える。
「そうだよ。小さいボブカットの女の子。可愛らしい顔してんのに魔族長だって言うから驚いちゃうよな」
黙り込むレフォードとミタリア。その魔族長がルコの可能性が高い。男がミタリアの顔を覗き込みながら尋ねる。
「って言うかあんたさー、ずいぶん整った顔してんね。俺もモテたけど、あんたも相当モテるんじゃない?」
確かに男装したミタリアは中性的な顔つきと言うか、クリっとした大きな目で愛嬌もあり女性受けしそうである。ミタリアが顔を背けて言う。
「モテないです!! モテなんだから!!」
妙なところを褒められて困惑するミタリア。そんなことに全く興味がないレフォードが男に尋ねる。
「どうして知ってるんだ?」
「え? いや、だってここに来たらみんな魔族長と面会するからさー」
「!!」
魔族長との面会。やはり誰かを探していることは間違いないようだ。ひとりひとり会って顔を確かめているのだろうか。男が続ける。
「数名が呼ばれてさー、魔族長の前まで連れて行かれて問いに答えるんだよ、『私は誰?』って言う問いに」
「私は誰……?」
ミタリアがその言葉を復唱する。
「そう。それで誰も答えられなくってさー、マジ焦ったよー、殺されるんじゃないかって。でもそのままここに戻された。いや、一体何がしたいんだろうね、魔族ってさー」
軽そうな口調からはまるでその緊張感が伝わって来ないが、周りにいる青髪に男達の生気のない顔を見ればここでの生活がどれだけ緊張を強いられるかは想像がつく。
「ありがとう、参考になった」
「いいよ~、別に。俺ヒマだし」
男は新しくやって来たふたりに興味津々のようだが、レフォードとミタリアは移動して人の少ない場所に腰を下ろした。
コン!
「きゃっ!」
座ってからすぐにレフォードがミタリアの頭に軽くげんこつを落とす。頭を押さえるミタリア。レフォードが小声で言う。
「ミタリア、何でついて来たんだ! 危ないからダメだって言ったろ!!」
「だって……」
レフォードは以前もこうやって叱ったんじゃないかと思いながら続ける。
「だってじゃない! どうするんだ、こんな男ばかりの場所に来て」
(ん? 男ばかり……??)
ミタリアはその言葉の違和感に気付く。
(あれ? 普通なら魔族の城に連れられてきて命の心配をしなきゃいけない筈なのに、男の心配をするって……、うそぉ!? それってまさか……)
――嫉妬??
決して嫉妬でも何でもないのだが、魔王城、監禁、男だけの異様な空間。それらが混ざり合ってミタリアの思考が妙な方向にずれてしまっていた。青髪ポニーテールのミタリアが色っぽい目をして言う。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。ミタリアはお兄ちゃんだけのものだから」
そう言ってレフォードの手を握るミタリア。慌てて手を振ってレフォードが言う。
「ば、馬鹿!? 何やってんだ、こんなところで!!」
ここ最近はずっとガイルが一緒でレフォードを独占できなかったミタリア。広い魔王城の地下。すぐ近くには誰もいない状況。ミタリアの目がとろんとしてレフォードを見つめながら言う。
「ミタリアはお兄ちゃんがずっと好きなんだよ。お兄ちゃんが好きで好きで好きで好きなの。だからずっと一緒に居たいし、早く子供も作りたい。ねえ、お兄ちゃん~」
そう言ってレフォードに密着するように座るミタリア。子供だと思っていたミタリアからは、男の理性を吹き飛ばすような甘く痺れるような香り漂ってくる。慌てるレフォードが言う。
「ちょ、ちょっと待て!? ミタリア、こんな場所で……」
「じゃあ、どこなら良いの~」
そう言ってレフォードの頬に手を添えてふっと息を吹きかけるミタリア。レフォードが言う。
「そ、そう意味じゃなくって……」
ミタリアの攻撃の前にたじたじになるレフォード。ミタリアはここぞとばかりに攻勢を仕掛けるが、そんなふたりの耳にひとりの青髪の男の声が響く。
「おい、お前らっ!!」
広間の中央で立ち上がるひとりの男。
後ろでひとつに縛られた長い青髪、惚れ惚れするような筋肉と見事な均整がとれた体。一見してただ者ではないと分かる男が皆に向かって言う。
「俺はジェラート。ガナリア大帝国の傭兵だ。お前らに問う、いつまでこんなとこにいるつもりだ??」
周りに魔族はいない。男の声は広間に集められた男達の耳にガンガンと響く。ジェラートが言う。
「俺はここから出る。現役の傭兵だ。あいつらなんかに負けるつもりはねえ!! 一緒に出たい奴はいねえか!?」
突然の脱出計画。だがここにいるのは魔族に怯えている者だけではなかった。
「俺は行く!!」
ひとりの男が立ち上がる。
「剣術は自信がないが、どうしても帰りたい!! 妻と娘が待っているんだ!!」
「俺も行くぜ!!」
「俺も!!」
「俺もだ!!」
あっと今に広がるジェラートの強い意志。それは肉塊にかぶりつく飢えた獣の様に皆に広まって行く。ジェラートが言う。
「よぉし!! ここには武器はねえ。素手で奴らと戦うことになるが、覚悟がある者だけついて来い!!!」
「おうっ!!」
各自が持っていた武器はここに連れられてきた時に没収されている。もちろんレフォードの腰に付けた三つの剣も今はない。ミタリアが不安そうな顔で言う。
「お兄ちゃん……」
「ああ」
無駄な血が流れる。
今のところ抵抗しなければ殺される心配はなさそうだが、魔族によってこんな場所に何日も閉じ込められれば人の感覚がおかしくなるのも理解できる。
(どうする……、止めたところでこちらの話など聞くはずもない……)
不安と恐怖に苛まれていた青髪の男達。それがジェラートの威勢のいい言葉によってある意味弾けてしまったと言っていい。彼らを止めるには確実に帰還できる方法を示す他ない。
(だがそんな方法はない……)
この際一緒に行って暴れるべきか。魔族長の元まで行って正体を確かめるべきか。そんなことを考えていたレフォードの耳に、鉄の扉をぶち破る爆音が響いた。
ドオオオオオオオオオン!!!!
「!!」
傭兵ジェラートは剣術だけでなく、拳を使った体術にも精通していた。一瞬だけ拳をまるで鉄のよう硬化させ放つ。レフォードも無意識に同じようなことをしているのだが、彼はそれを自由自在に操ることができた。ぶち抜かれた扉。ジェラートが叫ぶ。
「さあ、走れ!!! 俺達の自由に向かって!!!!!」
「おーーーーーーっ!!!」
弱った人間ほど洗脳しやすい。今極限の状態に追い込まれた青髪に男達は、脳裏に映るまばゆい脱出後の光景に酔いしれていた。レフォードが立ち上がって言う。
「くそっ、あいつら……」
その目には集団を成して入り口に走る男達の群れ。もはや誰にもその濁流のような流れを止めることはできなかった。
「脱獄です!!!」
城内に居た上級魔族達に地下広間での脱獄の報が入る。
ここは魔王城。いわば魔族の本拠地。当然ながら魔族最強の面々が待機している。余裕の顔をした魔族が皆に言う。
「おい、バカ共が脱獄を計ったそうだ。もういいだろ、殺しても」
「そうだな」
上級魔族達は自領で好き勝手始めた『青髪の男』達の制圧に立ち上がった。
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